How to win Friends and influence People
だいぶ昔に読んだことのある本ですが、他の本を読んでいたらこの本に言及があったので、もう一度読み返してみることにしました。この手の自己啓発本というのは白人が書いている印象があります。その代表的な人がこのデール・カーネギーさんですね。およそ100年前の本です。
D・カーネギー『人を動かす』の内容
人をしかりつけるのは愚の骨頂。人間はたとえどんなに間違っていても決して自分が悪いとは思いたがらない。
ルーズベルトですら、自分が悪かったと思わせることはできなかった。ああする以外に方法はなかったと繰り返し言わせただけだ。
→ 議論に勝っても相手のエゴには勝てない、と英語では言っていました。不満や文句を言えば敵をつくるだけ。部下への文句もやる気を失わせるだけなのでした。
人の過ちを正したりやっつけたりすると、結局、相手はこっちを恨んで、ああする以外に方法はなかったというくらいが関の山だ。
けちをつけて、決闘を申し込まれたリンカーン。
→ リンカーンもまた、相手をやりこめて後悔したようですね。決闘というのは運ゲーで、一瞬でこれまでの努力が水の泡となります(=死)。ぜったいに避けるべきですが、避けるにはケンカを売らないしかありません。
相手に重要感をもたせることが重要。相手の自己評価にぴったり合うことを言ってやること。
→ しかもgenuine(本物)でなければなりません。お世辞じゃダメだと本書では言っています。その本物というところが難しいんだけどな。
人間は、何か問題があってそれに心を奪われているとき以外は、たいてい自分のことばかり考えて暮らしている。
→私はマラソンランナーです。走っているときに何を考えているのかとよく聞かれますが、どうすれば楽に速く走れるのかと考えていることが一番多いですね。すなわち自分が今やっていることを考えているのです。
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雑誌『ランナーズ』のライターが語るマラソンの新メソッド。ランニングフォームをつくるための脳内イメージ・言葉によって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化して速く走れるようになる新理論。言葉による走法革命のやり方は、とくに走法が未熟な市民ランナーであればあるほど効果的です。あなたのランニングを進化させ、市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●言葉の力で速くなる「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」「かかと落としを効果的に決める走法」「ハサミは両方に開かれる走法」
●腹圧をかける走法。呼吸の限界がスピードの限界。背の低い、太った人のように走る。
●マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」とは?
●究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」の本当の意味は?
●【肉体宣言】生きていることのよろこびは身体をつかうことにこそある。
(本文より)
・マラソンクイズ「二本の脚は円を描くコンパスのようなものです。腰を落とした方が歩幅はひろがります。腰の位置を高く保つと、必然的に歩幅は狭まります。しかし従来のマラソン本では腰高のランニングフォームをすすめています。どうして陸上コーチたちは歩幅が広くなる腰低フォームではなく、歩幅が狭くなる腰高フォームを推奨するのでしょうか?」このクイズに即答できないなら、あなたのランニングフォームには大きく改善する余地があります。
・ピッチ走法には大問題があります。実は、苦しくなった時、ピッチを維持する最も効果的な方法はストライドを狭めることです。高速ピッチを刻むというのは、時としてストライドを犠牲にして成立しているのです。
・鳥が大空を舞うように、クジラが大海を泳ぐように、神からさずかった肉体でこの世界を駆けめぐることが生きがいです。神は、犬や猫にもこの世界を楽しむすべをあたえてくださいました。人間だって同じです。
