小説のはじまりは「怒り」。詩聖ホメロス『イリアス』は軍功帳。神話。文学

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「怒りを歌え、女神よ。ペレウスの子アキレウスの――」

これは世界最古の物語。ホメロスの『イリアス』の冒頭です。

世界中に物語はありますが、すべての物語の始祖はアキレウスの「怒り」から始まりました。

神の「愛」とかですべての幕があけそうなイメージがあるじゃないですか。でも現実は人間の「怒り」から詩と物語は始まったのです。

このページでは世界最古の物語に敬意をこめて、『イリアス』の見どころを解説します。

『イリアス』はフィクションにしては軍立て、軍容を詳しく書きすぎています。聞いてくれる人の出身地、出兵した地方の人たちの功を讃える意味で延々と語ったのだと思います。いっしゅの軍功帳みたいな意味があったのだと思います。ただのエンタメだったとすれば延々と軍容や功績を語る意味がわかりません。

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【この記事を書いている人】

瞑想ランニング(地球二周目)をしながら心に浮かんできたコラムをブログに書き綴っているランナー・ブロガーのハルトと申します。ランニング系・登山系の雑誌に記事を書いてきたプロのライターでもあります。日本脚本家連盟修了生。その筆力は…本コラムを最後までお読みいただければわかります。あなたの心をどれだけ揺さぶることができたか。それがわたしの実力です。

初マラソンのホノルル4時間12分から防府読売2時間58分(グロス)まで、知恵と工夫で1時間15分もタイム短縮した頭脳派のランナー。市民ランナーの三冠王グランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。ちばアクアラインマラソン招待選手。ボストンマラソン正式選手。地方大会での入賞多数。ボストン、ニューヨークシティ、バンクーバー、ホノルル、ユングフラウ、ロトルア、ニューカレドニアなど海外マラソン歴も豊富。月間走行距離MAX600km。雑誌『ランナーズ』で数々の記事を執筆していた物書きです。「頭のよさで走り勝つことはできるか?」その答えを書いたハルトの【サブスリー養成講座】を展開しています。

また、現在、バーチャルランニング『地球一周走り旅』を展開中。ご近所を走りながら、走行距離だけは地球を一周しようという仮想ランニング企画です。

ローディー(ロードバイク乗り)でもあります。ロードバイクって凄いぜ!! 朝飯前でウサイン・ボルトよりも速く走れます。

山ヤとしての実績は以下のとおり。スイス・ブライトホルン登頂。マレーシア・キナバル山登頂。台湾・玉山(ニイタカヤマ)登頂。南アルプス全山縦走。後立山連峰全山縦走。槍・穂・西穂縦走。富士登山競争完走。日本山岳耐久レース(ハセツネ)完走。などなど。

その後、山ヤのスタイルのまま海外バックパック放浪に旅立ちました。訪問国はモロッコ。エジプト。ヨルダン。トルコ。イギリス。フランス。スペイン。ポルトガル。イタリア。バチカン。ギリシア。スイス。アメリカ。メキシコ。カナダ。インドネシア。マレーシア。ニュージーランド。タイ。ベトナム。カンボジア。ネパール。インド。中国。台湾。韓国。そして日本の27ケ国。NYとハワイを別とする数え方なら訪問都市は100都市をこえています。元帰国子女。国内では車中泊の旅で日本一周しています。

登山も、海外バックパック旅行も、車中泊も、すべてに共通するのは必要最低限の装備で生き抜こうという心構えだと思っています。バックパックひとつ。その放浪の魂を伝えていきます。

夢は海外移住。希望移住先はもう決まっています!!

