ラスベガス「シーザーズ・パレス」の主ジュリアス・シーザー
著者はガイウス・ユリウス・カエサル。英語名ジュリアス・シーザー。紀元前100年ちょうどに誕生した人物です。56歳(BC44年)に「ブルータス、おまえもか」と叫んで暗殺されています。
私が何でカエサルの本を読んでみようと思ったかというと、ラスベガスの「シーザーズ・パレス」の影響としかいいようがありません。ラスベガスのストリップストリートには、シーザーズ・パレス(シーザーの宮殿)というメガホテルがあります。端から端まで歩くだけで疲れてしまうような超巨大ホテルです。
ホテルのテーマは「ローマ帝国」風でした。外観や柱などが「それっぽく」なっているホテルです。コロシアムという巨大なステージもあります。私が行ったときにはセリーヌ・ディオンがショーをやっていました。近くにはベネチア風のベネチアンや、フランス風のパリスなどカジノホテルが立ち並んでいます。ホテルを移動すると、ホテルのテーマがガラッと変わるので、ラスベガスの散策はひじょうに面白いのです。
私は世界中の街でラスベガスが一番好き。
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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。
「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」
「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」
※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。
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『ガリア戦記』の読書感想文
この21世紀の現代までシーザーの宮殿として称えられる男、カエサルの人物を知るために、読んでみようじゃありませんか。カエサルが書いた「ガリア戦記」を。
フィクションではありません。戦記物のノンフィクションです。本の内容は、ローマのカエサルが北伐するという軍記ものです。こういう民族と、こういう戦略で戦った、ということが書いてあります。
最終的にはフランス最初の英雄とされるウェルキンゲトリクスを降伏させるところでカエサルは筆をおいています。まあいってみれば自分の功績を喧伝するような内容になっているわけです。
自分のことを「カエサル」と呼び、できるだけ客観的な記述を心がけたことから、当時の歴史を知るための一級資料として、またラテン語で書かれた文学作品として、現代に残っています。
イエス・キリストには自著はありませんが、カエサルには自著があるのです。聖書はイエスの著作物でもなければ、天国からFAXで送信されてきたわけでもありません。
日本でいうのならば聖徳太子の自著が残っているようなものです。これはなかなかすごいことではないかと思います。卑弥呼が西暦200年ごろ、古事記が西暦712年ということを考えると、ローマの文化の高さに驚かされますね。
内容については、ヨーロッパの歴史や風俗、軍隊の進化などに興味があれば、面白さ倍増間違いなしですが、私にとっては、違った意味で考えさせられる内容でした。
××族、××人の意味は?
「ガリア戦記」には、××族というのがやたらとたくさん出てきます。これは××地方出身者という程度の意味。人種が違うわけではありません。
もっと時代が下ると××地方の××族は、都市国家のベネチア人、ミラノ人というふうに都市ごとに××人となりますが、この時代は××族として登場します。もっとも有名なのはパリ(Paris)の語源となったパリシイ族。ガリアというのは今のフランスあたり。ヨーロッパ中西部の広大な土地を指しています。パリシイ族がすんでいたセーヌ川の島シテ島もガリア戦記に登場します。
この××族という言葉は今ではまったく意味のない区分けになってしまいました。大きな国ができると都市国家どうしの争いなんて意味をなさなくなってしまいます。大きな政府ができると地方の小競り合いに格下げされてしまうからです。川中島の戦いが地方のいざこざに見えてしまうのは日本という大きな国ができたからです。
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そんな××族がたくさん登場するので読みにくいのですが、大きくわけてラテン人種(ローマ帝国)と、ケルト人種(ガリア地方)と、ゲルマン人種(ゲルマニア)だけは、読む前によく知っておきましょう。
ラテン人種、ケルト人種、ゲルマン人種、その違いは?
