- 自転車テント日本一周旅行挑戦。最大の障壁は心の壁
- 自転車旅行は三日でワンクール。
- 節約貧乏旅行が自転車旅の醍醐味なのに、ホテルに泊まりまくるなんて矛盾している
- テント野宿の最大の難関は、どこにテントを張るか
- 洗濯は? お風呂は? 雨の日は? どうする?
- 自転車旅行の醍醐味は「郊外の景勝地」よりも「都心」「大都会」
- 自転車日本一周旅行に最適な自転車は?
- ロングツーリングにロードバイクは向いていない
- 観光ライドには、パンクしないシティサイクル(ママチャリ)がおすすめ
- 自転車旅行の装備<実例>
- ノーマルペダルと運動靴がマスト
- 一番疲れたのは脚ではなく、手のひらだった
- 剃毛するなど、股間にも対策が必要
- 自転車旅行でも免許証は必要
- 「気持ち」以外は、金さえあればどうにでもなる。
自転車テント日本一周旅行挑戦。最大の障壁は心の壁
Twitterをやっていると、たくさんいるんですよ。自転車で日本一周に挑戦する人。
このような挑戦の最大の障壁は心の壁です。これだけたくさんの人が挑戦して成功していることがわかると、自分もやれると思うんでしょうね。
そして挑戦する人たちが実際にいます。
しかし車中泊での日本一周がとてつもなく簡単だということに比べると、自転車テント旅行はそれほど簡単ではありません。
私はいちおう本業をもっているので自転車日本一周をしたことはありませんが、ここでは3泊4日の自転車テント旅行を通じて感じられたこと。可能性、難易度について考えてみたいと思います。
鎌倉から銀座、上野に向かって自転車で走っている時、こういうところも自転車で通れるんだな、と感動しました。
× × × × × ×
このブログの作者の書籍『通勤自転車から始めるロードバイク生活』のご紹介
この本は勤務先の転勤命令によってロードバイク通勤をすることになった筆者が、趣味のロードバイク乗りとなり、やがてホビーレーサーとして仲間たちとスピードをガチンコで競うようになるところまでを描いた自転車エッセイ集です。
※書籍の内容
●スピードこそロードバイクのレーゾンデートル
●軽いギアをクルクル回すという理論のウソ。体重ライディング理論。体重ペダリングのやり方
●アマチュアのロードバイク乗りの最高速度ってどれくらい?
●ロードバイクは屋外で保管できるのか?
●ロードバイクに名前をつける。
●アパートでローラー台トレーニングすることは可能か?
●ロードバイククラブの入り方。嫌われない新入部員の作法
●ロードバイク乗りが、クロストレーニングとしてマラソンを取り入れることのメリット・デメリット
●ロードバイクとマラソンの両立は可能か? サブスリーランナーはロードバイクに乗っても速いのか?
●スピードスケートの選手がロードバイクをトレーニングに取り入れる理由
初心者から上級者まで広く対象とした内容になっています。
× × × × × ×
自転車旅行は三日でワンクール。
わたしは時々、自転車旅行をします。山岳テントを自転車にくくりつけて、自転車で旅をしながら、夜はテントに泊まります。
基本的に四日間の自転車旅行ができれば、あとは同じことの繰り返しです。衣服などは3セットを繰り返して使うので、それがワンクールになります。あとはずっと同じことを繰り返して、ついには日本一周する人たちがいるのです。世界を自転車旅行する人もいます。
トラブル対処のスキルは別問題ですが、旅サイクリングのベースのスキルは四日間走りつづけることで身につきます。
Twitterの私のフォロワーには「自転車日本一周中」という人たちがたくさんいます。最初にやった人はなかなかのチャレンジャーだったと思います。今はみんながやっているから自分もできる、と思うんでしょうね。これが情報化のメリットです。他人にできることは自分にもできると思うのです。
ある人が自転車日本一周を終えても、次の人がまた自転車日本一周をはじめる。次から次へとチャレンジャーが現れています。
私は車中泊で(分割して)日本一周をしていますが、しょせんは島国です。車なら日本一周は本当にたいしたことはありません。
しかし自転車で日本一周するのは、体力も精神力もそうとう消耗するだろうな、と経験から想像がつきます。
わずか4日の自転車テント旅行でも、家に帰ってきたときにはかなり心身ともに消耗しています。それを数カ月かけて日本一周なんて。。。人間としてそうとうタフに成長するだろうな、と想像がつきます。自分の殻を破ってみたい人は挑戦してみてはいかがでしょうか?
