ロバート・ハリス『地図のない国から』放浪の魂を読む。

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心の放浪者アリクラハルトの人生を走り抜けるためのオピニオン系ブログ。

書籍『市民ランナーという走り方(マラソン・サブスリー。グランドスラム養成講座)』。『通勤自転車からはじめるロードバイク生活』。小説『ツバサ』。『帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル』『読書家が選ぶ死ぬまでに読むべき名作文学 私的世界十大小説』『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』。Amazonキンドル書籍にて発売中。

ここではロバートハリス著『地図のない国から』の書評をしています。

ロバート・ハリス『エグザイルス』

ロバート・ハリスの作品は自分の放浪体験をベースにしたエッセイ集が多いのですが、本作はめずらしく小説です。それだけに特筆すべき作品だと思います。

黄色は『地図のない国から』から。赤字はわたしの感想です。

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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。

「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」

「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」

※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。

アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。

https://amzn.to/44Marfe

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作品の概要(あらすじ)

物語のあらすじを述べることについての私の考えはこちらをご覧ください。

物語のあらすじを紹介することについて
あらすじを読んで面白そうと思ったら、実際に照会している作品を手に取って読んでみてください。ガイドブックを読むだけでなく、実際の、本当の旅をしてください。そのためのイントロダクション・ガイダンスが、私の書評にできたらいいな、と思っています。

私は反あらすじ派です。作品のあらすじ、主題はあんがい単純なものです。要約すればたった数行で作者の言いたかった趣旨は尽きてしまいます。世の中にはたくさんの物語がありますが、主役のキャラクター、ストーリーは違っても、要約した趣旨は同じようなものだったりします。

たいていの物語は、主人公が何かを追いかけるか、何かから逃げる話しですよね? 生まれ、よろこび、苦しみ、死んでいく話のはずです。あらすじは短くすればするほど、どの物語も同じものになってしまいます。だったら何のためにたくさんの物語があるのでしょうか。

あらすじや要約した主題からは何も生まれません。観念的な言葉で語らず、血の通った物語にしたことで、作品は生命を得て、主題以上のものになるのです。

作品のあらすじを知って、それで読んだ気にならないでください。作品の命はそこにはないのです。

人間描写のおもしろさ、つまり小説力があれば、どんなあらすじだって面白く書けるし、それがなければ、どんなあらすじだってつまらない作品にしかなりません。

しかしあらすじ(全体地図)を知った上で、自分がどのあたりにいるのか(現在位置)を確認しつつ読書することを私はオススメしています。

作品のあらすじや主題の紹介は、そのように活用してください。

偉そうに? どうして無名の一般市民が世界史に残る文豪・偉人を上から目線で批評・批判できるのか?
認識とか、発想とかで、人生はそう変わりません。だから相手が世界的文豪でも、しょせんは年下の小僧の書いた認識に対して、おまえはわかってないなあ、と言えてしまうのです。それが年上だということです。涅槃(死。悟りの境地)に近いということなのです。

ドロップアウトした奴らを駆け足で取材する。これじゃアリがキリギリスをインタビューするようなもんだ。でも本当はアリは過労死している。ああ、思いついた奴に会ってみたい。

放浪者の魂を学ぶことは、自由な時間をどうすごすか学ぶことにつながります。チルできない日本人にはあまり放浪は向いていないかもしれません。

死ぬ権利とは何かに命を賭ける権利のこと。死ぬ自由がなければ人間の他の自由は死んでしまう。

セックスとドラッグとロックンロール、ウォーターパイプ、ヒッピー、バックパッカー、サーファー、白人の女の子、楽しくてしょうがない。周りの連中が何をしようと知ったこっちゃないが、オレはオレの生き方を通しているつもりだ。

