「言葉のイメージ喚起力で速くなる」という新メソッド
私は長年マラソンを走ってきました。サブスリーランナーです。長年速く走るために効率的なフォームを追求してきました。前傾姿勢のこと、骨の位置によって筋肉の伸縮反射が変わることなど、そういう小さなことを改善することで市民ランナーのグランドスラムを達成しています。
そのノウハウをまとめた本がこちら。
「言葉のイメージ喚起力で速くなる」という新メソッドを提唱しています。
この本で提案している速く走るための秘訣とは、「押す足」よりも「引き足」を重視して走ろうということです。「ハサミは両方に開かれる走法」では、硬い地面を蹴って走るのではなく、空気を膝で切り裂いて走ります。大腿骨を大きく動かして膝を大きく前に振り出せば、結果として、地面を強く蹴ったようなフォームになります。なぜなら「ハサミは両方に開かれる」からです。
大腿骨を大きく動かさずして、速く走れるランナーなんていません。
それはロードバイクの場合も同じです。
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このブログの作者の書籍『通勤自転車から始めるロードバイク生活』のご紹介
この本は勤務先の転勤命令によってロードバイク通勤をすることになった筆者が、趣味のロードバイク乗りとなり、やがてホビーレーサーとして仲間たちとスピードをガチンコで競うようになるところまでを描いた自転車エッセイ集です。
※書籍の内容
●スピードこそロードバイクのレーゾンデートル
●軽いギアをクルクル回すという理論のウソ。体重ライディング理論。体重ペダリングのやり方
●アマチュアのロードバイク乗りの最高速度ってどれくらい?
●ロードバイクは屋外で保管できるのか?
●ロードバイクに名前をつける。
●アパートでローラー台トレーニングすることは可能か?
●ロードバイククラブの入り方。嫌われない新入部員の作法
●ロードバイク乗りが、クロストレーニングとしてマラソンを取り入れることのメリット・デメリット
●ロードバイクとマラソンの両立は可能か? サブスリーランナーはロードバイクに乗っても速いのか?
●スピードスケートの選手がロードバイクをトレーニングに取り入れる理由
初心者から上級者まで広く対象とした内容になっています。
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帆船が帆をたたんだ状態で走るのがロードバイクの効率的なフォームか? 検証してみよう。
さてマラソンの知識、ノウハウを持った私がロードバイクに乗り換えたら、どうなったでしょうか?
マラソン系ロードバイク乗りの私がもっともジレンマに陥ったのが、効率的なフォームと耐風姿勢についてです。
ロードバイクに乗ると、マラソンよりもはるかに風(空気抵抗)のことを考えるようになりました。実際にロードバイクでペダルを回したパワーのほとんどは空気抵抗とのたたかいに消耗しているのです。その証拠に車の後ろをぴたりとついて走ると、おそろしく速く走ることができます。風の抵抗をクルマが壁になって防いでくれるからです。
強風の河川敷のロードバイクで、往路は時速60km復路は時速20kmということもありました。それほどロードバイクに乗る場合は風が影響します。
そうなるとどうしても耐風姿勢をとりたくなります。風の抵抗をもっとも受けるのはライダーの上半身です。だからできるだけ風を受けないように上半身を伏せて走りたくなります。いわば帆船が帆をたたんだ状態です。そのように上半身を伏せて漕ぐのが正解のフォームではないか、とまずは思うのです。そのフォームを試したことのないロードバイク乗りはいないと思います。
伸縮反射。筋肉というのはゴム、バネのようなもの
ところが私が長年マラソンでやってきた筋肉の使い方が、上半身を伏せた耐風姿勢ではできません。
筋肉というのはバネのようなものです。伸ばされると縮もうとします。これを伸縮反射といいます。伸縮反射が便利なのはゴムのように勝手に縮むことです。脳からの運動命令が不要なのです。ロードバイクやランニングのような延々と繰り返すピストン運動には、この筋肉の伸縮反射がひじょうに使えます。
筋肉は伸ばされると勝手(不随意)に縮もうとします。「ハサミは両方に開かれる走法」のように蹴り足よりも引き足を重視した走法の場合は、足を持ち上げる筋肉に頼って走ります。身体の後ろ側ではなく、前側の筋肉を使って走るのです。
体幹(腸腰筋とお尻)を主に使った乗り方をしてみよう
足を持ち上げる筋肉に「腸腰筋」があります。腸腰筋というのは腰椎と大腿骨をつないでいる脚を前に持ち上げるための筋肉です。ロードバイクの教本を読むと「腸腰筋を使って漕ぐのがよい」と書いてあります。
腸腰筋に対して大腿四頭筋があります。大腿四頭筋は太腿前面の大きな筋肉です。この大きな筋肉でペダルを踏みしめるという漕ぎ方です。ダンシング(立ち漕ぎ)のときにはこの筋肉を主動筋にします。こちらは大きなパワーが出る半面、長持ちしません。短期決戦用の筋肉です。