殻を破らなければ、とても達成できないぐらい過酷な挑戦だと思いますけれど。
「自転車旅は自由だ」といいますが、実際それほどでもないですよ。
節約貧乏旅行が自転車旅の醍醐味なのに、ホテルに泊まりまくるなんて矛盾している
いくら行動が自由でも、金銭的に不自由であれば、本当の意味で自由とはいえません。
日本一周の際、寝る場所はどうするのですか?
ホテルに泊まるのがもっとも確実ですが、えらくお金がかかります。節約貧乏旅行が自転車旅の醍醐味なのに、ホテルに泊まりまくるなんて、矛盾している気がします。
ホテルほどではありませんが、キャンプ場もお金がかかります。またキャンプ場は自転車目線だと遠方にあることも多いので使い勝手があまりよくありません。
このような自転車旅行は、お金持ちにしかできません。しかし自転車で日本一周しようとするような人は、たいていはお金のない若者です。
やはり貧乏自転車旅ともっとも親和性が高いのは野宿ということになるでしょう。
テント野宿の最大の難関は、どこにテントを張るか
せめてテントがどこでもいつでも自由にはれるような人情、世相ならまだしもですが、この国の実情は残念ながらそうではありません。
野宿テントはたいていの場所で嫌われます。法的に禁止されている場所もたくさんあります。
世の中の大抵は私有地ですからね。人の目が気になりますし、注意されます。
浮浪者・ホームレス排除の対策だと思いますが、公園なども禁止されているところが多いです。
テント野宿の最大の難関は、どこにテントを張るか問題です。
車中泊にくらべると、寝る場所を探すストレスだけでも毎日めちゃくちゃ苦行です。
洗濯は? お風呂は? 雨の日は? どうする?
洗濯は? お風呂は? どうしますか?
食事は食堂で大丈夫ですが、あまりに汗だくでみすぼらしいと嫌われます。
自転車旅も長く続けていると、朝日夕焼けを眺める感動にも慣れてきて、ペダルを漕いで食って寝るだけの苦行ルーティーンに陥ってしまうこともあります。
テント泊の場合、洗面所の水で手洗いして、自転車のフレームにかけるなどして外に干します。
「着て乾かす」という必殺技も活用してください。
問題は雨の場合です。その場合はコインロッカーをおすすめします。コインロッカーでの洗濯は、ホテル宿泊にくらべたら微々たる費用です。休憩場所としても優秀なのでおすすめします。
お風呂は、体を拭うシートや、日帰り温泉を、併用して対処します。季節にもよりますが真夏だったら小雨はシャワーみたいなものだと考えます。
雨の日はどうしましょうか? わたしだったら雨の日は停滞日と決めて、昼間はショッピングモール、夜はマンガ喫茶などで過ごしたこともあります。
雨の中をむりやり進んで、旅をするのがいやになってしまっては元も子もありません。
自転車旅行の醍醐味は「郊外の景勝地」よりも「都心」「大都会」
雨の日のことなどを考えると、ちょっと私は自転車で日本一周まではやる気にはなれません。三四日のショートトリップで十分です。三四日ならば天気予報を見て晴れの日を選んで出発することができます。
車中泊と青春18きっぷで日本一周してしまっているので「日本を見たい欲」がすでに満たされてしまっているということも関係していると思います。
ところで、歩行者に近い目線で、自転車で日本一周をしている彼らが、いちばん面白かった場所は、いったいどこなのでしょうか。サイクリングコースとして有名な、しまなみ海道なんかもいいんでしょうが、経験から私は東京や京都など都心、大都会ではないか、と思います。
東京や京都などは、名所・旧跡や有名観光地が狭い範囲にギュッと詰まっているために、ちょっとペダルを漕ぐと次から次へとメジャーな場所が現れます。感動につぐ感動です。私は、しまなみ海道よりも、東京都内を自転車で走った時の方がずっと感動しました。想像するのと、やってみるのとでは、ぜんぜん違うものなのです。
自転車日本一周旅行に最適な自転車は?