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英雄とは半神半人のこと。「何もできずにあっさり死ぬ」英雄もいる

『イリアス』とはトロイア戦争を舞台にした英雄物語です。英雄といっても「偉大なことを成し遂げた人」ではありません。アメコミのヒーローとは違います。もともと半神半人のことをヒーローといったようです。

だからこの時代の英雄というのは「凄いことをやってのけた人」という意味ではありません。片親が神さまだという意味です。だからイリアスに出てくるヒーローは、ヒーローなのに何もできずにあっさり戦死したりします。

トロイア戦争に登場するアキレウスは母親が海の女神テティスです。父はただの人。半神半人のヒーローは死すべき人種です。そこが神とは違うのですね。どちらかというと人間に近いかな。「神に愛された人」ぐらいのイメージでいいと思います。

ヒーローですら「何もできずにあっさり死ぬ」世界で、本当に「偉大なことをやってのけた人」がまぎれもなくアキレウスです。だからこそアキレウスは世界最古の物語『イリアス』の主人公とされているのです。そして後世、アキレウスのような偉業を成し遂げた人のことをヒーロー(英雄)と呼ぶようになったのです。

偉大なり。アキレウス!

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アキレウスはもっとも力が強く、もっとも足が速く、いちばんイケメン

さて、そのアキレウスとはどんなキャラクターなのでしょうか?

ホメロスは『イリアス』中で、アキレウスはギリシア軍(アカイア軍)中、もっとも力が強く、もっとも足が速い英雄と歌っています。

二番目に力が強いのが大アイアース。身体がデカかったので「大」アイアースと呼ばれます。

二番目に足が速かったのが小アイアース。小柄だったので「小」アイアースと呼ばれます。

アキレウス=大アイアースの力+小アイアースの俊敏さ+パリスのイケメンって感じでしょうか。

これが現代人の設定だと「もっとも力が強く、もっとも足が速い」というのはキャラクターとしてなかなか成立しにくいと思いませんか? シュワルツェネッガーみたいな男が「もっとも力が強い」キャラクターに当てられそうですが、どうみても「もっとも足が速い」ようには見えません。ウサイン・ボルトみたいな男が「もっとも速い」わけですが、力はやっぱりシュワちゃんに劣りますよね。アスリートならわかると思いますが、速さと力の両立ってとてもむずかしいのです。

そしてアキレウスは金髪でギリシア軍の中でもっともイケメンだったとされています。いやあ、どうやってアキレウスをイメージしましょうか。身近にはいなさそうな完璧な男です。これはもう脳内でイメージするしかありません。アキレウスをイメージできるのは、あなたの脳内イメージしかないのです。

映画や漫画よりも、文章の方が優れているところがあるとすれば、アキレウスのようなキャラクターにおいてその優位性がはっきりとします。

アキレウスがいるからこそ『イリアス』は、映画などで超えることができない不朽の名作となっているのです。

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ちなみに映画『トロイ』ではムキムキに鍛えたブラッド・ピットがアキレウスを演じていました。何とか万人を納得させるギリギリのキャスティングだったと思います。

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空想都市トロイは実在した。アキレウスも実在したかもしれない

最高のイケメンで、最高に力が強くて、最速の男。一国の王子で、総大将アガメムノンの命令さえ無視するアウトロー……現実にはそんな完璧な男はいないよ。架空の物語だからそんな「完璧野郎」を登場させられるんだ。

そう思ったアナタには強烈な反論を加えましょう。かつて『イリアス』は架空の物語と思われていました。トロイア戦争なんて伝説だと思われていたのです。

しかし神話上の架空都市トロイ(イリアス)を現実と信じたドイツ人ハインリッヒ・シュリーマンによって、トロイは発掘されました。

トロイは現実に存在したのです。

だったらアキレウスだって存在したかもしれません。そんな名前の軍人がいたっておかしくないでしょう。

ゼウスアテナアポロンだって……さすがに存在しないか(笑)。

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シュリーマンが『イリアス』を現実だと信じた根拠は詳しすぎる軍容、人名。軍功帳の意味があったのではないか。

結果論になりますが、シュリーマンが英雄叙事詩『イリアス』を現実だと信じたのは無理もないなあと思うところが多々あります。

原作を読むと、たとえば作品中、トロイア戦争に参加する軍容が延々と述べられています。物語の興味を削いでしまうほど縷縷と軍容が述べられているのです。

エンターテイメントの目線からいうと、ちょっと詳しく書きすぎなぐらいです。これが現代の物語だったら「総帥アガメムノン率いる総勢✖万人」で済ませてしまうような箇所です。それを聞き手(読者)が興味を失ってしまいかねないほどのアンバランスさで〇王率いる✖人、△王率いる□人……と延々と軍容が語られるのです。その後の物語にいっさい登場しないような王様の名前まで詳しく書いています。

