「減農薬」というのは農家の自己申告であって、ほんとうに「減農薬」かどうかはわからない
妻とお米を買いに行きました。たくさんのお米が並んでいました。
その中に減農薬を実現しているという「ちばエコ米」というのがありました。
千葉県が認めたお米で、化学合成農薬と化学肥料が通常ゆるされている数の半分以下だということです。
もちろん農薬を使っていない方がいいに決まっています。うちの妻はそのお米を買おうと手を伸ばしましたが……ちょっと待て! わたしはストップをかけました。というのは「ちばエコ米」がブランド米あつかいで他のお米よりも高かったからです。
同じ値段ならブランド米を買ってもいいのですが、付加価値で高くなっているブランド米を減農薬だけが理由で買うのはどうかな、と思います。なぜなら「減農薬」というのは農家の自己申告であって、ほんとうに「減農薬」かどうかはわからないからです。
いつ、どのような農薬をつかったかは農家の自己申告次第
わたしは農家に近しいので、実情を知っています。
「化学合成農薬と化学肥料が通常ゆるされている数の半分以下」というのは農家の自己申告です。じっさいのところどうなのかはわかりません。
これは他の減農薬で認証されている農作物すべて同じではないかと思います。なぜなら「すっと監視しているわけにはいかない」からです。いつ、どのような農薬をつかったかは農家の自己申告です。
農協に聞けば農協で買った農薬がわかりますが、農協以外のホームセンターなどで買った農薬はわかりません。けっきょくどんな農薬をつかったのかは自己申告なのです。農家本人の言い分を信じるしかありません。
ところで認証を受ければブランド米として高く売れるのだとすれば……とうぜん使った農薬も使っていないと嘘をつくかもしれません。
ブランド米として認められるために、いろいろなことをしているようです。しかしすべて農家の自己申告に基づいていることに変わりはありません。
「栽培作業をしっかり記録している」→ 記録するのは農家です。つまり自己申告です。
「栽培前と収穫前の2回の審査」→ 書類審査でしょう。嘘の自己申告をどうやって論破できるでしょうか。
「現地確認を実施している」→ すでに使った農薬をいちいち科学的に証明できますか?
くりかえしになりますが、農場を「すっと監視しているわけにはいかない」のです。だから論理的に農家の自己申告が基準になるのです。
経費がかかっているほうが安く、経費がかかっていないほうが高い、というのが農作物
ブランド農作物に認証する前に、たくさんの関門をもうけることによって、農家の良心に訴えて嘘がつきにくくなっているという効果はあるでしょう。
しかし口先三寸で同じお米が高く売れるとしたら、誰だって筆をなめるに決まっています。
減農薬だけが理由で高いお米を買うというのは、生産者を信じるかどうかにかかってきます。かならずしも本当とは限りません。
そもそも農薬代がかかっていない分だけ減農薬の方が安いというのが普通の市場経済ではないかと思います。それなのに経費がかかっているほうが安く、経費がかかっていないほうが高い、というのが農作物です。
その上で農家の自己申告を信じて減農薬の高い農作物を買うか、経費(農薬)がかかっていないほうが安いはず、と信じるか。
けっきょく人間(農家)というものをどう考えるか、自分はどちらを信じるか、という自己判断になるのです。
同じ値段であれば減農薬表示を買うのですが、値段が高いというところが気になりますね。