バリ島のサーフボーイ(ジゴロ)の述懐です。ロバート・ハリスの文章はちょっとした小物がイカスんですが、それは本文を読んでもらうしかありません。イビサのような地名、ジタンやウォーターパイプのような文物、モームのような小説、レニークラヴィッツのような音楽。そういう風俗描写がカッコいいのが特徴です。ケルアックなどのビート文学の伝統を継いでいるのです。

ザ・ダルマ・バムズ(禅ヒッピー)。生きる意味をもとめてさまよう

そしてここのことを忘れてしまう。オレのこともね。

死んだような目で、何も残さないで、誰にも惜しまれないで。一生、あの埃だらけの道を見ながら、遠い夢の世界を見て過ごす……絶対に嫌だね。

放浪者の特徴として「親の生き方に対する不満」があげられます。親のようになりたいと思ったら、人は放浪の旅人にはなりません。世の中にはいろいろな職業がありますが、子どもが親の仕事を継ぎたいと思うような職業は、とても「おいしい仕事」なのだと思います。芸能人、医者などは子供が親の仕事を継ぐことが多いですよね。公務員なんかも親も子もという人が多いので「おいしい仕事」なんでしょう。

公務員をクビにする。武士の解雇と再就職

饒舌で話し好きな親父の心を、本質を、ぼくはまったく知らない。彼が何を夢見、何を恐れ、何を追い求め、何を支えに生きてきたのか。彼の人間としての、男としての存在感のようなものを、いまだに感じ取ることができないのだ。感情や精神面に関わる深い話しには不愉快な顔をして言葉を濁した。彼がその時何を思い何を感じたかということはストーリーからすべて省略されていた。心のどこかに大きな傷を負った子供がそのまま大人になり、一度も自分の心の闇と向かい合うことなく、ごく表面的な意識のところで生きてきた。

なぜおれの元から去っていくんだ。なぜおれのことをそんなに嫌うんだ。そう言っているように思えてならなかった。喪失にささくれだった気持ちをいっそう搔きむしった。今、日本を出ていかないと死んでしまいそうな気がするんだ。自分がどんな人間であるべきか、探しに出なければならない。親父からは得ることができなかった人間としてのあり方を模索しなければならない。

ロバート・ハリスは父親のタレント英語講師作家という職に反発して海外に旅立ち、けっきょく、タレントDJ作家になります。対人関係などに関する考え方は違っても、結局は似たようなところに落ち着きます。だからこの本は父親に捧げられています。

仕事があったら仕事をして、なかったらなかったで、バイクを飛ばして友達に会って、またここに帰ってくる。人生はシンプルだ。自分をリスペクトして、人もリスペクトする。ハートでつながろうとする、それがリスペクトさ。良い日もあれば悪い日もある。リスペクトさえあれば何とかやっていける。

赤の他人に心を開いて、おのれの歌をうたってくれたのだ。頭がスッキリして、裸になったような気分だった。

人が己の歌を歌い、心を開けなくなるのは、それをするとバカにされたり結果責任を負わされたりするからです。夢をあきらめる人が多すぎるために、夢追い人は足を引っ張られます。なぜならもしも彼が夢をかなえてしまったら、夢をあきらめた自分が惨めで後悔にまみれるからです。だから他人の夢をつぶしにかかってくるのです。

放浪はそういう世界から旅立つことです。

彼の静かに狂っているところ。繊細で、残酷なところ。苦しみも憎しみも狂気も人間の原点にあるものでしょ。

きみが美しくて、おれが男だから。きみがほしい。でも、怖い。

彼女の眼が少しづつ笑い始めた。一瞬、部屋の中を乾いた風が吹き抜けていったような気がした。親父にもお袋にも似てないね。ぼくが本や映画や女や車の話しをし、彼が静かに聞く、そんな関係だった。

おれたちはそうだった。おれがガキだったんだよ。彼には借りがあることもわかっていた。でも、その一言が当時のぼくからは出てこなかったのだ。

パリがそんなに嫌いなら、なぜ出ていかないんだ。十七年という歳月は、彼女から若さだけではなく、芳子という人間そのものを奪い去っていた。性格が底抜けに明るい女はどこにもいなかった。いたのは人生に疲れて、苦々しさを全身から漂わせている中年女だった。長い間ふしあわせな人生を歩んでいると顔が下品になるものなんだ。彼女の憎しみに歪んだ顔が恐ろしくだらしなく見えた。

