相続は突然やってくる。イレギュラーに対応するのが実力
相続が発生し、格闘している筆者です。
相続は突然やってきます。大抵の人は、あらかじめ準備することもなく、とつぜん大渦にまきこまれます。だからこそ普段の実力がものをいうのですが……。こんなとき私はいつも「イレギュラーに対応するのが実力」だと心に言い聞かせています。普段やっている慣れていることは誰でもできて当然です。普段やっていない慣れていないことをやってのけてこそ実力というものでしょう。
私の場合、土地建物の相続に立ち会うことになりました。法務局で不動産の所有権移転登記をしなければなりません。もちろんこんなことは過去にやったことがありません。法務局での所有権移転登記は多くの人が司法書士というプロフェッショナルに依頼して報酬を払ってやってもらう仕事なのですが、私は自分でやってみようと思いました。
法務局では「法定相続情報証明」という手続きを行ったので、どこに法務局があるのか、とか、どんな雰囲気なのか、とか、どんな指摘を受けがちなのか、とか、ある程度わかっています。
【相続・実体験】法務局「法定相続情報一覧図」作成サンプル(叔父叔母の遺産を甥、姪が代襲相続する場合)
何ごとも経験です。プロフェッショナルがやる仕事なので、法定相続情報一覧図を証明してもらうときと同様に一度ではうまくやれないでしょうが、何度か失敗を修正すれば、おそらく自分でもできるだろうと踏みました。
所有権移転登記は無資格でもできる。
いくら自分でできる能力があると思ったからといって、盲腸の手術を医師の資格がない人が勝手に開腹オペをやったら手が後ろに回るでしょう。能力のあるなし関係なく、世の中には資格がないとできない仕事というものがあります。しかし不動産の所有権移転登記は司法書士に頼んでやってもらうことが多いものの、「そもそも資格がないとできないタイプの仕事」ではありません。それなのにプロにやってもらうことが多いのは、業務として煩雑であるということと、遺産相続にせよ土地売買にせよ大金が動いているので、司法書士に払う金額はそれに比べるとたいしたことがないという心の麻痺によるものが理由でしょう。葬儀代などに比べれば、司法書士への報酬はたいしたことありません。
しかし所有権移転登記は、個人でもやってやれない手続きではありません。イレギュラーに対応するのが実力です。ここは自分でやってみましょう!
相続による所有権移転登記の申出の前に揃えるべき資料三点
①相続人が一人である場合は別として、まずは所有権移転登記の前に「法定相続情報一覧図」を法務局で証明してもらうことをおすすめします。承認された「法定相続情報一覧図」があるかないかで、提出書類の煩雑さがだいぶ違ってきますので。
②また「遺産分割協議書」が終わっていなければなりません。死亡した前所有者(被相続人)に対して誰が所有権を引き継ぐのか法務局が確認するための書類です。
③その他に役場の最新の「固定資産評価証明書」あるいは「固定資産税・都市計画税 課税明細書」を入手しておきましょう。明細書はすでに手元にあるかもしれません。これは登録免許税を算出するためのものです。登録免許税は課税明細書にある「当該年度価格(評価額)」の土地と建物を合計して千円以下を切り捨てして求めます。
(登録免許税の計算例)土地の評価額7,654,321円+建物1,234,567円=合計8,888,888円(登記申請書に記入する課税価格。千円以下切り捨て。すなわち8,888,000)
登録免許税=上記の評価額×0.004
(例)8,888,000円×0.004=35,552円(百円以下切り捨て。すなわち35,500円)
35,500円ぶんの収入印紙を購入し、登記申請書と一緒に納付します。
法務局で所有権移転登記申請するときに必要な資料は三種類
法務局で申請するときに必要な資料は①~③の三種類になります。
①提出書類
②必要書類
③原本還付申請書類(②のうち返してほしいもの)
①提出書類について
提出書類の本体は、
〇登記申請書(日付を忘れずに)
〇収入印紙貼付用の白紙(一枚目との割り印。収入の貼付)
の二枚になります。相続する本人以外が提出する場合
〇委任状
の三枚が必要になります。
②必要書類について
〇法定相続情報一覧図
すでに法務局で法定相続情報証明してもらったときに確認した書類は、再提出する必要はありません。つまり
・故人の出生から死亡までの戸籍・改製原戸籍
・故人の住民票か戸籍の附票
・相続人の現在戸籍
は、変更がなければ、法定相続情報一覧図で代用することができます。
〇遺産分割協議書(原本を提出して返却してもらいます)
〇相続人全員の印鑑証明(原本を提出して返却してもらいます。法定相続情報証明のときに取得しているはずです)
〇不動産を取得する相続人の住民票(原本を提出して返却してもらいます)
〇(直近最新の)固定資産評価証明書もしくは納税通知書(登録免許税計算のときに取得しているはずです)
③原本還付申請書類について
②の必要書類のうち返してほしいものをコピーして準備します。
〇法定相続情報一覧図。これは無料で発行してくれるものなのでコピーではなく原本を提出しました。
〇遺産分割協議書のコピー。ぜったいに返却してもらいましょう。コピーは両面ではなく片面コピーです。
〇印鑑証明のコピー。
〇住民票のコピー。
〇固定資産評価証明書もしくは納税通知書のコピー。
上記をホチキス止めして製本テープでまとめます。表紙の一枚に「原本に相違ない」と書いて、申請者の名前で押印。製本テープ上に割り印します。
〇返却用封筒。原本還付してもらうための茶封筒を自分で用意します。自分宛ての宛名を書いて切手も貼ります。
所有権移転登記を自分でやる場合の注意点
法務局での所有権移転登記は、資格者でないと申請できないタイプの仕事ではないため、相続人本人が申請することができます。
相手はお役所なので住所に「の」が入っていないだけで書類を差し戻しされたりしますが(まるで意地悪をされているみたいに感じて、心を折られます)、指摘された点をすべて訂正すれば、個人でも所有権移転登記をやることができます。
【相続・実体験】法務局「法定相続情報一覧図」作成サンプル(叔父叔母の遺産を甥、姪が代襲相続する場合)
時間があって、心に余裕があって、司法書士など人に頼むお金を節約したいと考えている人は、自分でトライしてみてください。
やればできますよ!