ケン・フォレット『大聖堂』の内容、あらすじ、魅力、書評

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書籍『市民ランナーという走り方(マラソン・サブスリー。グランドスラム養成講座)』。『通勤自転車からはじめるロードバイク生活』。小説『ツバサ』。『帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル』『読書家が選ぶ死ぬまでに読むべき名作文学 私的世界十大小説』『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』。Amazonキンドル書籍にて発売中。

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ケン・フォレット『大聖堂』。原題はピラーズ・オブ・ジ・アース。「地上の柱」

ケン・フォレット『大聖堂』。原題はピラーズ・オブ・ジ・アース。「地上の柱」です。

「小さな王子さま」を「星の王子さま」としたように、「Bonnie and Clyde」を「俺たちに明日はない」としたように、原題よりも日本版のタイトルのほうがいいなあと思うことはひじょうに多いのですが、本作ばかりは「大聖堂」よりも「地上の柱」のほうが私はいいタイトルだったのではないかと感じました。たしかに大聖堂の建築描写がやたらと多い作品ではありますが、作者はなにも大聖堂のことを書きたかったわけではありません。

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『大聖堂』の内容、魅力、あらすじ、書評

作品冒頭に呪いをかける魔女が登場します。妊娠中のこの女はエリンです。司祭と騎士と修道士に呪いをかけました。

不当な仕打ちを受けたものの呪いが、ことのほか効き目がある。呪われろ、病と悲嘆に、飢えと苦痛に呪われるがいい。ニワトリの血の犠牲を捧げる。

大聖堂を建てたいという夢を持つ建築家トムビルダー。しかし仕事はうまくいかず、さらに盗難に遭い、貧しさの中で妊娠中の妻は男の子を生んで死んでしまいます。

あたし、あんたに抱かれたことを、いちども後悔しなかったわ。大聖堂を建てられるといいわね。あんたは美しいものをつくる人よ。あたしのために美しい大聖堂を建ててね。

シャベルの一振りことに、やがて首が隠れ、彼が口づけした口が隠れ、ついに顔全体が覆われて、永久に視界から消えた。

トムの子を育てる修道院長フィリップは、アリエナの父伯爵の反乱計画を通報します。ウォールランと取引をして、ウォールランは司教に、フィリップは修道院長となりました。

親しすぎは侮りをまねく。今のままならあんたは手の届かない神聖な存在だ。しかしそれは彼らがあなたをもっとよく知るようになるまでのことだ。ここにとどまっていれば後光は消える。尻を掻いたり鼾をかいたりするのを聞けば。

修道院の生活はきびしいものでした。

緘黙令。誰とも口をきいてはならず、ほかの者もかれに話しかけてはならない。これが予想以上に辛い罰なのだ。孤立感は一日で耐えがたくなり、なんともみじめな気分に落ち込んでしまった。

アリエナはウィリアムとの婚約を拒否します。

あなたは下品だから嫌い。本を読まない人だから嫌い。犬と、馬と、自分のことにしか興味のない人だから嫌いなの。鈍くて、愚かだから。嫌い。軽蔑する。虫唾が走る。ぞっとする。だから、あなたなんかとは結婚したくないの。

エリンの息子ジャックは、定住のため、トムの仕事のため、大聖堂に放火します。

笑われたことで、びくびく怯えてばかりいた弱虫の幼児に戻ってしまったような気がした。

放火。義理の兄にいじめられている。

私はゆるさないからね。ジャックはわたしの子なのよ。

ここで譲ってしまっては、後々までも禍根を残す先例をつくる。

教会における権力争いの中で、トムとエリンは正式の夫婦でないことを責められます。

法的には姦通者ということになる。職人が修道院の境内においてそうしていることを同列に論じるわけにはいかない。姦通はありきたりの罪であるとはいえ、肉欲というものを修道僧は忌み避ける。

女はわざわいのもとだ。厩に発情した牝馬が一頭でもいると、牡馬はみんな噛みついたり蹴とばしたり手に負えんようになる。虚勢馬ですら気が荒くなる。修道士は虚勢馬のようなものだ。肉の欲望は断たれているが、それでも女陰のにおいは嗅ぎつける。

キングズブリッジ修道院なんか、おシッコをひっかけてやる! くたばってしまえ!

