女ごころの謎を文豪の作品をネタに研究する。
このページでは文豪サマセット・モーム『女ごころ』について解説しています。
かたや、将来、知事になろうという老いた紳士との裕福で危険のない未来。
かたや、いつ捨てられるかわからない同年代のチャラ男との、贅沢とは無縁の危険な逃避行。
あなたならどちらを選びますか?
女ごころは、どっちを選ぶでしょうか?
筆者自身によるYouTube読み聞かせ版はこちらをご覧ください。
このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。
「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」
「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」
※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。
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【書評】『女ごころ』主要キャラクターは4人。読みやすい
主役はメアリー・パントン。30歳。8年間結婚した夫を失った未亡人です。
メアリーは美人で、ゆくゆくはインド・ベンガルの知事になろうというエドガー・スウィフトに求婚されています。
エドガーは20歳以上年上で、父親のような目で、メアリーを見つめています。
しかし美女メアリーには特殊な性癖がありました。
格下の「地位のない貧しい男」に自分をあたえて、自分を崇拝してもらいたいという「お姫様願望」です。
一定数の女性が、この性癖をもっているのではないでしょうか?
その性癖でメアリーは、カールというオーストリア人のバイオリン弾きと肉体関係を持ちます。
寂しそうでみじめに見えた若者を、少しの間でも幸福にしてあげたいと思ったわけで、まさに「お姫様願望」が満たされる関係でした。
カールは亡命してきた下手くそな音楽家です。お金どころか国籍もありません。
この関係はメアリーの一方的なお姫様願望の気まぐれだったのですが、カールは本気になってしまいます。
孤独で不安定なカールはしあわせに飢えていたのです。それが悲劇を生みます。
夢に見たこともないものをメアリーはあたえ、カールの世界は変わってしまいました。一度知ってしまったら、もう元には戻れません。
「メアリーを失ったら、人生なんてこれ以上生きていく価値はない」
そう思いつめたカールは、メアリーの気まぐれに翻弄されて、自殺してしまいます。まさか相手が死ぬと思っていなかったメアリーは、死体の処理に困ってしまいました。
そこでチャラ男のロウリー・フリントに相談するのです。ロウリーはメアリーに求婚していたのだが、あまりのチャラさに一度は拒否されていたのでした。
はい。死体処理という秘密の行為を一緒にやった男女はどうなるでしょうか? だいたい想像つきますよね?
裕福で危険のない生活か。贅沢とは無縁のデンジャラスな逃避行か。女ごころはどちらを選ぶ?
女ざかりの美女が、20歳も年上の厳格な公務員に嫁ぐか、危険な匂いのする秘密を共有した同年代のチャラ男と一緒に生きていくか?
女ごころってやつは、秘密を共有した危険な男を選ぶのです。『女ごころ』はそういうお話しです。
かたやインドで知事になろうという老いたエドガーとの裕福で危険のない未来。かたやいつ捨てられるかわからない若いロウリーとの贅沢とは無縁の危険な逃避行。
あなたならどちらを選びますか?
現代の日本人女性は、エドガーを選ぶ人も多いんじゃないかな、と思います。
別にそれが悪いとは思いませんが、現代日本女性の野性的な生命力が衰えていることが、エドガーを選ぶ人が多い理由ではないかと思います。
ある一定数の、生命力にあふれている女性が、ロウリーを選んでしまう気持ちが、わたしにはわかる気がします。わたしは男性ですが、女だったら間違いなくロウリーを選ぶでしょう。
乗るかそるかやってみる。それでこそ人生です。
どんなに高名で地位があっても女にはモテない。いい女は若い男に持っていかれてしまう。男性側から見るとそういう作品でもあります。
だってしょうがないじゃない。でもそれが「女ごころ」なんだもん。
「女ごころ」はそんなモームの茶目っ気あふれる作品でした。
このブログの著者が執筆した純文学小説です。
「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」
「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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物語のあらすじを述べることについての私の考えはこちらをご覧ください。

私は反あらすじ派です。作品のあらすじ、主題はあんがい単純なものです。要約すればたった数行で作者の言いたかった趣旨は尽きてしまいます。世の中にはたくさんの物語がありますが、主役のキャラクター、ストーリーは違っても、要約した趣旨は同じようなものだったりします。
たいていの物語は、主人公が何かを追いかけるか、何かから逃げる話しですよね? 生まれ、よろこび、苦しみ、死んでいく話のはずです。あらすじは短くすればするほど、どの物語も同じものになってしまいます。だったら何のためにたくさんの物語があるのでしょうか。
あらすじや要約した主題からは何も生まれません。観念的な言葉で語らず、血の通った物語にしたことで、作品は生命を得て、主題以上のものになるのです。
作品のあらすじを知って、それで読んだ気にならないでください。作品の命はそこにはないのです。
人間描写のおもしろさ、つまり小説力があれば、どんなあらすじだって面白く書けるし、それがなければ、どんなあらすじだってつまらない作品にしかなりません。
しかしあらすじ(全体地図)を知った上で、自分がどのあたりにいるのか(現在位置)を確認しつつ読書することを私はオススメしています。
作品のあらすじや主題の紹介は、そのように活用してください。

人生には『仕事を辞める』という選択肢があります。

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私はオーディオブックは究極の文章上達術だと思っています。
※※他のサマセット・モーム作品についての書評も書いています。よかったらこちらもご覧ください。








