歴史はストーリーで語れ。ヘロドトス『歴史』おもしろい!!

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「歴史はストーリーで語れ」歴史はおもしろい

歴史の父ヘロドトスの書いた『歴史』。後世の歴史観に決定的な影響をあたえた本です。

どんな影響かというと「歴史はストーリーで語れ」ということですね。

ヘロドトスかいたから、歴史はおもしろいのだと言えるかもしれません。

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人類最初の歴史書は、ルポルタージュ、ノンフィクション、エッセイに近い

ヘシオドス神統記』などがそうであったように、古い書物なので「神に捧げる詩」の形式で書かれているのだろうと思っていました。

ところが、翻訳者が読みやすくしてくれているのかもしれませんが、ほぼルポルタージュです。ノンフィクションです。近代的なエッセイとして読むことができます。

歴史といっても年表ではありません。

ひとつひとつが一流のストーリーテラー・ヘロドトスの語る物語となっています。

その物語がキリスト教以前の世界観なので、実話なのに、空想よりも想像を大きくこえてきて、とても面白いのです。

『サド侯爵夫人』三島由紀夫の最高傑作

具体的に書きましょう。

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エピソード1.墓あらしの子孫に対して「バーカ、バーカ!」

「後のバビロン王でお金に困ったものがいたら、われの墓を暴いて好きにせよ」と墓の正門に文字をかがげたバビロンの女王がいました。墓泥棒を恐れていたのですね。数世代後のバビロン王がお金に困って女王の墓を暴いたら「おまえは貪欲なやつじゃ。恥を知っていたら死人の棺を開くこともなかったものを」という文字が刻まれていて、黄金、財宝なんてひとつもなかったとか。

「バーカ、バーカ」ってことですね。お笑い小話みたいですが、実話です。なんてったってヘロドトスの『歴史』に書いてあるんですからね。

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エピソード2.公的な持参金システム。結婚できない女性をなくすセーフティーネット

ある街の風習が描かれています。その街では、嫁入り前の娘は一カ所に集められセリにかけられるのです。昔は結婚の自由なんてなくて、親が娘の相手を決めるのはあたりまえだったのですが、その街ではもっと風変りでした。男たちのセリによって一番の美女が高値で売られ、器量が落ちることに落札値段は安くなっていったのだそうです。

おもしろいのはここからです。

引き取り手のないブサイクは逆に持参金をつけて引き取ってもらうのです。美女についたお金がブサイクの持参金になるという仕組みです。

ある種の共産主義的楽園というか(笑)。

現在と違って、結婚しないと生きていけなかった時代ですから、生き残れない不幸な女性を根絶するためのセーフティーネットとして、公的な持参金システムが整備されていたというのです。

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エピソード3.エロ同人誌の世界。ブス専だって人助け

ヘロドトスの知る中で最も破廉恥な風習は、バビロンの女は一生に一度はアフロディーテの神殿の中で、夫以外の見知らぬ男と交わらなければならないというルールがあったそうです。男は「お相手願いたい」とだけ言えばいいそうです。その時に限りどんな相手でもお金で買えるというわけですね。お姫様だろうが、お金持ちの奥様だろうが、新妻だろうか例外はありません。

キリスト教以前の世界観なので、性欲を悪だとまったく思っていません。むしろアフロディーテ(ビーナス)は性愛の女神です。軍神アレスと不倫したアフロティーテはセックスしている最中に夫のヘパイストスの罠にかけられて、まぐわっているままで神々の晒しものになってしまうのですが、それを見たギリシアの神々は「アフロディーテとまぐわえるなら、さらし者になっても構わない」と羨ましがったのです。

一部の男に美女を独占させないガス抜きのアフロディーテー的な知恵だと言えるでしょう。

女がアフロディーテの神殿の中にいる時は、誰でも女をお金で買えるが、神殿を出たらどれほど大金を積んでもその女を自由にすることはできないのです。社会のルールを逸脱できたのは美神アフロティーテのおかげでした。男たちはアフロディーテの恵みを感じて、女神への信仰心をあつくしたことでしょう。