あらん限りの声でわめくなり、スカートをまくりあげ、両ひざを曲げ、書物の上に尿をあびせかけた。

悲しくて、腹を立てることもできやしない。あんたの女房になりたかったわ、でも、どんな犠牲を払っても、ということはできない。

彼女は最後のチャンスに小便をひっかけてしまった。

エリンはトムと別れ、森へと帰るのでした。

わたしはもう、あんたと旅をする気はないのよ。森へ帰るのよ、あんたはついてこないで。

思いとどまらせる言葉も、もう思いつけない。無力感しかない。二度と抱くことはできないのだ。

着飾ることの効用を思い知らされた。もしも正装していたら、ああもそっけなく追い払われることはなかったであろう。

フィリップとウォールランは教会内で権力を争います。争うのは王権をめぐる政治も同様でした。

お互い対等であるかのような議論が交わされたが、この一言でおのれの優越を回復したのである。

ご再考いただければ感謝いたします。祈りながら、お待ちいたします。

いさぎよく引いたように見せかけて、そのじつ、問題が未決であると、締めくくりの言葉で念を押したのである。この手はおぼえておこう。相手に拒絶されそうになったときは、延期という手段があるのだ。

ウォールランの眼に、自分がどう映っていたか。人身御供にされながら、にこやかにうなずいているお人よし。侮辱されても笑顔で耐えた。裏でこっそり舌を出していた。

伯爵家としての権力を失ったアリエナ兄弟は、ウィリアムの暴行を受けます。

この売れた肉体を組み敷いて、脚を開かせるとき、彼女の顔に浮かぶ恐怖の表情を見てみたい。

おまえはもうお姫様ではないんだよ。ただの反逆者の娘で、もうすぐ路頭に迷い、飢えることになるんだ。うちの息子の嫁にする値打ちもない。二度と口をきくんじゃない。

アリエナは羊毛商人として独り立ちしようと、女だてらに頑張ります。

自分が本気で神父の眼を焼きつぶすつもりだったのはわかっている。が、そのことを愧じるよりも、むしろ自分の強さに瞠目する想いであった。二度と他人の餌食にはならないと決意してから、その決意を守り抜いているじぶんをあらためて見直している。

トムは、とうとうエリンを妻にします。

トム自身が、彼女では満足できないことはわかりきっている。彼の胸の内には、あの何をしでかすかわからない、勝ち気で情熱的なエリンを恋い慕う気持ちがくすぶりつづけているからである。

こんなに愛しているのがわからんのか。どうして早くそれをいわなかったの? おれの女房になってくれるか、エリン? ええ、トム、あんたの女房になるわ。

伯爵となったウィリアムは自分の領地を力で支配しようとします。

こいつらはおれのことなどなんとも思っていない。この連中を思い通りに動かすことはできないのか? ただですむと思っていたのか? おれがそれほど阿呆に見えるか? そうなのか? なんとか言ってみろ! 怒りにまかせて殴りつけた。これであいつらもおれをあざ笑うことはありまい。

ウィリアム伯爵は、フィリップ修道院長の富を暴力で奪おうとします。けんめいにフィリップは抵抗するのでした。

フィリップの望みはみじんに砕けた。結局、正義よりはウィリアムの軍勢のほうが優先されたわけだ。

わたしはもう怯えた子供ではない。成人し、信仰に鍛えられ、死の恐怖にあえぐ人々を救うようにとつかわされたのだ。

イングランドの政変によっても、フィリップの修道院は浮沈します。

昨日、彼はイングランド王であった。昨日、彼は許しをあたえようとしなかった。今日の彼は、他人の許しがなければ立ち上がることさえかなわない状態におかれている。

フィリップは修道士としての務めも忘れません。

空腹は耐え忍ぶべきものだ。断食は苦行のための格好の機会になる。

トムの義理の息子ジャックは、アリエナに恋します。

自分の望みはわかっている。アリエナのかたわらに横たわり、その肉体を愛撫したい。

しかつめらしい女のどこかに、いまなお、あのお転婆娘がひそんでいるに違いない。

ジャックは物語を語って聞かせた。様々に表情を変える。不正に怒り、裏切りに狼狽し、勇敢な行為に心をわき立たせ、英雄的な死に涙した。

アリエナは羊毛商人として大成功しますが、誰とも結婚しようとしません。

おれの女房になってくれるか? とうとう口にした。こうなると、気の毒だが、きっぱりと断らねばならない。やんわりとした拒絶を、ためらいの証しと見、男はいっそうしつこく迫ってくるものなのである。

