川内優輝選手はプロランナーに転向しても今より遅くなるだろう

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スピードはストライドでしかカバーできない。すべてのランナーに老いが訪れるが、それはピッチが衰えるのではない。ストライドが衰えるのである。

こんにちは、ハルト@sasurainorunnerです。

この稿では「ランナーと老化」について川内優輝選手をサンプルに考えてみたいと思います。

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もうこれ以上、速くは走れないが、長くなら走れるという境地がある

みなさんはマラソンのゴール直前でこう感じたことはありませんか?

「もうこれ以上スピードは上げられないけれど、距離だけならまだまだ走れそうだ」

何度かそういう瞬間が私にはありました。これはどう解釈したらいいのでしょうか。私の何が消耗しきって、何がまだ残っていたのでしょうか。

距離だけならば、まだいけると感じているのですから、体力が尽きたわけではなさそうです。

その反面もうこれ以上スピードは上げられないと音を上げています。

距離を支えているものはまだ持っているけれど、スピードを支えているものはもう失われている。そう解釈するしかなさそうです。

スピードを支えるのは筋力とバネ。距離は気力。そう考えてもいいぐらい両者は違います。

もっとはっきりいえば、『スピードはストライドでしかカバーできない、距離はピッチでカバーすることができる』と私は考えています。

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「市民ランナーの星」がプロランナーになっても速くなるとは限らない

さて先日、ボストンマラソンを優勝した川内優輝選手の話しです。

彼は「市民ランナーの星」と言われていましたが、とうとう埼玉県の公務員を退職し、プロランナーになることを決めたと報道されました。

ポカ丸「ハルト先輩。市民ランナーの先輩として聞きたいんですけど、どうして川内優輝選手は市民ランナーを辞めちゃうんですか? あれほど市民ランナーの星と讃えられてきたのに」

ハルト「本人がどう思っているかは本人にしかわからないよ。本人がちゃんと発言しているし、ここでおれがどうこう言っても仕方がない。しかし人は格好つけたりウソをついたりするものだから報道された川内の言葉が本心だとは限らない。おれの想像でよかったら言おうか?

ポカ丸「参考にぜひお願いします」

ハルト「ボストンマラソンの優勝はもちろん大きいだろうな。これまで川内は数々のマラソン大会を優勝しているけれど、防府読売マラソンかすみがうらマラソンなど超一流大会とは言えないような大会ばかりだったんだ。順位というのは相手があって初めて決まるものだから、超一流選手が出ない大会で勝っても、陸上界ではそんなに評価されないんだよ」

ポカ丸「つまり東京マラソン福岡国際マラソンなどで優勝しないと高評価は得られないということですね?」

ハルト「そういうこと。ボストンマラソンはワールドマラソンメジャーズのポイント対象レースにもなっている間違いなく世界の超一流大会のひとつなんだよ」

ポカ丸「なるほど陸上界に認められる実績を残したからプロに転向するんですね」

ハルト「自分よりも実力の劣る弟がすでにプロランナーになっていて、自分が働いている時間を練習や体のケアや休養にあてられているのを見て羨ましくなったというのはあると思うよ」

ポカ丸「なるほど。先輩がよく『受験勉強なんかやれたのは他に楽しいことを知らなかったからだ』と言うのと似ている気がしますね

すぐ隣で恋人とイチャイチャして楽しそうな弟がいたら、自分だけ恋人と別れて受験勉強なんか絶対にできないですもの。

でも、だったら市民ランナーの経歴なんかふっとばして、初めからプロランナーになっていればよかったのでは?」

ハルト「学生時代はプロでは通用しないと思ったんだろう。箱根駅伝まではハーフマラソンぐらいまでの距離だから、折り返した後の後半戦でこれほど自分が強いとは意外だったに違いない

ポカ丸「なるほど。プロになれば今以上に練習時間が確保できるのは確実だから、もっと強いランナーになることは間違いないですね」

ハルト「ところそうとは限らない」

ポカ丸「どういうことですか?」

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時間があれば成績が上がると考えるのは間違いだ

ハルト「たとえば受験でも浪人すれば絶対に成績が上がると思うのは間違いだ。ときどき現役時代よりも成績を落とす浪人生がいるように、プロになったら絶対に成績が上がると思うのは間違いだよ。時間がないからこそ密度の高い練習ができていたかもしれないだろう」

ポカ丸「たしかに。僕なんか仕事しているから食べない間食を、週末は際限なく食べています。毎日がお休みだったらあっという間にぶくぶく太って走れなくなりそうです!

