千葉県知事選挙がありました。
先日、千葉県を南下して南房総まで車中泊の旅をしたのですが、知事選挙の最中ということもあり、あちこちに選挙掲示板が立てられていて、けっこう目立ちました。
ところで旅をしていて気づいたことがあります。
選挙の公営掲示板に候補者のポスターが貼られている場所と、貼られていない場所があるんですね。それも場所によって違います。A市ではポスターが貼られていないのにB市では貼られてあったりするのです。
選挙というのは選挙管理委員会という組織があって、特定の人や政党に有利にならないように公平な運用がなされているはずです。
それなのに顔ポスターが「貼られている人」と「貼られていない人」がいるのです。これは不公平なことではないでしょうか。だって「貼られている人」が当選に有利に決まっています。
どうして「貼られている人」と「貼られていない人」が出てしまっているのでしょうか?
選挙ポスターは自分で貼る! って……金持ちに有利じゃん!
疑問に思ったので調べました。なんと選挙ポスターは自分で貼るんだそうです。
って……お金持ちに有利ジャン。選挙って公平な勝負じゃなかったの?
言い換えれば「貼ってある人」はお金(業者に発注)、ツテ・コネのある人で、「貼っていない人」はお金がない人ということです。
なんだか釈然としません。選挙というのは、お金持ちや二世議員が有利にならないように、できる限り公平に行うべきものではなかったのですか?
選挙ってぜんぜん公平じゃない。お金持ちが当選するカラクリ
現行の「自分で貼る」ルールでは、あきらかにお金持ちに有利です。千葉県内に公設掲示板は1万箇所ほどもあるのではないかと思います。500枚で20万円としても600万円ほどがポスターの貼りだしだけでかかるということになります。もちろんポスター印刷費は別です。
その他に選挙の供託金といって知事選の場合は300万円がかかるそうです。供託金は「有効投票総数の1/10」以上の票獲得があれば返還されるそうですが、そこまで票がとれないと没収だということです。
おふざけ立候補者を排除するのが目的だと思いますが、選挙に勝った人には供託金を返す必要ってあります? 選挙必要費用として当選、落選に関係なく寄付していただけばいいのでは?
どうにもエスタブリッシュメントに有利な制度設計だという気がして仕方がありません。
選挙の公設掲示板は、市町村単位の選挙管理委員会が発注した土木業者がカケヤなどを用いて決められた場所に設置しているはずです。選挙のポスターなんて掲示板を設置するときに、一緒に貼ってしまえば済む話ではありませんか? 「何月何日までに×枚のポスターを県庁の選挙管理委員会に持ってきなさい」と指示するだけで、あとは都道府県から市町村、そして地元の業者へとポスターを流せば、掲示板設置の時に一緒にポスターを貼れるはずです。
それをどうしてやらないのでしょうか? 簡単にできるはずです。その費用としてすでに供託金300万円を支払っています。
これはお金持ちの既存の特権階級が有利に選挙戦を戦うためのカラクリなのではないでしょうか。
ポスターの貼りだしには、業者に頼むだけではなく、地元の支援者(市町村議員など)を通じてボランティアを頼んだりするそうです。あきらかに二世議員が有利になっていませんか?
ポスターを貼る費用は出ませんが、ポスター印刷費用は上記の「法定得票に達した候補者」のみには公費負担があるそうです。負けた方には何も戻ってきませんが、勝った方にはポスター作製費も返ってくるというわけです。
またしても公平ではありません。勝った負けたとは別の問題ではありませんか? 同じ金額の供託金を支払っているのですから、両者ともに「戻ってこない」ことにすれば公平なのに……。
どうして選挙に勝った方にだけ供託金やポスター印刷費用が戻ってくるのかは、たぶんどういう人たちがこの制度をつくったかと密接に関係があるのでしょう。もちろん選挙に勝った人たちとその取り巻き連中がこの制度を設計しているのです。
いくら立候補しても、生まれ育った地元の掲示板に顔写真がなければ、甲斐がない
千葉県内を北の方から南の方へとドライブしていく中で、ふと感じた選挙の疑問。
なんとポスターは候補者が自前負担で貼るということでした。選挙管理委員会がまとめて貼れば公平なのに……。
お金がある候補はすべての掲示板にポスターを貼っていますが、そうでない候補はほとんどの掲示板にポスターが貼ってありませんでした。
しかしA市を過ぎて、B市に入ったときのことです。なんとA市では貼られていなかったある候補者のポスターがB市では急に貼ってあるのを見て驚きました。これはどういうことなのでしょうか?
「地元(出身地)なのかな……?」とわたしは想像しました。
槇原敬之『遠く遠く』に「遠く遠く離れていても僕のことがわかるように……」という歌詞があります。
楚の項羽は「富貴にして故郷に帰らざるは、錦(にしき)を衣(き)て夜行くが如し、誰かこれを知るものぞ」といいました。
いくら知事選挙に立候補しても、生まれ育った地元の掲示板に顔写真がなければ、甲斐がありません。どんなに当選の可能性が薄い立候補者でも、せめて地元ぐらいは善戦したいと願うものなのだろうなあと思いました。
そう考えると、A市ではポスターが貼られていないのにB市では貼られてあったりする現象が、選挙の不公平のおかげで、なにか人間くさく、切なく思えてきたのでした。