旅人の守護ソング。僕らが旅に出る理由

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旅に出たくなる歌。『僕らが旅に出る理由』小沢健二

ここではユーミンの完璧な旅歌『ホリデーはアカプルコ』に続き、旅に出たくなる歌、旅先で歌いたくなる歌を紹介したい。そしてどうして放浪のバックパッカーがこの歌に惹かれるのか、自分の心を分析してみたいと思う。

第二弾はこの曲。小沢健二の『僕らが旅に出る理由』だ。この歌詞も完璧だ。いるんだなあ、天才って。

♪心がわりは何かのせい? あまり乗り気じゃなかったのに、東京タワーから続いていく道、君は完全にはしゃいでるのさ。

恋人がニューヨークに行くことになった(後で判明する)。留学か、仕事で海外赴任か、それはどうでもいい。問題は、恋しあっているのに、愛し合っているのに、求めあっているのに、恋人と離れ離れになってしまうということだ。その恋人の彼氏(語り手)と別れるのが辛くて、あまり乗り気じゃなかったのに、いざ旅立つ当日、なぜか彼女は完全にはしゃいでいる(笑)。さあ、旅に出よう。この冒頭一節だけでもう完璧な旅歌である。この歌詞を書いた奴はただものじゃないということをビンビンに感じる。別れるのはさびしいが、新しい世界にはワクワクする。それが旅人のスピリッツなのである。

人気のない秋の渚、僕らだけにひらける空 「元気でいて」とギュッと抱きしめて空港へ先を急ぐのさ。

車で送っている、とは歌詞のどこにも出てこないが、私の妄想では彼女を車で送っている。小説と違い歌の歌詞は短いから、足りない部分は聞き手の妄想で補わなくてはならない。車の中で彼女ははしゃいでいるし、空港は成田ではなく羽田で、東京湾ぞいの海浜公園で最後のお散歩デートを楽しんでいる。羽田からはNY便が出ていますからね。

遠くまで旅する恋人に、あふれる幸せを祈るよ。ぼくらの住むこの世界では太陽がいつものぼり、喜びと悲しみが時に訪ねる。

自分の幸せよりも恋人の幸せを、それが愛だと思う。「行かないで、そばにいてくれ」その言葉をどうして言わなかったのか、言えなかったのか。その理由は聞き手が補うしかないが、自分の幸せを先に考えたならば言えたはずだ。でもそれを言わなかった。自分は悲しいけれど、でも恋人の幸せを祈った。祈るとは強く願うことである。

遠くから届く宇宙の光。街中で続いていく暮らし。僕らの住むこの世界では旅に出る理由があり、誰もみな手をふってはしばし別れる。

世界を感じることができなければ詩は完璧とは言えないと思う。宇宙を感じさせることができれば詩は完璧だ。なぜなら詩は世界と自分を描くものだから。自分だけでは駄目なのだ。永遠なものと繋がってはじめて詩は命を得る。

福島の原発が事故で放射能が漏れたとき、福島原発よりも東京からNYに行くフライトの方がずっと被曝量が多いという新聞の記事を読んだ。エベレストよりも高い高高度フライトでは宇宙線をもろに浴びることになる。飛行機に乗ると雲の上に出て世界を見ることになる。

世界と同時に、フライトを感じることができる詩の重要なパートだ。

そして君は摩天楼で、僕に宛てハガキを書いた。「こんなに遠く離れていると、愛はまた深まってくの」と。

摩天楼=ニューヨークです。冒頭からNYと書いてしまったが、はしゃいでいたのはニューヨークに行くからだったのか、とここでわかる。これがナイロビやバクダッドでは日本人すべての共感を得ることは難しいだろう。

それで僕は腕をふるって、君にあて返事を書いた。とても素敵な長い手紙さ。何を書いたかはナイショなのさ。

もちろんナイショでいいのです。ナイショにすることで聞き手のイマジネーションが爆発します。

遠くまで旅する恋人に、あふれる幸せを祈るよ。ぼくらの住むこの世界では太陽がいつものぼり、喜びと悲しみが時に訪ねる。

今は離ればなれでも、いつかまた会える。その希望があるから今が悲しくても、喜びと悲しみが時に訪ねるものだ、と未来を信じて今を耐えることができる。たとえもう二度と会えなくてもやはり「あふれる幸せを祈る」のだろう。

遠くから届く宇宙の光。街中で続いていく暮らし。僕らの住むこの世界では旅に出る理由があり、誰もみな手をふってはしばし別れる。

なんとなく死んだ人のことを思い出してしまったのは私だけであろうか。誰もみな手を振ってはしばし別れる、というのは、誰もみな死ぬ、ということを暗示していないか。でもそれはしばしの別れ。いつかまた会える。そう聞こえる。

そして毎日はつづいてく。丘を越え僕たちは歩く。美しい星におとずれた夕暮れ時の瞬間、せつなくてせつなくて胸が痛むほど。

旅立つのも旅ならば、とどまることもまた旅なのかもしれない。丘を越えて僕たちは歩くというのは誰もが自分の人生を生きるということ。夕暮れ時の瞬間というのは、世を去る黄昏時のことではないのか。切なくなるのは、あの世に旅立つときのことをイメージしていないだろうか。

遠くまで旅する人たちに、あふれる幸せを祈るよ。ぼくらの住むこの世界では旅に出る理由があり、誰もみな手をふってはしばし別れる。

はじめのころは旅する恋人の幸せを祈っていたが、とうとう旅する人たちの幸せを祈っている。愛が一人の相手から、旅人みんな、人間みんな、にひろがってしまった。

宇宙を、死を、愛を、感じることができる完璧な旅歌。まさに旅人の守護ソングといえるだろう。

オザケン版は聞きなれてしまっている人もいると思うので、ミスチル桜井さん版をどうぞ。

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プロフィール


温人ハルト。雑誌『ランナーズ』等に執筆歴のある物書き。サブスリーランナー。グランドスラム達成者(100kmサブテン。富士登山競争登頂)。スイス・ブライトホルン。台湾・玉山。南アルプス全山縦走など登山歴も豊富。キャンプ・車中泊マニア。西天取経の旅人

このサイトについて

はたして放浪のバックパッカーは社会復帰できるのか!? 自由と社会との折り合いを模索するブログです。

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