イロハです。
大慌てで荷物を取りに急ぎます。
まさか自分のパートナーが救急スノーモービルで運ばれることになるなんて。
驚いて、気が動転していました。
ハルトの顔面は蒼白で、全身で震えており、異常事態だとすぐにわかります。
ドクターの言う通り、とにかく病院に行くしかないのですが、荷物を置いて行くわけにはいきません。
スキー場へは電車で行きました。ハルトはレンタルスキーで、私は自前のスノボを持参していました。
着替えなどの荷物はコインロッカーに預けてありました。
それを取りに戻ります。まずはハルトのレンタルスキーを返却しなくては。
気は急いているのですが、雪に足をとられてなかなか前に進みません。
なんとかスキーを返却し、どうにかこうにか自分とハルトの荷物を両肩に背負います。
ずっしりと重みがのしかかりますが、それどころではありません。
ただ。。。これ以上、荷物を持つのは無理でした。
私は即断し、その場でスノーボードを捨てました。
墓標のように立っている愛用のスノボにお別れの最後の一瞥をくれて、ハルトの元へと急ぎます。
それが、、、私にとって最後のスノーボードとなりました。
しかし、医務室にもうハルトはいなくなっていました。
『今さっき、病院の方へ向かいました!』と言われ、タクシーで病院へと向かいます。
案内された診察室のカーテンの向こうではハルトの唸り声とドクターの『力を抜いて!』の声。関節をはめようとしているようでした。何度もそういったやり取りが繰り返されていたのですが、『イテテテ―ッ!!!』の悲鳴にこちらも気が気ではありませんでした。結局、麻酔で眠らせて関節を元の位置に戻したようです。
この状態で家に帰れる訳もなく、病院のタウンページで民宿の空きを探し、朦朧とするハルトを抱きかかえ、タクシーで宿泊先に移動します。
途中、食料を購入しようとコンビニに寄り、ハルトに何か食べたいものはあるかと聞いてみますが…何にもいらないと虫の息。
民宿に到着すると女将さんが出迎えてくれました。冷や汗をかきながら眠るハルトを横に、コンビニで買った夕食を食べながら、スキーなどに誘わなければよかったと本当に後悔しながら寒い一晩を過ごしたことを覚えています。
翌日、民宿を立ち去るときに、女将さんが『スキー事故割引』で宿代を割り引いてくれました。スキー場近辺の民宿に泊まる人たちの中には、ハルトのような怪我人もたくさんいるようです。楽しみで自分の意志で泊っているわけではなく、もう動けなくてしかたがないから泊まっているという人たちが。
民宿というより野戦病院といった方がいいような日も年に数回はあるようでした。
こうして私イロハは、スノーボードをやめることになってしまいました。
しかし今でも出来ると思います。なんせ自転車みたいなものですから、体が覚えているでしょう。
でも、やりません。スキー、スノーボードは本当に危険なスポーツです。
オリンピックでもスノーボードをしている選手は皆、若者です。あれは体が柔らかくて、多少の衝撃にも耐えられる世代でしかできないスポーツ! 柳の枝は折れません。
年をとると体が硬くなり、衝撃を直に体に受けます。
そう。雪は固いのです!
もう、私がやるとしたらハルト以上の大けがか死を覚悟せねばならん代物です( ;∀;)
だからこそ、できる時代に挑戦しておいて良かったとも思えます。
思い起こせば、滑走のスピード感や頬にあたる雪。斜面を削るエッジ音やスピーカーからゲレンデに流れる流行の音楽。
若かりし頃の良い思い出です。
出会いに感謝!環境に感謝‼
これからチャレンジされる方は十分にお気をつけ下さいませ!
でも、間違いなく楽しいですよ~(^^♪