彼には彼の責任を果たすことを期待した。だが男の中には、それを気がある証拠と誤解する者もいるのである。そして怒り出し、まるで彼女に不当に非難されたかのように振舞うだろう。いわれなく辱められたと思い込み、攻撃的な態度に変わるのである。

トムの実の息子アルフレッドと、エリンの息子ジャックは、そりがあわず暴力沙汰の喧嘩をします。

あなたの二人の息子を一緒にこの現場で働かせることは、わたしが承知しない。どちらか一人には出て行ってもらわねばならぬ。

厳しい態度でのぞまねばならん。それが誇りも規律もある建築職人としての名誉を回復する。

アリエナの羊毛の在庫は、襲撃してきたウィリアムに焼かれてしまいます。この火事でトムは死んでしまうのでした。

火事。長年の努力と労苦の結晶を、富と安泰を保証するすべてを飲み込もうとする焔を、アリエナは半狂乱のまなざしで見つめながら、もがきつづけた。その場に横たわったまま、絶望の叫びをあげた。

火事以降、病気にかかる者がほとんどいないと指摘する人もある。病気は悪臭によって蔓延するという賢人たちの説の正しさが証明された形であった。

ウィリアムハムレイをわたしは拒絶した。悲劇はそこからはじまったのだ。もとはといえばわたしの強情さが原因なのだ。

アリエナは、アルフレッドと結婚せざるを得ない立場となりました。弟をふたたび伯爵にするという父との約束のためでした。

そしていまふたたび申し分ない結婚の申し込みを断わろうとしている。

アリエナはアルフレッドの下品さを忌み嫌い、弱いものいじめの態度を軽蔑し、卑劣さに愛想をつかし、頭の回転の鈍さに逆上するだろう。結婚は地獄以外のなにものでもないはずだ。愛してもいない男と結婚するなんて最低じゃないか。

ジャックは最後の懇願をしますが、アリエナに受け入れられません。

これ(セックス)とくらべてどれほどの価値があるというんだ? 誓いなんてただの言葉じゃないか。これこそが真実じゃないか。あなたとぼくの真実だ。

アルフレッドは、エリンに勃起不全の呪いをかけられてしまいました。

おまえが鈍いからこっちまで立たん。魔女のエリンのせいだ。おれを憎んでた。おまえなんざ犬とおんなじだ。床の上で寝ろ!

エリンは家を飛び出し、恋するジャックの後を追いかけて旅に出るのでした。

ジャックは妊娠の事実を気ままな青春時代の終わりと感じショックを受けているのではないだろうか。ふつう男は九か月かけて自分が父親になるという事実に慣れてゆくものだ。だがジャックはそれをただちに受け止めなければならない。

いまでは自分の問題は自分ひとりで完璧に処理できるけれど、いつでも自分のために戦ってくれる人がいると実感できるのは心強い限りで、そうした安心感というか、心からくつろげる感情を長い間忘れていた。

ジャックとアリエナは、フィリップの修道院に戻るが、まだアルフレッドと正式な離婚していないので、ふたりの関係を認められません。

男と女のことになると、どうして、ああも意固地になるか、わかる? 自分にその自由がないからよ。自分には禁じられているのに、他人がおおっぴらに楽しんでいるのを見ると腹が立つんでしょ。

