Mao『マオ』ユン・チアン。恐怖によって人を支配する。制裁、拷問、処刑があたりまえの独裁者・毛沢東の世界

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『ワイルド・スワン』の作者が描く毛沢東『マオ』

毛主席語録、赤い小さな冊子だった。かつて図書館で借りたことがある。

かつて文化大革命のおり、中国では、紅衛兵みんなが手にしてた本だと聞く。ページをめくったが、私は最後まで読み通せなかった。読んで面白いような内容ではなかった。

それに対して「マオ(毛)」という本は読みごたえがある。さすが『ワイルド・スワン』の作者、ユン・チアンの本だけのことはあった。かつて私はこの『ワイルド・スワン』を私の著書・私的十大文学に入れるべきか迷ったこともあった。それほどの名作である。

その作者が描く毛沢東。ワイルドスワンの中でも、文化大革命は欠かせない要素となっている。『ベルばら』におけるフランス革命のように。

『ワイルド・スワン』中国の三人の娘。満州国から文化大革命までの女三代記

私は北京で毛沢東のエンバーミングされたご遺体と対面したこともある。はたして毛沢東とは、いかなる人物だったのであろうか? 4000万人の人間を死なせた、人類史上最大の殺戮者と言われている。ヒトラーも、スターリンも、殺した人間の数では毛沢東にとうていかなわない。

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権力をつかむまで。スターリンのおかげでトップに立てた男

『マオ』によれば、ひとことでいえば毛沢東は権力志向の怪物だったらしい。民主的な選挙で選ばれたリーダーではないので、中国人民のことなんてこれっぽっちも考えていない。考えているとすれば中国のことだが、それも結局は自分のことでしかない。

自分が権力を握ることしか考えていないので、そのためには何が犠牲になっても構わないと思っていたらしい。その証拠に、後年、自分の権力を維持するために、内戦や核戦争をちらつかせているからだ。文化大革命も、なにも文化に革命を起こしたかったわけではなく、ただの権力闘争にすぎなかった。犠牲になったのは人民と、歴史文化だった。

そんな人物がどうして共産党のトップに立てたのだろうか? 他の人はなにをしていたのだろう。

毛沢東が共産党のトップに立てたのは、社会主義の親分であったソ連の、ボスであったスターリンが、スターリン主義者だった毛沢東を、共産党のトップにひきあげてくれたお陰らしい。なんでこんな民衆を虐待する人物がトップに立てたのかずっと疑問だったのだが、そういうことだったのか。

毛沢東は中国の人民から民主的な選挙で選ばれたことはただの一度もない。ただ偉い人(スターリン)から引き立ててもらったからトップに立てたのだ。選挙を経なくていいのなら、人民のことを考えない人物でもトップに立つことができるのだ。そんなトップが人世界をどう変えたのか。ユン・チアンの『マオ』が明らかにする。

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国共内戦。なぜ蒋介石は負けたのか?

『マオ』によれば、毛沢東の政治手腕の根本は、おのれの権力のためには人が死のうが構わない、というものであった。中国の利益より、自分の利益が優先というのがはっきりしている。

負けて台湾に逃げた中華民国の蒋介石は、中国国内での内戦を嫌がっていた。そんなことをすれば、敵である日本に利するだけというのは誰にでもわかることであった。

それに対して毛沢東は、これを蒋介石と毛沢東と日本軍の三国志と見ていた。自分の権力掌握のためには、内戦が起ころうが、中華民国が倒れようが、どれほど漢人が死のうが、そんなことどうでもよかったらしい。

蒋介石には「内戦になるぞ」と脅しをかけた。すると蒋介石は毛沢東の要求を受け入れた。中国をムチャクチャにしてやろうという人が、安定させようとする人を脅すのだから、世の中はひどいよ。自分の権力のためには、第三次世界大戦、核戦争すら辞さない男だったようだ。台湾に攻撃をしかけたのも、戦争状態にあったほうが自分の立場が有利だったからで、上陸して占領できると思っていたわけではない。

蒋介石自身の、人を解任できないなど断固たる態度をとれない人物像も中華民国にとっては災いとなったし、アメリカの援助も中途半端だった。人の命を大切にするアメリカや蒋介石に対して、人の命を何とも思わず犠牲にする毛沢東。どちらが勝つかは明らかだった。大惨事にビビッて引いてしまう政権は、大惨事を脅しにつかえる政権に対抗できなかった。

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核兵器が欲しい男。乱世だからこそ、支援を得ることができるという計算

なぜ中国が朝鮮戦争で北朝鮮に味方して血を流したのか。それは共産主義というイデオロギーを守るためではなかった。アメリカと代理戦争をすることで、ソ連から核開発技術の供与を得るのが目的だったそうだ。なるほど、そういうことかと納得した。当時は冷戦時代。アメリカ陣営とソ連陣営であらそっていた時代なので、毛沢東はソ連陣営の第一の子分として大きな力が欲しかった。それには米ソの対立が激しいほど都合がいいわけだ。

