二足歩行ロボットが難しいのは複雑な運動だから
このブログの読者からは「よくまあ単純運動のランニングのことであんなに書く内容があるよなあ」と思われているようです。
しかし知っていますか。最新鋭の二足歩行ロボットでも、ぎこちない歩きをするのが精いっぱいだということを。「走る」というのはそれほど単純な運動ではないのです。
テニスやサッカーと比較するから「単純」だという話になるのですが、サッカーがフォーメーションや戦略など自分の外の世界を語ることが多いのに対して、ランニングは効率的な推進力を得るための最適なフォームと食生活というように自分の肉体の内部を語ることが多いのが特徴です。
どちらが奥深い、という話ではありません。
宇宙(外の世界)が果てしないように、肉体の内部(小宇宙)もまた果てしない探求なのです。
凡人は今やっていることについて考える
決してランニングは単純な運動ではありませんが、私のコラムにランニングが多い最大の理由は、単純に「走りながら考えたこと」を書いているからです。「走りながら考えたこと」で一番多いのは、私のような凡人はどうしたって「走ることについて」です。今やっていることについて考えてしまうというのが凡人の性です。
まわりで太平洋戦争やってるのに作品に戦争色がほとんど見えない太宰治みたいな人は凡人ではないのであって、凡百の書き手なら「戦争について」書くはずです。貴族の苦悩なんてどうだっていいじゃん。だって戦争やっているんですよ。
これが人間の煩悩とか幸せについて考えながら走ることができたら、私も阿闍梨様になれたかもしれません。生涯走行距離だけならば比叡山の千日回峰行者よりも私の方が多いのです。
禅の境地である「無心」の時間は走りながらたくさんあじわうことができましたが、「無心」では自分は救えても他人は救えません。
どうしたら速く走れるのか、どうすれば効率的な走りになるのか。凡人なので、そんなことを考えている時間が一番長いのです。
ランニングは歯車が噛み合ってはじめて動き出す運動です。だから技師が機械のひとつひとつの歯車をチェックするように、ひとつひとつの肉体の部位の動きをチェックするのはいいことです。
着地はフォアフットか。アキレス腱のバネは使えているか。後ろ脚は水平になるまで上がっているか。足だけでなくお尻や背中ぐらいまでの筋肉が動いているか。お腹側の筋肉を使って大腿骨が股関節からぐっと突き出ているか。大腿骨が和太鼓を叩くように大きく動いているか。振り出した脚を膝から曲げて掻き戻しているか。着地はフォアフットか。。。そのためには膝を柔らかく使うことが重要。
ひと通り、ひとつひとつの部位が最高状態になるようにチェックするのは非常によいことです。
しかしここで申しあげておきたいことは「すべての部位を最高活用することは諦めてください」ということです。これはハルトの長年のランニング歴から得た「悟り」のようなものです。
たとえば、アキレス腱のバネを最高活用しようと意識すると、大腿骨が和太鼓を叩くようにスムーズに最高活用するよう意識することは難しくなります。かつて左右均等は無理とコラムを書いたのも同じことです。両方を同じ程度に意識するのは難しいのです。
ムカデに「そんなにたくさんの足をどうやって動かしている?」と聞いたら、考え過ぎてとうとう前に進めなくなってしまった。幼い頃にそんな小話を聞いたことがあります。
すべてを意識することは難しい。最高活用するように意識するのは一部位のみで、あとは最高の状態にぼんやりと近づいていればよしとしましょう。
ランニングは歯車が噛み合ってはじめて動き出す運動ですので、ひとつの歯車が強力に回れば、すべての歯車が力強く回って、速く走ることができます。
逆に一か所でも歯車が故障すると、その歯車が回らないために、機械全体が回らず、スムーズに走ることができません。アキレス腱を痛めただけで走れないのは、アキレス腱という歯車が機械全体の動きを止めてしまうからです。
考えすぎた挙句、「いいフォームは骨格で作る。筋肉を意識するのはやめよう」とか「複数のフォームを持とう。たったひとつの理想のフォームを追求するのはタイムを落とす」などの境地に達することになるのです。
歯車の連携で動くのは人間の肉体だけではありません。
また『無事これ名馬』という言葉があります。すばらしい名言だと思いませんか?
※※※YouTube動画はじめました※※※
書籍『市民ランナーという走り方(マラソンサブスリー・グランドスラム養成講座)』の内容をYouTubeにて公開しています。言葉のイメージ喚起力でランニングフォームを最適化して、同じ練習量でも速く走れるようになるランニング新メソッドについて解説しています。
『マラソンの走り方・サブスリー養成講座』
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