・あなたはもっとも自分がインスピレーションを感じた「イメージを伝える言葉」を自分の胸に抱いて練習すればいいのです。最高の表現は「あなた」自身が見つけることです。あなたの経験に裏打ちされた、あなたの表現ほど、あなたにとってふさわしい言葉は他にありません。
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深く思いやりから出る感謝の言葉を振りまきながら日々を過ごす。これが、友をつくり、人を動かす秘訣である。
人の気持ちを傷つけることで人間を変えることは絶対にできない。
→傷でもいいから相手の心に残りたいと思うのは、幼い感傷なのでしょうね。小さな努力に感謝して生きて行けと本書では教えます。
釣針には、魚の好物をつけるに限る。自分の好物を問題にする必要がどこにあるだろう。誰もかれも我々と同様に、自分のことでいっぱいなのだ。その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法で釣る。
人間の行為は何かを欲しがることから生まれる。
人を動かすには、相手の望む事柄を考えて話すよりほかに方法はない。
どうすればそうしたくなる気持ちを相手に起こさせることができるか。
自己主張は人間の重要な欲求のひとつである。
相手の関心を引こうとするよりも、相手に純粋な関心をよせる方が、はるかに多くの知己が得られる。
→これが「サクセスしてお金持ちになったらあの娘も振り向いてくれるだろう戦略」が失敗する理由ですね。恋愛に成功したかったら、ダイレクトに恋愛に時間やパワーを振り向けるべきなのです。
経歴や好みに誠実な関心を示していろいろと尋ねた。
こちらが心からの関心を示せば、注意を払ってくれるし、時間も割いてくれ、協力もしてくれるものだ。
友をつくりたいなら、まず人のために尽くすことだ。
私の店に関心を持たせようとする方法では十年かかってもやれないことを、彼の関心のある問題にこちらが誠実な関心をよせることによって、わずかに時間でやってのけることができた。
→話し相手は、あなたの言葉を聞きたいのではなく、自分の言葉を聞いてもらいたがっています。よい聞き手になるテクニックは、次に自分が言うことを考えるのではなく、相手の言葉を遮らないことです。自分の興味について話すのではなく、相手の興味について話しましょう。相手の土俵で勝負です。
幸福でたまらないように振舞うのである。すると、本当に幸福な気持ちになるから不思議だ。
→楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ、とよく言われるやつですね。行動によって人の気持ちは変わります。私の場合、朝から仕事の気力が湧かない日でも、まず体を動かすことで乗り切っています。体を動かすと、体内に気力のタネとなるホルモンがあふれて、気分が変わって、やる気を手に入れることができます。
幸福は外的な条件によって得られるものではなく、自分の気の持ち方ひとつでどうにでもなる。
笑顔は好意のメッセージ。
自分の名前を覚えていて、それを呼んでくれるということは、つまらぬお世辞よりもよほど効果がある。
→私も仕事で知り合った社長さんが、喋るたびに接頭語のように私の名前をぶっこんでくるのに出会ったことがあります。「一生懸命、私の名前を覚えようとしてくれているんだな」とそのときは感じました。しかしそのことをいまだに覚えているんですから、社長さんの露骨なカーネギー戦略は成功したといえるでしょう。笑顔には魔法の力があります。本書では立ち居振る舞い(姿勢)にも気をつけろと指摘しています。
中国で百万人が餓死する大飢饉が起こっても、当人にとっては、自分の歯痛のほうがはるかに重大な事件なのだ。
→毛沢東のことですねw
常に相手に重要感を持たせること。
二人の人間がいて、いつも意見が一致するなら、そのうちの一人はいなくてもいい人間だ。
→会社の会議室の場合はそうでしょうけど、友達関係のときは違うんじゃないですか。
「おそらく私の間違いでしょう。私はよく間違います。ひとつ事実をよく考えてみましょう」
理屈どおりに動く人間はめったにいるものではない。たいていの人は偏見を持ち、先入観、猜疑心、恐怖心、ねたみ、自負心などにむしばまれている。
→多くの人は、長いものに巻かれます。自分のメリットを優先して仲間を裏切ります。付和雷同します。
