- 外国人観光客のほどんどはエアポートトレインをつかう
- 独島はわが領土! ってほんとうか?
- 「なんでも我が国発祥」と主張するウリナラ人
- ウソはウソだと見抜ける。ホームタウンディシジョン(自国に有利な判決)はしない
- 議論のルール。文献第一主義。古い文献のほうが勝ち
- 両国の主張。韓国編。独島はわが領土
- 両国の主張。日本編。竹島は島根県の一部
- 領土の実効支配。フォークランド紛争が参考になるのではないか。
- 実効支配は何よりも強力。住民投票も韓国に有利
- 竹島が韓国領になると、日本にどんな不利益があるのか?
- ウクライナ戦争。東部ドンバス地域の帰属は、どう決着がつくのか。
- 大切なのは一方的に日本側の主張だけを読むのではなく、韓国側の主張もちゃんと読むこと
外国人観光客のほどんどはエアポートトレインをつかう
韓国旅行に行ってきました。仁川空港からエアポートトレインに乗ってソウルへと向かいます。先進国にはたいてい空港特急が走っています。上海なんかはリニアモーターカーが走っています。そうでない国の場合、タクシーが一般的です。
私の経験からいうと、使うべき優先順位は、エアポートトレイン、エアポートリムジン、最後にタクシーです。発展途上国はタクシーしかダウンタウンに向かう手段がない場合が多く、このタクシーはもっともボッタくりである場合が多いので注意が必要です。その国を訪問したばかりで、まだその国の相場を知らない無知な状態で、メーターを使わないタクシーに言い値を払わされてボッタくられてしまうのです。
白人を含め、たいていの観光客はこの優先順位で空港から市街地に向かうのではないでしょうか。つまりほとんどの訪問外国客はエアポートトレインを使うことになるはずです。
独島はわが領土! ってほんとうか?
外国人観光客の大半が使うはずの、仁川空港からソウル駅に向かうエアポートトレインの中では「独島は韓国領である」というプロパガンダ映像を流していました。トータルでおそらく三回ぐらい見たと思います。何度も繰り返し流しているんですね。広告依頼主は韓国政府かな?
私はソウル日本人学校出身の帰国子女です。韓国のことは第二の故郷だと思っていますが、しかし生涯ただの一度も韓国人に生まれてくればよかった、と思ったことはありません。韓国よりも日本のほうが圧倒的に好きですし、日本人でよかったと思っています。
しかし、そんな私でも、こうもあからさまに、エアポートトレインの中で何回も「独島はわが領土」と主張されると、すくなくとも「まったくのでたらめではなく、ある程度、根拠のある主張なんだろうな」と思えてくるのです。
そのプロパガンダ映像では、独島のことを示した古地図を映し出し「日本は知っていてこの事実を隠している」と主張していました。英語の字幕で内容は理解できました。
「なんでも我が国発祥」と主張するウリナラ人
「なんでも我が国発祥」と主張するウリナラ人のいうことをそのまま鵜吞みにするほどわたしはアホではありませんが、しかし、まったくの嘘デタラメではないんだな、と思わざるをえませんでした。ちゃんとしたエアポートトレインの中であそこまで堂々とウソ文書をつかって主張するはずがない……私以外の韓国を訪れる旅人の多くは同じ感想をもつはずだと思います。
私のメイン空港は成田空港です。そして成田へは毎回エアポートトレインをつかっています。しかし「竹島は日本の領土」だなんて映像、プロパガンダは一度も見たことがありません。
