被相続人の死亡した日がはっきりしている場合
ここでは私の相続の実体験のことを書いています。すべて事実なので、みなさんの参考になるのではないでしょうか?
被相続人の死亡した日がはっきりしている場合、相続遺産の基準日ははっきりしています。現金の場合はその日を基準にすればいいのです。
日々、価格が変動する株式や投資信託を相続する場合、しかも相続税の対象となる場合、税務署に申告する金額は以下の①~④の中から選べます。
①死亡日の終値 ②死亡月の終値の平均 ③死亡前月の終値の平均 ④死亡前々月の終値の平均
①~④のうちから納税者は(自分に有利な)金額の低い場合を選べばいいのです。
株式にはあるが、投資信託に終値という概念はない
証券取引所で上場している株式の場合は、時間で価格変更しますのでその日の終値という概念があるのですが、投資信託の場合そもそも終値という概念がありません。
①死亡日の終値 ②死亡月の終値の平均 ③死亡前月の終値の平均 ④死亡前々月の終値の平均
上場株式の場合は、①~④の数字を自分で調べることもできますが、投資信託の場合は証券会社に聞かなければ①~④の数字はわかりません。
私の場合、ちばぎん証券に問い合わせたのですが、当該投資信託の②から④の数字はもっていない(出せない)と言われました。つまり①の数字を採用するしかありませんでした。
しかも終値という概念がないことから「死亡日の終値」という税務署の指定は「翌日の評価額」という解釈になるそうです。(ちばぎん証券・談)
残高証明などで、その日を指定して、その数字を納税の基準額としてください。
検死解剖されると、死亡診断書ではなく、死体検案書が発行される
独居老人が死亡した場合など、死亡日がはっきりとしない場合があります。その場合、医者の検死解剖などが入ったりします。
ウチの場合も独居老人の死亡で検死となりました。死体検案書(ふつうは死亡診断書ですが、検死になった場合は死体検案書が発行されます)は「●月下旬と推定される」という表現でした。これが役場の住民課の用語に変換されて死亡日は「推定21日~30日のあいだ」という表現となりました。戸籍にもこの表現がとられていますので、これが正式な死亡日ということになります。
さて、困りました。相続税の税額はどの日を基準にすればいいのでしょうか?
独居老人の死亡など、死亡日が明確でない場合はどうするか
「推定21日~30日のあいだ」このように死亡日がスパンをもって表現されている場合、ちばぎん証券によれば、30日を採用するのだそうです。「今」になるべく近い故人の最終日を採用するのですね。21日から30日のあいだでもっとも投資信託の基準価額が低かった日を採用できるのかとはじめは想像していたのですが、そうではありませんでした。
最安値の日を選べればよさそうに思えますが、複数の投資信託を買っている場合、それぞれの投資信託によって最安値日は違いますから、スパンをもって選択肢があたえられるとむしろどの日を選択すべきが迷ってしまいます。
だからこのように明確に指定してもらい、気持ちが割り切れてありがたかったです。
複数の投資信託、株式を持っている場合、この投資信託は①を、この債券は②を、というような都合のいい選択はできません。
①と決めたなら、すべての株式、投資信託について①を基準日として相続税評価額を算出しなければなりません。
証券会社と銀行の証券部門で違う対応。税金がかかるケースとかからないケースがある
私の場合、銀行系の投資信託(千葉銀行がやっている投資信託)は、投資信託を時価で換金して現金で指定口座に振り込んでもらえることになりました。この場合、現金を相続したものとして、株や投資信託の儲けに対する売却益キャピタルゲイン(20.315%)はかからないのだそうです。※あとで聞いたら確定申告らしい。
なるほどありがたいことです。相続人の中には株(投資信託)などわからないという人もいたので、もともと売却して換価分割する方針(遺産分割協議書)でした。売却益に税金がかからないとはありがたい。
しかし証券会社系の投資信託(ちばぎん証券。千葉銀行とは別会社です)は対応が違いました。新規顧客として新しく証券口座をつくって、あくまでも証券として遺産相続するのがルールだそうです。証券会社には売却して換価分割する遺産分割協議だと言ったのですが、銀行系投資信託のように現金化して振り込むことはしてくれませんでした。証券口座開設には審査もあり、投資信託を引き継ぐときには目論見書やポートフォリオの説明(重要事項説明)までありました。どうせすぐに売るって言っているのに新規顧客のような扱いです。財務省あたりから説明責任が求められていてルールなんでしょうけどね。
しかも証券会社の投資信託の場合、同様に代表相続人が日づけを決めて売却の指示を出さなければなりません。銀行系投資信託の場合、粛々と自動的に換金されるので代表相続人に責任(自責の念)はありませんが、証券会社系証券の場合、売却に対して代表相続人には責任が生じます。
これだけならまだしもだったのですが、きわめつけは銀行系投資信託の場合にとられなかった売却益に対する税金が、証券系投資信託の場合にはちゃんと取られるというのです。たとえ相続であっても。
同じ相続で、同じ投資信託なのに、銀行系は税金がとられない(※あとで聞いたら確定申告が必要らしい)のに、証券会社系は税金がとられるというのはおかしいのではないか? そう思って問いただしましたが、そういうルールなのだそうです。なんで別ルールなんでしょうか。銀行と証券会社とでルールとなる法律が違うのが原因なのかもしれません。
被相続人のNISA枠に対しても、キャピタルゲインがかかってくる
相続の場合の、証券会社系投資信託の売却益ですが、被相続人の買い値と相続人の売り値との差で計算されるそうです。はあ、そうですか。
ちなみに被相続人がNISA(非課税口座)として購入した投資信託にも税金がかかってきます。相続人のNISA口座に入れられれば別ですが、相続人のNISA枠が既に満額使われている場合には、キャピタルゲイン(売却益に対する税金)がかかってきます。
そのときの売却益の計算方法ですが、相続人の証券口座にうつした時点の価格と売却価格との差で計算するんだそうです。非課税期間を繰り越した旧NISAの売却益計算方法と同じですが、どうにも釈然としません。
NISAがそのように計算するのならば、一般の投資信託だって相続人の口座にうつした時点と売却価格の差で計算すればいいじゃない。なんで一般の投資信託は当初購買価格との差なのに、NISAだけ移した時点との差なんでしょうかね?