おそるべき名作。中森明夫『オシャレ泥棒』

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よく見ると怪盗キッドがいます

先日、アニメ『名探偵コナン』を見ていたら、怪盗キッドが『オシャレ泥棒』と同じ逃げ方をしていました。人々のあいだに紛れ込んで捜査から逃れるという逃亡方法です。

かつて感動した本、中森明夫『オシャレ泥棒』のことを私はなつかしく思いだしたのでした。

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中森明夫『オシャレ泥棒』

今となっては古びてしまっている当時は最先端のファッション用語が散りばめられているので、描写としては古くなってしまっています。アニエスベーなんかが最新のパリのファッションとして紹介されています。

それでもなおエンディングの感動はいささかも減るものではありません。

描写こそ古びてしまっていますが、私はおそるべき名作だと思っています。

どこにでもありがちの本でないことだけは確かです。

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物語のあらすじを述べることについて

物語のあらすじを述べることについての私の考えはこちらをご覧ください。

物語のあらすじを紹介することについて
あらすじは地図のようなものです。読書のだいご味はディテイルにあります。文学にはあなたが感じたけれどうまく表現できなかった思いが表現されているはずです。あらすじを手に、原著に当たってください

私は反あらすじ派です。作品のあらすじ、主題はあんがい単純なものです。要約すればたった数行で作者の言いたかった趣旨は尽きてしまいます。世の中にはたくさんの物語がありますが、主役のキャラクター、ストーリーは違っても、要約した趣旨は同じようなものだったりします。

たいていの物語は、主人公が何かを追いかけるか、何かから逃げる話しですよね? 生まれ、よろこび、苦しみ、死んでいく話のはずです。あらすじは短くすればするほど、どの物語も同じものになってしまいます。だったら何のためにたくさんの物語があるのでしょうか。

あらすじや要約した主題からは何も生まれません。観念的な言葉で語らず、血の通った物語にしたことで、作品は生命を得て、主題以上のものになるのです。

作品のあらすじを知って、それで読んだ気にならないでください。作品の命はそこにはないのです。

人間描写のおもしろさ、つまり小説力があれば、どんなあらすじだって面白く書けるし、それがなければ、どんなあらすじだってつまらない作品にしかなりません。

しかしあらすじ(全体地図)を知った上で、自分がどのあたりにいるのか(現在位置)を確認しつつ読書することを私はオススメしています。

作品のあらすじや主題の紹介は、そのように活用してください。

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語れボタン! 最後のボタン!

可愛いには“愛がある”というカワイイがイノチだと思っていた通称ミニーが、男の子のような通称ミッキーと出会うところから物語ははじまります。

ミッキー「私たちもうカワイイだけじゃすまされないよ」

ミニー「この世にカワイイ以上のものってある?」

ミッキー「それを探しに行くのさ。もう愛だけじゃだめなんだ。カワイイを超えたもの、“愛”以上のものを探しに

こうして二人のオシャレ泥棒の冒険ははじまったのでした。

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「オタク」という言葉の生みの親

『オシャレ泥棒』は1988年の作品です。作者の中森明夫は「オタク」という言葉の生みの親だとされています。どうりで言葉のセンスが卓越しているわけです。

『オシャレ泥棒』は作品のラストの凄さとは別に、端々に散りばめられた言葉のセンスが光る作品です。

ミッキーとミニーの愛以上のモノをさがす冒険はつづきます。

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カワイイを超えたモノ、愛以上のモノをさがして

「改心しちゃうワルモノってカッコワルイな。最後まで“ワル”に徹してほしいわ」

「ヒミツってすごい言葉。それは「ツ」って言い終えた時にすぼめたクチビルがキスのカタチをしているからなんだ。瞬間なカンジがする

「キスキスと二個キスをしたら、あいだに一個「スキ」が入っていた……人には“トキメキ神経”ってのがあると思うんだ」

現代ではあらゆる事象が“ファッション”の問題を避けて通ることはできません。オシャレ泥棒は捜査当局の美意識に対して挑戦状をつきつけているのです。

どうせ読者には見えないんだから、ワシらは『見るからに古株の刑事然としたくたびれはてた格好』とか『いかにもその年頃の男特有の風采のあがらない身なり』といった“あいまいな描写”を着ておけばいいんだ。