昔と全然変わっていなかった。今、その二人が心の中に帰ってきたような気がした。

今日は誰とも話しをしたくないと思った。ヘミングウェイの研ぎ澄まされた文章と、雨のかすかな音。今日はそんな音楽に一日、身を浸していたかった。

今ここに存在しているという実感のようなものだ。その何かの本質はいまだにつかむことができない。いくつもの断層に埋もれた過去の記憶、人を愛したり憎んだり、受け入れたり拒絶したりする心、他者や状況によって変化する人格、光と闇を行き来する意識、そういったものの集合体としての自分は、いまだに謎に包まれている。この謎の中からあるときは弱くて卑劣な自分が、あるときは暖かくて包容力のある人間が現れる。それだけのことだ。人を愛することは簡単。愛そうとしないことの方がよっぽど複雑で大変なこと。

子どものようにほころんでいく。

男たちだけの夜。鼻血がでるぐらい濃いコーヒー。

プロットのほうはすんなり書き進めていけたのだが、女の謎のところで暗礁に乗り上げてしまった。彼女の物語なくしてはこれはただのB級アクション映画に過ぎない。ただのアイディアじゃない。ぜんぜんストーリーとして見えないわ。第一、ドラマティック・テンションがどこにもないじゃない。そんなに慌ててどうするんだよ。せっかくのチャンスを台なしにしただけじゃないか。

女に謎なんてないわ。本能に忠実なだけじゃない。本当の謎は男の頭の中にある迷宮じゃない。自然とか本能から離れて宇宙を漂うロゴス。存在の孤独を真に感じるのは男だけよ。何かを得たものより、得られなかったものにやってくる反動の方が強いからな。こいつは勝者の余韻にひたっているが、敗者のおれは心の闇と闘っている。どうみてもおれの話しの方が面白い。

まずこの男がどんな人生を歩んできたか、彼がどんな男だったのか、それを考えるね。バックグラウンド・ストーリーってやつだ。ぼくだったら彼を、意志の弱い、平凡な男にするね。

理性とは関係のない、熱くて危険な世界。今まで感じたことのない、心のいちばん深いところで感じる疼きだった。このまますべてを捨てて彼女とどこか遠くへ行ってしまいたい。今まで死んだように静かな海に浸っていたところに急に大きな波がやってきて、昨日までの生活が他人ごとのように脳裏をかすめた。毎日の動作を繰り返しながら、そうする自分をどこか遠いところから眺めている、そんな人間になっていた。

どっからああいうイメージが湧いてきたんだろう。

オデュッセウスがセイレーンの甘い声に惑わされた伝説で知られるこの島。何も起こらない毎日が心地よく感じられるようになった。このタベルナは夜になると島民たちが酒を飲みにやってくる唯一のたまり場だった。暗い無意識の中、ぼくは誰でもなくなっていた。ほとんど聞き取れない英語で説明してくれた。きみの話しを聞かせてくれよ。彼と昨日のゲームの続きをやっているような気がした。

ここではいつもの自分を演じたくないからだ。嫌いじゃないが、飽きるときがある。

もし君がよければの話しだけれど……どうだろう? これも君がよければの話しだけど。

ムチャとしかいいようのないリスクを冒し、まるで手負いの野獣のようにがむしゃらに襲い掛かってきた。彼の目的は勝つというよりはゲームをより危険なものに、よりドラマティックなものにすることのようだった。素人の殴り合いのような乱打戦を繰り広げた。勝ち負けなどどうでもよくなってきた。気風のよさ、度胸、したたかさ、笑みをたたえて破滅へと突っ込んでいく潔さ、まるでいちばん素直で元気でムチャクチャだった頃の自分と勝負しているような感じだった。