アリエナの弟リチャードは軍事の才能はあるが、稼ぐ力はないのでした。

どうして彼は自分で稼がないんだ? 干からびたパンで済ませているぼくが、リチャードのベーコンの費用をはらわなくちゃならないんだよ。

なにをいっているんだ。承服できないだって? 狐に食べられるのを承服できないといくら鶏がいったって、鶏の運命が変わるわけでもあるまいに。

いまとなっては彼女を自分のものにするのは無理だろうが、ほかのだれにも彼女を渡さないようにすることならできる。

暴虐なウィリアム伯爵と結婚した幼な妻エリザベスは夫婦関係に悩んでいました。

伯爵の命令を伝えるのよ。夫はあなたに感謝するでしょうし、あなたをないがしろにするものには厳しく当たるようになるはずよ。そうなれば、かれらもあなたのいうとおりにする習いになるわ。そうなったら、あなたを熱心に助けてくれるものとそうでない者との区別をつけ、助けてくれるものはひいきにして彼らがやりたがる仕事をさせ、そうでない者にはよごれ仕事をあてがうの。そこまでくれば彼らだって奥様の言うことを聞いていれば損はないと悟り始めるでしょう。それに伯爵よりあんたのほうが慕うようになるはずよ。彼はそう人に好かれる人じゃないから。あなた自身が独立した権威になれるはずだわ。ほとんどの伯爵夫人がそうなのよ。

フィリップの大聖堂建築も財政難のため、労使関係がもめるのでした。

いわねばならないことを慎重に下ごしらえし、そっけない言い方でこの件をぶち壊しにしないようにしなければならない。受け入れることができるもの、断固拒否すべきもの、交渉に応じてもいいものを、決めておく必要がある。

フィリップがこの要求を持ち出さないことをジャックはすでに知っている。フィリップ院長がこの点で譲歩したとき、みんなの張りつめた帆は風を失ってしおたれてしまうだろう。

アリエナもまたしびれを切らします。エリンのときのように。

あなたとまともな生活が送れる日を十年も待ったのよ。

裏切って落ちぶれたリミジアスを、フィリップは救うのでした。

「これはこれは。わざわざ見物においでなすったか」

「もどってくる気はないか?」

「一介の修道士としてもどってきなさい。残された日々を祈りと瞑想のうちに送り、魂が天国に召される準備をするのだ」

同じく裏切って落ちぶれたアルフレッドが、まだ妻であるアリエナにカネの無心をし、それがうまくいかないと犯そうとします。それを見た弟のリチャードはアルフレッドを殺してしまうのでした。これによってアリエナはジャックと結婚することができました。

アルフレッドがいまアリエナにしたことにではなく、十八年前、ウィリアムがリチャード自身にしたことに憤激しているのである。

たくさんの人が関わった大聖堂は完成しました。トムの子ジョナサンは、実はフィリップの子ではないかと疑惑を持たれます。その疑念を晴らすためにジョナサンは自分のルーツを求めるのでした。

ジョナサンが自分自身を奇妙で異常な存在だと感じているに違いない。わたしのどこがいけないのだ? ほかの人にはあって当然のものが、どうして、わたしにだけ与えられないのか? わたしは苦しみ続けました。

フィリップと、ウォールラン、ウィリアムは、最後まで人の性のように争います。そして大司教を暗殺することで権力を一手にしようと画策します。

なにもかもおしまいだ。暴力が勝ったのだ。足下にぽっかり口を開けた深い淵にゆっくり沈んでゆくような気がする。先ほどまで揺るぐこともないように思えたものが、もろくも崩れ去ってゆく。生涯かけて闘ってきた。だがいま、その闘いに最終的に敗れたのだ。

父親を殺された六歳児の頃と同じ憤りだった。世界全体に向けられた、子供っぽく理不尽なあの憤り。

フィリップは暴力に敗北したと絶望しましたが、堂々と殺された大司教は信者から聖人あつかいされて、思わぬ大逆転が待っていました。聖者殺害の実行犯ウィリアムは絞首刑となります。

今日よりのち、世界は昨日までの世界とは違ったものになる、と彼は思った。

フィリップは新しい時代が来たことを感じるのでした。

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『大聖堂』のテーマ、なにが言いたかったのか?

作者が『大聖堂』で言いたかったことは、人間の歴史、人というものの性、だと思います。キリスト教の聖堂をモチーフに、世の栄達と無縁と思われる修道士ですら権力争いをし、自然条件や上位権力に影響されながら、なんとか人生をまっとうしようとそれぞれに頑張ります。

人生をまっとうするための、納得のできる生き方をするための、その大切な一本のスジが、トムビルダーや、フィリップや、ジャックにとっては、大聖堂の建築だったというだけのことなのでしょう。

人は憎みあうものだし、ゆるすことも、愛し合うこともできるのでした。

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サハラ砂漠で大ジャンプする著者
【この記事を書いている人】