ヌードモデルは裸を着ているんだ。消費社会では最終的に各個人が商品となるのです。渋谷の街を歩いてごらんなさい。商品を着た商品たちが商品を見て商品を食べ商品を買い商品たちどうし声を掛け合っている。

この世のすべてのカワイイを奪い取るんだよ。そうしたら、そのとき、何が残るか。たぶんカワイイを超えたモノ、愛以上のモノが見つかるハズさ。

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世界中の人が向いてないって言ったって、私はこのお仕事をやめるわけにはいかないのよ

「スキッ」ってホント、コトバの凶器だなあ。

この世のすべてのシッポにクルもの! 自分の「動物の部分」に感じられるモノを私達探さなくちゃね。

スタイリストこそが、あらゆる世界で必要とされていると思うのです。

「みんな、私たちとおんなし女のコ達だよ」二人の初心者マークのおばあちゃんは、大ベテランの女のコ達の群れに取り囲まれて……

世界中の人が向いてないって言ったって、私はこのお仕事をやめるわけにはいかないのよ。その光のために自分を捧げたいと思ったら、そのコの中には神さまが宿っているんじゃないかしら。私はずっとその心のそばにいようと決心したのです。女のコたちの心に触れていることができさえすれば、あとはもうなにもいらないんです……その姿が月明かりに照らされシルエットになって浮かび上がるのが見えました。ミッキー達はそのお店からは何一つ盗らず、そっとそこから出ていきました。

警官たちはまるでカワイイを取り締まっているみたい。

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世界の果ての愛以上の場所

見渡す限り一面のゴミの山だった。まるでここは世界の果てだよ。

スッポンポンの素っ裸。もうオシャレも何もあったもんじゃない。

ゴミの海に溺れたテディ・ベアはすすり泣くような声で語り始めた。

「でもいいんだ。ボクは幸せだった。ありがとう。生まれてきてよかった」

まるで『トイ・ストーリー3』(2010年)のような展開です。

モノたちの語る物語たちの墓場。ここには“カワイイ”もなければ“愛”もない。ただ“死”があるだけだ。

女のコは、ある日永久に動くことを止めて、誰もが最後にはここにやってくるんだよ。永遠に終わんないと思っていた夏休みにも、やがて最後の日がやってくるようにね。

新しいモノってすぐに古くなるよ。そして自分たち自身が古くなって、ゴミになって捨てられちゃう日が来るなんて気づきもしなかったんだ。

「……こわい」

そのコワイはカワイイと聞こえた。

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ないからこそ信じるんだ。それはもはや“愛を超えた愛”だ

命がけのことってあるよ。それは、生きること!

生きるってことは命がけの飛躍の連続さ。私たちは誰もが常に断崖絶壁の突端で目隠しをしてダンスしてる。

この地上に永遠の生命を持つ者がいるとすれば、その目から見れば、私たちの一生はまるで一瞬のきらめきにすぎないかもしれない。

まるで、『ドラゴンクエスト・ダイの大冒険』(1996年)ポップのような名ゼリフをミッキーは吐くのです。

真のたたかいとは負けるとわかっていながらもなお、そのたたかいを戦い抜くことなんだ。

決して勝てぬたたかい、真のたたかいを戦うために、人は愛という武器を発明したんじゃないのかな。愛なんてないのさ。もともとなかったのさ。言葉があるからあるように思っていただけさ。でも、ないものを信じるんだ。戦うためにね。

ないからこそ信じるんだ。それはもはや“愛を超えた愛”だ。

地獄の果てまで私を連れ去るがいい。そこは恐らくは永遠の無だ。

瞬間さ、この瞬間だけが生きているんだ。神さまなんていらない。私は神様に背を向けて、この瞬間を抱きしめていよう。

私たちはもう一度、最後の戦いに出発しなくては……。カワイイを超えたもの、世界のあらゆる“凛々”なるモノを探しにいかなくては。

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本当の最終章 すべて少女に帰るまで

少女たち——

なぜ目覚めなかったのか?

目覚めるチャンスはいくらでもあったのに。

目覚めなさい! 目覚めなさい、少女達!