安定した生活はすぐぶち壊したくなる。目をつぶると、夜道をバイクで思い切りぶっ飛ばしている映像とか、自分の家をハンマーでぶっ壊しているイメージが浮かんでくる。大声を出して暴れたくなる。

「本音を言うやつはいないのか?」

「煩悩を捨てたふりをするのはやめろ」

「お前らは羊か」

そんなことを叫びたくなる。体がブルブルッと、反射的に震えた。

アウトサイダーの反逆はまずは平凡な日常生活への憎悪といったかたちで現れます。彼は政治家や法律家ではありません。世の中の平安、安寧、ルールとか「みんながおまえみたいだったらどうなるんだ?」といった道徳的なことは一切考えません。とにかく自分が嫌だから嫌なのです。我慢がならないから我慢しないのです。そして衝動に身をまかせます。それが生きることだから。

心は子供のままなんだ。思いきり遊ぶために生まれてきた。だからどんなクレイジーな行動をとってもおれは自分のことも人間のことも人生のことも嫌いにならなかった。

まったく何も聞こえない。すべてが静寂に包まれている。恐ろしくなって大声で悲鳴を上げるんだけどそれも聞こえない。

これからまた新しい旅が始まるのかもしれない。またいつか、どこかで逢おう。

すべてのビジネスから手を引き、長い旅に出る。おれの胸の中にひろがりつつある「何か」をもっと強く感じたいんだ。無。何事にも意味をつけようとするおれたちの頭の外に存在する静けさのようなものだ。それがおれの中ですこしづつひろがっているんだ。

ワイルドで、ちょっとクレイジーで、いつも何かを追い求めている、そんな感じの女だ。

人を殺す夢。処刑される夢。闇に吞み込まれる夢。裏切りの夢。殺戮と破壊の夢。獣に成り下がった夢。嫉妬に狂う夢。

ドラッグのディーラーやストリップ・クラブのおやじをやっているよりはずっと高貴な道を選んだように思えた。

親愛なる友よ。旅は始まった。これから北へと向かう。

死神がやってくるのを待った。怒りと、いいようのない悲しみに全身を震わせながら、ぼくは両手を高く上げ、死を迎え入れようとする。

救いを求めていない人間。魂とは救いを必要としているものではない。

素晴らしいパーティーを覗いた後、また独りで夜道を歩いているようなわびしさだ。コカインをやって何時間もセクシャルファンタジーに浸るんだ。自分でも狂っていると思うぐらいにハマる。快楽はすくなくとも我々に生きている実感を与えてくれる。

今はタブッキとともに魂の旅をするムードでもなかった。何かが一瞬のうちに体の中で目を覚ました、そんな感じだった。オーケー。快楽はオレのビジネスだ。

考えていることを見透かされている……そんな気がしてならない。

集団陶酔は苦手だ。人格を放棄して魂をむきだしにする——そういうことはプライベートでするものだ。皮をはがされ、身もだえる体。人格を放棄して、魂が剥き出しになる。

また旅に出たくなった、ただそれだけのことだ。理由など、もうどうでもいい気がする。

何か新しいものを発見するためには、今の自分を演じるのをやめて、自分が他人になっていくような、そんなプロセスが必要だと思うんだ。

ワルザザードのガスパ。旅はいい。日を追うごとに、オレの中に静寂がひろがっていく。

目が輝いていて、まるで子供が宝物を見せているような、そんな顔だ。

それでも眠れないときは、その中のひとつの場所を選んで旅に出るという空想ゲームをした。ぼくが辺境の地へと送り出した分身たちは、まるで読みかけのまま閉じてしまった本の主人公のように、生も目的もまっとうしないまま、アクションの途中で置き去りにされてきた。

