『西郷どん』後半の展開がはやすぎる

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どうもハルトです。みなさん今日も楽しい旅を続けていますか?

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西郷隆盛。「どこがそんなに魅力的だったのか?」という謎

年末が近づいてきました。年末が近づくということはNHK大河ドラマ『西郷どん』が終了するということです。

いよいよ戊辰戦争の英雄、西郷隆盛が逆賊となって、西南戦争で死を遂げるという誰もが知っている歴史が大河ドラマで描かれていくわけです。

『西郷どん』は私の身の周りでも見ている人が多く、非常に注目されています。それというのも西郷隆盛という人は近代の人物の割には非常に謎の人物であり、NHKがそこをどう描くかに注目が集まっているからではないでしょうか。

西郷最大の謎は「どこがそんなに魅力的だったのか」ということに尽きると思います。

西郷は「日本のナポレオン」のような人物です。明治維新というのは一種の革命でした。

フランス革命が民衆に始まりナポレオンが混乱を収拾したように、明治維新は武士にはじまり西郷隆盛が実質的な官軍の司令官となって混乱を収拾します。

その功績により西郷は陸軍大将に任命されます。日本で最初の陸軍大将は西郷隆盛なのです。ちなみにナポレオンはフランス皇帝になりました。

ナポレオンの魅力ははっきりしています。彼は戦術の天才でした。とくに砲兵戦では着弾点の計算ができるほど能力が高く、戦えば負け知らずでした。

後年、ナポレオン法典をつくるほどの男の魅力はいろいろあったでしょうが、とにかくナポレオンに戦争をまかせておけば必ず勝ったのです。負けたら殺される戦場で「必ず勝てる奴」がいたら年下だろうが部下だろうがそいつに指揮をまかせるに決まっています。その能力で彼はついに皇帝まで上り詰めました。

しかし西郷隆盛は違います。西郷は決して戦術の天才ではありません。高杉晋作や大村益次郎ならわかりますが。軍事的な能力で西郷は官軍の実質的な司令官になったわけではありません。

能力というよりは器で西郷は官軍の実質的な司令官を任され、そして江戸幕府を倒しました。しかし西郷のどんなところがカリスマ的で、どこに「薩摩の若者を死地におもむかせるほどの魅力があったのか」そこのところがイマイチよくわからないのです。「人の上に立つ器」そこをNHKと鈴木亮平がどうやって描くのか、そこに描き尽くされた古き英雄物語を視聴する意味があったわけです。

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女性作家の『幼いシーンは丹念に、戦争シーンはすっ飛ばす』傾向

さて、いよいよ年末の大団円に向かってスパートをかけている大河ドラマ『西郷どん』ですが、西郷南洲後半生の大事績に対して尺(放映回数)があまりにも短すぎるのではないでしょうか。

幼い頃のお相撲とかウナギ獲りとか、嘘っぽい篤姫とのプラトニック恋愛みたいなものに相当な時間をつぎ込んで丁寧に描いてきました。それはそれで面白かったのですが、後半生の重要な大事績が省略されるというのであれば話は別です。どっちが重要だと思ってるんだ?

本来、西郷をして大河ドラマの主人公たらしめたのは、薩長同盟から戊辰戦争での革命リーダーとしての活躍と、征韓論から西南戦争への転落人生、悲劇的な死があってこそです。

日本の歴史にも大きな影響を与えている事績であり(というか日本の歴史そのもの)、そこのところは丁寧に描写してほしいところですが、それをやるにはもう完全に尺が足りないでしょうが、NHK!

2016年の大河ドラマ『真田丸』で関ヶ原の合戦を、使いの者が「徳川家康が勝利した」と結果報告するだけで終わらせて非常に話題になったことがあります。史上名高い天下分け目の決戦を、絵は一切見せず、1分たらずの伝聞と真田関係者の驚いた表情だけ撮って終わらせた伝説の省略シーンです。

NHK大河なら迫力の合戦シーンを見せてくれるだろうと期待していた視聴者を見事にずっこけさせてくれたシーンなのですが、実際に真田家の人々は関ヶ原の合戦を自分の目で見ていませんし、伝聞で知ったことはリアルな史実ことなので、この映像表現はまだ許せます。

しかし西郷どんはそうはいきません。戊辰戦争も、西南戦争も、西郷はその目で見ているのです。伝聞と表情アップで終わらせるわけにはいきません。

脚本家はちゃんと一年分の構成を最初に考えてんだろうな。1年で終わらせるっていう制約があってあらかじめ放映回数はわかっているのだから、自決する最終回から逆算して、省略したら西郷伝にならなくなってしまうはずの西南戦争や、川路利良や桐野利秋、江藤新平や大久保利通、西郷従道との人間関係を描きこんだり、征韓論や戊辰戦争やそれにまつわる葛藤や心境の変化、日本の歴史とそれをつくった男の心境と周囲との関係性を描いていたら、明らかに放映時間が足りないのは今から明白です。