世界をつくっているのは言葉なんです。言葉こそ世界であり、言葉を支配したものこそが世界を支配するのです。言葉のスタイリング、つまりは文体です。

なにしろ彼女たちが盗んだもっとも大きなものは僕の心だったんだ、だから僕は……

とフィリックス警部は『ルパン三世カリオストロの城』(1979年)みたいなことを言います。

そして問題のラストシーンです。

「それはそれはすごい数の女の子たちの集団でした。まるでこの世のすべての女のコ達が集まったかのようでした。

女のコたちは救助したミッキーとミニーを「わっ」と取り囲むと、あっという間に二人を自分たちの集団に紛れ込まれてしまいました。

二人は完全に女の子たちの集団に交じりあってしまいました。いや、女のコ達の中へ「帰っていった」といったほうが正確かもしれません」

「オシャレ泥棒をつかまえようと思ったら、この世のすべての女のコ達を逮捕しなければならないだろう」

中森明夫は「僕は君達が好きだ」と書いて『オシャレ泥棒』を終わらせています。村上春樹風の歌を聴け』(1979年)の叫びのようですね。

僕は・君たちが・好きだ

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目覚めた女のコたちがオシャレ泥棒を気持ちをひとつにして助けてくれた

これが私が感動した名作『オシャレ泥棒』のおおまかなストーリーです。

『名探偵コナン』で人々に紛れ込む怪盗キッドですが、もしかしたら『オシャレ泥棒』の真似をしたのかもしれない思いました。

なんでも「推理のトリック」に著作権はないそうです。トリックは他の作品から取り放題なのだそうです。だったらオシャレ泥棒から取っていても不思議はありません。

バットマン映画の『ジョーカー』(2019年)にも、ジョーカーがピエロの格好をした大衆の中に紛れ込んで追手の警察から逃れるというシーンがありました。

もしかしたら犯人が人々のあいだに紛れてわからなくなってしまうというネタは、中森明夫『オシャレ泥棒』が元祖ではないかもしれませんね。

わたしが知らないだけで、もしかしたら、有名な原典があるのかもしれない。案外『聖書』が元ネタだったりして。ありそうじゃない? 迫害された使徒が信徒の中にまぎれて消えた、とか。

でもここでよく考えてください。

『名探偵コナン』よりも『オシャレ泥棒』や『ジョーカー』の方がすぐれているのは、大衆がみずから彼らの格好をしているという点です。

怪盗キッドは見物人のあいだに逃げ去っただけですが、ジョーカーやミッキーは、彼らの格好を真似た人々のあいだに紛れ込んだのです。コスプレされるほど大衆から支持されているということです。

さらに『ジョーカー』よりも『オシャレ泥棒』がすぐれているのは、『ジョーカー』はコスプレイヤーに自分から紛れ込んだだけでしたが、ミッキーとミニーは隠れたのではなく、女のコたちが自発的に彼女たちを助けて隠してくれたのでした。

自分たちのキモチを表現してくれるヒロインとして、同世代の女のコたちが、ひとりひとりが集まって、気持ちをひとつに、オシャレ泥棒を守ってくれたのです。

今、読み返しても、おそるべき名作だと思います。

未読の方は、どうぞ読んでみてください。力いっぱいオススメします。

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このブログ著者の小説『結婚』
小説『結婚』
愛とは何か? 結婚とは何か? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。恋人のアスカはツバサのもとを去っていきます。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。  離れたくない。その叫びだけが残った。  全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。 引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。 そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。 それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自信が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。 アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。 死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。 生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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このブログの著者の小説『片翼の翼』
小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
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小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
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【この記事を書いている人】