身ぶるいするようなエキゾチックな場所を想像し、その景色の中へ自分を送り込み、ストーリーのきっかけをあたえる。現実感が強くなればなるほど、ロマンが消えていった。可能性としての自分は、現実の自分となるべくかけはなれた存在であることが重要だった。

彼女との闇の中にいるかぎり、自分の中にひろがる闇を感じないでいられる。

笑い声はジェットの轟音に搔き消されるまで、ぼくの頭の中で響き渡っていた。

独りで旅をしていると、剝き出しになった自分に戻る。自分という存在の孤独をあらためて噛みしめ、あとは気の向くままに旅をし、運の流れに身をまかせていけばいいのだ。

人生に疲れた男の話し。悪戯っぽい、子どものような目をした男だった。快楽の追及には金も時間も惜しまなかった。

さっきの少年のような顔をした男はどこへ行ってしまったのだろう。ぼくの目の前に今いるのは、ただの疲れた老人だった。

気を悪くしたなら許してくれ。あれは独り言だ。わたしが自分に向かって発した言葉だ。そう思ってくれ。

演出に追われているうちに、本当の自分が誰なんだかわからなくなってしまった。素の自分の声をもう一度じっくり聞いてみようと思ったんだ。

思い出が私の心をしめつけた。欲望が目を覚ました。狂気が頭をもたげたんだ。快楽の熱から逃れることができなくなった。無視しようとしても、一時的に解消しようとしても、熱は一向に冷めなかった。性的妄想に取りつかれた状態にいた。

二度と、昔のローランという男を演じる気持ちもない。すべてはインシャラーそんなところだ。

砂漠の偉大な静寂の中に、身を置いてみたくなったのだ。

人間の孤独について考えさせられた。神の光から遠ざかってしまった人間がまず感じるのは、孤独に違いない。何かの一部であった状態から分離してしまったときに覚える喪失感のようなものなのだろうか。

「すべてのものからとても遠いところにきてしまった」今という瞬間に酔いしれている彼。虚無の時間と、欲望に溺れる状態とを、行ったり来たりしているのだろうか。数年間、心の闇と闘った結果、自ら命を絶ったのだ。

夜、焚き火を囲み、物語を交換する宴を開く。すべての話しを寓話として受け止め、記憶の中へとしまい込む。一人の人間の物語は人から人へと受け継がれ、波紋をおこし、心をうるおし、手放されていく。そして最後には砂漠の静寂の中に消えていく。

ものを書きたいという気持ちといまだに何も書けない現実。心の中のものを手放す術を知った。弟はもうそこにはいなかった。代わりに最後の光を放ちながら太陽が砂丘と砂丘の谷間へゆっくりと飲み込まれていく光景が目に飛び込んできた。

旅を長くしているものはおのれの感情に無防備な状態になる。自分の中の魔物たちが顔をもたげ、意識の表面へとはい出てくる。このままどこかで肉欲に溺れたい。あの時も自分を救い出してくれたのは砂漠の静寂だった。軽い足取りで、前へ進んでいけばいいのだ。何が起ころうと、風に身をまかせ、心を裸にして旅を続けていけばいいのだ。

旅人の魂が何となく伝わったでしょうか? この本を読んでみなさんが旅に出て、何かをつかむことを祈念しています。

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このブログの著者が執筆した純文学小説です。

「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」

「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」

本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。

Amazon.co.jp

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ヘルマン・ヘッセ『クヌルプ』放浪の魂の真髄

放浪の大先輩。山下清のルンペン旅。天才画家の乞食行脚

マラソンランナーも、登山家も、放浪旅行者バックパッカーも、やっていることは同じ

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★★

サハラ砂漠で大ジャンプする著者
【この記事を書いている人】

アリクラハルト。物書き。トウガラシ実存主義、新狩猟採集民族、遊民主義の提唱者。心の放浪者。市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。山と渓谷社ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。ソウル日本人学校出身の帰国子女。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。放浪の旅人。大西洋上をのぞき世界一周しています。千葉県在住。

