このページでは錬金術って何だ? を主題にアニメ『鋼の錬金術師』をネタに語っています。
錬金術という言葉に惹かれて視聴したら、めちゃくちゃオモロかったので。
ファンの方と同じ思いを共有できたら、と思います。
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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。
「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」
「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」
※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。
アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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錬金術ってなんだ? カネではなくキンをつくる方法
錬金術というのは字のごとく、もともとは金をつくろうという発想でした。カネじゃなくて、キンです。紙幣の時代じゃないから同じような意味ですけれど。
カネには交換効果しかありませんが、キンには美しいとか錆びないとか物質的なメリットがあります。
しかしピカピカする黄色い重たい金属がそれほど欲しかったわけじゃないだろうから、結局はリッチになりたかったんだと思います。
錬金術を魔術っぽく認識している人がいると思うけれど、そう考えると人間くさい術だと思いませんか?
もし本当に錬金術でキンがつくれたら、金の価値が大暴落(インフレーション)して、けっきょくはお金持ちなんかになれないというのが現代の常識ですが、そういうことには思い当たらなかったのかね錬金術師。
錬金術は化学の先祖といわれているのですが、経済学も勉強する必要がありそうです。
錬金術は存在する!
現代でも、濡れ手で粟のお金儲けのことを錬金術と呼んだりします。
そういう意味では錬金術というのはマボロシのワザではなく、実在します。
恐竜みたいに、錬金術は現代も生き残っている
鈴や鉛のような卑金属を、化学変化によって金に変えようとしたことから、錬金術は化学のご先祖様だと言われています。恐竜の一部が鳥になって現代でも生き残っているように、錬金術は化学になって現代にも生き残っています。
錬金術≒賢者の石≒永遠の命≒如意宝珠≒ドラゴンボール
卑金属を金に変える秘密のワザと、賢者の石とよばれる謎の物質が、いつしか同一視されるようになりました。
賢者の石と呼ばれる物質をみつければ、夢がかなうとされ、究極の物質と呼ばれるようになり、ついには手に入れれば永遠の命を得ることができるとまで言われるようになりました。
心臓をとめて手術をした後、心臓を再び動かす「大動脈弁置換手術」のことをわたしが「錬金術」だと呼んだのはそのためです。
人類すべての夢を体現した物質が「賢者の石」なのです。東洋でいうなら、竜が手に持っている「如意宝珠」が最も近いものでしょう。願いをかなえる玉です。ドラゴンボールですね。
ハリー・ポッターにも登場します。ゲーテのファウストにも登場します。
無からは何も生じない。等価交換の原則は科学の原則
『鋼の錬金術師』の中に登場する錬金術の原則「無からは何も生じない。等価交換の原則」ですが、これは完全にアニメの脚色です。
「無からは何も生じない。等価交換の原則」というのは科学の原則で、いにしえの錬金術の原則ではありません。
あるいはパルメニデスとかデモクリトスの哲学です。
魔術視されることもあるいにしえの錬金術は、思いっきり無から何かを生じさせようとしていました。
キメラをつくる錬金術。複合概念
ギリシア神話にも出てくるキメラは、ライオンの頭、山羊の胴体、尻尾が蛇という怪物です。
タイフーンの語源といわれるテュポーンの息子ですね。
ヒュームの哲学でいう糊と鋏でつくりあげた複合概念です。
キメラもいにしえの錬金術とは厳密には別ものですが、「不可能を可能にする」という文脈の中で『鋼の錬金術師』では錬金術扱いされています。
わたしが『鋼の錬金術師』を「他のアニメと違うな」と感じたのは、作品冒頭の「人語を解するキメラ」の回でした。人語を解するキメラの錬成に成功した、という錬金術師。しかしその人語を解するキメラは、死にたい、とただ一言だけ発して食事もとらずに死んでいきました。……結局、その錬金術というのは犬と人間を混ぜ合わせた「禁断の錬金術」だったのです。自分の娘と飼い犬をまぜあわせて人語を解するキメラをつくったのでした。オカルトですよ。よくアニメでこれをやったなあ、と驚きました。
この章だけでも『鋼の錬金術師』を見る価値があります。いや、ホントにびっくりした。
アニメ化に際して漫画版のこのエピソードをまるまる削除しそうなものですが、監督はじめ「よくやった」と褒め称えたいと思います。
愛は錬金術以上の魔法
その後も『鋼の錬金術師』には魅力的なエピソードがつづきますが、省略します。ぜひ作品にふれてください。ラストエピソードだけ最後にご紹介します。
弟の命を「真理」に奪われた主人公エドは、弟の命と等価で交換できるものとして「自分の真理(錬金術)」を差し出します。錬金術師はすべてを解決できると思い込んでいたが、人語を解するキメラひとり助けることもできない。自分は最初からただの人間だった、と理解します。錬金術がなくなっても、これまでの旅で結ばれたみんながいる。だから錬金術をなくしてもいいというのが主人公の「真理」でした。仲間、友だちこそ正解だったのです。そして恋人に「オレの人生を半分やるから、おまえの人生を半分くれ」と等価交換を持ち出しますが「バカじゃないの? 半分どころか全部あげるわよ」と簡単に錬金術の等価交換の真理をひっくりかえされるのです。
愛には錬金術の原則は通用しませんでした。愛は錬金術以上の魔法でした。
ジャパニメーションが世界を熱狂させる理由
いにしえの魔術、科学、化学の錬金術について解説しました。
また『鋼の錬金術師』の魅力が伝わりましたでしょうか? 中世ヨーロッパ風のファンタジーが舞台です。少女が人語犬になるシーンでいっぺんにとりこになりました。
長い旅路の涯に、チビだった主人公はもうチビではなくなっていました。
錬金術という魔術を描きつつ、人間の絆の大切さを純文学以上に強く打ち出してしまうところがジャパニメーションが世界を熱狂させる理由なのだと思います。
クオリティがめちゃくちゃ高いのです。ぜひ作品に触れてみてください。
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このブログの著者が執筆した純文学小説です。
「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」
「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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また原作マンガもおすすめですよ。
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