『マクロス』アイドルに勝ったおばさん

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書籍『市民ランナーという走り方(マラソン・サブスリー。グランドスラム養成講座)』。『通勤自転車からはじめるロードバイク生活』。『バックパッカー・スタイル』『海の向こうから吹いてくる風』。『帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル』『読書家が選ぶ死ぬまでに読むべき名作文学 私的世界十大小説』Amazonキンドル書籍にて発売中です。

初代『超時空要塞マクロス』アイドルに勝ったおばさん

ネットサーフィンをしていたら「アイドルに勝ったオバサン」というコンテンツが出てきて、なつかしく視聴しました。これはリン・ミンメイに恋で勝った早瀬未沙のことですね。初代マクロスのことです。

私が加入している動画サブスクリプションで、初代マクロス・テレビ版を見られたので、見始めたら、なつかしいやら、おもしろいやらで食い入るように見入ってしまいました。

そして今の目線で、当時は気づかなかったいろいろなことに気づいたので、それを書いているのがこのページです。

ワレラ、ロリー、コンダ、三人あわせて「我らロリコンだ」

私の嫁は韓流ドラマ好きです。その関係で視聴した『愛の不時着』。南北朝鮮の国境に分断された男女の愛がメインテーマのドラマです。そこも面白いのですが、もうひとつ、私がおもしろいと感じたドラマがあります。

北朝鮮の貧しくて軍隊のことしか知らないような兵士が、スパイとして韓国に来て、敵と教え込まれていた韓国のことをだんだん好きになっていくというのが、『愛の不時着』のもうひとつ大きなドラマとして描かれています。なんとなく南のほうが北よりいいよね、という感じで物語は展開します。そこを面白いと感じたのですが、同時に「なんかどこかで見たことがあるなあ」とも思っていました。いわゆるデジャブです。この感覚、前に味わったことがあるなあ、とずっと感じていたのです。なんだったのでしょうか?

それを、初代マクロスを見ていて、やっとわかりました。ああ、これだったのか、と。

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旅人が気に入った場所を「第二の故郷のような気がする」と言ったりしますが、私にとってそれは韓国ソウルです。帰国子女として人格形成期をソウルで過ごした私は、自分を運命づけた数々の出来事と韓国ソウルを切り離して考えることができません。無関係になれないのならば、いっそ真正面から取り組んでやれ、と思ったのが本書を出版する動機です。私の第二の故郷、韓国ソウルに対する感情は単純に好きというだけではありません。だからといって嫌いというわけでもなく……たとえて言えば「無視したいけど、無視できない気になる女」みたいな感情を韓国にはもっています。

【本書の内容】
●ソウル日本人学校の学力レベルと卒業生の進路。韓国語習得
●関東大震災直後の朝鮮人虐殺事件
●僕は在日韓国人です。ナヌン・キョッポニダ。生涯忘れられない言葉
●日本人にとって韓国語はどれほど習得しやすい言語か
●『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』南北統一・新韓国は核ミサイルを手放すだろうか?
●韓国人が日本を邪魔だと思うのは地政学上、ある程度やむをえないと理解してあげる
●日本海も東海もダメ。あたりさわりのない海の名前を提案すればいいじゃないか
●天皇制にこそ、ウリジナルを主張すればいいのに
●もしも韓国に妹がいるならオッパと呼んでほしい
●「失われた時を求めて」プルースト効果を感じる地上唯一の場所
●「トウガラシ実存主義」国籍にとらわれず、人間の歌を歌え

韓国がえりの帰国子女だからこそ書けた「ほかの人には書けないこと」が本書にはたくさん書いてあります。私の韓国に対する思いは、たとえていえば「面倒見のよすぎる親を煙たく思う子供の心境」に近いものがあります。感謝はしているんだけどあまり近づきたくない。愛情はあるけど好きじゃないというような、複雑な思いを描くのです。

「近くて遠い国」ではなく「近くて近い国」韓国ソウルを、ソウル日本人学校出身の帰国子女が語り尽くします。

帰国子女は、第二の故郷に対してどのような心の決着をつけたのでしょうか。最後にどんな人生観にたどり着いたのでしょうか。

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マクロスにスパイとして潜入する、ワレラ、ロリー、コンダ。三人あわせて「我らロリコンだ」の例の三人組です。この軍隊しか知らない三人組がマクロス内にスパイとして潜入し、おいしい食事やおもしろい映画や自由な市民生活を知って、だんだんプロトカルチャーのことを好きになるというくだりと、『愛の不時着』の北朝鮮兵士たちの描き方がそっくりなのです。まさか真似したわけではないと思いますが、ほんとうにそっくりです。

おのれのデジャブの正体がわかると同時に、初代マクロスはほんとうに偉大な作品だったのだなあ、とあらためて感じました。愛の不時着2019年から見て初代マクロス1982年は37年も時代を先取りしています。

デカルチャー! ロボットアニメのくせに、アイドルアニメの元祖

もちろん、初代ガンダムがそうであったように、後続作品がつぎつぎと現れたってことは、それだけインスパイアされるだけの何ががあるってことに他なりません。とっくに偉大な作品であることは証明済みですが。

