どうもハルトです。みなさん今日も楽しい旅を続けていますか?
バックパッカーとは「自分で手配できる人」のこと
旅行会社というのは、面倒な手配を代行し、その代わりにいくらかの手数料をいただくことで成り立っています。
パック旅行に申し込む旅行者は、手数料を旅行会社に支払う代わりに面倒な手間が省かれるというウィン・ウィンな関係にあるわけです。
ところが貧乏旅行者は、この手数料が惜しいと感じる人たちです。なぜって自分でできるから。こういう人のことをバックパッカーと呼びます。世界を自分の庭のように歩き回る種族のことです。
バックパッカーはすべてを自分で手配して旅をつくり出すのが好きな人。人生を自己形成するのが好きな人のことです。トラブルも自己責任です。自分の人生も自己の能力と責任で形成しようとする人のことを私はバックパッカーと呼んでいます。
たとえばパック旅行の中には「東京都心ツアー」というものがあります。しかし都内在住の人は「なんで東京をパック旅行で巡るんだ? 自分で回れるのに」と思うことでしょう。そうです。慣れている人にとってはパック旅行なんて利用する必要はないのです。
旅慣れた旅行者はパック旅行を選択しません。自分で手配することで手数料を安く省きます。その分現地でお土産を買ったりおいしいものを食べたりすることに使おうとします。
フロリダのディズニーワールドツアーにも、もちろんパック旅行というものが存在します。
往復の航空機のチケットとホテルの予約、現地の送迎とディズニーパークチケットがセットになっているタイプの商品です。旅行者は旅行会社にお金を振り込むだけ。後はすべて旅行会社がやってくれます。
友人A夫妻を「旅下手なやつ」と思っていたのに、恥ずかしながら全く同じテーマパークしか行かないフロリダ旅行の旅程を組んだ私ですが、最後のところでバックパッカーの意地を見せることにしました。
航空券のみ予約。ホテルは現地で探す。モーテルかB&B(ベッド&ブレックファースト)。ディズニー公認ホテルに止まるぐらいなら野宿をする。そしてパークへの入場チケットは現地のチケット屋さんで安く購入する。
こうすることでいちいち旅行会社に手数料を取られなくて済みますので、パックツアーよりもはるかに安く旅ができるはずです。
心のやましさをごまかしながら、行ってきました。フロリダ・ウォルト・ディズニー・ワールド。
ホテルはB&B。チケットはチケットショップで購入
ディズニーワールドからかなり遠いB&Bに投宿しました。しかしどうせ明るいうちはディズニーランドから出てこない予定なので問題ありません。
コーンフレークと牛乳ぐらいの朝食がついています。一泊1,000円程度です。公式ホテルにとまれば一泊10,000円以上しますから、相当安く出費を抑えることができました。
そしてチケット屋(ダフ屋)でディズニーワールドのチケットを購入します。
フロリダ・ディズニー・ワールドの4つのパーク(と2つのウォーターパーク)には、「通し券(複数日チケット)」があります。
近くにユニバーサル・オーランド・リゾート(2つのテーマパーク)もあります。合計すると八つもパークもあり、すべてのパークを回りきることは、よほど時間がある人にしかできません。
通し券を購入し、そのチケットを使い切れなかった人が、ダフ屋にチケットを売っていくのです。スキー場で午前中に帰る人が、午後から来た人にリフト券を安く売っていますが、それと同じですね。
私たちはダフ屋で「通し券」を購入しました。ミュージアムパスのような薄いカードタイプの共通チケットでした。これもまたかなりの安値で仕入れることができました。
最初から正規のチケットがツアー料金に含まれているパック旅行者よりもはるかに出費を抑えることに成功しました。
ディズニーランド入るのに指紋認証って、そこまでやる必要あるの?
チケットは全パーク周遊チケットでした。そのチケットがあれば、一パーク一回入ることができます。個別に買うよりも安いのですが、しかし本来の所有者が何カ所かのパークにすでに入場しているため、そこでは関門にひっかかるようです。
チケット屋の太った女性店主は、笑顔で私たちに何か説明してくれます。しかし元々中南米出身の人らしく訛っていて英語が聞き取れません。
女性店主は「いくつかのパークにはこのチケットでは入れない。その際、他のパークにはちゃんと入れたのに、このパークにだけ入れないのはおかしい。機械の故障だと言って入門ゲートを通してもらいなさい」
どうもチケット屋の太ったご婦人はそう言っているようでした。
イロハ「なんか指を出しているよ。指紋認証でもあるのかな」
ハルト「まさか。いくら何でもそこまでやらないでしょう」
カードのようなものを機会に通すとは思いましたが、まさか一人一人指紋認証するなんて、NASAに入るわけじゃあるまいし。
果たしてイロハの聞いた通りでした。
ディズニーワールドに行くと、なんと入場ゲートに指紋をかざしています。
まさか、まさかの事態です。
たかが遊園地に入場するのに指紋認証があるなんて「ここはアメリカか!」とツッコミをいれたくなります。
いや、アメリカですけど!
