高級車の代名詞フェラーリ。でも乗ったことのある人ってどれぐらいいるの?
みなさん。高級車といえばフェラーリですよね。みなさんはフェラーリに乗ったことありますか?
私はさほど車には興味がない人間です。自動車よりはロードバイクやランニングシューズの方がよっぽど興味がある人間ですが、高級車といえばフェラーリとその名前は誰でも知っています。自分と縁がない車だということも。
「高級車の代名詞フェラーリ」ほとんどの人はそのことを知っていると思いますが、実際にフェラーリに乗ったことのある人って、どれぐらいいるのでしょうか。ほとんどいないのではないかと思います。私の身の回りには一人もいません。
ところが私は乗ったことがあるんですねえ、<(`^´)>。バスですけど(涙)
それがこいつです。
見ての通りフェラーリです。バスですけど……。
ベンツのバスはありふれているが、フェラーリにもバスがある
かつてイタリア周遊という豪華ツアーに参加した時のミラノのバスがフェラーリでした。
「フェ、フェラーリだよ」
「まじか! フェラーリに乗る日が来ようとは!」
「バスだけど(泣)」
ツアーの仲間も騒然とします。バスでもフェラーリはフェラーリです。私たちのテンションが爆上がりしたことはいうまでもありません。
同じく高級車の代名詞ベンツのバスというのは比較的ありふれています。しかしフェラーリのバスは初めて見ました。
高級車フェラーリもここイタリアでは国産車です。スポーツカーだけではやっていけないんでしょうかね。バスを生産しているのです。貴重な経験をさせてもらいました。
ことあるごとに「おれ、フェラーリ乗ったことあるよ。バスだけど」と、ネタにさせてもらっています。
ところが感激のフェラーリ(バス)体験でしたが、長くは続きませんでした。それどころか、この後、テンションは爆下がりになります。
「最後の晩餐」は「完全予約制」。予約なしに見ることはできない
このフェラーリバスでレオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」を見に行く予定でした。イタリア・ミラノでのことです。
「最後の晩餐」はミラノのサンタ・マリア・デッラ・グラツィエ教会内の壁画です。「完全予約制」で「15分毎に最大30人」しか鑑賞できないシステムとなっています。雇用創世のために現地イタリア人のガイドを必ずつける必要があるようですが、旅行会社のツアーなので、現地ガイドの手配は旅行会社まかせでした。
ところがこのフェラーリバス、なかなかサンタ・マリア・デッラ・グラツィエ教会に到着しません。運転手は、窓をあけて、隣のドライバーに話しかけて「グラッツェ」「グラッツェ」(イタリア語でありがとう)と挨拶しまくっています。明るい運転手ですなあ。イタリア人気質というか……なにも運転中に隣のドライバーに話しかけなくてもいいだろうに……。
ところで何かがおかしいのです。そのとき私は衝撃的なことに気づいてしまいました。バスの窓から外を眺めていると、さっき見た風景がまた見えたのです……そうです。このバスは同じところを二回通っているのです。
「このバス、さっきから同じところを何回も通っているけど、道に迷っているんじゃない?」私の声にバス内が騒然としました。同じことに気づいていた人もいたのでしょう。
宿泊しているホテルから「最後の晩餐」の教会まで15分もあれば着くはずですが、このフェラーリバスは30分近く走り続けています。
道に迷うと何が困るのか? そうです。「最後の晩餐」が見られなくなってしまうのです。
「最後の晩餐」の観賞は完全予約制なので、予定された時間に現地にいないと予約がキャンセルされてしまいます。私たちイタリア周遊ツアーは翌日にはミラノを離れる予定なので、今日の予定がキャンセルになってしまった場合、おそらくこの旅で「最後の晩餐」を見ることはできないでしょう。
日本人アテンダント(ツアーコンダクター)土下座事件
フェラーリバス内が騒然となった頃、日本人のアテンダント(ツアーコンダクター)が、フェラーリバスの通路を歩いて通路の中央までやってきました。
「みなさん、お気づきだと思いますが……このバスはただいま道に迷っています」
と衝撃の詫びを入れてきました。
「『最後の晩餐』を楽しみにツアーに参加された方もいらっしゃると思います。本当に申し訳ございません。」と、バスの通路で土下座して謝ったのでした。