この差は何なんでしょうか。それが政府に統制されていない、自由な国、日本のいいところなのでしょうが、日韓両国の空港特急を比べてみると、韓国はあれだけ堂々と「独島はわが領土」と主張しているのに、日本が何も主張していないのは「主張の根拠に自信がないからではないか?」という思いが兆してくるのを止められません。日本人びいきの私ですらそうなのですから、外国人ならなおさらでしょう。「韓国の主張の方が正しい」と思われてもしかたがないと思います。
ウソはウソだと見抜ける。ホームタウンディシジョン(自国に有利な判決)はしない
外務省のホームページを見ても「竹島は日本の領土だ」と断言しているものの、その根拠については何も書いてありませんでした。内閣官房の領土・主権対策企画調整室のホームページには詳しく韓国の主張を反駁していました。
ここはいっちょ、国際司法裁判所の裁判官になった気持ちで、両国の主張を見てみようではありませんか。わたしは古文書は読めませんし、一次資料にふれる機会もないので、陪審員のように両者の意見を聞いて判決を下すだけですが、陪審員がそうであるようにウソはウソだと見抜けるはずです。
わたしは日本人で、日本語で書かれた資料を読むことになります。韓国側の主張はハングル文字で書かれていて、韓国人ブロガーが書いているんだろうから、ここでは日本人の私が「なるべく韓国側に立って」日本の主張を反駁するかたちで、評価してみたいと思います。そのぐらいでないとホームタウンディシジョン(自国に有利な判決)になってしまうと思いますので。
議論のルール。文献第一主義。古い文献のほうが勝ち
議論のルールですが、文献第一主義で、古い文献のほうがひとまず勝ちということにしたいと思います。そして最新の状況も考慮する必要があります。もっとも古い記録と、もっとも新しい判断だけを考えましょう。それ以外は考慮してもしかたがありません。
日韓の、お互いの主張をひととおり読んでみたのですが、さすがに両国の主張がこみいっているだけあって、それほど簡潔には説明できないようです。
やはり一次資料をあたれない以上、個人的な結論は出せません。あくまでここで提示できるのは「印象」だけです。ただし「陪審員のようにウソはウソとして見抜けるはずだ」原則にしたがって、印象だけは書くつもりです。そうじゃなければブログを書く意味がありません。
両国の主張。韓国編。独島はわが領土
『世宗実録地理志』(1454年)
この資料は朝鮮王朝時代に編纂された地理書で、鬱陵島と「于山島(ウサンド)」に言及しています。韓国の主張では、この「于山島」が現在の独島に相当するとされています。→ここで于山島ではなく、独島、竹島と書いてあれば決定打っぽかったですが、謎の島になっています。日本側はこの島を竹島ではないと主張しています。じゃあ「于山島」ってどの島なのよ? 日本側では于山島は実存しない島だと主張していますが、いくらなんでもそれは無理があるんじゃないの? 書いてある以上、どこかの島なんでしょう。全部空想ならともかく、一島だけ空想というのはおかしいでしょう。
『大韓帝国勅令第41号』(1900年)
1900年に大韓帝国(朝鮮の近代国家)の政府が発布した勅令で、鬱陵島を「鬱島郡」と改め、その行政管轄下に「石島」(韓国ではこれが独島であると解釈されている)を含むことが明示されています。韓国は、この勅令を根拠に、独島が大韓帝国の正式な行政区画の一部であったと主張しています。
→あいかわらず独島、竹島ではなく石島なのがツッコミどころですね。しかし竹島をみればわかりますが、竹なんか一切生えていない石の島です。石島というのはそのまんまのネーミングです。私だったらあの島を竹島ではなく石島と名付けてると思います。
両国の主張。日本編。竹島は島根県の一部