アリクラハルト。物書き。トウガラシ実存主義、新狩猟採集民族、遊民主義の提唱者。心の放浪者。市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。山と渓谷社ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。ソウル日本人学校出身の帰国子女。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。放浪の旅人。大西洋上をのぞき世界一周しています。千葉県在住。

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アリクラハルト。物書き。トウガラシ実存主義、新狩猟採集民族、遊民主義の提唱者。心の放浪者。市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。山と渓谷社ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。ソウル日本人学校出身の帰国子女。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。放浪の旅人。大西洋上をのぞき世界一周しています。千葉県在住。
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●◎このブログ著者の書籍『通勤自転車から始めるロードバイク生活』◎●
書籍『通勤自転車から始めるロードバイク生活』
この本は勤務先の転勤命令によってロードバイク通勤をすることになった筆者が、趣味のロードバイク乗りとなり、やがてホビーレーサーとして仲間たちとスピードを競うようになるところまでを描いたエッセイ集です。 その過程で、ママチャリのすばらしさを再認識したり、どうすれば速く効率的に走れるようになるのかに知恵をしぼったり、ロードレースは団体競技だと思い知ったり、自転車の歴史と出会ったりしました。 ●自転車通勤における四重苦とは何か? ●ロードバイクは屋外で保管できるのか? ●ロードバイクに名前をつける。 ●通勤レースのすすめ。 ●軽いギアをクルクル回すという理論のウソ。 ●ロードバイク・クラブの入り方。嫌われない作法。 などロードバイクの初心者から上級者まで対応する本となっています。
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●◎このブログ著者の小説『ツバサ』◎●
小説『ツバサ』
主人公ツバサは小劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。そんな中、恋人のアスカはツバサのもとを去っていきました。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。離れたくない。その叫びだけが残った。全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自身が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「それは言葉として聞いただけではその本当の意味を知ることができないこと。体験し、自分をひとつひとつ積み上げ、愛においても人生においても成功した人でないとわからない法則」 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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小説『ツバサ』
主人公ツバサは小劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。そんな中、恋人のアスカはツバサのもとを去っていきました。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。離れたくない。その叫びだけが残った。全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自身が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「それは言葉として聞いただけではその本当の意味を知ることができないこと。体験し、自分をひとつひとつ積み上げ、愛においても人生においても成功した人でないとわからない法則」 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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読書家が選ぶ死ぬまでに読むべきおすすめの名作文学 私的世界の十大小説
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×   ×   ×   ×   ×   ×  (本文より)知りたかった文学の正体がわかった! かつてわたしは文学というものに過度な期待をしていました。世界一の小説、史上最高の文学には、人生観を変えるような力があるものと思いこんでいました。ふつうの人が知り得ないような深淵の知恵が描かれていると信じていました。文学の正体、それが私は知りたかったのです。読書という心の旅をしながら、私は書物のどこかに「隠されている人生の真理」があるのではないかと探してきました。たとえば聖書やお経の中に。玄奘が大乗のお経の中に人を救うための真実が隠されていると信じていたように。 しかし聖書にもお経にも世界的文学の中にも、そんなものはありませんでした。 世界的傑作とされるトルストイ『戦争と平和』を読み終わった後に、「ああ、これだったのか! 知りたかった文学の正体がわかった!」と私は感じたことがありました。最後にそのエピソードをお話ししましょう。 すべての物語を終えた後、最後に作品のテーマについて、トルストイ本人の自作解題がついていました。長大な物語は何だったのか。どうしてトルストイは『戦争と平和』を書いたのか、何が描きたかったのか、すべてがそこで明らかにされています。それは、ナポレオンの戦争という歴史的な事件に巻き込まれていく人々を描いているように見えて、実は人々がナポレオンの戦争を引き起こしたのだ、という逆説でした。 『戦争と平和』のメインテーマは、はっきりいってたいした知恵ではありません。通いなれた道から追い出されると万事休すと考えがちですが、実はその時はじめて新しい善いものがはじまるのです。命ある限り、幸福はあります——これが『戦争と平和』のメインテーマであり、戦争はナポレオンの意志が起こしたものではなく、時代のひとりひとりの決断の結果起こったのだ、というのが、戦争に関する考察でした。最高峰の文学といっても、たかがその程度なのです。それをえんえんと人間の物語を語り継いだ上で語っているだけなのでした。 その時ようやく文学の正体がわかりました。この世の深淵の知恵を見せてくれる魔術のような書なんて、そんなものはないのです。ストーリーをえんえんと物語った上で、さらりと述べるあたりまえの結論、それが文学というものの正体なのでした。
読書家が選ぶ死ぬまでに読むべきおすすめの名作文学 私的世界の十大小説 (民明書房) | アリクラハルト | 英米の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon
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◎このブログの著者の随筆『帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル』
随筆『帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル』