【この記事を書いている人】
アリクラハルト。物書き。トウガラシ実存主義、新狩猟採集民族、遊民主義の提唱者。心の放浪者。市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。山と渓谷社ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。ソウル日本人学校出身の帰国子女。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。放浪の旅人。大西洋上をのぞき世界一周しています。千葉県在住。
●◎このブログの著者の書籍『市民ランナーという走り方』◎●
書籍『市民ランナーという走り方』Amazonにて発売中
雑誌『ランナーズ』のライターだった筆者が贈る『市民ランナーという走り方』。 「コーチのひとことで私のランニングは劇的に進化しました」エリートランナーがこう言っているのを聞くことがあります。市民ランナーはこのような奇跡を体験することはできないのでしょうか? いいえ。できます。そのために書かれた本が本書『市民ランナーという走り方』。ランニングフォームをつくるための脳内イメージワードによって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。「言葉の力によって速くなる」という本書の新理論によって、あなたのランニングを進化させ、現状打破、自己ベストの更新、そして市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。 ●言葉の力で速くなる「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」って何? ●絶対にやってはいけない「スクワット走法」とはどんなフォーム? ●ピッチ走法とストライド走法、どちらで走るべきなのか? ●ストライドを伸ばすための「ハサミは両方に開かれる走法」って何? ●マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」とは? ●究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」の本当の意味は? 本書を読めば、言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化されて、同じトレーニング量でも速く効率的に走ることができるようになります。 ※カルペ・ディエム。この本は「ハウツーランニング」の体裁をした市民ランナーという生き方に関する本です。 あなたはどうして走るのですか? あなたよりも速く走る人はいくらでもいるというのに。市民ランナーがなぜ走るのか、本書では一つの答えを提示しています。
https://amzn.to/3CaR81P
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●◎このブログ著者の書籍『通勤自転車から始めるロードバイク生活』◎●
書籍『通勤自転車から始めるロードバイク生活』
この本は勤務先の転勤命令によってロードバイク通勤をすることになった筆者が、趣味のロードバイク乗りとなり、やがてホビーレーサーとして仲間たちとスピードを競うようになるところまでを描いたエッセイ集です。 その過程で、ママチャリのすばらしさを再認識したり、どうすれば速く効率的に走れるようになるのかに知恵をしぼったり、ロードレースは団体競技だと思い知ったり、自転車の歴史と出会ったりしました。 ●自転車通勤における四重苦とは何か? ●ロードバイクは屋外で保管できるのか? ●ロードバイクに名前をつける。 ●通勤レースのすすめ。 ●軽いギアをクルクル回すという理論のウソ。 ●ロードバイク・クラブの入り方。嫌われない作法。 などロードバイクの初心者から上級者まで対応する本となっています。
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●◎このブログ著者の小説『ツバサ』◎●
小説『ツバサ』
主人公ツバサは小劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。そんな中、恋人のアスカはツバサのもとを去っていきました。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。離れたくない。その叫びだけが残った。全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自身が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「それは言葉として聞いただけではその本当の意味を知ることができないこと。体験し、自分をひとつひとつ積み上げ、愛においても人生においても成功した人でないとわからない法則」 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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小説『ツバサ』
主人公ツバサは小劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。そんな中、恋人のアスカはツバサのもとを去っていきました。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。離れたくない。その叫びだけが残った。全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自身が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「それは言葉として聞いただけではその本当の意味を知ることができないこと。体験し、自分をひとつひとつ積み上げ、愛においても人生においても成功した人でないとわからない法則」 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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読書家が選ぶ死ぬまでに読むべきおすすめの名作文学 私的世界の十大小説
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×   ×   ×   ×   ×   ×  (本文より)知りたかった文学の正体がわかった! かつてわたしは文学というものに過度な期待をしていました。世界一の小説、史上最高の文学には、人生観を変えるような力があるものと思いこんでいました。ふつうの人が知り得ないような深淵の知恵が描かれていると信じていました。文学の正体、それが私は知りたかったのです。読書という心の旅をしながら、私は書物のどこかに「隠されている人生の真理」があるのではないかと探してきました。たとえば聖書やお経の中に。玄奘が大乗のお経の中に人を救うための真実が隠されていると信じていたように。 しかし聖書にもお経にも世界的文学の中にも、そんなものはありませんでした。 世界的傑作とされるトルストイ『戦争と平和』を読み終わった後に、「ああ、これだったのか! 知りたかった文学の正体がわかった!」と私は感じたことがありました。最後にそのエピソードをお話ししましょう。 すべての物語を終えた後、最後に作品のテーマについて、トルストイ本人の自作解題がついていました。長大な物語は何だったのか。どうしてトルストイは『戦争と平和』を書いたのか、何が描きたかったのか、すべてがそこで明らかにされています。それは、ナポレオンの戦争という歴史的な事件に巻き込まれていく人々を描いているように見えて、実は人々がナポレオンの戦争を引き起こしたのだ、という逆説でした。 『戦争と平和』のメインテーマは、はっきりいってたいした知恵ではありません。通いなれた道から追い出されると万事休すと考えがちですが、実はその時はじめて新しい善いものがはじまるのです。命ある限り、幸福はあります——これが『戦争と平和』のメインテーマであり、戦争はナポレオンの意志が起こしたものではなく、時代のひとりひとりの決断の結果起こったのだ、というのが、戦争に関する考察でした。最高峰の文学といっても、たかがその程度なのです。それをえんえんと人間の物語を語り継いだ上で語っているだけなのでした。 その時ようやく文学の正体がわかりました。この世の深淵の知恵を見せてくれる魔術のような書なんて、そんなものはないのです。ストーリーをえんえんと物語った上で、さらりと述べるあたりまえの結論、それが文学というものの正体なのでした。
https://amzn.to/43j7R0Y
×   ×   ×   ×   ×   × 
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×   ×   ×   ×   ×   × 
◎このブログの著者の随筆『帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル』
随筆『帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル』

