ドナルド・トランプもメチャクチャ、イーロン・マスクもメチャクチャ
アメリカのトランプ大統領が、仮想敵国の中国のみならず、日本を含めた同盟国にさえ関税戦争をしかけてめちゃくちゃなことをやっています。トランプがめちゃくちゃやっているのは、外交だけではありません。国内的にもムチャクチャやっています。
彼が新しく設置した連邦政府の役所が政府効率化省DOGE。政府の無駄をカットして、怠け者をクビにする省です。仕事を自動化、効率化するという省で、トランプ大統領の肝いりで設置されました。そのトップは世界一のお金持ちの一人であるイーロン・マスクです。
イーロンは買収したツイッター社で社員を激減らししたように連邦政府の職員を激減らししました。そしてプラットフォームの名前を独断でX・エックスに変えました。ツイッターの方がいい名前だったのにね。ツイートするって言えたじゃん。今はエックスするとでもいうのかしら?

ねえ、ぼくとエックスしないか? いいにくいわ!
政治・行政経験のないビリオネアが、処刑人のように振舞う
イーロンマスクは連邦職員、つまりお役所の公務員にメールを一斉配信しました。
「今週一週間、あなたが何をしたか、何を達成したか答えなさい。答えられないならここ(役所)にいるべきではない」
これまでに自分の仕事の存在意義を問われたことなどないアメリカの国家公務員たちはパニックになりました。
「あなたの部署が何をしていて、なぜ存在するのか教えてなさい。それがどのようにアメリカの役に立つのか教えなさい」
独裁者のような上官が急に現れて、死刑執行人のように振舞うものですから反発は大きいものでした。メールを無視する者も多かったようです。しかし返信しないと脅されました。いや、脅しなんてものじゃなくて本気のクビ宣告でした。
「金曜日までに提出しない場合、そこはあなたに適切なポジションではないかもしれません」
イーロンマスクが連邦職員(国家公務員)に対してやろうとしたことは、ツイッター社でやったことほぼ同じです。存在意義を問い、利益を生み出していないとわかれば、退職をうながすのです。
「結果が出なかったら、あなたの仕事は必要ないと判断します」
「おまえなど価値がない」と面と向かっていわれたら、仕事にプライドがある人であればあるほど、みずから辞めてしまうことでしょう。実際にそうなりました。
「おカネ(税金)はどこに行き、何に払っているのでしょう? 業務と結果のレポートを提出しなさい」
マネージャー(課長クラス)たちは、あわてて会議を開いて、マスクへの返信の文書を足職場として作成しました。イーロンに屈服し、念入りなレポートを書く人もいれば、「政府はビジネスではない。民間企業と同じようには動いていない」と毅然と反論する人もいたそうです。
行政はビジネス? お役所VS民間。官民バトル
行政はビジネスではない、というのはじっさいに一理あるのです。たとえばコロナ禍におけるワクチン接種の仕事などは、金銭的なリターンを期待しての業務ではありませんでした。たしかに役所というのはそういう面はあるのです。役所はほとんど誰も通らないような林道を保守管理したりしています。金銭づくではできないことです。
役所というのは、赤字でもやるときにはやるものです。たとえば、民間だったら即刻廃線になる赤字のバス路線でも維持したりします。
「政府はビジネスではない。民間企業と同じようには動いていない」と反論した人はこういうことを言いたかったわけですが、マスクは一言反論しただけでした。
「それが問題だ」
クビになる人の心情とか、今後の生活とか、そういうことはイーロンは一切考えていません。まさに効率化、それだけでした。
「連邦政府は老人ホームではない。働かない人はいらない」
こちらはこちらで理屈が通っており、支持する人も多いのです。
イーロンはわずか数週間で、連邦職員の15%をカットしたそうです。一般事務員だけでなく政府の高官も何人も退職しました。これを人件費の支出が減ったと見るか、欠くべからざる公的な仕事が人不足で滞ってしまっていると見るべきか。
イーロンマスク流・公務員をクビにする方法
厳密には、イーロンマスクは、連邦職員をダイレクトにクビにしたというよりは、露骨なプレッシャーをかけて、プライドに訴えかけて、みずから辞職せざるをえないような立場に職員たちを追い込んだのでした。
たとえば日本の公務員はそう簡単にクビにできません。それは法律で身分が保証されているからです。法律にもとづいてものごとを執行するのが公務員です。だから法律にもとづかない解雇はできないのです。すべては法のもとで動く。そしてそれはアメリカでも同じことです。
アメリカの場合、民間企業ならば理由なしに従業員を解雇できるそうです。不動産屋のトランプの口癖は“You’re fired!”(お前はクビだ!) ですから。
しかしアメリカ連邦職員などの公務員の場合は、不法なやり方では解雇できません。ですからイーロンのほんの数か月での大量解雇も、解雇という言葉を使ってマスコミ報道されていますが、実際にはプライドを傷つけられたことによる自主退職です。解雇するためには、法に基づいた手続きをしなければなりません。
