辛い韓国料理を食べて、野生動物がビックリして飛び上がる動画
YouTubeの動画のリールを眺めていたら、視聴が止められなくなってしまった。
わたしがハマったのは、プルタクという韓国のトウガラシで真っ赤なラーメンを屋外に放置して、何も知らない野生動物がそれを食べて、飛び上がってヒーヒーするのを隠し撮りしているというリールである。私はこのプルタクを食べて痔になったことがある。
辛いものを食べて痔になった体験談。辛いものは内臓全部を焼いて肛門までが辛いと叫ぶ
最初は、アライグマや、イタチなどが辛い麺を食べてビックリする様がおもしろかった。いいねボタンを押したり、何度も同じ動画を繰り返し見ていると、似たような動画ばかりがリコメンドされて、同系の動画を見つづけることになった。その類似動画を見ているうちに……あれっ? と思った。これって生成AIによるフェイク動画じゃないの?
辛い物を食べて驚く小動物の姿が笑えたのだが、いくらなんでもその様子が嘘くさく思えるようになったのである。動物の辛さにヒーヒーする様子が、まるで人間みたいなところが面白かったのだが、だんだん視聴者に笑ってもらえるように故意に演出しているというのが見えてきたのである。
ネコがクマやジャガーやハクトウワシやイタチに襲いかかって撃退する動画

わたしは犬の動画が好きでよく眺めているのだが、ときどき猫の動画がリコメンドされることもある。犬好き=動物好き、とアルゴリズムに判定されているのかもしれない。
その猫の動画・リールというのが、猫が熊やジャガーなどの猛獣を撃退するという動画である。家の中に熊やジャガーや鷹などの猛獣が忍び込んでくるのだが、なんと家ネコが飛び掛かると猛獣たちがビックリして逃げて行ってしまうのである。これには驚いた。ネコが驚異的な殺し屋であることは、私もよく知っていた。しかし犬ならともかく、猫がご主人様を守って熊にとびかかるとは……はじめ私は猫を見直したものである。
猛獣に襲いかかるネコは、人間を守るためだったり、仲間の犬を守るためだったり、子猫をまもるためだったり理由はいろいろであったが、いずれにしても自分よりも何倍も大きな猛獣あいてにひるまずにとびかかっていくのである。

へええ。猫ってすごいのね!
……と、最初は思っていたのだが、途中から「ん? これって生成AIによるフェイク動画じゃないか?」と感じるようになった。
私は散歩が好きで、その日も外を歩いていた。途中に猫がいた。
撫でてやろうと近づいたら、そのネコはビビッて逃げていくのだ。この臆病ものめ。なにもとって食おうっていうんじゃない。ただ撫でてやろうってだけなのに……っていうか、人間ふぜいにビビッて逃げていくネコが、クマに襲いかかるわけがないじゃないか。
この臆病動物が、虎を撃退するとはとうてい思えない。野生動物の強さというのは、体重にほぼ比例する。私が見ていたアレは、おそらくネコ好きの人が作ったフェイク動画なのだろう。ネコにトラを追い払えるわけがない。
っていうか、そう簡単に虎が民家の庭先に現れるわけがない。
生成AIのフェイク動画を見破ったのは「常識」。動画のクオリティーは本物レベル
途中から、フェイク動画かも? と気づくことができたが、気づけたのは「常識で判断したから」である。「動画の出来が悪かったから」ではない。
昨今のAIの技術はすさまじく進歩している。本物の動画と見分けがつかない。私がフェイクに気づいたのも、内容が「ありえない」と思えたからであり、動画としての完成度が低かったためではない。自分の感覚を信じたので、フェイクを見抜けたのだ。
ほかのフェイク動画も見抜けるかどうかを試すために、他のAI動画も見てみた。
1991年に死んだクイーンのフレディー・マーキュリーが、井上陽水の「少年時代」を歌っていた。いかにも彼が歌っているような歌声だった。声紋のようなものをAIにおぼえさせて、歌わさせているらしい。
しかし、感動したよ。本当に本人が歌っているかのようだった。日本語もたどたどしかった。
その動画へのコメントもしゃれていて、
「フレディー久しぶり。新曲は日本語の歌ですか?」みたいな、あたかも生きている人に向けたそれだった。
いやあ、感動したよ。
ほかの生成AIによる楽曲にも感動した。
とりわけ演歌をロック調にして黒人歌手に歌わせているものに感動した。この完成度ならば、もう歌手はいらないのではないか? というレベルである。
編曲もすごかった。編曲というプロの仕事をする人がいるが、その人たちの仕事を、AIがプロンプトによって処理してしまっているのだろう。
歌手も、編曲家も、この先、失業するんじゃないだろうか。
パーソナライズドは危険。世間がちゃんと見えなくなる
東京都知事選があった時のことである。候補者の石丸伸二の議論が面白かったので、しばらく石丸動画を見ていた。するとYouTubeアルゴリズムに「こいつは石丸ファン」と認識されたのであろう。私のスマホには石丸関係の動画やニュースがあふれかえったのである。
わたしは新聞もテレビも見ていない。最新ニュースはスマホで仕入れている。
するとどう見ても今回の都知事選は石丸伸二の勝ちだとしか思えないのだ。だって石丸のニュースしか入ってこないのだから。
しかし結果は、100万票以上の大差で現職の小池百合子さんが勝ったのである。わたしは唖然とした。小池が勝つとは思わなかった。っていうか、私のスマホを使っていたら、誰だって小池が勝つとは思わないに違いない。そんな兆候はどこにも見られなかった。それほど石丸にパーソナライズドされた情報ばかりが上がってきていたから。
パーソナライズド、おそろしいね。世間がちゃんと見えなくなる。100万秒の大差さえわからなくなってしまうのだ。
そして生成AIも恐ろしいね。自分の頭で冷静に考えてみれば、ネコにクマが追い払えるわけないよな。。。