アリクラハルトと申します。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。ランニング系・登山系の雑誌に記事を書いてきたプロのライターでもあります。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。その筆力は…本コラムを最後までお読みいただければわかります。あなたの心をどれだけ揺さぶることができたか。それがわたしの実力です。
市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。ちばアクアラインマラソン招待選手。ボストンマラソン正式選手。地方大会での入賞多数。海外マラソンも完走多数(ボストン、ニューヨークシティ、バンクーバー、ユングフラウ、ロトルアニュージーランド、ニューカレドニアヌメア、ホノルル)。地元走友会のリーダー。月間走行距離MAX600km。『市民ランナーという生き方(グランドスラム養成講座)』を展開しています。言葉の力で、あなたの走り方を劇的に変えてみせます。
また、現在、バーチャルランニング『地球一周走り旅』を展開中。ご近所を走りながら、走行距離だけは地球を一周しようという仮想ランニング企画です。
そしてロードバイク乗り。朝飯前でウサイン・ボルトよりも速く走れます。山ヤとしての実績は以下のとおり。スイス・ブライトホルン登頂。マレーシア・キナバル山登頂。台湾・玉山(ニイタカヤマ)登頂。南アルプス全山縦走。後立山連峰全山縦走。槍・穂・西穂縦走。富士登山競争完走。日本山岳耐久レース(ハセツネ)完走。などなど。『山と渓谷』ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。
その後、山ヤのスタイルのまま海外バックパック放浪に旅立ちました。訪問国はモロッコ。エジプト。ヨルダン。トルコ。イギリス。フランス。スペイン。ポルトガル。イタリア。バチカン。ギリシア。スイス。アメリカ。メキシコ。カナダ。タイ。ベトナム。カンボジア。マレーシア。シンガポール。インドネシア。ニュージーランド。ネパール。インド。中国。台湾。韓国。そして日本の28ケ国。パリとニューカレドニア、ホノルルとラスベガスを別に数えていいなら訪問都市は100都市をこえています。(大西洋上をのぞいて)世界一周しています。国内では青春18きっぷ・車中泊で日本一周しています。
登山も、海外バックパック旅行も、車中泊も、すべてに共通するのは必要最低限の装備で生き抜こうという心構えだと思っています。バックパックひとつ。その放浪の魂を伝えていきます。千葉県在住。

【この記事を書いている人】
瞑想ランニング(地球二周目)をしながら心に浮かんできたコラムをブログに書き綴っているランナー・ブロガーのアリクラハルトと申します。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。ランニング系・登山系の雑誌に記事を書いてきたプロのライターでもあります。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。その筆力は…本コラムを最後までお読みいただければわかります。あなたの心をどれだけ揺さぶることができたか。それがわたしの実力です。 市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。ちばアクアラインマラソン招待選手。ボストンマラソン正式選手。地方大会での入賞多数。海外マラソンも完走多数(ボストン、ニューヨークシティ、バンクーバー、ユングフラウ、ロトルアニュージーランド、ニューカレドニアヌメア、ホノルル)。地元走友会のリーダー。月間走行距離MAX600km。『市民ランナーという生き方(グランドスラム養成講座)』を展開しています。言葉の力で、あなたの走り方を劇的に変えてみせます。 また、現在、バーチャルランニング『地球一周走り旅』を展開中。ご近所を走りながら、走行距離だけは地球を一周しようという仮想ランニング企画です。 そしてロードバイク乗り。朝飯前でウサイン・ボルトよりも速く走れます。山ヤとしての実績は以下のとおり。スイス・ブライトホルン登頂。マレーシア・キナバル山登頂。台湾・玉山(ニイタカヤマ)登頂。南アルプス全山縦走。後立山連峰全山縦走。槍・穂・西穂縦走。富士登山競争完走。日本山岳耐久レース(ハセツネ)完走。などなど。『山と渓谷』ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。 その後、山ヤのスタイルのまま海外バックパック放浪に旅立ちました。訪問国はモロッコ。エジプト。ヨルダン。トルコ。イギリス。フランス。スペイン。ポルトガル。イタリア。バチカン。ギリシア。スイス。アメリカ。メキシコ。カナダ。タイ。ベトナム。カンボジア。マレーシア。シンガポール。インドネシア。ニュージーランド。ネパール。インド。中国。台湾。韓国。そして日本の28ケ国。パリとニューカレドニア、ホノルルとラスベガスを別に数えていいなら訪問都市は100都市をこえています。(大西洋上をのぞいて)世界一周しています。国内では青春18きっぷ・車中泊で日本一周しています。 登山も、海外バックパック旅行も、車中泊も、すべてに共通するのは必要最低限の装備で生き抜こうという心構えだと思っています。バックパックひとつ。その放浪の魂を伝えていきます。千葉県在住。
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