日本は竹島を自国の領土と主張し、1905年に島を正式に日本の領土に編入したとしています。日本政府は、島は歴史的に無主地であり、日本が正式に国際法に基づいて領有権を確立したと述べています。
→国内での主張が国際的に有効だというのならば、『大韓帝国勅令第41号』が1900年ですから韓国側の勝ちではないでしょうか。
日本側の主張が通るとすれば、日韓併合(1910-1945)にともなって、日本海上の全部の島が日本のものになった後、半島そのものや鬱陵島などは返還したが、竹島は返還していないという理屈なら通りそうですが……
領土の実効支配。フォークランド紛争が参考になるのではないか。
1982年にフォークランド紛争というのがありました。アルゼンチン近くのフォークランド諸島はアルゼンチンが自国領だと主張していたのですが、1833年にイギリスによって占領され実効支配が続きました。アルゼンチンの返還要求は拒否されたので、武力で侵攻したら、イギリスに反撃されたというものです。武力衝突はイギリスが勝ち、今もイギリスの実効支配がつづいています。イギリスの主張の源泉は、住民がアルゼンチンではなく、イギリスであることを望んでいる、というところにあります。
さて、独島ですが、韓国が実効支配していますし、現に韓国人が住み着いていますから住民投票しても韓国領ということになるでしょう。
実効支配は何よりも強力。住民投票も韓国に有利
フォークランド紛争に見るように、実効支配というのは何よりも強力です。
韓国は独島を自国領土と主張し、1954年以降、韓国の警察が駐在し、実効支配を行っています。また、独島には韓国の住民が住んでおり、観光地としてのインフラも整備されています。
この一点で、将来どうせ独島は韓国領土になるのではないかと私は予想しています。
敗戦国日本は紛争をおそれてビビッて手を出さなかった島に、韓国は勇気をもって手を出したわけですからね。
ロシア・ウクライナ戦争を思い出してください。よほど自国領だという確信がなければ軍事侵攻などできるものではありません。プーチンにはその確信があるのです。
日本の裁判の判決に、時効というものがあります。時効というのは「昔のことをあれこれ言ってもしかたがない。現状を優先しようよ」という知恵のことです。
こうしてみると、あらゆるベクトルが韓国に有利、日本に不利なのではないでしょうか。
竹島が韓国領になると、日本にどんな不利益があるのか?
このように、日韓の主張をなるべくニュートラルに吟味した結果、あくまでも印象ですが、韓国側の主張の方が理があるように感じました。文書の真偽などは私には確かめられませんが、直感的に韓国の主張の方が強いという気がしました。(本当のことはわかりません)
日本側の主張は、韓国の捏造疑惑を取り上げているのが多いのです。たしかにウリジナルの国に捏造はつきものですが……しかしどうも韓国が主張し、日本が捏造だと反論しているパターンが多いと感じました。主張するのは古文書を探し出してきてたいへんですが、捏造だというのは簡単です。どれだけ捏造を主張しても、センターラインまで押し戻しただけで、相手の領土まで攻め込んだことにはなりません。
ところで日本の領土から竹島がなくなると、どんな不利益があるのでしょうか? それを知らないとこの問題の重要さがわかりません。
調べたところ、排他的経済水域(EEZ)が縮小することによる漁業権、海底資源の損失が実質的な損失のようです。そのほかに、一度「日本領だ」と言った手前、政府や島根県のメンツがつぶされることや、尖閣諸島の解決にも竹島方式が採用されるなどの二次被害が想像されるようですね。
ウクライナ戦争。東部ドンバス地域の帰属は、どう決着がつくのか。
直近の領土問題。ウクライナ戦争では、どう決着がつくのでしょうか?
