ドラクエ的な人生

さすがワセジョ。頭いいのね! アホなのはオレのほうでした。

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光GENJIと光源氏を間違えた話し。

はるか昔、大学時代のことです。わたしは早稲田大学文学部の学生でした。

教室で女子学生たちが話しをしていました。

「光GENJI(ひかるゲンジ)って素敵ねえ」

わたしはモテない君だったので、女子学生たちの話しの輪にはいれてもらえません。

日本昔ばなし『赤神と黒神』。勉強ができるよりも、出世するよりも、女にモテる方がいい。

勉強ができるよりも、異性にモテる方が、よっぽど人生を幸せにする

女にモテるただひとつの方法

さびしく会話の輪の外で本を読んでいる振りをしていました。

〈なんというか……嘆かわしい。ジャニタレなんかにうつつを抜かして。なんのためにワセダに入ったんだ? あんなニコニコしながらローラースケートに乗って踊りながら歌っている奴らの何がいいんだ?〉

直接文句は言いませんでしたが、アホな奴らめ、と思っていました。こんな低レベルなやつらと同じ大学だなんて恥ずかしいわ!!!

ピラミッドは墓! 吉村作治先生の「ピラミッド神社説」は大間違い!

ところがよくよく(こっそり)女子学生の話しを聞いていると、どうやらジャニーズの光GENJIの話しをしているようではありませんでした。

『源氏物語』の光源氏の話しをしていたのです。しかも紫式部の原書を読んでいるようでした。

いや、さすがワセジョ(早稲田大学の女子学生)。偏差値高いのね。まいりました。

アホなのはわたしのほうでした。

国文学の女王・紫式部が源氏物語を執筆したという石山寺

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桂歌丸と喜多川歌麿を聞き間違えた話し

また、別の場面でのことです。

教室で「utamaroh」の話しをしている人たちがいました。わたしはテレビ『笑点の話しをしているものとばかり思いました。桂歌丸(utamaru)の話しかと思ったのです。

笑点か……レベルが低いな。このアカデミックな世界で、お笑いの話しをしているなんて。

文学部らしくドストエフスキーとか、カミュとか、コンラッドとか、モームとか、ヘッセとか、サドとか、スタンダールとか、ダンテとか、ミルトンとか、ゲーテとか、メルヴィルとか、ソローとか、ケルアックとか、トルストイとか、司馬遼太郎とかの話しをすればいいのに……。

なにが歌丸だよ。嘆かわしい。おまえらレベルが低いんだっつーの!!

ところがよくよく聞いてみると会話は「浮世絵」の話しでした。喜多川歌麿(utamaro)の話しをしていたのです。会話は歌麿から写楽、広重、北斎、ゴッホへと展開し、わたしなんかが及びもつかないような高尚な話題へと展開していきました。

いや、まいった。さすがワセジョ、レベルが高いのね(以下同文……)

葛飾北斎。神奈川沖浪裏の元ネタ。波の伊八

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さすがワセジョ。アホなのはオレの方でした。

すいません。アホなのは私のほうでした。下衆の勘繰り、というやつでしょうか。自分のレベルで他人をみてはいけませんね。

周囲の人たちの方がはるかにレベルが高い話しをしていたのでした。アホかと思って申し訳ございません! アホなのは私のほうでした!!

あれから何年もたちますが、同じワセダで学んだ彼女たちがいまでも高尚な話題をネタにしていればいいな、と思っています。

サラリーマン社会にもまれ、牙と爪をうしない、カドがとれて丸くなって、すっかり中年太りになって、チャラチャラした若い芸能人や韓流スター、お笑いタレントの離婚とか不倫とかの話ししかできないようなレベルの低い大人になっていなければいいな、と思います。

かつての私がそうだったように。

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