ハルト「強制的に練習が制限されたせいで、怪我をせずにすんでいたのかもしれないじゃないか」

ポカ丸「なるほど」

ハルト「川内は5年以上自己ベストを更新できていない。今の生活でも、自己ベストが更新され続けていたら、どんなに弟が羨ましくても、市民ランナーを辞めなかっただろう。自己ベストを更新するために、環境を変えたかったんだろうと思う」

ポカ丸「なるほど。わかります」

ハルト「でも川内が自己ベストを更新できなくなっているのは、市民ランナーの練習環境のせいばかりではないかもしれない。残念だか、人は老いて、衰えていくということだ

ポカ丸「まだ31歳ですよ! まだまだでしょうに。ハルト先輩の自己ベストは何歳の時なんですか?」

ハルト「かつてボストンマラソンで優勝した瀬古利彦は32歳で引退してるよ。山田敬蔵さんがボストンを制したのは26歳の時だ」

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自己ベストは何歳まで更新できるのか

ハルト「おれは30歳から走り始めて、自己ベストは42歳の時だよ」

ポカ丸「加齢による老いや衰え具合は人間、誰でも同じじゃないですかねえ。だったら川内さんも42歳で自己ベストを更新できる可能性があるのでは?」

ハルト「あのな。いいこと教えてやるよ。川内よりもおれの方がピッチは早いんだ

ポカ丸「へっ?」

ハルト「ピッチというのは走るリズムのことだな。1秒間に3歩とか、1分間に180bpmとか、どれだけ歩を刻むか、足の回転数のことだけど、川内よりもおれの方がピッチは早いんだよ」

ポカ丸「まさか。そんなことありえないでしょう。川内さんはボストンマラソンの優勝者ですよ」

ハルト「川内とは何度もレース場ですれ違っているからな。肉眼でピッチを確かめたし、テレビでピッチをカウントしたから間違いない。川内よりもおれの方がピッチは早いんだよ。

そもそも一流選手はピッチ数が速くて(多くて)、市民ランナーはピッチ数が遅い(少ない)というのは先入観だよ。人間、ピッチ数はそんなに変わらない、というのが正解だ。問題はストライドなんだよ。一歩一歩の歩幅が一流選手と市民ランナーは全然違うんだ

ポカ丸「なるほど~。歩幅が違うからゴールタイムが違うんですね」

ハルト「川内もピッチは落としていないよ。ピッチはリズム感だから自分の脳ミソでコントロールできるものなんだ。もちろん疲れれば落ちてくるけれど、根性とか気合とか魂とか呼ばれるものでピッチは維持できる。

問題はストライドだよ。ストライドは自分でも気づかないうちに落ちてしまう。そして根性とか気合とか魂とかでストライドは維持できない。ストライドは全身のバネ、筋力、若さとかの領域だから。根性とか気合とか魂とかではどうにもできないんだ。

老いて衰えるということは、ストライドが維持できなくなるということだ。だからすべてのアスリートに引退の時が来るんだよ。若くバネがあるやつにストライドで勝てなくなるんだ

ポカ丸「でもハルト先輩にも劣るピッチならば、もっと思いっきり回転数をあげれば今よりも速く走れるんじゃありませんか?」

ハルト「いや、無理だな。誤魔化すことはできるかもしれないが。

走法は人それぞれだ。でも川内なりにベストタイムを出した走法なんだ。それを変えたら駄目だ。ストライドを戻すしか方法はないと思う

ポカ丸「せっかくプロになっても、もう自己ベストは更新できないかもしれないというんですね」

 

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川内選手には奇跡を見せてほしい

ハルト「常識破りの選手だから、奇跡を見せてほしいと心から思っているよ。大好きな選手だから。

でもここでおれが言ったことも、もうあまり時間がないことも、本人が一番自覚していると思うよ。

若い時代はもう二度と戻ってこないから、だからこそ後悔したくないんだろう。やるだけやって納得したいんだろう。やるだけやって現役時代の最後を燃焼させたいのだと思うよ。

もし自己ベストを更新できなくても、東京オリンピックに出られなくても、市民ランナーとして他の誰もできなかったことをやってみせてくれたように、今度はプロランナーとしても他の人にはできない新しい生き方で魅せてほしいね

ポカ丸「僕も彼の新しい生き方が見てみたいです。ストライドが維持できなくなったら、スポーツ庁長官になった鈴木大地さんみたいに、埼玉県知事にだって川内さんならなれますよね?」

ハルト「おれはフォレストガンプみたいな生き様で魅せてほしいなあ」

★~~このサイトについて~~

比叡山の大阿闍梨(千日回峰行者)様を超える生涯走行距離の中で走りながら感じたことをサブスリーランナーが綴るコラム。

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プロフィール


サンダルマン・ハルト。雑誌『ランナーズ』等に執筆歴のあるライター。『山と渓谷』ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。サブスリーランナー。グランドスラムの達成者(100kmサブテン。富士登山競争登頂)。スイス・ブライトホルン。マレーシア・キナバル山。台湾・玉山ニイタカヤマ。南アルプス全山縦走など登山歴も豊富。キャンプ・車中泊マニア。アウトドア派の放浪の旅人

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