とりわけリン・ミンメイは劇中アイドルの元祖だといわれています。つまりロボットアニメのくせに『ラブライブ!』とか『アイドルマスター』とかアイドル歌手アニメの元祖でもあるわけですね。

中国女性をヒロインにしたのも、慧眼だったと思います。中国が世界第二位の経済大国になって以降、ハリウッド映画などでも中国系俳優が活躍する場面がよく見られるようになりました。中国が世界第二位の経済大国になったのは2010年です。初代マクロスは18年もヒロインの人種を先取りしていたと言えるでしょう。よくリンさんをヒロインにしようと思ったな! しかもアイドルをおばさんの引き立て役にしてしまうとは、元祖にして最高峰ではないでしょうか。しかも落ち目になった後のアイドルまで描いてしまうとは……斬新すぎる。

異星人との結婚を描いたマックスとミリアのエピソードも忘れてはなりません。この手のアニメでは主人公メカだけが別彩色というのがお約束ですが、マクロスでは脇役の天才マックスだけが青い彩色という異色さです。主役のメカは他の人と同じ彩色なのに……。

このマックスとミリアがいなければ、たとえば「ダイヤモンドクレバス」をバックにしたミシェル・クランの別れの名場面もなかったというわけです。菅野よう子さんこそマックス以上の天才かもw。マクロスF(フロンティア)の問題点は、はっきりとセッ●スの雰囲気があった早瀬未沙に対して、ダブルアイドルのどちらとも大人の関係の匂いがまったくしないところでしょうか。初代マクロスは、大人の関係の匂わせがよかったと思うんですよ。

大発明! ピンポイントバリア。ダイダロスアタック。そしてミンメイ・アタック

マクロスは、バルキリーという可変戦闘機が有名です。これも大発明だと思います。後のゼータガンダムなどに影響を与えています。アーマード・バルキリーを見た時には、これはフルアーマー・ダブルゼータじゃないかと思いました。

ただ、有名なそれだけではありません。映画『愛・おぼえていますか』(原画スタッフの最初に庵野秀明の名前が出てきます。メカニックデザインには出渕裕さんも)の印象が強いため、映画ではカットされているので忘れていたのですが、ピンポイントバリアやダイダロスアタックにはあらためて感動しました。テレビゲームのようなピンポイントバリアや、その発展形であるダイダロスアタックは、ほんとうにすごい発明です。そして映画でもカットされなかった人類最大最強兵器、ミンメイアタック。女性が軍人に勝つというマクロスのドラマはロシア・ウクライナ戦争でぜひとも再現されないかと夢想しています。

ミンメイも、ここから後年シェリルランカが生まれるのかと、母親を見るような目で見ることができました。企画段階でよく練られたアイディアです。さすがシリーズものを生み出した元祖だけあって、圧倒的におもしろかったです。夢中で見てしまいました。「我らロリコンだ」なんて自虐的にいいつつ、最後は大人の女性が勝つわけなんで、そこは制作者の良心が見えますね。

ちなみに私もミンメイよりも早瀬未沙のほうが好きでした。

大阪関西万博では、ガンダムばかりが有名ですが、マクロスシリーズの父といっていい河森正治さんが「超時空シアター いのちをめぐる冒険」というパビリオンをプロデュースされています。万博のプロデューサーといえば手塚治虫クラスの大物がやる仕事です。河森さんの凄さを知りたければ、やっぱり初代マクロスを見るのがいちばんいいと思います。

いろんなものが、ここからはじまったのだなあ、ということが、大人になった今、わかるのです。

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(本文より)

カプチーノを淹れよう。きみが待っているから。
カプチーノを淹れよう。明るい陽差しの中、きみが微笑むから。
ぼくの人生のスケッチは、まだ未完成だけど。
裏の畑の麦の穂は、まだまだ蒼いままだけど。
大地に立っているこの存在を、実感していたいんだ。
カプチーノを淹れよう。きみとぼくのために。
カプチーノを淹れよう。きみの巻き毛の黒髪が四月の風に揺れるから。

「条件は変えられるけど、人は変えられない。また再び誰かを好きになるかも知れないけれど、同じ人ではないわけだよね。
前の人の短所を次の人の長所で埋めたって、前の人の長所を次の人はきっと持ちあわせてはいない。結局は違う場所に歪みがでてきて食い違う。だから人はかけがえがないんだ」

金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。
夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。
夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。

あの北の寒い漁港で、彼はいつも思っていた。この不幸な家族に立脚して人生を切り開いてゆくのではなくて、自分という素材としてのベストな幸福を掴もう、と――だけど、そういうものから切り離された自分なんてものはありえないのだ。そのことが痛いほどよくわかった。

あの人がいたからおれがいたのだ。それを否定することはできない。

人はそんなに違っているわけじゃない。誰もが似たりよったりだ。それなのに人はかけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。

むしろ、こういうべきだった。

その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と。

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