言葉でものをつたえることの難しさ

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波間に浮かぶボトルの手紙を、インターネットの海に流しました。

このメッセージをあなたが受け取ってくれたのは「奇跡」です。

受け取ってくれて、ありがとう。

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先日から新婚転居のためアパートを探している。自転車乗りでもある私は自転車で実際に物件を見て建築中のアパートを発見した。

汗を流したものしか発見できないお宝物件に喜んでいたら、もうすでにインターネットで入居者募集しておりガッカリしたことはもうすでに伝えたところである。時代はインターネットなのだ。

葛飾北斎のように生涯93回も引っ越す予定のない私は、いかに仮の住処とはいえ、できるだけ環境のいい場所を吟味して納得したうえで引っ越したいのである。インターネットを活用してみることにした。

ネット上の賃貸アパート紹介サイトを閲覧し、気になる物件があったらメールで問い合わせる、それだけのことであった。こう見えてもブロガーの端くれ。その気になれば簡単である。不動産屋にメールで問い合わせることにした。

アパートで気になるのは隣室の騒音である。隣室との壁の薄さが気になる。気に入った物件は現在入居中というので内覧はできないのが、新築時の写真があるのでそれを送信して見せてもらった。写真を見ると2LDKアパートのすべての窓の外に空がうつっている。張り出しのような構造なのであろうか? 気になったのでメールで問い合わせた。

「写真を見ると窓の外に空があります。隣室との境はないのでしょうか?」

するとすぐにメールが返ってきた。

「隣室とはすりガラス窓で仕切られていて、ガラス窓は取り外しが可能です」

いやいやいやいや。そういうことじゃなくて。

不動産屋の担当者は、隣室というのを2LDK内部の隣の部屋と勘違いしているらしい。洋室とリビングはすりガラスで仕切られていると返事が来たのだ。

どうしてこううまく伝わらないのだろう。いつも思うことだが、言葉で人にものをつたえるのはすごく難しいことだ。

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対老人用会話術。類似の単語で具体的に言う

しかし私は仕事柄、ちょっと呆けた老人を相手にすることが多いので、彼らを相手に会話するときのスキルを持っている。ここではいつものスキルを活用させてもらおう。

「アパートは隣の部屋の騒音が気になります。203号室は窓の外に空が見えます。隣室202号室204号室とは横並びに繋がっておらず、隣の騒音を気にしなくていい間取りなのでしょうか?」

対老人用会話術でこう書いたら、ちゃんと伝わった。どういう技術を使ったかわかるだろうか。

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言葉はキッパリ、ハッキリ、クッキリ言う。以心伝心なんて期待しない。

現代では「伝わるかなあ。伝わるといいな」ぐらいの淡い表現では伝わらない。「毎日、僕の味噌汁をつくってくれ」的表現は通じない。「結婚してください」とキッパリ、ハッキリ、クッキリ言う。そうでなければ伝わらない時代なのだ。腹芸なんて高等技術は庶民は持っていないと思った方がいい。

そして言葉は具体的に言おう。「隣室」なんて言ったから、リビングの隣の洋室と勘違いされたのだ。「202号室」と具体的な単語を使えば伝わる。

老人に対して「おじいちゃんの好きなデザートは何?」という会話をしてはダメだ。「おじいちゃんの好きな果物は、ミカンかな? それともリンゴかな?」と言わないと通じない。こちらの求める答えが返ってくるような具体的な単語を使うのだ。そしてなるべく簡単な言葉を使う。デザートなんて抽象的な言葉は使わない。梨が食べたい? と具体的に聞くのだ。

「今日の夕飯は何がいい?」と聞いても返事は返ってこない。 「今日の夕飯は、すき焼きにしようか? チャーハンにしようか? それともスパゲッティがいいかな?」と聞けば「お寿司がいいよ」と返事が返ってくる。

日本語は主語を省く言語である。そのために隠された主語推測ゲームが脳内で常時繰り返されている。妻とのメールでも主語を省いたために、意味が通じなかったり、会話がかみ合わなかったり、意図せず怒らせてしまったりすることがある。すべて隠された主語を誤解したのが原因だ。主語が違っていたら、会話は成立しない。

隠された主語推測ゲームを強制排除してしまえばいいのだ。そのためには「同じ仲間に属する具体的な名詞を使って具体的に言えばいい」。

「好きな花はなに?」で相手に通じるのは、同じ人間が脳内会話している小説の中だけのことである。他人にものを伝えるためには「ラナンキュラスと胡蝶蘭、どっちが好き?」と言った方が会話が進展していくものなのである。

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世界は無窮だから、話題は絞らなければ話しは噛み合わない

クジラの話をしているときに、ネパール登山の話をする人と、会話が噛み合うはずがない。会話は名詞を具体的に使って誘導するようにしたほうが誤解が生まれない。その際、こちらの意図、主張を込めて話した方がいい。

引っ越しを決める前にアパートの内覧をすることにした。そういう時も「現地アパートの前で集合することは可能でしょうか?」と聞いてはいけない。「現場アパートの近くに住んでいるので、貴社事務所ではなく、現地集合でお願いします」とこちらの意図をクッキリはっきりキッパリと言うことだ。そう、アメリカ人のように。

これを私は老人用会話術と名付けていたが、このテクニックは現代では誰が相手でも適用すべきものかもしれない。「対老人用」ではなく、ただの「会話術」と名づけるべきだろう。

プロフィール


サンダルマン・ハルト。雑誌『ランナーズ』等に執筆歴のあるライター。『山と渓谷』ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。サブスリーランナー。グランドスラムの達成者(100kmサブテン。富士登山競争登頂)。スイス・ブライトホルン。マレーシア・キナバル山。台湾・玉山ニイタカヤマ。南アルプス全山縦走など登山歴も豊富。キャンプ・車中泊マニア。アウトドア派の放浪の旅人。現在、仮想地球一周ランニング中。
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