ロシアはウクライナ東部地域を実効支配しています。もしこの戦争が、紛争地域は「実効支配したもののものだ」という決着を見るのならば、独島は韓国のものということになるでしょう。
もしも竹島が日本の領土だというのならば、すくなくともロシアのウクライナ東部支配は認められないという国際的な判断があって後のことでしょう。そのような規範がなければ、日本側に有利に解決することはありますまい。
大切なのは一方的に日本側の主張だけを読むのではなく、韓国側の主張もちゃんと読むこと
正直にいいまして、文献の正当性なんて個人では確認できません。だから、それを捏造だといわれたら、判断なんてくだせません。
だから識者の意見を聞くしかないわけです。そして韓国語を読めないことから、どうしたって日本語の意見ばかりを聞くことになり、自国に有利な結論(ホームタウンディシジョン)を下してしまうことになるのです。となると、日本人はみんな竹島を日本領だと主張し、韓国人は独島を韓国領だと主張し、永遠に話はかみ合いません。
でもホームタウンディシジョンというのは思考停止と同じことです。すくなくとも公平に判断したとはいえますまい。
だからなるべく韓国側の主張を聞いてみようと胸襟をひらいてみました。すると向こうの主張にも一理あるとわかりました、っていうか、どちらかというと韓国側の主張の方が理が多いとわたしは感じました。
ただ、あくまでも感じただけです。印象にすぎません。ただ印象とはいっても、アメリカの裁判で、ろくに法律も知らない市井の陪審員が、犯人の罪をほとんど生活感覚(直感)で判決を下すようにしていいのならば、韓国側のほうに理が多いと感じました。
みなさんはどう感じたでしょうか?
わたしがどうこう言ってもはじまらない問題ですし、大切なのは一方的に日本側の主張だけを読むのではなく、向こうの主張もちゃんと読むことです。
宇宙船地球号とよくいいます。
竹島・独島問題は、たとえていえば、宇宙船の中の限られた水について、宇宙飛行士Aと宇宙飛行士Bがたがいに「オレの水だ」と争っているようなものです。この場合の最高の解決方法は「AとBで半分づつわけあう」ということです。独島竹島問題もそのように対応できないものでしょうか?
たとえば韓国と日本の合弁会社、むかしの東インド会社のような会社をつくって、その一企業に管理を任せるとか。日韓がそれぞれ株主なので株式比率に応じて利益を分配すればいいのではないでしょうか。
いずれにしても両国は仲良くしてもらいたいものです。
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旅人が気に入った場所を「第二の故郷のような気がする」と言ったりしますが、私にとってそれは韓国ソウルです。帰国子女として人格形成期をソウルで過ごした私は、自分を運命づけた数々の出来事と韓国ソウルを切り離して考えることができません。無関係になれないのならば、いっそ真正面から取り組んでやれ、と思ったのが本書を出版する動機です。私の第二の故郷、韓国ソウルに対する感情は単純に好きというだけではありません。だからといって嫌いというわけでもなく……たとえて言えば「無視したいけど、無視できない気になる女」みたいな感情を韓国にはもっています。
【本書の内容】
●ソウル日本人学校の学力レベルと卒業生の進路。韓国語習得
●関東大震災直後の朝鮮人虐殺事件
●僕は在日韓国人です。ナヌン・キョッポニダ。生涯忘れられない言葉
●日本人にとって韓国語はどれほど習得しやすい言語か
●『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』南北統一・新韓国は核ミサイルを手放すだろうか?
●韓国人が日本を邪魔だと思うのは地政学上、ある程度やむをえないと理解してあげる
●日本海も東海もダメ。あたりさわりのない海の名前を提案すればいいじゃないか
●天皇制にこそ、ウリジナルを主張すればいいのに
●もしも韓国に妹がいるならオッパと呼んでほしい
●「失われた時を求めて」プルースト効果を感じる地上唯一の場所
●「トウガラシ実存主義」国籍にとらわれず、人間の歌を歌え
韓国がえりの帰国子女だからこそ書けた「ほかの人には書けないこと」が本書にはたくさん書いてあります。私の韓国に対する思いは、たとえていえば「面倒見のよすぎる親を煙たく思う子供の心境」に近いものがあります。感謝はしているんだけどあまり近づきたくない。愛情はあるけど好きじゃないというような、複雑な思いを描くのです。
「近くて遠い国」ではなく「近くて近い国」韓国ソウルを、ソウル日本人学校出身の帰国子女が語り尽くします。
帰国子女は、第二の故郷に対してどのような心の決着をつけたのでしょうか。最後にどんな人生観にたどり着いたのでしょうか。
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