ダフ屋のおばさんが言っていたのかこのことだったのか。
たかが遊園地に入るのに、どうして指紋認証までする必要があるのでしょう。
ここはペンタゴンか!?
おそらく正規にチケットを購入すると指紋登録があり、カードと指紋が紐づいているのでしょう。
しかし、私たちはダフ屋で買った非正規の中古チケットしか持っていません。これでは絶対、入場できないに決まっています。私達は指紋の登録なんてしていませんので、指紋チェックでひっかかるに決まっているのです。
さて、困りました。安チケットを買ったのは失敗だったでしょうか。正規チケットを定価で買いなおさなければならない羽目になるかもしれません。
結局は、最後は「人」
ほとんどの人は指紋チェックを難なくクリアしていましたが、ときどき、指紋チェックで引っかかる人がいます。何回かトライするとゲートが開く人もいましたが、何度やってもゲートが開かない人もいます。
そういう人は係員に訴えて手動で入門ゲートを開けてもらって通してもらっていました。
チケット屋の女店主は「いくつかのパークにはこのチケットでは入れない。その際、他のパークにはちゃんと入れたのに、このパークにだけ入れないのはおかしい。機械の故障だと言って入門ゲートを開けてもらいなさい」と言っていました。彼女が言っていたのはこのことだったのですね。
私達はすこし離れて、別々の列に並びました。再利用チケットであることがばれないように「言葉のわからない東洋人の単独旅行者」であることにしたのです。
「チケットをどこで買ったのか」とかいろいろ聞かれても答えるだけの英語力はありませんので、はじめから一切喋れないことにしておいた方が無難だと判断しました。
先にイロハが入場ゲートに到達しました。
どうか無事に通れますように。
別の列で、私は祈りながらイロハを観察します。
指紋をかざしますが、当然、指紋は認証されません。あたりまえです。
フロリダのディズニーワールドではシルバー人材の雇用に貢献する方針なのか、高齢者が入場ゲート係員を担当していました。基本的に全部入場ゲートの機械がやってくれるので、係員は異変が生じた時の補助をしているだけです。
イロハの担当をしていた眉毛まで白いおじいちゃんは、何度かイロハに指紋認証を繰り返させますが、すべてアウトです。当然ですね。
イロハは「昨日はマジックキングダムを通れたのにおかしい」と主張します。
するとおじいちゃんは「そうか。じゃあ入んな」と、何と簡単に手動でゲートをあけてくれました。
おおっ。ラッキー!
チケットを買いなおすこともなく、イロハがパークに入ることができました。
どれだけチェックを厳しくしても、最後は人間です。
チケットだけは正規品を買った方がいい
次は私の番です。
指をかざして指紋認証を受けますが、当然、はじかれます。
イロハと違う列に並んでいたため、私のゲートは初老のおばあさんが担当でした。
「昨日は入れたのにおかしい」彼女に主張します。
イロハの時のように通してくれるかと思ったら「機械が認識しない。チケットセンターに行って事情を説明しなさい」と言われました。イロハの列のおじいさんのように手動でゲートを開けてくれないのです。これにはまいりました。
ここでチケットセンターに行こうものなら、いろいろ英語で聞かれるでしょうし、詳しくチェックが入るかわかりません。たかが遊園地の入場に指紋認証までするんですよ。登録されている指紋の陰影を映し出して映像チェックするぐらいのことはやりかねません。私はアメリカを舐めていました。
指示に従うふりをして、私は列を離れました。もちろんチケットセンターなんかに行きません。やさしく、お客さんを困らせるぐらいならあっさりと通してくれそうな、人の好さそうな老人が門番をしている列をさがします。
そしてその列に並びなおして、指紋認証ではじかれて困った顔をしていると、イロハと同じように手動でゲートを開けてもらい中に入ることができました。
A夫妻のように、フロリダ滞在中、テーマパークにしか行かなかったので、結局、ディズニーの4つのテーマパークすべてに行ったのですが、すべての入場ゲートでひっかかりました。
あたりまえです。非正規チケットで、指紋認証していないんですから。
毎度毎日、無事に入門ゲートをくぐり抜けられるか、気が気じゃありませんでした。
旅は関門突破ゲームだというのが私の基本的な旅行スタンスですが、ディズニーワールドで一番印象に残っているイベントは、この入門ゲート突破ゲームだと言っても過言ではありません。数々のディズニー・アトラクションではなく、入場ゲートを関門突破するときのドキドキ感が一番印象に残っているのです。
どんなに素晴らしいゲートを導入しても、係員が中に入れてくれました。もしかしたら使い回しの安チケットだと承知の上で中に入れてくれたのかもしれません。
結局、海外旅行というのは人なのです。人間が優しいから旅ができるのです。現地の人が悪意を剥き出しにしてきたら旅行者になすすべはありません。
旅費を安く抑えようとするバックパッカー魂は買いますが、ディズニーランドのチケットだけは正規品を買った方がいいと思います。
この事件の体験談をしてA夫妻とはすっかり仲良くなりました。あるいはそのことがこの旅、最大の収穫だったかもしれません。