ドラクエ的な人生

『月と六ペンス』サマセット・モームの魅力、あらすじ、内容、評価

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私的世界十大小説のひとつ。サマセット・モーム『月と六ペンス』

わたしはマレーシア・マラッカに行く飛行機の中でずっと本を読んでいました。サマセット・モームの『月と六ペンス』。超名作です。かつては世界中で読まれた大ベストセラーだったとか。。。どうして急に読もうと思ったのか? それは……マラッカといえば夕日です。夕日といえばサンセット。サマセットでしょ……というダジャレでもう一度読み返すことにしたのですが、本を読む動機なんてこの程度でいいのです。

読むのはもちろんはじめてじゃありませんでした。わたしにとっては忘れられない名作のひとつです。熱帯雨林地方の気候が舞台ということも、マラッカの旅のともに「月と6ペンス」を選んだ理由のひとつです。

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傑作が燃えて灰になっても、すばらしい世界は今も目の前にある

オリジナルの自然が残っているから、絵の方は燃やしてもよかったんじゃないのかな、というのがわたしの感想です。絵は世界を鏡に映しただけに過ぎません。

作品は自然の偉大さを映し出したに過ぎず、作品が燃えてなくなっても、オリジナルの世界がある限り、何ら損なわれるものはない、ってことではないでしょうか。

だから『画家にあるのは描き上げた解放感だけ。自分の楽しみのために絵を描くのであって、ほかの目的をもって絵を描こうとする者がいれば、それが大ばか者だ』って話になるんじゃないかと思います。

ストリックランドの絵は、いつかどこかでまた再現されのです。他の誰かの手によって。

だってすばらしい世界は今も目の前にあるのだから。

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主人公ストリックランドのモデルは画家のポール・ゴーギャン

まず主人公ストリックランドのモデルは画家のポール・ゴーギャンだということを前提として頭に入れておいてください。

サラリーマンだった画家の主人公ストリックランドは、突如、画家になります。いろいろあって最後はタヒチに行くのですが、不治の病で失明してしまいます。

視力を失いながらもストリックランドは、木の家の壁一面に『秘められた自然の深みにわけ入り、美しくも恐ろしい、知ってはならない秘密を探し当てたような』生涯の大傑作を描きあげるのです。

『雄大で冷淡、美しく残酷な大自然への賛歌のような、黒魔術を思わせるような原始的で、恐ろしい絵』を死の直前まで描き続けて、描きあげて、ストリックランドは死にました。

問題はその後です。

ストリックランドは、傑作だと自分でもわかっている、自分の人生のすべてといってもいい生涯最後の大壁画を、ほかの誰にも見せることなく、自分の意思で焼いて無にかえしてしまうのです。

生涯の苦痛も、すべてはこの絵のためにあったというのに。

実在の画家ポール・ゴーギャンにインスパイアされて『月と6ペンス』は描かれているのですが、この壁画に相当するのはゴーギャンの『我々はどこから来たのか。我々は何者か。我々はどこへ行くのか』という絵に違いありません。わたしがボストンマラソンを走った前日に、わざわざこの絵を見るためにボストン美術館に行ったのも『月と六ペンス』を読んでいたからに他なりません。

日本では徳島の大塚美術館で見ることができます。あそこは世界で二番目にすばらしい美術館だとわたしは思っています。関東から遠くて頻繁に行けないのが本当に残念です。もちろん1番はルーブル美術館です。

さて、どうしてストリックランドは生涯最大の大傑作を灰にしちゃったのでしょうか。

もったいないと思わずにいられれませんが……

作者サマセット・モームらしき語り手が、小説の中でこういっています。

『作家にあるのは書き上げた解放感だけ。自分の楽しみのために物語を書くのであって、ほかの目的をもって小説を書こうとする者がいれば、それが大ばか者だ』と。

ストリックランドも書き上げた解放感だけを感じて、人生の目的を果たして満足して死んでいったという解釈が一般的です。

しかしわたしはすこし違った感想をもっています。

ストリックランドは大自然とか世界にインスパイアされて傑作を書き上げたけれど、彼の傑作がなくなっても、傑作を生みだした母体である自然や人間世界はまだ残っています。

オリジナルがある限り、他の誰かの手で、傑作はまた再現されることでしょう。

他の人がその人の人生の中で、悩み苦しむ中から、自然や世界から何かを得て、彼なりの傑作をまた描き上げるだろうと思います。

ストリックランドは「すばらしいものは自分の絵ではなく、オリジナルである世界そのものだ」と考えていたのではないでしょうか。

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傑作が燃えて灰になっても、すばらしい世界は今も目の前にある

オリジナルが残っているから、絵の方は燃やしてもよかったんじゃないのかな、というのがわたしの感想です。

絵は世界を鏡に映しただけに過ぎません。

作品は自然の偉大さを映し出したに過ぎず、作品が燃えてなくなっても、オリジナルの世界がある限り、何ら損なわれるものはない、ってことではないでしょうか。

だから『画家にあるのは描き上げた解放感だけ。自分の楽しみのために絵を描くのであって、ほかの目的をもって絵を描こうとする者がいれば、それが大ばか者だ』って話になるんじゃないかと思います。

ストリックランドの絵は、いつかどこかでまた再現されのです。他の誰かの手によって。

だってすばらしい世界は今も目の前にあるのだから。

私的個人的・世界十大小説。読書家が選ぶ死ぬまでに読むべきおすすめの本

手塚治虫先生の『ブラック・ジャック』にも似たようなキャラクターが出てきます。※「絵が死んでいる

※※他のサマセット・モーム作品についての書評も書いています。よかったらこちらもご覧ください。

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『月と六ペンス』。傑作が燃えて灰になっても、すばらしい世界は今も目の前にある。ストリックランドは大自然とか世界にインスパイアされて傑作を書き上げたけれど、彼の傑作がなくなっても、傑作を生みだした母体である自然や世界は目の前にまだ残っています。何ら損なわれたものはないのです。傑作は他の誰かの手でいつかまた再現されます。
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