旅人が気に入った場所を「第二の故郷のような気がする」と言ったりしますが、私にとってそれは韓国ソウルです。帰国子女として人格形成期をソウルで過ごした私は、自分を運命づけた数々の出来事と韓国ソウルを切り離して考えることができません。無関係になれないのならば、いっそ真正面から取り組んでやれ、と思ったのが本書を出版する動機です。

私の第二の故郷、韓国ソウルに対する感情は単純に好きというだけではありません。だからといって嫌いというわけでもなく……たとえて言えば「無視したいけど、無視できない気になる女」みたいな感情を韓国にはもっています。

【本書の内容】
●ソウル日本人学校の学力レベルと卒業生の進路。韓国語習得
●韓国人が日本を邪魔だと思うのは地政学上、ある程度やむをえないと理解してあげる
●関東大震災直後の朝鮮人虐殺事件
●僕は在日韓国人です。ナヌン・キョッポニダ。生涯忘れられない言葉
●日本人にとって韓国語はどれほど習得しやすい言語か
●『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』南北統一・新韓国は核ミサイルを手放すだろうか?
●天皇制にこそ、ウリジナルを主張すればいいのに
●「失われた時を求めて」プルースト効果を感じる地上唯一の場所
●韓国帰りの帰国子女の人生論「トウガラシ実存主義」人間の歌を歌え

韓国がえりの帰国子女だからこそ書けた「ほかの人には書けないこと」が本書にはたくさん書いてあります。私の韓国に対する思いは、たとえていえば「面倒見のよすぎる親を煙たく思う子供の心境」に近いものがあります。感謝はしているんだけどあまり近づきたくない。愛情はあるけど好きじゃないというような、複雑な思いを描くのです。

「近くて遠い国」ではなく「近くて近い国」韓国ソウルを、ソウル日本人学校出身の帰国子女が語り尽くします。

帰国子女は、第二の故郷に対してどのような心の決着をつけたのでしょうか。最後にどんな人生観にたどり着いたのでしょうか。

Amazon.co.jp: 帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル (民明書房) eBook : アリクラハルト: 本
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随筆『帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル』

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私の第二の故郷、韓国ソウルに対する感情は単純に好きというだけではありません。だからといって嫌いというわけでもなく……たとえて言えば「無視したいけど、無視できない気になる女」みたいな感情を韓国にはもっています。

【本書の内容】
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●韓国人が日本を邪魔だと思うのは地政学上、ある程度やむをえないと理解してあげる
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●僕は在日韓国人です。ナヌン・キョッポニダ。生涯忘れられない言葉
●日本人にとって韓国語はどれほど習得しやすい言語か
●『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』南北統一・新韓国は核ミサイルを手放すだろうか?
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「近くて遠い国」ではなく「近くて近い国」韓国ソウルを、ソウル日本人学校出身の帰国子女が語り尽くします。

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●◎このブログ著者の書籍『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』◎●
書籍『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』
戦史に詳しいブロガーが書き綴ったロシア・ウクライナ戦争についての提言 『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』 ●プーチンの政策に影響をあたえるという軍事ブロガーとは何者なのか? ●文化的には親ロシアの日本人がなぜウクライナ目線で戦争を語るのか? ●日本の特攻モーターボート震洋と、ウクライナの水上ドローン。 ●戦争の和平案。買戻し特約をつけた「領土売買」で解決できるんじゃないか? ●結末の見えない現在進行形の戦争が考えさせる「可能性の記事」。 「紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ」を信条にする筆者が渾身の力で戦争を斬る! ひとりひとりが自分の暮らしを命がけで大切にすること。それが人類共通のひとつの価値観をつくりあげます。人々の暮らしを邪魔する行動は人類全体に否決される。いつの日かそんな日が来るのです。本書はその一里塚です。
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ドラクエ的な人生
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