「今週、何の仕事をして、いくらコストがかかりましたか? あなたの存在意義を私に教えなさい」
投票の結果、民意で選ばれたトランプ大統領に言われるのならまだしも、なんの選挙も経ていない、政治経験も行政経験もないイーロンマスクに、刑事罰の被告のような立場に立たされて、上から目線で言われることが、一部の連邦職員は我慢できませんでした。
企業を大きくした方法で、政府を小さくする
マスクの権力はトランプからあたえられたものです。なぜコストカット省庁のトップに抜擢されたかというと、トランプの大統領当選に、イーロンのSNSでの応援が決定的だったからだと言われています。そして政府の効率化はトランプの公約でもありました。
「何が問題で、どう修正するか?」
イーロンが政府効率化省でやったことは、テスラやスペースXでCEOとしてやってきたことと同じです。速く、無慈悲に、誤ることもなく、無駄をカットして、企業を大きくしてきました。いわば企業を大きくした方法で、政府を小さくしようとしたのでした。
成功した民間企業のやり方を、政府機関に適用したら、過剰なほどの反発を引き起こし、アメリカでは大問題となりました。それが今回のケースです。イーロンのメールで政府の高級官僚も辞めたし、上院議員もイーロンに反発しました。その反論の主たる論拠は「政府はビジネスと同じようには動かない。イーロンは行政のことが何もわかっていない」という批判です。権力をもてあそんでいると批判されたりもしています。
「イーロンがカットした政府の資金(USAIDなど)で暮らしを立てている人がたくさんいる。彼らはどうすればいいのか? イーロンは許せない」と批判します。それに対してイーロン(トランプ)は「飯は自分で稼いで食え。アメリカの税金で食うんじゃない」と主張しているわけです。現在、アメリカ国民の溝は大きいそうです。国家を二分する勢いだとか。トランプを認めるか、認めないか。しかし、そもそも大きな政府を求める民主党に対して、共和党は小さな政府を求める党派です。その共和党が大統領を出したのですから、これはイーロンの仕事というよりは共和党トランプの仕事であり、官民戦争としても見れますが、共和党と民主党のたたかいと見ることだってできるのです。
働きアリには、働かないアリもいる。80対20のパレートの法則
この件に関して私の私見は、「働きアリには、働かないアリもいる」ってことでしょうか。実際、組織には暇な人(ゆとり)が必要らしいですよ。これはパレートの法則、別名80対20の法則といいます。
みんながいっぱいいっぱいだったら、イレギュラーな仕事に対応できません。みんなが目いっぱいだったら、災害が起きた時に誰が対応できますか?
アリの群れでも、ものすごく働きものに見える働きアリは、実際によく働くのは全体の20%で、必要に応じて働くのが60%、ほとんど働かないのが20%だそうです。
そしてよく働くアリだけを集めて新集団をつくっても、ほとんど働かないアリだけを集めて新集団をつくっても、新集団はやがてよく働く20%のアリと、必要に応じて働く60%のアリと、ほとんど働かない20%のアリに落ち着くんだそうです。
つまり働かない20%のアリというのは組織の黄金律の上で必須なんですよ。しかしイーロン・マスクのやり方だと、この働かない20%をバッサリ切ってしまうのです。
この組織がうまくいくでしょうか?
イーロン・マスクは将来、アメリカ大統領を狙う
みなさんはどう思いますか? イーロン・マスクに賛同するでしょうか?
とくに日本の公務員のかたは要注意ですよ。日本というのはたいていアメリカのマネしますから。小池百合子の「都民ファースト」はトランプの「アメリカファースト」のマネです。今から数年後には「日本版・政府効率化省をつくろう」と必ず誰かが言い出します。イーロンマスクにキャラクターが最もよく似ている日本人はホリエモン・堀江貴文ですが、彼がイーロンの役を引き受けますかね?
ホリエモン多動力。国立大学に合格する人の時間(脳ミソ)の使い方
マスクは政府をビジネスにしようとしているという批判があります。それは当たっているでしょう。ツイッター社を買ったように政府を買ったのだ、という意見もあります。トランプの大統領選への莫大な資金援助は、そのための投資だったのでしょうか? DOGE(政府効率化省)は敵対的買収?
かつて宇宙開発はNASA(政府)の仕事でした。しかし現在それはスペースX(民間企業)の仕事になっています。
このようにかつては国の仕事が民間の仕事になったという例はいくらでもあります。日本でも国鉄や郵政など国の仕事だったものが民営化されています。その感覚で政府そのものを民営化しようとしているのかもしれません。
イーロン・マスクは将来、大統領を狙うかもしれません。彼の夢は人類を火星に送ることです。人類を火星に送るなら、民間企業スペースXのCEOではなく、NASAの実質的な最高司令官でもあるアメリカ大統領(NASA長官はアメリカ大統領が指名するので)のほうが、ずっと実現可能性が高そうです。遠回りのように見えて、じつは近道でしょうからね。