自転車を所有していなければ自転車旅行がはじまらないことは確かです。自転車旅行の本には「どんな自転車でもいい。あなたの持っているその自転車で十分」なんて書いてあります。それはちょっと無責任じゃないか、と私は思います。
この手の雑誌ではとにかく自転車旅に出てもらわないと商売にならないから、こういわざるをえないところがあるのだと思います。ファーストステップが自転車の購入では、旅する敷居が高くなりすぎます。だから「どんな自転車でもいい。あなたの持っているその自転車で十分」というのでしょう。
しかし自転車で旅に出るならそれにふさわしい自転車があるはずではありませんか。
私だったら所有しているロードバイクは選びません。ロードバイクはパンクの危険が大きすぎます。日本一周に悪路はつきものです。はっきりいってスピードのためにすべてをそぎ落としたロードバイクは日本一周には向いていないと思います。
旅サイクリング。ロードバイク大遠征では、チェーン、タイヤを持参すべき理由【実体験】
ロングツーリングにロードバイクは向いていない
もうひとつ理由があります。ロードバイクは前傾姿勢でうつむきがちに走ります。耐風姿勢で下を向いて走るのです。その姿勢は景色を眺めながら走るのに、あまり向いていません。空を眺めて走るには向いていません。
遠くの景色を見たければ、上半身を起こさなければ。しかしパンクしやすいロードバイクに乗っていると、空を眺める雲の模様よりも路面状況の方が気になります。
一生に一度の景色を見るのだから、顔は上げて走りたいものです。わたしはロードバイクは観光ライドには不向きだと思っています。
観光ライドには、パンクしないシティサイクル(ママチャリ)がおすすめ
中途半端なクロスバイクだったら、むしろマウンテンバイクの方がいいと思います。もしもランニングで日本一周するならば、決戦用のマラソンシューズよりも、トレイルランニングシューズを薦める、それと同じ理由です。
スピードが出ることよりも、タフであることの方が重要です。
しかし。。。私だったらマウンテンバイクよりも、「パンクしないシティサイクル(ママチャリ)」をおすすめします。マウンテンバイクやクロスバイクの最大の欠点はカゴがないことです。
ロングライドの自転車旅行で、カゴがどれほど役に立つことか。自転車のカゴほど便利なものはありません。
シティサイクル(ママチャリ)には泥除けもついています。自転車日本一周には雨や悪路がつきものです。
泥除け、チェーンガードなどがどれほどサイクリストを快適にしてくれることか。
長時間ライドでは、ママチャリの柔らかいサドルはお尻にやさしいです。ロードバイクの固いサドルではケツが痛くなります。
自転車日本一周では、スピードなんて気にしなくていいのだから、パンクしないママチャリこそ最適の自転車だと思っています。ノーパンクタイヤのシティサイクルに乗っていくのがベストな選択だと思います。
雨の中でパンクした時、ああやっぱりパンクしないママチャリ最強説は正しかった、と思い知るでしょう。
自転車旅行の装備<実例>
これが私の自転車テント旅行の装備です。おすすめしたとおりのパンクしない自転車です。上半身が起きているので周囲を観光しやすいのです。後ろの荷棚にテント装備一式が入っています。
この装備でいろいろな場所に行きました。
今後、自転車で日本一周しようという人のために、私の失敗をお話ししましょう。
ノーマルペダルと運動靴がマスト
今までで最大の悲惨だった体験は、お風呂屋さんで靴を盗まれたことです。日帰り温泉に入浴したのですが、出てきたら靴がなくなっていました。盗難です。
自転車旅行では最低限の荷物ですから、靴の替えなんてあるわけがありません。靴がなくなると、この先の旅に一気に不安感が増しました。
靴がないので靴下でペダルを回さなければなりませんでした。靴を失って、自転車の旅人は一気にみすぼらしくなりました。
靴を失うということはサイクリスト最大の武器を失うことと同じです。
ペダルのライディング効率を上げるために、サドルを最大限まで上げていたので、靴を失うとペダルに足がびみょうに届かず、漕ぐ力が入りません。
ちなみにロードバイクのビンディングペダルは、ストップ&ゴーだらけの街中ではまったく使えません。ビンディングシューズで歩きまわるのもキビシイので、ロードバイクで日本一周を考えている場合、せめてペダルはシティサイクル用のノーマルペダルに代えて、靴を履くことが絶対条件です。
結局、翌日、靴を買うしかありませんでした。想定外の出費でした。
一番疲れたのは脚ではなく、手のひらだった
自転車テント旅行というロングライドを続けると、一番疲れる場所は脚だろうなあと想像すると思います。やってみる前には私もそう思っていました。