旅人が気に入った場所を「第二の故郷のような気がする」と言ったりしますが、私にとってそれは韓国ソウルです。帰国子女として人格形成期をソウルで過ごした私は、自分を運命づけた数々の出来事と韓国ソウルを切り離して考えることができません。無関係になれないのならば、いっそ真正面から取り組んでやれ、と思ったのが本書を出版する動機です。

私の第二の故郷、韓国ソウルに対する感情は単純に好きというだけではありません。だからといって嫌いというわけでもなく……たとえて言えば「無視したいけど、無視できない気になる女」みたいな感情を韓国にはもっています。

【本書の内容】
●ソウル日本人学校の学力レベルと卒業生の進路。韓国語習得
●韓国人が日本を邪魔だと思うのは地政学上、ある程度やむをえないと理解してあげる
●関東大震災直後の朝鮮人虐殺事件
●僕は在日韓国人です。ナヌン・キョッポニダ。生涯忘れられない言葉
●日本人にとって韓国語はどれほど習得しやすい言語か
●『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』南北統一・新韓国は核ミサイルを手放すだろうか?
●天皇制にこそ、ウリジナルを主張すればいいのに
●「失われた時を求めて」プルースト効果を感じる地上唯一の場所
●韓国帰りの帰国子女の人生論「トウガラシ実存主義」人間の歌を歌え

韓国がえりの帰国子女だからこそ書けた「ほかの人には書けないこと」が本書にはたくさん書いてあります。私の韓国に対する思いは、たとえていえば「面倒見のよすぎる親を煙たく思う子供の心境」に近いものがあります。感謝はしているんだけどあまり近づきたくない。愛情はあるけど好きじゃないというような、複雑な思いを描くのです。

