曲亭馬琴『南総里見八犬伝』南房総が主たる部隊の大冒険活劇
千葉県人です。『車泊でGO!!』というYouTubeチャンネルを運営しています。チャンネル名のとおり、車中泊を趣味としています。私が車中泊をはじめたのは、そもそも南房総がきっかけです。
南房総って……意外と遠いんですよ。千葉は千葉でも北千葉に住んでいる私たちには、日帰りで南房総へと行くのは遠くて辛いものがあります。
同じ県内なのに一泊二日コース。それが南房総です。近くて遠い国、それが南房総です。
たまたま当時の愛車がステーションワゴンのレガシィだったので、その後部座席に眠って一夜を過ごしたことが車中泊のはじまりでした。
昔から「鋸山を越えると肌着が一枚いらない」と言われています。鋸山の北は厳しい顔の兄太陽なのですが、南房総にはいつも暖かい弟太陽が顔を出しています。
常春の楽園です。その南房総館山を舞台に話しがはじまるのが曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』。江戸時代の大河小説です。さすがに全部は読めないので、栗本薫版の前半部分の現代語訳を読みました。
……想像以上に面白かったです。西遊記、水滸伝レベルの面白さでした。どんなふうに面白いか、「小文吾」の章を例に見てみましょう。
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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。
「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」
「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」
※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。
アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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八犬士のリーダーが初登場するシーン。
行徳の小文吾は、義弟の市川の房八に相撲勝負で勝利した。公衆の前で恥をかかされた房八に恨みを買っていた。実家に戻ると房八の母親・妙真が妹ぬいを連れてきて「離縁する」という。それほど房八の恨みは大きいという。小文吾の家には、芳流閣の大屋根の決闘の跡、破傷風にかかった犬塚信乃がかくまわれていた。信乃は男女五合の血を浴びなければ傷は治らないと宣告されるほど重症だった。そこに房八が殴りこんでくる。信乃を突き出し手柄として、小文吾の顔を潰そうというのだ。房八は小文吾と争う中で、はずみで息子の大八と嫁のぬいを殺してしまう。怒った小文吾は房八を切りつけ、とどめを刺そうとする。すると「まってくれ……」と房八は告白するのだった。
もともと房八の親父は、騙されて極悪人の汚名を買っていた人物。小文吾の家とは不倶戴天の仇どうしだった。なんとか仁義のさむらいに戻りたいと思っていたところ、忠義の士、信乃の話しをききつけ、房八は信乃の身代わりになるつもりだった。そのために小文吾に斬られて死ぬつもりだった。死ぬ前にぬいを離縁したのは若後家にしたのでは不憫だったからだった。
その告白の最中、死んだと思われていたぬいがむっくと起き上がり、房八の告白を聞いて胸が張れたという。
そこへ立ち去ったはずの妙真が登場し、孫の八大の死を嘆く。
房八とぬいの末期の願いをかなえるべく、生き血をとったところ、何かに足をひっかけて小文吾は生き血をぜんぶこぼしてしまった。
ところが血をこぼした先には「自分のために犠牲になるな」と言いに来た信乃が立っていた。信乃は全身に生き血を浴びて気絶する。しばらくして起き上がると傷は治っていた。
そこに遺恨の相撲勝負の原因となっていた大先達と修験道が現れた。二人は実は里見家の家臣だった。ふたりは伏姫と八房の不思議な物語を語り、水晶の念珠をもつものは里見の八犬士だと諭す。
なんと死んだと思っていた八大は生きていた。しかも手に伏せ姫の水晶玉を握っていた。房八とぬいは名誉を回復して、八犬士の父として、忠義のさむらいとして満足して死ぬ。
息子の八大は仁の玉をもっていた。八犬士のリーダーがこうして見つかったのだ。
死んだ人は生き返る。現場に乱入してくる人物。別の真相。
このシーンには驚いてしまいました。なんておもしろいんでしょうか。
死んだと思われていた人が瀕死のゾンビ状態になって喋りだすのが四人(房八、ぬい、八大、信乃)。
知っていたことと真相は別だった、という案件が三件(相撲の遺恨は嘘っぱち、離縁の本当の理由は思いやり、房八の家系)。
こみいった現場に突然乱入してくる人物が五人(房八、妙真、信乃、大先達と修験道)。
とくに、こみいった現場に突然乱入してくる人物たち……まるで歌舞伎の舞台のようです。離婚されたぬいの実家に、突然、五人もの人物が、四方八方から乱入してくるのです。
どんだけ監視されてたんだよ、この家!
これが曲亭馬琴『南総里見八犬伝』の実力です。いやあおもしろい。
南房総は常春の楽園。
飼い犬の八房が憎き敵将の首をくわえて持ってくるところから物語ははじまります。恩賞に娘の伏姫をあげると里見の殿さまは八房に約束していました。
あらすじはいちいち紹介しません。まあ、とにかく読んでみてください。
話しの発端部分を紹介した栗本版があまりにも面白かったので、私は現代語訳で全部読んでみようと思いました。
曲亭馬琴『南総里見八犬伝』は、南房総に(里見家の)楽園を築くという話しです。それは南房総に常春の楽園ができればいいのにと願っている私の希望そのものだからです。
南房総は山で仕切られた半島の南端。独立王国の様相を呈しています。
婚姻届けを南房総市に提出したほど私は南房総を愛しています。南房総は常春の楽園です。一度遊びに行ってみてください。
終の棲家。移住先を探すときの選択項目(寒・暖、海・山、都会・田舎)
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このブログの著者が執筆した純文学小説です。
「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」
「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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