世界七不思議は誤訳。正しい訳は「世界七驚嘆」
世界遺産エフェソス。この街にはかつて古代の世界七不思議のひとつ「アルテミス神殿」がありました。
日本語では世界七不思議といいますが、誤訳です。別に不思議なところはありません。
もともとは「Seven Wonders」。ワンダーボーイのワンダーです。ワンダーには「不思議」の他に「驚異の」「驚嘆すべき」「奇跡」などの意味があります。
もともとは世界の七つの「驚嘆すべきもの」という意味だったのですが、誤訳により「不思議なもの」となってしまいました。
正確には「世界の七つの驚嘆すべきもの」。世界七驚嘆というのが正しい訳です。
迷惑系ユーチューバーは「ヘロストラトスの名声」。アルテミスの神殿放火消失事件
エーゲ海に面したトルコの古代遺跡エフェソス。世界遺産にも登録されています。
この街に「アルテミス神殿」があったそうです。しかし今は柱一本を残して何もありません。ピラミッド以外の6驚嘆は、すべてこの地上から消えてしまいました。本当に残念です。
アルテミスの神殿は「自分の名を不滅のものとして歴史に残すため、最も美しい神殿に火を放った」ヘロストラトスという男によって消失してしまいました。日本でいう『金閣寺』放火消失事件ですね。
いかなる手段を使っても有名になろうという「迷惑系ユーチューバー」みたいなのを英語圏では「ヘロストラトスの名声」というそうです。それほどアルテミスの神殿の消失が人々にとって衝撃的な大事件だったということですね。
エフェソス古代遺跡(世界遺産)
ヘルメス神です。トルコは現在イスラム教の国ですが、遺跡関係は基本的にギリシア神話が中心です。
ヘルメスの靴。足についた宙に浮くためのバネ(足底アーチとアキレス腱)
エフェソスのトイレ。完全なるニーハオトイレですね。人前で排泄することは恥ずかしいことというのは、私たちが思っているよりも文化的なもので、本能的な羞恥心ではないのかもしれません。
『アントニーとクレオパトラ』もこの道を歩いたという話しがあります。
いまは石の廃墟ですが、全盛期はさぞや立派な都市だったのでしょう。
「それゆえ、人は父と母を離れてその妻と結ばれ、二人は一体となる」
新約聖書「エフェソの信徒への手紙」のエフェソはこのエフェソスのことです。イエスに最も愛された弟子・使徒ヨハネが、マグダラのマリアが、母マリアとともに移り住んだ町という話しも残っています。
現在のイスラエルからフランス方面に去ったと言われていますから、ちょうど、その途中にエフェソスはあります。
ローマが支配した地域には大劇場がありますね。政治演説も行われたわけで、都市の必要不可欠な機能のひとつでした。今でいうと……テレビみたいなものかな。
セルシウス古代図書館
こちら図書館の跡地です。古代三大図書館のひとつセルシウス図書館。
西暦265年に火により書物は消失してしまいました。ゴート族の襲撃とも、火事とも言われています。
しかしエフェソスが滅んだのは、ゴート族の襲撃によってではなく、森林の伐採により川が土砂を運び、港が埋まってしまったためらしい。港湾都市として発展したのに、肝心の港湾が遠くなってしまったために、人々は街を捨てて移り住んだそうです。
古代人の足跡。
「万物は流転している」「神は昼であり夜である。冬であり春である。いくさであり平和である。空腹であり満腹である」
ラファエロの『アテナイの学堂』にも登場する、世界を対立するふたつの相剋とみた哲学者ヘラクレイトスもエフェソスの出身です。
歴史の重みを感じる街(遺跡)でした。