「近くて遠い国」ではなく「近くて近い国」韓国ソウルを、ソウル日本人学校出身の帰国子女が語り尽くします。

帰国子女は、第二の故郷に対してどのような心の決着をつけたのでしょうか。最後にどんな人生観にたどり着いたのでしょうか。

Amazon.co.jp: 帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル (民明書房) eBook : アリクラハルト: 本
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随筆『帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル』

旅人が気に入った場所を「第二の故郷のような気がする」と言ったりしますが、私にとってそれは韓国ソウルです。帰国子女として人格形成期をソウルで過ごした私は、自分を運命づけた数々の出来事と韓国ソウルを切り離して考えることができません。無関係になれないのならば、いっそ真正面から取り組んでやれ、と思ったのが本書を出版する動機です。

私の第二の故郷、韓国ソウルに対する感情は単純に好きというだけではありません。だからといって嫌いというわけでもなく……たとえて言えば「無視したいけど、無視できない気になる女」みたいな感情を韓国にはもっています。

【本書の内容】
●ソウル日本人学校の学力レベルと卒業生の進路。韓国語習得
●韓国人が日本を邪魔だと思うのは地政学上、ある程度やむをえないと理解してあげる
●関東大震災直後の朝鮮人虐殺事件
●僕は在日韓国人です。ナヌン・キョッポニダ。生涯忘れられない言葉
●日本人にとって韓国語はどれほど習得しやすい言語か
●『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』南北統一・新韓国は核ミサイルを手放すだろうか?
●天皇制にこそ、ウリジナルを主張すればいいのに
●「失われた時を求めて」プルースト効果を感じる地上唯一の場所
●韓国帰りの帰国子女の人生論「トウガラシ実存主義」人間の歌を歌え

韓国がえりの帰国子女だからこそ書けた「ほかの人には書けないこと」が本書にはたくさん書いてあります。私の韓国に対する思いは、たとえていえば「面倒見のよすぎる親を煙たく思う子供の心境」に近いものがあります。感謝はしているんだけどあまり近づきたくない。愛情はあるけど好きじゃないというような、複雑な思いを描くのです。

「近くて遠い国」ではなく「近くて近い国」韓国ソウルを、ソウル日本人学校出身の帰国子女が語り尽くします。

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●◎このブログ著者の書籍『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』◎●
書籍『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』
戦史に詳しいブロガーが書き綴ったロシア・ウクライナ戦争についての提言 『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』 ●プーチンの政策に影響をあたえるという軍事ブロガーとは何者なのか? ●文化的には親ロシアの日本人がなぜウクライナ目線で戦争を語るのか? ●日本の特攻モーターボート震洋と、ウクライナの水上ドローン。 ●戦争の和平案。買戻し特約をつけた「領土売買」で解決できるんじゃないか? ●結末の見えない現在進行形の戦争が考えさせる「可能性の記事」。 「紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ」を信条にする筆者が渾身の力で戦争を斬る! ひとりひとりが自分の暮らしを命がけで大切にすること。それが人類共通のひとつの価値観をつくりあげます。人々の暮らしを邪魔する行動は人類全体に否決される。いつの日かそんな日が来るのです。本書はその一里塚です。
https://amzn.to/47hnbeF
書籍『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』
戦史に詳しいブロガーが書き綴ったロシア・ウクライナ戦争についての提言 『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』 ●プーチンの政策に影響をあたえるという軍事ブロガーとは何者なのか? ●文化的には親ロシアの日本人がなぜウクライナ目線で戦争を語るのか? ●日本の特攻モーターボート震洋と、ウクライナの水上ドローン。 ●戦争の和平案。買戻し特約をつけた「領土売買」で解決できるんじゃないか? ●結末の見えない現在進行形の戦争が考えさせる「可能性の記事」。 「紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ」を信条にする筆者が渾身の力で戦争を斬る! ひとりひとりが自分の暮らしを命がけで大切にすること。それが人類共通のひとつの価値観をつくりあげます。人々の暮らしを邪魔する行動は人類全体に否決される。いつの日かそんな日が来るのです。本書はその一里塚です。
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