初マラソンはホノルルマラソン。ワイキキで下痢をした話し
先日、東京マラソン2021(2022なのに2021って……)がありました。初マラソンを完走した新米ランナーがたくさん出現したのではないかと思います。おめでとうございます。あなたもこれでマラソンランナーです。
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※雑誌『ランナーズ』の元ライターである本ブログの筆者の書籍『市民ランナーという走り方』(サブスリー・グランドスラム養成講座)。Amazon電子書籍版、ペーパーバック版(紙書籍)発売中。
「コーチのひとことで私のランニングは劇的に進化しました」エリートランナーがこう言っているのを聞くことがあります。市民ランナーはこのような奇跡を体験することはできないのでしょうか?
いいえ。できます。そのために書かれた本が本書『市民ランナーという走り方』。ランニングフォームをつくるための脳内イメージワードによって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。「言葉の力によって速くなる」という本書の新理論によって、あなたのランニングを進化させ、現状を打破し、自己ベスト更新、そして市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●言葉の力で速くなる「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」「かかと落としを効果的に決める走法」
●絶対にやってはいけない「スクワット走法」とはどんなフォーム?
●ピッチ走法よりもストライド走法! ハサミは両方に開かれる走法。
●スピードで遊ぶ。スピードを楽しむ。オオカミランニングのすすめ。
●腹圧をかける走法。呼吸の限界がスピードの限界。背の低い、太った人のように走る。
●マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」とは?
●究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」
本書を読めば、言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化されて、同じトレーニング量でも速く走ることができるようになります。
あなたはどうして走るのですか? あなたよりも速く走る人はいくらでもいるというのに。市民ランナーがなぜ走るのか、本書では一つの答えを提示しています。
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どんなレースに出ても自分よりも速くて強いランナーがいます。それが市民ランナーの現実です。勝てないのになお走るのはなぜでしょうか? どうせいつか死んでしまうからといって、今すぐに生きることを諦めるわけにはいきません。未完成で勝負して、未完成で引退して、未完成のまま死んでいくのが人生ではありませんか? あなたはどうして走るのですか?
星月夜を舞台に、宇宙を翔けるように、街灯に輝く夜の街を駆け抜けましょう。あなたが走れば、夜の街はイルミネーションを灯したように輝くのです。そして生きるよろこびに満ち溢れたあなたの走りを見て、自分もそんな風に生きたいと、あなたから勇気をもらって、どこかの誰かがあなたの足跡を追いかけて走り出すのです。歓喜を魔法のようにまき散らしながら、この世界を走りましょう。それが市民ランナーという走り方です。
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私は東京マラソン以前からのランナーなので、初マラソンはホノルルマラソンでした。
いよいよ明日、はじめてのマラソンという前日、私はワイキキで下痢をしていました。
今考えるとインドならともかくなんでハワイなんかで下痢をしたのか不思議ですが、海外旅行も久しぶりで、まだ胃腸が病原菌に対して軟弱だったのだと思います。
ランニング・イラストの最高峰。ホノルルマラソン「君の名は?」
言葉が話せない場合、ゼスチャーという手がある。
これまで一生懸命に練習してきたのだから、ホノマラではベストを尽くしたいと思いました。しかし下痢ではベストなんかつくせません。
「薬を飲もう」
私は思いました。普段はあまり薬なんか飲まないタイプなのですが、非常事態です。やむをえません。
薬局はすぐに見つかりました。店内に入りますが、すべて英語表記の薬ばかりで、どれが下痢にきく薬だかわかりません。
店員が「Can I heip you?」と声をかけてきてくれましたが、説明できませんでした。下痢Diarrhea という英単語を知らなかったからです。
私は困り果てました。本当は伝える手段がありました。言葉が話せない場合、ゼスチャーという手があります。
肉体言語が伝える力は強力だが、下痢であることをどうやって伝えようか?
風邪なら口に手を当てて「コホン、コホン」と咳をすれば「ああ、風邪薬が欲しいんだな」とわかってもらえます。
腹痛だったら、お腹をおさえて顔をしかめて見せれば「ああ、腹痛薬が欲しいんだな」とわかってもらえます。
でも下痢だったらどうでしょう。どうやって下痢をゼスチャーすればいいでしょうか?
私は迷いました。
和式便所に座った格好をして、お尻の下から何かが噴出しているように、手でゼスチャーすれば、たぶん下痢だということはわかってもらえただろうと思います。
しかしそれをやるかどうかは別問題です。
なんで高級リゾート地のワイキキまできて、うんこするゼスチャーをせにゃならんのか。
これは日本人の恥ではあるまいか?
でも明日の初マラソンは、下痢のまま走りたくありませんでした。ベストを尽くして走りたかったのです。
一歩も歩かずに完走すること。どんなに悪いタイムだって、それだけは果たすつもりでした。
しかし下痢ではその最低限の目標を果たせそうもありません。
<下痢のジェスチャーをすべきか、否か、それが問題だ>
英語しか話せない店員の前で、ハムレットのように私が眉間にしわを寄せて悩んでいると、彼女は「カモン」と私を手で呼びます。何ごとかとついていくと、そこは日本の薬ばかり陳列しているコーナーでした。
「お。おう。サンキュー」
なんだよ~。日本の薬コーナーがあるなんて、さすがハワイだな。
本当に助かりました。国辱ものの下痢のゼスチャーをしなくてすんだのです。
私は下痢どめの薬を手に入れることができました。
翌日のホノルルマラソンでは、下痢に苦しめられることもなく、なんとか一歩も歩かずに完走。初マラソンを無事に終えることができたのでした。
わかっていても、恥ずかしくてできないゼスチャーというものがある。
日本に帰るとすぐに私は、下痢を英語で何というか調べました。
下痢は英語で Diarrhea ダイアリーアといいます。この単語だけは私は忘れません。
その後、私は外国語をほとんど話せないまま諸国遍歴を繰り返すのですが、ジェスチャーだけですべて通じるとは思っていません。いや仮に通じるとしても、恥ずかしくてできないゼスチャーというものがこの世にはあるのですよ。