カンボジア観光。アンコール・ワット。トンレサップ湖
カンボジアに旅行したときの話しです。まだ経験値の足りなかった頃のことで、ツアーでの参加でした。もちろんお目当てはアンコール・ワット。いわずとしれた世界遺産ハイライトのうちのひとつです。
もちろんお目当てのアンコールワットは素晴らしかったのですが、トンレサップ湖の観光という「ついで」についていた観光地も素晴らしかったです。
いわゆる湖上生活者の貧しい暮らしを観光させてもらいました。
わたしはキャンプ好きなのですが、貧しい暮らしというのはとてもキャンプ生活に似ています。だからとても見ていて親近感がわくのでした。
お金持ちの優雅な暮らしを見るよりも、貧しい人たちのサバイブを見る方が、楽しく感じます。
断捨離とか、ミニマリストに通じるものがあると思います。貧しい暮らしというものは。
ツアー客全員がツアーガイドの指示を結託して無視した話し
カンボジアのバスツアーでは日本語を喋れるカンボジア人がガイドについてくれました。チャンナラーさんといいます。
チャンナラーは日本には一度も行ったことがなく、観光業でお金を稼ぐために一生懸命現地の日本語学校で勉強したという好青年で、あまり日本語が上手ではありませんでした。
しょっちゅう説明の言葉に詰まります。
「ううんと、えええっと、あのう……」と、きばるように一生懸命に日本語を思い出そうとするので、思わずこっちも「ガンバレ」といいたくなるような人でした。
そして「15分で……」というのが口癖でした。
「みなさん、あと15分で、アンコールワットに、着きます」とか「わたしの会社は、ここから15分です」とか、とにかく何でもかんでも十五分なのでした。
発言の中にやたらと15分という言葉が出てきます。観光地に着いて見学する場合でも「バスは15分で出ます。15分で戻ってきてください」とここでも15分なのでした。
アンコールワットのまわりには、アンコール・トムや、タプローム、バンデアイスレイなど、見どころ遺跡が点在しています。それらを回っているうちに暗くなってきました。とうとう最終目的地に近づいてきたとき、バスの中でチャンナラーはいいました。
「今日の日の入り時間は5時40分です。バスが出るのは5時35分です。15分で戻ってきてください」
〈また15分かよ!〉わたしは心の中でツッコミを入れました。
そしてバスを降りて、わたしたちツアーバスの仲間たちは口々にこう話し合ったのです。
「いや、日没、見られないじゃん。せっかくだから日の入り、見ようよ」
「日没の5分前に帰ってこいってありえなくない? しかもまた15分だし」
「いいんじゃない。ちょっとぐらい遅れても」
「てか、チャンナラーさん、15分しか言わないよね」
「それしか日本語知らないんじゃないの(笑)」
しまいにはツアー客のあいだでチャンナラーは15分という言葉しか知らないんじゃないかとひそひそ話がささやかれたほどでした。
みんなもそう思ってたのか!
そしてチャンナラーの15分はたぶん20分の間違いだろうってことにして、わたしたちは遺跡に登って陽が沈みゆくのを堪能してからバスに戻りました。
これがツアー客が全員結託してツアーガイドの指示を無視したときの話しです。
当然、チャンナラーのいう15分はとっくに過ぎていました。
文句を言われるかと思いましたが、チャンナラーはニコニコしてみんなを出迎えています。
いや、さっきの15分は何だったのよ。チャンナラー!?