昔の推理ドラマ。名探偵の迷推理。アリバイトリックと時代のテクロジー
昔の推理ドラマを見ていると、現代だと簡単に解決できそうな問題に名探偵が頭を悩ませたりしています。たとえば指紋の採取だとか、電話の逆探知とか、そういうテクノロジーを使えば簡単に犯人が分かりそうなものを、昔の名探偵が虫眼鏡で足あとを探すというようなシーンがあって、時代の流れを感じさせるのです。
古くは松本清張のドラマに「それ、飛行機つかったんじゃね?」というのがありました。容疑者のアリバイは電車や車じゃ時間的に絶対に犯行は無理というものだったのですが、現代人ならこう考えます。「それ、飛行機に乗ったんじゃねえの?」そしてそのとおりのアリバイトリックという作品でした。まあ、当時の人々にとって、飛行機というものは馴染みのものじゃなかったんでしょう。当時の人々にとってアリバイは完ぺきでした。そこを突いた巨匠のトリックというわけです。とほほ。
もっと古くはシャーロック・ホームズ。隣の部屋に演奏している人がいる(アリバイ)と思わせておいて、実はレコードだったというトリックがありました。まだ蓄音器が世に普及する以前の作品だったからこそコナン・ドイルもこのアリバイトリックを採用したんでしょう。現代人の感覚からすると「いや、レコードってプチプチと小さな雑音もあるし、生演奏とはほど遠いんじゃない?」と思うのですが、そこはご愛敬です。とほほ。
ホームズ・ワトソン・スタイル。シャーロックホームズ60編の読むべき順番
古畑任三郎。遺伝子DNA鑑定と、携帯電話の登場と、人類史においてどちらが先か?
先日も『古畑任三郎』という昔の推理ドラマを見ていて不思議な感覚に捉えられました。容疑者のアリバイ崩しに際して、
いやそれDNA鑑定すれば一発じゃね?
と、妻は思うのですが、私は疑問に感じました。古畑任三郎はスマホはおろか携帯電話も使っていないのです。ようやくファックスが普及したかな、という時代の作品です。
携帯電話もない時代にDNA鑑定なんて無理じゃない?
つまりは遺伝子DNA鑑定と、携帯電話と、人類史においてどちらが先に登場してきたか、という話しです。私の常識感覚からすると、携帯電話を作成する方が、DNA鑑定するよりは人類にとってまだ簡単だろうと思いました。つまり携帯電話が先、DNA鑑定が後という予想です。みなさんは、人類にとってどちらが難しいと思いますか? 携帯電話とDNA鑑定?
調べたところ、携帯電話の日本での普及は1987年だそうです。それに対して日本でのDNA鑑定の開始は1989年に始まったそうです。携帯電話が先、DNA鑑定が後が正解ということです。今回は私の常識感覚のほうが正しかったみたいですね。しかしわずか2年の差であり、イロハさんが逆に感じたのも無理はないほどの誤差でした。
科学捜査を往年の名探偵に求めても無理というもの
このように、テクノロジーには発明された年、普及した年度というものがあります。それを考えないと名探偵の名推理は迷推理になってしまいかねません。ホームズは尋ね人を探すときには新聞のお尋ね人コーナーを利用していたのですよ。新聞の個人広告欄なんて今の若い人には何のことだかわからないかもしれません。
たとえば自転車と自動車、どっちが人類の歴史に登場したのが先だと思いますか?
多くの人は自転車が先、自動車が後だと感じると思います。しかし実際には逆です。個人史の中で自転車が先に登場し自動車が後に登場するので人類史においてもその順番だろうと思ってしまいがちですが逆なのです。自動車が先、自転車が後なのでした。
このようにテクノロジーの後先というのは常識では測れない部分もあります。なんてったってクルマの登場のほうがチャリより先なんですから。血液のルミノール反応とか、意外と最近のテクノロジーでしょう。そういう科学捜査のテクニックを往年の名探偵に求めても無理というものです。