しかし意外なことに、やってみると真っ先に悲鳴を上げたのは手のひら(掌)でした。ノーパイクタイヤのシティサイクルで移動しているので、ひろい歩道がある場所では歩道を走ります。
歩道を走れるところもわたしがシティサイクルをオススメする理由のひとつです。日本の道路は車のことしか考えていない道路がまだ多く、ロードバイクで車道を走るのは命がけという場所がひじょうに多いのです。
シティサイクル旅行の場合、車から命を脅かされることもなく、気楽なのですが、車道と歩道の小さな段差の衝撃をハンドルからつねに受け続けた結果、手のひらが最初にネをあげました。手のひらの小さな骨が疲労骨折寸前というぐらい疲れて痛くなってしまったことがありました。
この場合、衝撃を吸収するクッションのついたサイクルグローブ(自転車用の手袋)をするなどの対策が考えられます。
なるべく車道を走り、車歩道の段差ストレスを受けないことも対策の一つです。
剃毛するなど、股間にも対策が必要
次に悲鳴を上げたのは股間でした。ロングライドでは股間にはワセリンを塗りたくっておく必要があります。
股間の毛なども剃ってしまった方がいいでしょう。長時間ライドは、短時間ツーリングでは想像もしなかったところにダメージが来ます。
脚は元気なのに、手のひらや股間が痛くて自転車を降りたくなるとは、やってみるまで予想もしないことでした。
自転車旅行でも免許証は必要
自転車テント旅行の最中、大雨に降られて、今夜は漫画喫茶に泊まろうと思ったことがありました。もうテント設営するの嫌、というタイミングで漫画喫茶が目に入ったのです。濡れてビショビショですが、そこは目をつぶってもらうしかありません。漫画喫茶にはシャワー施設もありました。
ところが会員制の漫画喫茶で、顔写真つきの身分証明書がないと中に入れてもらえませんでした。顔写真つきの身分証明書なんて免許証しかありません。
自転車旅だから免許はいらない、と私は持ってきていませんでした。なるべく荷物を少なくしたかったからです。
そのせいで漫画喫茶に泊まれず、また更に雨に打たれることになったのです。どうやら自転車旅行でも免許証は必要だったようです。
「気持ち」以外は、金さえあればどうにでもなる。
このように予想もしなかったトラブルに見舞われることから、自転車で日本一周を考えている人は、まずは三泊四日の自転車テント旅行をするなどして、じゅうぶんな経験値を貯めてから実行にうつしましょう……というのは真っ赤な嘘で、もしもあなたが自転車で日本一周を考えているのならば、お金だけもって今すぐにでも出発すべきだと思います。
しょせんは自転車の旅です。トラブルなんていかようにでもなります。自転車本体ですら、もしなんなら買い替えてしまえばいいんですから。東日本大震災のときには、電車がとまってしまったので、自転車を買って家に帰った人がいたのです。
基本的に必要なのは金だけです。靴の紛失なんか買えば済むことですし、手のひらや股間のトラブルなんか1日自転車に乗らずに休めば回復するだけのことです。ホテルに泊まればいいのです。カネがすべてを解決します。経験値なんて旅をしながら貯めていけばいいのです。
しかし「自転車で日本一周してやろう」という気持ちだけはお金で買うことはできません。ハート、スピリッツだけはお金ではどうにもならないのです。
むしろ一泊二日の小さな自転車旅なんかやっていると、ついに日本一周には行かないだろうと思います。しかしいきなり日本一周をはじめてしまえばもはや後戻りはできません。トラブルは解決しながら先に進んでいきます。
しかし三泊四日ぐらいの経験値をためるための小旅行を続けていると、それに満足して、ついには日本一周の旅には出なくなってしまう可能性が高いでしょう。わたしがそうであるように。
自転車で日本一周するのは技術的には難しいものではありません。それを成し遂げるのは、魂です。気持ちの問題です。必要なのは、もはや後戻りできないという覚悟だけです。しかし小さく経験値を貯めていると、脳内で日本一周した時の感覚が想像できてしまうのです。その感覚がわかってしまうと「やらなくてもいいかな」と思ってしまうのです。だから本当にやりたいのなら、準備不足でもいきなり出発してしまった方がいいでしょう。
なあにテントも寝袋も破れたり飛ばされたりしたら途中で買えばいいのです。カネさえあれば死ぬようなことはないでしょう。磨きたいのは旅行技術ではなく魂なのだから。ピュアな魂を風雨にさらして、むき出しのまま外に飛び出せばいいのです。
※※お金さえあればこういうサービスもあります。
思い立った今が自転車テント日本一周に出発する時です。