漢字博士も読めない氏名の奇妙な読み方
若い頃に文学を志してから、漢字博士になろうと思ったことがあります。おかげで通常の漢字はほとんど読めます。読書をしていて「読めねえな」という漢字に出会うことはほとんどありません。エッヘン!
しかし人の名前(名字も名前も)だけはまったく読めません。難解な氏名は、むしろほとんど読めないのではないかと思います。氏名の読み方はまさに複雑怪奇です。とくに昨今のキラキラネームはまったく読めませんね。「一心」と書いて「ピュア」とか、おそらく漢字博士でも読めないんじゃないでしょうか。
「小鳥遊」と書いて「たかなし」さん
「小鳥遊」と書いて何と読むかわかりますか?
正解は「たかなし」さんです。
「小鳥が遊ぶようなところには天敵の鷹がいない」ということで「鷹なし」=「たかなし」と読むのだそうです。
そんなもの読めるか! っていうか、おもしろいな、その読み方。読み方にストーリー性があるじゃないか。むしろ感動すらおぼえます。
「この漢字(氏名)何て読むか」ごっこ
このように一般名詞(漢字)にくらべて氏名(漢字)は非常に読みにくいものが多いことから「漢字あてごっこ」遊びというのがあるそうです。「この氏名、なんて読むか?」と問題を出して、当てるというゲームです。
私は一般漢字ならばそこそこ自信がありますが、氏名となるとまったく自信ありませんね。っていうか、難解な氏名は金田一京助でも読めないんじゃないかな。「紅葉」と書いて「メイプル」とか、キラキラネーム系に難しい読み方はいくらでもありますが、私が感心するのはそういうタイプの漢字ではありません。読み方に物語性のあるものです。たとえば下の例のような。よくまあそんなしゃれた名字をつけたよなあ。
「四月一日」と書いて「わたぬき」さん
「四月一日」と書いて何と読むかわかりますか?
正解は「わたぬき」さんです。
旧暦四月一日(新暦だと五月上旬)に冬の防寒着から綿を抜いて薄着にしたことから「綿抜き」=「わたぬき」と読むのだそうです。
「月見里」と書いて「やまなし」さん
「月見里」と書いて何と読むかわかりますか?
正解は「やまなし」さんです。
「月がよく見えるのは山がないから」ということで「山なし」=「やまなし」と読むのだそうです。
なるほど、そういうことですか。明治3年に庶民が名字をつけるようになったので(それ以前の庶民には名字はありませんでした。今も天皇家には名字がありません)、その当時のご先祖様にとんちがあったということなのでしょう。
「禿山」「鬼ヶ島」と書いて「きなし」さん?
なるほど、とんちのあったご先祖様にあやかって、参考までに私アリクラハルトが自分で名字を考えてみました。
「禿山」と書いて「きなし」さんっていうのはいかがでしょうか? もちろん「はげ山には木がない」から「きなし」です。本当にそんな名字があるかどうかはわかりません。
ついでに「鬼ヶ島」と書いて「きなし」さんというのはどうでしょうか? 桃太郎が鬼を退治して鬼ヶ島には「鬼がいなくなった」から「鬼なし」=「きなし」です。あれ? でも桃太郎は鬼ヶ島の鬼を降伏させただけで全滅させたわけじゃなかったかな? つまり鬼ヶ島に鬼はいるわけで……だとすると「鬼なし」じゃないか。
しまった! ちょっと調子に乗ってしまいました。
みなさんの名字はどんな名字でしょうか? まさかご先祖様のとんちを感じるような変わった名字じゃないでしょうね?