フィクションにしては軍容を詳しく書きすぎています。なぜこのように詳しく王の名前と兵士の数を述べなければならなかったのでしょうか? 答えはひとつ。それが歴史的事実だから。ということ以外には考えられません。

この当時の軍団を率いていたのは各地域の王様でした。なので後世の読者にとってはここで自分の出身地(の王様の軍容)が読み上げられることは名誉なことだったのでしょう。出兵した地方の人たちの功を讃える意味で延々と語ったのだと思います。いっしゅの軍功帳みたいな意味があったのだと思います。ただのエンタメだったとすれば延々と軍容や功績を語る意味がわかりません。

準主役級の二人の名前がアイアスなのも、どうかな? と思います。もし現代の作家がフィクションを書くなら、別の名前にしたはずです。大と小って……なんか小がかわいそうな気がします。

当時のギリシアはそんなに今ほどエンタメの技術が劣ったのでしょうか。作者は読者の心を知らなかったのでしょうか? けっしてそんなことはありません。むしろいまだに超えられない第一級のエンタメ作品が『イリアス』です。

それほどの作品が大アイアース、小アイアースなんて名前で準主役を登場させるというのは……それが事実だったから、と考えられるのです。

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『トロイア戦争』を架空戦記と思った根拠はすべて「神が由来」とされているから

シュリーマン以外の人たちが『イリアス』を架空戦記だと思ったのにも同じように理由があります。フィクションだと思っても「無理ないなあ」と思わせるところが多々あるのです。

たとえばそこに描かれる人間の行為がすべて「神々のおかげ」「原因は神」だとされているところなどです。だからギリシア神話なのですが。(『イリアス』はギリシア神話が文書化された最初の作品だとされています。いわゆる神の存在根拠です)

運命論(人間に自由意思などない)のように、『イリアス』ではすべてが神のたまものという世界観になっているのです。
誰それを討ち取ったのも神のおかげ。誰それが戦死したのは神の恨みを買ったから。いくさの勝利も敗北も神のご機嫌次第というように『イリアス』では描かれています。戦争が起こったのも「神の計画だった」ということになっているのです。

それが本当なら、兵隊をかき集めたり、戦略を練ったりするよりも、神の祭壇に祈りを捧げた方がいいですよね?

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『イリアス』は『古事記』に似ている

このように『イリアス』ではいたるところに神が顔を出すために、日本の『古事記』が神道の神様にとってバイブルであるように、ギリシア神話の神さまの物語を伝える役割を果たしています。

天照大神が古事記に登場するように、ゼウスがイリアスに登場するのです。

 

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人間くさい悩み、感情は古代人も現代人も同じ

さて、最古の物語を展開させた「足速きアキレウス」の怒りとはどんなものだったのでしょうか?

「遠矢の神アポロン」により愛する女クリュセイスを取り上げられてしまった総大将アガメムノンは、配下の将アキレウスの愛する女ブリセイスを取り上げることで溜飲を下げていました。

おさまらないのはアキレウスです。権力を笠に女を奪われるなんて恥辱です。

そもそもパリスに女(絶世の美女ヘレナ)を奪われた恥辱からトロイヤ戦争をはじめたのに、自分も人から愛する女を奪うとは何ごとか、というわけです。愛する女を奪われる恥辱を知るのはアガメムノン兄弟だけだと思っているのか? という非常に人間くさい怒りが、世界最古の物語をスタートさせるのです。社長にさからう社員のような立場がアキレウスです。

アキレウスは今でいうサボタージュに出ます。出勤しなくなるのです。しかしギリシア軍最大の英雄アキレウスなしにトロイヤ戦争は勝てません。これはそのように神のさだめた運命の戦だからです。

負けそうになったギリシア軍の総帥アガメムノンは、アキレウスの機嫌をとるために奪った女ブリセイスを返した上でさらに「お詫びの贈り物(補償)」を提案するのですが、誇り高いアキレウスは謝罪を受け入れません。

大アイアースはアキレウスの態度に憤慨します。

「兄弟やわが子を殺されて、殺した者から補償を受け取ったものはいくらもいる。殺した側の償いはそれしかできないし、殺された側がはやる胸を抑え心を静めるには補償を受け取るしかないではないか」

と、現代の損保の社員みたいなことを言います。現代に当てはめてももっともなことをいうのでギャグみたいに見えますが、大アイアースは大まじめです。

人間のプライドや悩み、嫉妬などは昔から変わらないんだなあ。。。そう思いませんか?

