ダンス力とマラソン力は正比例ではない

私はランナーです。ダンサーではありません。それでもトレイルランニング中に、木の根などを巧みに避けながら、下り坂をステップを刻んで猛スピードで駆け下るときには、自分のことをダンサーのようだと感じたものでした。細かくステップを刻まないと転倒してしまいますから。
ダンスといえば、市民マラソン大会のレース前に、エアロビのインストラクターが登壇して、みんなでウォーミングアップのために体を動かすというシーンがよくありました。そのときの特に高年齢層ランナーの踊れないっぷりといったら、一緒にいて恥ずかしくなるぐらいでした。エアロビクスの奇妙な動きにまったくついていけず、イントラも苦笑していました。しかしそんな運動音痴にみえる高齢者ランナーでも、いざ走るとものすごく強いランナーだったりするから、よくわからないものです。ダンス力とマラソン力は正比例しません。
最高に高速ピッチを刻もうとしたら、その場ステップをすることになる
私はランニングには慣れているので、ステップを刻むことにかけては自信があります。足がもつれて倒れてしまうという心配はありません。
私はランニングの書籍を出版していて、その中でピッチ走法よりも、ストライド走法を推奨しています。それはなぜかというと、あまりにも高速ピッチばかり意識しすぎると、その場ステップになってしまうからです。実験してみましょう。最高に高速ピッチを刻もうとしたら、一切前に進まずにその場ステップをすることになります。そうです。ダンスのステップのようになってしまうのです。これでは前に進みません。ピッチが速すぎると、いつまでたってもゴールラインを切れないのです。
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雑誌『ランナーズ』のライターが語るマラソンの新メソッド。ランニングフォームをつくるための脳内イメージ・言葉によって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化して速く走れるようになる新理論。言葉による走法革命のやり方は、とくに走法が未熟な市民ランナーであればあるほど効果的です。あなたのランニングを進化させ、市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●言葉の力で速くなる「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」「かかと落としを効果的に決める走法」「ハサミは両方に開かれる走法」
●腹圧をかける走法。呼吸の限界がスピードの限界。背の低い、太った人のように走る。
●マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」とは?
●究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」の本当の意味は?
●【肉体宣言】生きていることのよろこびは身体をつかうことにこそある。
(本文より)
・マラソンクイズ「二本の脚は円を描くコンパスのようなものです。腰を落とした方が歩幅はひろがります。腰の位置を高く保つと、必然的に歩幅は狭まります。しかし従来のマラソン本では腰高のランニングフォームをすすめています。どうして陸上コーチたちは歩幅が広くなる腰低フォームではなく、歩幅が狭くなる腰高フォームを推奨するのでしょうか?」このクイズに即答できないなら、あなたのランニングフォームには大きく改善する余地があります。
・ピッチ走法には大問題があります。実は、苦しくなった時、ピッチを維持する最も効果的な方法はストライドを狭めることです。高速ピッチを刻むというのは、時としてストライドを犠牲にして成立しているのです。
・鳥が大空を舞うように、クジラが大海を泳ぐように、神からさずかった肉体でこの世界を駆けめぐることが生きがいです。神は、犬や猫にもこの世界を楽しむすべをあたえてくださいました。人間だって同じです。
・あなたはもっとも自分がインスピレーションを感じた「イメージを伝える言葉」を自分の胸に抱いて練習すればいいのです。最高の表現は「あなた」自身が見つけることです。あなたの経験に裏打ちされた、あなたの表現ほど、あなたにとってふさわしい言葉は他にありません。
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ランニングに喝を入れてくれるダンスのステップ。脳トレにもなる
このように書籍の比喩にダンスを持ち込むぐらいですから、昔からダンスのステップには興味がありました。実際、私がエアロビクスなどをやってみると、ダンスの奇妙な動きを足が再現できなかったりします。右左右左ワンツーワンツーのリズムに慣れすぎているためです。はああ、ランニングってカンタン!
体力、脚力には自信があるので、ジャンプしたり弾んだりすることはできるのですが、右足二回連続ステップとか、横に足を出すなどの動きは単調なランニングにはありませんので、意識して足を動かさないとなりません。でもそれが頭の刺激になっていいのです。ランニングは単調なピストン運動の繰り返しなので、普段は運動しているというよりは瞑想しているように、意識をオフにして自動運転しています。そこに喝を入れてくれるのがダンスのステップ。ランナーにとってダンスのステップはおすすめの気分転換になるといえるでしょう。脳トレにもなります。
ステップ踏まなければ意味がない
同じ足系の競技として、ランナーにとって、やればできると思えるのがダンスのステップです。私の経験からいうと、前を向いている分にはなんとかダンスの動きを再現できますが、ターンして後ろ向きになったりすると、てきめん頭が混乱してステップが踏めなくなります。やはり脚力の問題というよりは、脳が原因でダンスのステップを踏めません。
ちなみに手の振り付けは完全に捨てています。脳に余計な負担をかけるので。足のステップだけ踏めれば、ランナーとしてはそれでいいのです。
ジャズの格言に「スイングしなければ意味がない」というのがありますが、ダンスマン・ランニングとしては「ステップ踏まなければ意味がない」といったところでしょうか。最近では普段のマラソントレーニングのあいまにダンスステップを取り入れて、途中の公園や赤信号でステップを踏んでいます。
ロングストライドを指向した普段のマラソン練習だと、どうしてもピッチ(ステップ)はゆっくりめになります。それを補ってくれるのが、信号待ちや、公園などジョギングの途中で軽くプレイするダンスのステップ。小刻みでハイビートなステップがシャキッと頭を切り替えてくれます。そのシャープなダンスステップでマラソンを走れたら最高ですね。
目標はカズダンス。モハメッドアリのアリシャッフル。ブルース・リー
そんなダンスマン・ランニングとしての究極の目標はカズダンスです。サッカーのカズさんが得点シーンなどで披露していた歓喜のダンスですね。あれ、どうやってステップ踏んでいるんだろう?
モハメッド・アリのアリ・シャッフルや、ブルースリーのジークンドーステップはもう習得しました。
信号待ちなどの足が止まっている時間にステップを刻んでいるのですが、同じく赤信号で止まっている車のドライバーは面食らっているだろうな。カズダンスでもはじめたら。
なんだ、あいつ。なにかいいことでもあったのか? って。

