新設学部、新設学科。昔はなかった学問分野。観光学部、観光学科
わたしは文学部出身。文学部というのは、古今の文学を研究する学部です。比較的わかりやすい学部ではないでしょうか。研究対象として手元に「文芸作品」があるのが前提です。
ところで最近は、わたしの学生時代にはなかったような学部がたくさんあります。
たとえば観光学部。そういう学部、昔はありませんでした。どうしてそんなことが言えるのかというと、今の私の感覚だったら観光学部だったらよろこんで進学したいと思うからです。でも当時は選択肢がありませんでした。観光というのは「する」ものであって「研究」するものとは思われていませんでした。それが研究対象に昇格したのは、観光がばく大な経済効果をもたらすことが知れ渡ったからだと思います。エジプトのように観光で食っていく国もあります。日本も観光で儲ける国になりました。それに伴って観光学部、観光学科がたくさん新設されていますね。
新設大学。国際学部。情報学部。
大学そのものも、箱根駅伝で初めて名前を聞くような新しい大学がたくさん創設されています。大学が新しければ、既存の学部、学科で勝負しても、老舗大学にはなかなか勝てませんから新しい学部をつくりたくなる気持ちはよくわかります。
子どもの数が減っているのに、大学を新設する意義は何だ? と問われたとき、既存の大学にはない学問分野を掲げれば大義名分が立つからです。
たとえば、国際学部とか、情報学部とか。新しい分野は学部としてだけでなく、大学そのもののウリになっていることもあります。その場合、それが名前に入っています。東京国際大学とか、東京情報大学とか。
地政学部はないが、地政学を学べる大学はある。
ウクライナ戦争などで話題の地政学(なんでウクライナが紛争地になっているのかといえば、それは地政学上の問題だということです)は、どこで学べるんでしょうか?
地政学部という大きな形はないようですが、地理学科の一部として地政学を教えている大学はいくつかあるようです。
人類学、社会学、民俗学、考古学の違いって何?
新しい学部、学科については、どんな学問分野か知らなくても「私の時代にはそんな学部ありませんでした」といちおうの言い訳が立ちます。しかしだったら古い学部、学科については何でもわかっているのかといえば、ぜんぜんそんなことはありません。
たとえば、人類学、社会学、民俗学、考古学という学問分野が古くからあります。私が学生時代からこの分野はありました。でもみなさん。この違いって分かります? 私には全部、研究対象が同じカンジがするんですけど?
「原初的な古い生活形態を研究することを通して、その民族の特徴、その社会の特徴、ひいては人間とは何か、について研究する」というイメージを持っています。
でも名前が違うってことは、研究対象が違うのでしょう。
たとえばわたしがこのブログで書いてきたことは、何学部の研究に近いのでしょうか?
バックパッカーが学ぶのにふさわしいのは何学部なのでしょうか?
人類学とは?
人類学とは、とくに外国の文化を研究することで、自国の文化を知るという手法をとるそうです。他文化における人間の多様性と文化の違いを知る学部です。なんだかバックパッカーみたいですね。
類人猿や未開の人たちを研究することで、人類の太古のスタイルを知ることもあります。『世界ふしぎ発見!』みたいですね。
また言語や宗教の特徴を調べて、インド・ヨーロッパ語の分布から、たとえばアーリア人の移動範囲を調べるというようなことも含まれるようです。なんだか「考古学」みたいですね。インディー・ジョーンズは考古学者だけど人類学者でもあるんですね。また「宗教学」みたいでもあります。
人類学は人間と人間の生き方の研究をするところです。人間とは何か? なんだかまるで「文学」「哲学」みたいですね。
っていうか、まさに人類学は文学の分野ともモロ被りではないでしょうか? 文学の目的もまた人間と人間の生き方の研究に他なりません。
人類学と文学の最大の違いは、人類学は何らかの箇条書き的な結論、帰納的な答えを求めますが、文学は必ずしも答えを求めないというところでしょうか。
文学は必ずしも「答え」を出しません。答えを出さないことが、より大きな何かを表現できると考えるからです。
社会学とは? 宗教学。政治学。
社会学は、どちらかといえば現代社会における家族や宗教や教育や人種や民族を研究します。
人類学との違いは、現代を研究するか、原初・古代を研究するかの違いのようです。
たとえば宗教でいえば、宗教の起源を研究するのは人類学、宗教の分布や現代社会への影響を研究するのは社会学ということでしょう。宗教学という学問分野もあります。
また文学にくらべて人類学は「結論」を求めると上に書きましたが、人類学にくらべて社会学はさらに「結論」を求める学問です。なぜなら現代社会に直結しているため調査、統計をとりやすいことから「答えやすい」、「答えを出さなければ意味がない」と言えるからです。
現代の我が国の社会を研究する学問なのですね。社会構造、権力、政治思想、性別なども含まれます。まるで「政治学部」みたいですね。社会学者が人類学者を眺めると、まるで象牙の塔の住人に見えるかもしれません。