ちなみにその後の大アイアースは、ギリシアの諸将が自分を評価しないことを嘆き、彼らのために戦うことの虚しさから自刃して果てるのです。ヒジョーに人間くさいと思いませんか?

今なら自分を評価しない会社を退社するみたいな行動です。紀元前800年ぐらい前から、人間の感情って全然変わっていないんだなあ、と感動さえおぼえます。

ギリシアの神々は滅んだけれど、人間らしい気持ちは消えてなくなったりしませんでした。だから不朽の名作として今も『イリアス』は残っているのです。

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✖✖はレベルが上がった(まとめ)

古今東西、たくさんの書き手がいました。小説家、物語作者、随筆家、詩人、新聞記者、現代のこのようなブログの書き手もその中の一人です。

『イリアス』『オデュッセイア』の作者。物語の父ホメロスは盲目だったといいます。紙のない時代の人です。おそらく執筆者というよりは語り部と言った方が正確でしょう。盲目ゆえに音楽家や語り部になることは、健常者に比べて不利が小さかったこともあるのではないでしょうか。

もしかしたらホメロスの作品制作の動機もやり場のない「怒り」だったのかもしれません。怒りというのは物事を成し遂げる大きなエネルギーとなります。怒りがなかったらアキレウスは英雄になることはなく、また若くして滅ぶこともなかったことでしょうね。

世界最古の英雄叙事詩『イリアス』。絶対に読んでほしい本のひとつです。

電子図書kindleの使い方については下記を参照してください。

お探しのページは見つかりませんでした。 | ドラクエ的な人生
人生恋歌

※マンガ版も出ています。オデュッセイアというのはイリアスの続編みたいなものです。ワンピースの元祖だと思ってください。

聖なる詩こそオーディオブックで聴きたい

オーディオブックという「聞く読書」があります。

オーディオブックは究極の文章上達法
このページは「文章がうまくなりたい人」に向けて書かれています。 耳がよくなければ、文章はうまくなりません。 文章がうまくなりたければ、目を閉じて耳を澄ませましょう。 【この記事を書いている人】 瞑想ランニ...

盲目の詩人が書いた『イリアス』『オデュッセイア』やミルトン『失楽園』など、詩といわれる文学ほどオーディオブックで聴きたいものです。

私はオーディオブックは究極の文章上達法だと主張しています。

盲目のホメロスやミルトンが耳から得たものから聖なる詩を紡いだことこそ、私の主張の証拠ではないでしょうか。

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  1. 最初の一冊は無料。
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  5. オーディオブックは返品できる。返品するとコインが戻ってくるので、別の一冊と交換することができる。
  6. つまり図書館で借りているように、無限に「聞く読書」が楽しめる。

私はオーディオブックは究極の文章上達法だと思っています。

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このブログ著者の小説『結婚』
小説『結婚』
愛とは何か? 結婚とは何か? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。恋人のアスカはツバサのもとを去っていきます。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。  離れたくない。その叫びだけが残った。  全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。 引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。 そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。 それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自信が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。 アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。 死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。 生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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愛とは何か? 結婚とは何か? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。恋人のアスカはツバサのもとを去っていきます。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。  離れたくない。その叫びだけが残った。  全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。 引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。 そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。 それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自信が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。 アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。 死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。 生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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このブログの著者の小説『片翼の翼』
小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
片翼の翼: なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?
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小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
片翼の翼: なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?
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【この記事を書いている人】

アリクラハルト。走る哲学者。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。山と渓谷社ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。放浪の旅人。千葉県在住。

【この記事を書いている人】
アリクラハルト。走る哲学者。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。山と渓谷社ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。放浪の旅人。千葉県在住。
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