竜頭蛇尾な作品になってしまうことがもう見えているじゃないか。こんなことなら徳川慶喜が「ヒー様」として品川宿に入り浸っているフィクションなんか「関ケ原」みたいにばっさり省いてくれればよかったのに。

イロハ「合戦シーンはお金がかかるからじゃないの? 受信料を払わない人がいるからNHK大河も合戦シーンにお金をかけられないんじゃない?」

ハルト「おおっとビックリした。いきなりイロハ登場か。合戦シーンにお金がかかるからフトコロ事情がキビシイって理屈はよくわかるよ。おれがいいたいのはそういうことじゃなくて、今回の『西郷どん』は中園ミホという女性脚本家が書いているんだけど、どうも女性脚本家は『幼いシーンは必要以上に丹念に描く、戦争シーンはすっ飛ばす』傾向があるんじゃないかと思ってさ。おれが似たようなことを感じるのは池田理代子の『ベルサイユのばら』だ」

イロハ「ふーん。熱狂的なファンが多い作品だから滅多なディスり方しない方がいいわよ」

ハルト「男装の麗人オスカルを描いた作品だけれど、この作品の大団円はどんなだっけ?」

イロハ「近衛師団長という王政側にいた貴族のオスカルが、愛する人のいる民衆側に立って自由のために戦うけれど、革命の成功を見ることもなく死ぬという悲劇です」

ハルト「ほら見ろ。フランス革命という戦争シーンはほとんどすっ飛ばして描いていないじゃないか。幼い頃と恋愛を描き切ったのでもう作品としての興味が尽きたのか? フランス革命にくらべて幼いシーンはメチャクチャ丹念に描いているぞ。原稿の分量が全然違うよ」

イロハ「女性が男装して軍人になる非日常の設定だから、幼い頃の屈折を丹念に描かなきゃ作品として成立しないじゃん」

ハルト「そうだね。『ベルばら』はフィクションだから作者の描きたいものを好きなように描いていいんだよ。敢えてフランス革命に関係させなくたってよかったんだから。でも『西郷どん』が戊辰戦争や西南戦争に関係なくてもいいってわけにはいかないぞ。『ベルばら』はあの構成でいいとしても、ただやっぱり女性作家の多くは恋愛や幼少期を描くのは得意だけど戦争描くのは苦手だという傾向は認めていいんじゃないかな」

イロハ「アンドレとの恋が身分違いのために結ばれなかったから、自由と平等のために戦って、フランス革命の中で気高く咲いて美しく散ったからこその伝説のヒロインだけどね」

ハルト「一般的な傾向だけど、男と女って興味の対象が違うじゃない? イロハだって戦争もの、キライじゃん」

イロハ「武士っぽいやつは何か…浅いんだよな。もっと心のアヤ、心境を描いた作品が好き」

ハルト「武士っぽいって何だ(笑)。少女漫画ってすごく字が多いよね。読むのに時間がかかるよ」

イロハ「少年漫画ってバトルばかりしてるじゃない。見開き2ページ使ってパンチ一発ぶちかましているだけみたいな作品ばっかり。あれ、ぜったい紙の無駄だよ。あっという間に読み終わっちゃう」

ハルト「迫力を出そうとしているんだよ。魂のこもったパンチなんだよ~。現在進行形のアニメ『ワンピース』は初期とは比較にならないぐらいバトルシーンを延々と描いているぞ。さすがのおれも飽きるぐらい同じ相手と何週にもわたってひたすら殴り合っている(笑)」

イロハ「知ってる。原作漫画に追いついちゃうからでしょ?」

ハルト「あら。よく知ってたね。かつてアニメ『ドラゴンボール』も後半になるほどバトルシーンが長時間化してたなあ。アニメは原作漫画を追い抜けないからね。本当はサクサク進んでくれた方がいいんだけど、仕方がないね」

イロハ「バトルばかりの作品は心境に深みがないけれど、ハルトの言うとおり『西郷どん』は前半の幼い頃の丁寧な描き方にくらべて、後半の戦争以降展開が超高速すぎるっていうのはあるかもね」

ハルト「視聴者が一番見たいのは「ヒー様」や「篤姫」とのフィクションではなく、西郷の器、魅力の謎と、後半生の歴史的な大物政治家たちとの愛憎劇だと思うよ」

イロハ「そういえば、薩摩の国父様、島津久光に島流しされるほど嫌われていた西郷隆盛が、どうしてあっさりと薩摩軍の総大将に任命されちゃうのか、テレビでは全然わからなかったわね」

ハルト「西郷隆盛の魅力については司馬遼太郎でさえ『翔ぶが如く』で、お茶を濁して描けなかったと思っているので無理もないけど」

イロハ「せめて作品の構成をもうすこし考えろと言いたいのね」

ハルト「そういうこと。誰も経験していない経験をした後半生あっての西郷隆盛なんだから。時間がなくて省くなら誰もが似たような経験をしている前半生でしょうよ」

さてさて。ハルトはこんなこと言っていますけれど、みなさんはどう感じましたか?