それに対して腸腰筋は長持ちするけれどもパワーは大腿四頭筋ほどはありません。「ハサミは両方に開かれる走法」の場合、腸腰筋で太腿骨を前に持ち上げてストライドを稼ぎます。ロードバイクでは腸腰筋を「引き足」に使います。ペダルに足の重さが残っていると踏み脚の負担になるために腸腰筋で上げる方のペダルを持ち上げて踏み込むペダルを軽くします。
「ハサミは両方に開かれる走法」で腸腰筋の伸縮反射をつかうためには骨盤を立てることです。骨盤を立てることによって大腿骨が後ろに回った時に腸腰筋が引き伸ばされて反射的に縮もうとするのです。その反射を利用して脚を前に持ち上げます。バネ、ゴムを使って走れば楽に速く走れます。
ところがロードバイクの耐風姿勢で股関節から伏せたフォームを取っていると、この腸腰筋の伸縮反射が使えないのです。なぜなら骨盤を前に伏せると腸腰筋が伸びきらないからです。伸びなければゴム(腸腰筋)は伸縮反射しません。
前に伏せたロードバイクの耐風フォームでは、脚の筋肉をメインに頼ることになります。低い耐風姿勢では体幹の筋肉が効率的に使えないのです。
伏せた耐風フォームよりも骨盤を立てたフォームの方が効率がいい
筋肉は縮む筋肉と伸ばす筋肉が対になって存在します。筋肉は必ず対になっています。だから主動筋のパワーを最大限に発揮するためには、対抗筋をリラックスさせることが重要になってくるのです。そうしないとブレーキを踏みながらアクセルを踏み込む状態になってしまいます。
骨盤を立てて腸腰筋を使うということはその対抗筋であるお尻の筋肉も同時に使えるということです。お腹(体幹)の筋肉を前側も後ろ側も両方使って走ることができます。
このように筋肉の使い方を考慮すれば、伏せた耐風フォームよりも骨盤を立てたフォームの方が効率がいいのです。ロードバイクの巡航フォームではすこし骨盤を立てましょう。そうすると空気抵抗が増してしまうことはわかっていますが、体幹の筋肉を効果的に使えないよりはマシです。
また、伏せた姿勢を維持するために背筋や腰の筋肉が常に緊張しています。筋肉が常に緊張しているということはダイナミックに動かせないということです。筋肉は対になって動いていますから、腰の筋肉が動かせないということは、対抗筋である腸腰筋も大きく動かせないということです。
骨盤を立てて、腰の筋肉を緩めてはじめて腸腰筋はダイナミックに動くことができるのです。
前立腺炎・尿道炎、インポテンツにならない乗り方
また骨盤を伏せる耐風フォームはどうしても固いサドルが会陰部を圧迫するため、前立腺炎、インポテンツのおそれもあります。前傾姿勢が強くなれば会陰部にかかる圧力が強くなります。これが会陰部の血行障害を引き起こす可能性があるのです。
またペダルの重さも重要です。ペダルがあまりにも軽いと、足がスカッと回り、サドルに股間から全体重がかかります。大きな「動きながらの圧迫(摩擦)」が会陰部にかかります。
重いペダルは片脚ごとに体重をかけて踏み込むという感触がありますが、軽いペダルは脚に体重をかける前にクルクルと回ってしまいますので、股間にサドルが押しつけたまま動くことになります。
インナーローの縛り練習をやってみればわかりますが、スピードを出そうと猛烈に漕ぐと、股間が痛くなります。軽いギアだとペダルがスカスカだから脚が踏ん張れず、必然的に体重をサドルで支えることになるわけです。そして全然前に進みません。
だから前立腺炎・尿道炎にならないロードバイクの乗り方というのは、すこし重たいペダルに、骨盤をたてて座骨からサドルに乗る、ということになるのです。そうすれば尿道炎になりにくいでしょう。
前立腺炎・尿道炎になりにくいロードバイクの乗り方は、スピードを出すにも理にかなった走り方だということができます。
重たいペダルに骨盤を立てて座ることで、インポテンツなどの壊滅的な悲劇を避けつつ、速くロードバイクに乗ることができます。
サドルの上に座骨を立てて、猫背にしてハンドルに手を伸ばす巡航フォームがベスト
腸腰筋をつかって走ろうとすると、対抗筋である腰・お尻の筋肉をゆるめる必要があります。筋肉のパワーを最大限に使うためにはリラックスしなければなりません。伸縮反射をつかうためにも骨盤を立てた方がいいのです。
それでもあまりにも向かい風が強い時は、耐風姿勢で走ることもあります。体幹を使った乗り方を犠牲にしても伏せて空気抵抗を避けたほうがベターな場合もあります。しかしそれはやむにやまれぬ二者択一の結果です。
常に耐風姿勢で走ろうとするホビーレーサーを見かけますが、伏せすぎると体幹の筋肉を使いにくくなるために最良のフォームとはいえません。
骨盤を立てて、猫背にして背中をまるめてハンドルに手を伸ばします。サドルの上に座骨を立てた方が、体幹の筋肉を使って力強く前に進むことができるでしょう。