普段ニコニコしていたツアコンが土下座したことも衝撃でしたが、それよりなにより土下座したということは、もう『最後の晩餐』を見るのは無理だということを意味していました。もはや鑑賞予約した時間に間に合わないとコンダクターとして諦めたということです。
バスの中には不満が噴出しました。
「どうしてくれるのよ? 一生に一度と楽しみにしてきたのに」
「どう責任取ってくれるのよ」
イタリア美術の観賞を楽しみにしているツアー客も多かったので、不満も強烈でした。とくに女性の団体客から容赦のない非難が飛びました。
道に迷ったらプロ(タクシーの運転手)に聞く
たしかに一生に一度のチャンスの人もいるでしょう。カプリ島の「青の洞窟」は「天候によっては見られないかも」と承知していましたが、まさか『最後の晩餐』が道がわからず見られないとは思ってもみませんでした。
バスが道に迷って見られませんでしたではすみません。思えば先ほどから「グラッツェ」「グラッツェ」やっていたのは、陽気なバスの運転手がところかまわず他の運転手に話しかけていたのではなく「サンタ・マリア・デッラ・グラツィエ教会」への道を聞いていたのでした。
ああ。なんてバスに乗ってしまったんだ。フェラーリバスなんかに乗るんじゃなかった。いっそいつものベンツバスだったらよかったのに……。
私たちが絶望しているところに、ツアー客の中のある人が言いました。
「タクシーを探しましょう。そのタクシーにサンタ・マリア・デッラ・グラツィエ教会まで先導してもらいましょう。もう予約時間は過ぎてしまいましたが、行くだけ行ってみましょう」
なるほどタクシーに先導してもらうとはいいアイディアです。
ツアコンはすぐに承知して、バスを降りて、タクシーを止めて、自腹でお金をはらって、バスの誘導をお願いしました。当然タクシーは『最後の晩餐』がある教会の場所を知っています。
バスはタクシーの後をつけて、なんとかサンタ・マリア・デッラ・グラツィエ教会にたどり着きました。
そこはイタリア。予約時間は厳密なものではない(かもしれない)
しかし完全に遅刻です。教会にはたどり着きましたが、見ることはできないかもしれません。
ところがここでミラクルが起こりました。
『最後の晩餐』鑑賞には、雇用創世のためにイタリア人ガイドを必ずつける必要があるようですが、この公認イタリア人ガイドは、一日ずっとサンタ・マリア・デッラ・グラツィエ教会に待機しています。そして私たち日本人ツアーだけでなく、世界各国の観光客が来るのを、入れ替わり立ち代わり現地で案内するのが仕事でした。そのイタリア人ガイドの女性は、そこが職場なので、サンタ・マリア・デッラ・グラツィエ教会の「もぎりの係員」とも顔見知りの友達のようでした。
そのことがミラクルを起します。
本来なら遅刻で鑑賞予約キャンセルなのですが、イタリア人現地ガイドの顔で私たちは遅刻にもかかわらず中に入って『最後の晩餐』を見ることができたのです。
日本人アテンダントは責任を果たせて心からホッとしていました。いろいろあったけど目的の『最後の晩餐』は見ることができたので、先ほどまでの怒りは私は消えていました。
しかし今だ怒りが収まらないツアー仲間もいて「あのバスにはもう二度と乗りたくない。バスを変えてください」と女性客がアテンダントに詰め寄っていました。
土下座ツアコンは状況を悟り、会社に電話をして事情を説明しました。そして代わりのベンツバスがやってきました。私たちはフェラーリバスの横っ腹に収納された自分たちの荷物を引き出して、ベンツバスに積みなおしました。こうしてフェラーリバスはお役御免となったのでした。
サンタ・マリア・デッラ・グラツィエ教会を立ち去るとき、フェラーリバスの運転手はせいいっぱいの笑顔を振りまいて私たちを見送っていました。私たちは「バーカ」と罵声を浴びせました。
短い時間でしたが、これが私のフェラーリ(バス)体験です。
悪いのはフェラーリではなくバスの運転手なのですが……できればもうちょっとフェラーリに乗っていたかったと思ったのは私だけでしょうか。それもこれも最後の晩餐を見ることができたから言えることですが……
※結論
「完全予約制の最後の晩餐の観賞予定時間に遅刻してしまったらどうなるのか?」
本来であれば予約はキャンセルとなって見ることはできません。しかしそこはイタリアです。予約時間は厳密なものではなく、現地スタッフにお願いすれば、融通がきくかもしれません。遅刻とわかっても、ダメ元で行ってみることをオススメします。