毛沢東はどうしても核兵器がほしかったらしい。中国を世界の強国にしたかった。後に占領できる見込みもないのに台湾に砲撃をしつづけたのも、緊張をつくりだしてソ連の支援を得るという戦略からだった。資本主義陣営との戦闘が激しくなれば、親分のソ連は出てこざるを得なくなる。しかし「核があれば中国だけで戦えます。ソ連の介入はいりません」といえば、ソ連は戦わなくて済むから、技術を援助しようかという気になる。そのようにしてまんまと毛沢東は核技術をソ連から手に入れた。

韓信の、平和になったら「狡兎死して走狗烹らる」のエピソードの逆を行くのが毛沢東だった。平和にならないように、世が乱れるように、という行動しているわけだ。

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絶対的権力者になってから。対価、見返りは人民の食料

『マオ』によれば、毛沢東の権力維持の方法は恐ろしいものだった。政敵は懐柔できなければみんな殺しにした。反対するものも全員殺せば、反対するものはいなくなる、という考え方だったようだ。おそろしい男だ。忠臣でさえ、疑わしきは殺した。それが積もって4000万人という死者数につながるわけだ。

民衆に対しても同様で、逆らうものは拷問し、転向しなければ殺した。中国にはありあまるほど人がいたので、何割かが死んだところで何ともないと毛沢東は思っていたらしい。事件を好む。戦乱を好む男だった。毛沢東が世に出るためには、乱世でなければならなかったのだ。

スターリンの死後、毛沢東はまずは共産主義陣営のトップに立とうとした。ブレジネフでは毛沢東の首に鈴をつけるのは無理だった。毛沢東の強みは何よりも人民の数、すなわち兵隊の数だった。

工業も熟していないのに、軍事大国になろうとした。技術援助してくれるのはソ連のみ。資金はすべて食糧で支払った。そのために農民は飢え死にした。この餓死も4000万人の中に含まれる。

経済音痴で、コメを食べるからスズメを退治したら、バッタなどの害獣が増えて飢饉になったのは有名は話しだ。しかし読むと、飢饉の最大の原因は、ソ連の武器技術供与への見返りとして食料を渡したことが最大の要因のようだ。もっとも食料で払った結果として餓死したのではなく、餓死することがわかっていて食料で支払ったのが毛沢東らしい。

中国を世界最強の国にして、自分の影響力を世界的なものにするために、贈り物のような援助もしていたらしい。その援助の原資は食料だった。人民の十分の一が餓死しても、核爆弾が欲しかったんですね。

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恐怖によって人を支配する。制裁や拷問や処刑があたりまえの世界

中国人の中にも気骨のある人たちもいた。しかし結局、負けて粛清されてしまう。軍も、ある程度以上の大きな部隊を動かすにはすべて毛沢東の許可が必要だったので、クーデターなどが起こせなかった。

人のいい人が負けて、人の悪い人が勝つ。『マオ』を読んでいると、そういうふうに見える。正義の理念が勝つわけではないという見本、そして独裁制度はダメだという見本のような人、本であった。

共産主義というイデオロギーも、毛沢東にとっては、権力奪取のために利用しただけで、主義者ではない。蒋介石が共産主義だったら、毛沢東は資本主義者だっただろう。

恐怖によって人を支配する。拷問や死刑があたりまえの世界。個人崇拝を強化し、若者を扇動し、暴力やカオスを容認する。気骨のある人を、何度も何度も心が折れるまで自己批判させる。そして奴隷状態にする。疑わしきは死刑。ライバル同士を競わせ、力を消耗させ、勝った方を殺戮する。そのようにして中華を支配した男だったらしい。一代の英雄には違いない。しかしひどいな。

いつか日本も毛沢東政権のような時代が来るかもしれない。やっぱり民主主義が大事だよね。次の選挙で落とせるようにしておかなきゃ。それがセーフティーネットだ。

独裁の方が経済もすばやく発展するし、社会も時短で発展するし、衆愚政治よりも独裁のほうがいいという人もいるが、私は独裁はダメだと思うよ。

議論百出して遅々として進まないのが民主主義のいいところなんじゃないか? いっきに戦争になったり、恐怖政治になったりしないもの。

民主主義が嫌いで独裁制がいいなんて思う人は、ユン・チアンの『マオ』を読んだらいいと思う。自分のことしか考えない男が、いかにエゴを他者に、社会に押しつけていくか。今日のドナルド・トランプに通じる面白さがあった。ユン・チアン。さすがである。ものすごく面白かった。まるでホラー小説を読んでいるかのように面白かった。

毛沢東のような人物を見ていると、老化や寿命といったものは人類の福音だという気がします。このような人物が不死だったら、いったいどうなってしまうのか?

いい人も死んでしまうが、悪い人もまた死んで消える。それが一番なのかもしれません。

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