信念を誰かが変えさせようとすると、我々はがむしゃらに反対する。この場合、我々が重視しているのは、明らかに信念そのものではなく、危機に瀕した自尊心なのである。
「私は自分の意見を断定的に述べないことにした。自分としてはこう思うのだが……。私にはそう思えるのだが……。ということにした。控えめに意見を述べると、反対する者も少なくなった。
重要感。私が自分の罪を認めた時、彼の自負心を満足させるのは、私を許して太っ腹なところを見せることだった。もし言い逃れをしたり、議論をすれば、どんなことになるか、ご承知のはずだ。
→ソクラテスの産婆術(会話術)で、質問して相手に考えさせることが重要だと本書では説いています。うまく誘導して、こちらが諭したのではなく、相手が自分で思いついた自分の考えだと思わせるのです。結論を言うのではなく、質問して、耳を傾けるのです。もっともそれでもソクラテスは恨まれて死刑になりましたけどね。
自分に誤りがあるとわかれば 、相手の言うことを先に自分で言ってしまうのだ。そうすれば相手には何も言うことがなくなる。
→自分の間違いを素直に認めましょう。
友好的で、感謝に満ちた態度が、この成功をもたらした。
やさしい親切なやり方は、激しい力づくのやり方より、はるかに効果がある。議論したり、怒鳴り散らしてみたところで、解決はとても望めそうに思えなかった。
まず相手に何度もイエスと言わせておく。人間が本気になってノーというときには、神経と筋肉の全組織が拒否の体制をとるのだ。はじめにノーと言わせてしまうと、それをイエスに変えさせるのには、たいへんな知恵と忍耐がいる。
→抽象的な結論を言うのではなく、アイデアをドラマ化します。
お互いによく相談してみよう。もし意見の相違があれば、その理由や問題点を突き止めましょう。
相手の心が憎悪に満ちているときは、いかに理を尽くしても説得することはできない。
→聞いてもらうために、賞賛から始めましょう。人は自分の信じるアイデンティティーどおりに行動するそうです。つまり賞賛により相手が好ましい自己認識をすれば、好ましい行動をしてくれます。
→そしてチャンスをあたえて挑戦させます。競争させます。人の心を知り尽くした戦略ですね。
自分が喋るよりも人に好きなだけ喋らせるのは、家庭内でも効果がある。
百年もすれば世間から完全に忘れ去られてしまうのだから、謙虚になるべきなのだ。
→カーネギーさん。あなたの場合はそうはなりませんでしたよ。100年たっても本書は生き残っています。
人を扱う秘訣は、相手の立場に同情し、それをよく理解することだ。あなたがそう思うのはもっともです。もし私があなただったら、やはりそう思うでしょう。
→メンツを保つことの重要性をカーネギーは説いています。やくざ社会でも上手に渡り歩けそうな男ですね。
我々がワニを崇拝しない唯一の理由は、我々が古代エジプトのファラオの時代に生まれなかったからだ。相手がわからずやだったとしても、その責めのすべてを本人に帰するわけにはいかない。同情してやるべきだ。もし神様のお恵みがなかったら、この相手が、私自身の姿なのだ。
みんな同情に飢えている。それをあたえてやるのだ。好かれることはうけあいである。
神さま、ありがとうございます。この女性と結婚していなくて助かりました。
→カーネギーは自分自身も人に仰がれるような人格になるように陶冶せよ、と説きます。
彼女の敵意を好意に変えてみようと決心した。いわば、一種の遊戯だ。相手をやっつけるよりも、相手に好かれる方が、よほど愉快である。
人間は一般に同情を欲しがる。
子供や母を愛する気持ちなど、人の美しい心情に訴える。
私の感想
それにしても「真にこの本の内容を身につけたら、あなたは絶対にサクセスする」とか謳い文句にするのはやめてほしいですよね。もしもサクセスしなかったとしても、作者や紹介者は「あなたは真に内容を身につけていない。表面をなぞって、ふりをしているだけだ(だからサクセスしないんだ)」といえば言い訳が立ってしまうのですから。こんな言辞は、何も言っていないことと同じです。
本当に、本当のことを言うのなら「これらすべてを身につけても人生に失敗することもある」と言うべきだと私は思います。でもそんなこと謳い文句にはできませんね。それじゃあ本は売れません。
100年残る自己啓発本というものがどういうものか知りたかったら、本書を読んでみてください。なるほど、一世紀残るだけのことはある本だなあ、と思われるでしょう。