サハラ砂漠で大ジャンプする著者
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このブログ著者の小説『結婚』
小説『結婚』
愛とは何か? 結婚とは何か? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。恋人のアスカはツバサのもとを去っていきます。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。  離れたくない。その叫びだけが残った。  全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。 引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。 そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。 それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自信が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。 アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。 死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。 生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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このブログの著者の小説『片翼の翼』
小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
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小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
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【この記事を書いている人】

アリクラハルトと申します。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。ランニング系・登山系の雑誌に記事を書いてきたプロのライターでもあります。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。その筆力は…本コラムを最後までお読みいただければわかります。あなたの心をどれだけ揺さぶることができたか。それがわたしの実力です。
市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。ちばアクアラインマラソン招待選手。ボストンマラソン正式選手。地方大会での入賞多数。海外マラソンも完走多数(ボストン、ニューヨークシティ、バンクーバー、ユングフラウ、ロトルアニュージーランド、ニューカレドニアヌメア、ホノルル)。地元走友会のリーダー。月間走行距離MAX600km。『市民ランナーという生き方(グランドスラム養成講座)』を展開しています。言葉の力で、あなたの走り方を劇的に変えてみせます。
また、現在、バーチャルランニング『地球一周走り旅』を展開中。ご近所を走りながら、走行距離だけは地球を一周しようという仮想ランニング企画です。
そしてロードバイク乗り。朝飯前でウサイン・ボルトよりも速く走れます。山ヤとしての実績は以下のとおり。スイス・ブライトホルン登頂。マレーシア・キナバル山登頂。台湾・玉山(ニイタカヤマ)登頂。南アルプス全山縦走。後立山連峰全山縦走。槍・穂・西穂縦走。富士登山競争完走。日本山岳耐久レース(ハセツネ)完走。などなど。『山と渓谷』ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。
その後、山ヤのスタイルのまま海外バックパック放浪に旅立ちました。訪問国はモロッコ。エジプト。ヨルダン。トルコ。イギリス。フランス。スペイン。ポルトガル。イタリア。バチカン。ギリシア。スイス。アメリカ。メキシコ。カナダ。タイ。ベトナム。カンボジア。マレーシア。シンガポール。インドネシア。ニュージーランド。ネパール。インド。中国。台湾。韓国。そして日本の28ケ国。パリとニューカレドニア、ホノルルとラスベガスを別に数えていいなら訪問都市は100都市をこえています。(大西洋上をのぞいて)世界一周しています。国内では青春18きっぷ・車中泊で日本一周しています。
登山も、海外バックパック旅行も、車中泊も、すべてに共通するのは必要最低限の装備で生き抜こうという心構えだと思っています。バックパックひとつ。その放浪の魂を伝えていきます。千葉県在住。

【この記事を書いている人】
瞑想ランニング(地球二周目)をしながら心に浮かんできたコラムをブログに書き綴っているランナー・ブロガーのアリクラハルトと申します。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。ランニング系・登山系の雑誌に記事を書いてきたプロのライターでもあります。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。その筆力は…本コラムを最後までお読みいただければわかります。あなたの心をどれだけ揺さぶることができたか。それがわたしの実力です。 市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。ちばアクアラインマラソン招待選手。ボストンマラソン正式選手。地方大会での入賞多数。海外マラソンも完走多数(ボストン、ニューヨークシティ、バンクーバー、ユングフラウ、ロトルアニュージーランド、ニューカレドニアヌメア、ホノルル)。地元走友会のリーダー。月間走行距離MAX600km。『市民ランナーという生き方(グランドスラム養成講座)』を展開しています。言葉の力で、あなたの走り方を劇的に変えてみせます。 また、現在、バーチャルランニング『地球一周走り旅』を展開中。ご近所を走りながら、走行距離だけは地球を一周しようという仮想ランニング企画です。 そしてロードバイク乗り。朝飯前でウサイン・ボルトよりも速く走れます。山ヤとしての実績は以下のとおり。スイス・ブライトホルン登頂。マレーシア・キナバル山登頂。台湾・玉山(ニイタカヤマ)登頂。南アルプス全山縦走。後立山連峰全山縦走。槍・穂・西穂縦走。富士登山競争完走。日本山岳耐久レース(ハセツネ)完走。などなど。『山と渓谷』ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。 その後、山ヤのスタイルのまま海外バックパック放浪に旅立ちました。訪問国はモロッコ。エジプト。ヨルダン。トルコ。イギリス。フランス。スペイン。ポルトガル。イタリア。バチカン。ギリシア。スイス。アメリカ。メキシコ。カナダ。タイ。ベトナム。カンボジア。マレーシア。シンガポール。インドネシア。ニュージーランド。ネパール。インド。中国。台湾。韓国。そして日本の28ケ国。パリとニューカレドニア、ホノルルとラスベガスを別に数えていいなら訪問都市は100都市をこえています。(大西洋上をのぞいて)世界一周しています。国内では青春18きっぷ・車中泊で日本一周しています。 登山も、海外バックパック旅行も、車中泊も、すべてに共通するのは必要最低限の装備で生き抜こうという心構えだと思っています。バックパックひとつ。その放浪の魂を伝えていきます。千葉県在住。
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