ラスボスの纏う闇の衣、正体は高山病だ

ドラクエ3のラスボス、ゾーマは「闇の衣」という敵を寄せつけないバフをまとっている。私のラスボス、ボリビアがまとう「闇の衣」はその標高の高さにある。主たる敵は高山病だ。健康な人間を病人同然にしてしまう高山病。それがボリビアの難易度を爆上げしている。
高山病は体質。鍛え方ではどうにもならない世界
ちなみに日本の森林限界は標高2400~2800メートルぐらいである。それを超えると樹木が生育できない環境なのだ。
ちなみに日本で高山病になる標高は、人によって違うが、標高2500メートルぐらいと言われている。植物が生息できない環境なのだ。人が苦しむのは当然である。
2500メートルで苦しいのに、ウユニ塩湖の標高は3700メートルなのだ。まさにラスボスにふさわしい闇の衣をまとっているといえるだろう。
ちなみに標高2500メートルというのは分水嶺で、飛行機のキャビン内の加圧も標高2000~2500メートルぐらいだそうだ。それ以上だと息苦しくてキャビン内で高山病になってしまうらしいのだ。
高山病ってなんだ?

ラスボスが纏う「闇の衣」=高山病、その正体は何であろうか? 正体がわかれば、何らかの対策ができるかもしれない。
ちなみに私はこの稿を書くまでは、高所は「酸素が薄い」と思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。酸素の濃度はどこでもだいたい21%ぐらいで標高が高くても低くても同じなのだそうだ。大半を占める窒素(78%)よりも分子は重いが風で攪拌されるため、標高2500メートルでも、3600メートルでも、酸素の濃度は変わらないらしい。森林限界の上なので、木がないから酸素が薄いのかと思っていた。しかしそうではないらしい。呼吸が苦しくなるのは他に原因がある。
ちなみにボリビアの首都ラパス3650mは、森林限界のはるか上なので木がないのかと思ったら、そうではないらしい。谷にあるため風が弱く、日射が確保されて、ユーカリやポプラなど高所に強い木が生育するらしいのだ。そりゃそうだ。木のないところに人は住めない。『天空の城ラピュタ』のテーマみたいだな。
木があっても酸欠になるのは、酸素がないからではなく、気圧の問題らしい。これを酸素分圧という。
肺の換気には気圧が関係している。外気圧が弱いと、肺の毛細血管に大気中の酸素を押し込む力が弱いので呼吸がうまくいかないのだ。高所は酸素分圧が低い状態なのである。そこに酸素はあっても、取り込めないから苦しくなる。
酸素があっても、外気圧がないから、うまく肺に取り込めないというのが、高山病の正体なのである。とくに睡眠中がヤバい。起きていれば意識的に呼吸を速く大きくすることができるが、睡眠中は無意識に普段の呼吸に戻ってしまう。すると起きたら酸素不足で頭が痛くなるのだ。寝ているうちに高山病にかかってしまう。
ボリビア観光客の高山病対策
ボリビア(ラパス)には、普通は飛行機で一機に降り立つ。ハアハア荒い息で呼吸しながら下から自分の足で歩いて登れば高山病にはなりにくい。私はスイスのブライトホルン4164メートルを登頂しているが、山頂で高山病になった覚えはない。自分で歩いて登ったからである。走ればランナーズハイの脳内モルヒネがドバっと分泌されるため、そう簡単に頭痛にはならない。
ホテル立山で高山病になったのは、ロープウェイやバスで一気に登り、そのまま眠ったからだ。乗り物で一気に高所に降り立つのはヤバいのだ。しかしラパスに飛行機で直行するのは避けられない。ボリビアでは多くの人が確実に高山病になるのではないか?
調べたところ、ほとんどのボリビア観光客は高山病になるらしい。さすがラスボス、おそるべし闇の衣よ。
頭痛、息苦しさ、ひどいときには吐き気がする。高山病に対策はないんだろうか?
高山病の対策。コカ茶。酸素バー
ほとんどの観光客が高山病にかかるため、現地ボリビアでは観光客への高山病対策が手厚いらしい。
なかでも日本では飲めないコカ茶というのが、脳を覚醒させて、頭痛に効くようだ。コカ茶はコカインと同じ葉をつかうお茶なので、日本では非合法飲料である。しかし現地では合法的な飲料である。というか、もはや観光客の薬のような飲料だ。アルカロイドが呼吸中枢を覚醒さえるために、高山病に効くのだ。バイキルトの呪文のようなものである。
また、酸素バーというのがあるらしい。もちろんそこでは酸素ボンベの酸素を吸わせてくれるのだ。酸素ボンベは酸素濃度も高く、圧力も強いため、血管に大量の酸素が送り込まれて、まるでドーピングのように劇的に高山病に効くんだそうだ。ベホマの呪文のようなものである。
過呼吸問題。マラソンランナーは高山病に強いか?
酸素バーでボンベの酸素を吸うといっても、ずっと吸っているわけじゃない。10分ていど吸って、その効果は数時間らしい。つまり一時しのぎにすぎない。
そもそもラパスの市民は、酸素ボンベのお世話になんかならなくても、普通に暮らしているのだ。体が高地順応済みだから、赤血球の量が多いとか、適応しているわけである。しかし、マラソンを走ったらボリビア人が世界最強というわけではない。
そもそも私はマラソンランナーで、ハアハア荒い呼吸をするのは日常茶飯事だ。マラソンに強くなるためにアスリートが高地トレーニングをすることはよく聞くが、逆に高地に強くなるために走り込めば、高山病にかかりにくくなるんじゃないか?
過呼吸。意識的に大きく呼吸するだけで問題は解決しない
意識的に大きく呼吸すれば、高山病にはならないんじゃないだろうか?
これは誰でも思いつく最初の高山病対策だが、逆効果になることもあるらしい。これを過換気という。二酸化炭素を吐きすぎると、血がアルカリ性に傾き、脳から換気を抑える指令が出るらしい。そして呼吸しても呼吸しても苦しいという状態になる。過呼吸状態である。
私は「つくばマラソン」の帰りに、電車の中で過呼吸になったことがある。走り終わってもう酸素は必要ないのに、なぜか苦しくて、荒い呼吸が止まらなかった。あのときも脳がバグっていたのだろう。
その脳の呼吸しすぎブレーキを解除するのが、高山病の薬らしい。高山病対策の薬を医者に処方してもらい、持参していくという手がある。呼吸のブレーキがなければ、起きているあいだは、意識的に深呼吸ができる。これが究極の高山病対策である。
高山病対策はすべてバフ。一時的なものだが、討伐できればそれでいい
コカ茶も酸素ボンベも、すぐに効果は切れてしまうだろうが、やらないよりはいいだろう。バフの使用期限が短いのはRPGでさんざん経験していることだ。
高山病対策の薬ですら、一時的なドーピングで抜本的な対策ではない。
しかし一時的なステイタス増強(バフ)でも、ラスボスを討伐できればそれでいいのだ。ウユニ塩湖(3700m)に到達できれば、それでいい。
何よりも、普段から走り込んで体を鍛えておくことだ。それが本当の意味でのレベルアップである。最強の海外旅行対策は、健康で壮健な肉体を保つことなのだ。




