地獄大夫って誰? どんな人物? なぜ後世に名前が残ったの?
ひさしぶりに車中泊の旅に出かけようぜ
むむむ。どこへ行く?
(近場は行きつくしたぞ)
妻とひさしぶりに車中泊の旅に出かけようということになりました。
日本三大桜の福島・三春滝桜は有料観覧なのでライブカメラで開花を確認してから行くべし
車中泊のルール。高速道路にお金は払わない。
土日の休みを利用しての二泊三日(金曜日の夜に出発します)なので、高速道路にお金は払わないことにしているのでそれほど遠くへは行けません。
すると——二泊ぐらいで行ける範囲はほとんど行きつくしています。イベントに期待するしかありません。イベントというのは「お祭り」とか「果物狩り」「花見」のような季節もののことです。
思いついたのは花見。私は千葉県在住。4月10日ごろにはもう桜は散って葉桜になっています。しかし福島当たりまで北上すれば、桜はまだ咲いているのではないかと思いました。
桜前線を追いかけて移動すれば二度でも三度でも花見ができます。
これは福島車中泊二泊三日の記録です。
那賀川町馬頭広重美術館「画鬼・河鍋暁斎」
福島からの帰路。茨城県を通過しました。そこで面白そうな展示をしていたので行き当たりばったりで見てきました。
那賀川町馬頭広重美術館です。企画展で「画鬼・河鍋暁斎」というのをやっていました。
この企画展の目玉をつとめていたのが「地獄大夫」。ずいぶんとおどろおどろしい名前です。
なんでも解説によると実在の人物だということです。どんな女性だったのでしょうか?
地獄大夫ってどんな人物? なぜ後世に名前が残ったの?
太夫(たゆう)というのは最上位の遊女のことです。花魁(おいらん)との違いはからだを売るかどうかなど時代によって区別していたときもあったようですが、時を経てほぼ同じ意味で使われるようになりました。
地獄大夫も「身体を売っている」クチでした。当然、幸せな境遇ではなく、不幸な女性でした。遊女である自らの境遇を地獄として、みずから地獄太夫を名乗り、地獄絵図を描いた服装で、念仏を唱えつつ客をとったということです。すばらしい美女だったそうで、よけい話題になったようです。
ヤブユム上等。風狂の破戒僧、一休宗純和尚
彼女の名前を不滅にしたのが、一休さんと歌をおくり合うエピソードです。
地獄大夫「出家坊主が地獄の近くで何してんねん(意訳)」
一休宗純「どこにいようとわしには同じことよ(超訳)」
一休さんは風狂の破戒僧です。ヤブユム上等なので、地獄大夫を抱きに行ったのかもしれません。
ザ・ダルマ・バムズ(禅ヒッピー)。生きる意味をもとめてさまよう
一休和尚は地獄大夫に直接会ってみることにしました。
一休宗純の上の句「聞いた噂よりも、見るともっとおそろしい地獄だな(直訳)」
ここでいうおそろしいというのは地獄大夫の美しさ、教養の深さに感嘆しているのです。
地獄大夫の下の句「地獄を見たものは皆あたしの魅力に落ちるのよ(意訳)」
みごとに下の句を返したことで一休和尚は驚嘆し、抱く気も失せて師弟関係をむすんだということです。
この一休坊主はいまわの際に「死にとうない」とほざいたとされていますが、地獄大夫はもっと肝が据わっていて「私が死んだら犬に食わせなさい。犬の腹がふくれるだけ、火葬されるより功徳よ」といかにも地獄っぽいことをいって死んでいます。
『鬼滅の刃』遊郭編の堕姫のモデルか? さまざまな物語に取り上げられた伝説の遊女
このきっぷのいい美女である地獄太夫のことを河鍋暁斎は大好きだったみたいで、絵のモチーフにすることが多かったようです。
「遊女なのにいい女」という『椿姫』系の女性だったんですね。「お高めの売春婦」が好きな男というのは古今東西一定数いるのかもしれません。
最近では『鬼滅の刃』遊郭編の堕姫なんかも、地獄大夫のイメージあってのものだったかもしれません。生きながら鬼になるなんて地獄なんでしょうからね。