現在では、血が混じっているので一概には言えないのですが、ラテン、ケルト、ゲルマンの違いをざっと学びましょう。
カエサル自身はローマ帝国の出身ですからラテン系です。ラテン系というのは、黒髪黒目のブルネット美女を連想してください。南方系なので肌の色が黒いことが多いです。ゲルマン人種にくらべると意外と小柄な人種です。
ゲルマン人種というのは、今のドイツあたり(ジャーマンはゲルマンが語源)の民族です。金髪碧眼の鼻のとんがったブロンド美女を想像してください。北方系なので肌の色は真っ白のことが多い。
ケルト人種というのは、むかしヨーロッパ中西部(ガリア)に住んでいた人々です。カエサルのガリア北伐や、ゲルマン民族の大移動(南下)によって、ガリアのケルト人は呑み込まれる形で吸収合併(現在、ケルト人の国家と呼べる国はありません)されていきます。ケルト人の一部がイギリスに逃げて、そこでドルイド僧や、アーサー王物語、ファンタジーでおなじみのケルト音楽などを残しました。ハロウィンはケルト人起源だそうです。
当時のガリアにはケルト人が住んでいました。作中のガリー人というのはケルト人です。「ガリア戦記」というのは、ラテン人とケルト人の争いというわけです。
そのうえで××族というのが多数登場するのです。「ガリア戦記」に出てくる××族というのは、大半がケルト人の××地方の人という意味です。
ハゲの女たらし。借金王
ところでラスベガス「シーザーズパレス」の主、シーザーとはどのような人物なのでしょうか。
皇帝カイザーはカエサル、シーザーが語源だそうです。皇帝という言葉の語源になるとはなんとすごい!
実際にはローマの初代皇帝になったのはカエサルの後継者(養子)であり、自身は終身独裁官どまりでした。魏王どまりで皇帝にならなかった曹操のような人物ですね。初代皇帝ではないが実質的な始祖・創始者だという。
気前が良かった半面、国家予算レベルの借金王だったそうです。借金があまりに大きかったためカエサルを破産させるわけにはいかず、債権者はみなカエサルの出世に協力したそうです。属州の総督ぐらいの役得がないともはや返せないぐらいの借金だったそうで、債権回収のためにみんな必死でカエサルの出世を応援したんだとか。大きすぎる会社はつぶせない、みたいなものです。連鎖倒産して国の経済全体がダメになってしまいますから。カエサルの借金はそれほど大きかったのです。
また女性関係もハデでした。公式に、結婚は3度、愛人は8人いたそうです。元老院議員の3分の1が彼に妻を寝取られたという噂までありました。さぞやイケメンだったかと思いきや、そうでもなく、ローマに凱旋したときには「夫たちよ、妻を隠せ。ハゲの女たらしのお通りだ」と揶揄されたとか。額がひろくてキューピーちゃんみたいな髪型をしていたようです。軍の最高司令官にこんな悪口を叩くのは、凱旋式でジュピターなどの神々を嫉妬させないためだそうです。
ちなみに『ガリア戦記』には、大神ユピテルや、軍神マルスなどローマの神々がまったく登場しません。これは意外でした。イリアスなどの流れからいうと神々に戦勝祈願とかしそうなものですが。
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カエサルは合理的な思考の人物だったのでしょう。いちいちデルポイの神託をもらうような古代人ではありませんでした。ガリア戦記を読むとスピードと政治力でいくさの勝敗を決するタイプだとわかります。降伏した敵国にも寛大で、羽柴秀吉っぱいところがありました。女好きなところも似ています。
それほど多くの人妻に手を出しており、最大のライバルであるポンペイウスの妻ともできちゃっています。それで離婚したポンペイウスはカエサルの娘を嫁にしたりして。……まあキリスト教以前ですから男女関係は乱脈です。
カエサル自身も寝取られていて、その妻とは離婚しています。結婚って何だ?
『限りなく透明に近いブルー』ラリった人物が読んでいる『パルムの僧院』の意味
もっとも有名な愛人はエジプトの女王クレオパトラです。全裸の自分を包装してカエサルに贈り物として献上した(エジプトがローマに降伏した意)という、女子高生がバレンタインデーにやるような有名なエピソードがあります。二人のあいだには子供もできてカエサリオン(シーザリオン)と言います。もっとも有名な子どもですが、正妻の子ではないので、正式な後継者ではありません。
帝政ローマの礎を築いたローマ最大の英雄。
『ガリア戦記』は、ラテン語で書かれた名文としても有名です。翻訳文はヘミングウェイのような感情を廃した短文のハードボイルド調になっています。
人間中心主義(ヒューマニズム)という概念をつくりあげたストア派哲学者のキケロも登場
ナポレオンも同じですが、戦争に強くて、独裁者。ある一定数の人間は、そんな独裁者に憧れるんでしょう。
「シーザーズ・パレス」の主。ガイウス・ユリウス・カエサルを『ガリア戦記』をネタに解説しました。
借金王だった男は、ガリア戦役で得た略奪品や役得で国家予算規模の借金を返すことができたそうです。
そしてハゲの女たらしは、政敵ポンペイウスをエジプトで破り、世界一の美女を愛人にして、皇帝カイザーの語源ともなる偉大なガイアス・ユリウス・カエサルになるのでした。
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このブログの著者が執筆した純文学小説です。
「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」
「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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