ところでおもしろいのはここからです。

容姿に優れた女はすぐに売れるのでアフロディーテの神殿からすぐに家に帰ることができたのですが、器量の悪い女は三年も四年も神域に居座るものもいたというのです。

ぜんぜん売れなかったんですね……ブス専の男はいなかったのかいな。

(親が裏で手を回して、サクラをつかえばいいのに……)

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エピソード4.歴史の古い種族を確かめるために、赤ん坊が何語を喋るか実験して確かめる

今と違って昔は××族、××族というのがたくさんありました。集落ごとに××族と名乗っていたぐらいに考えるといいでしょう。そういう××族がどんどん吸収合併されてやがて国ができます。そして××人というのが誕生するのですが、××人というのもたくさんありました。

そんなとき、プリギュア人と、エジプト人が、どちらがルーツの正しい古い人種であるか論争となりました。

それを調べるために、どんなことをしたと思いますか?

なんと赤ん坊をヒツジと一緒に育てて、人間社会から隔離して、その子が最初に何語を喋るかで、どちらがルーツとして古いかを判断しようとしたのです。

赤ちゃんは「ベコス」という言葉を発っしました。「ベコス」という言葉がプリギュア語にありエジプト語になかったため、プリギュア人の方がエジプト人よりも古い民族だと判断されたのです。

偶然じゃん! と思うのは現代人の感覚です。

戦争して勝利者が歴史を書き換えるという歴史観の中で、この決め方は新鮮で面白いと思いませんか?

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なぜかギリシア以外の歴史、とくにペルシャ側からの歴史が描かれる

ヘロドトスはギリシア人なのでギリシアの歴史を中心に書いていると読む前には思っていたのですが、読んでみるとギリシアの歴史というよりは、周辺地域とくにペルシャの歴史をやたらに追いかけているのに気づきます。

そこにとても違和感を感じました。あまりギリシアの歴史について語っていないのです。

ギリシアの歴史はみんな知っているだろうから書くまでもない。みんなが知らない敵国(ペルシャ)の歴史を書いて教えよう。

というルポルタージュ的なものだったのかもしれません。本書は。

長年にわたって、ギリシアの最大のライバルとしてペルシヤがあったわけです。

しかしギリシア人のヘロドトスが書いた『歴史』が、レオニダス王側からではなくクセルクセス王側から書き起こされていることには、意外な感じがしてなりませんでした。

映画『300』スリーハンドレット。永遠に生きるがいい

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たくさんの面白エピソードが満載。残虐な描写も多い

ほかにもたくさんの面白エピソードが満載です。

ある国では、老人は生きていられる年齢制限があったそうです。高齢になると近親者が集まって、老人を殺し、肉を煮て一同で食べてしまうという風俗があったとか。

日本の古い怪談話みたいですが、実話ですよ。ヘロドトスの歴史ですからね!

死人をはちみつ漬けにして埋葬するとか。なんのためにはちみつ漬けにするんだろう? 食った方がいいのにハチミツがもったいない。フィクションだって思いつかないような奇妙な風習が昔はあったのだということがわかります。

織田信長浅井長政にやったという髑髏の盃エピソードも登場します。信長だけが突拍子もない異常性格者だったわけじゃないということがわかります。ヘロドトス『歴史』にも登場するんですから!

ペルシアの大王クセルクセスはある人妻に懸想しますが、口説き落とすことができず、人妻の娘と自分の息子を結婚させます。そうすることで人妻を口説くチャンスが増えると思ったからでした。

しかしやがてクセルクセスは、息子の嫁に懸想して自分のものにしてしまいます。そのことに怒った正妻が人妻の両の乳房を切り取って犬に投げ与え、鼻、耳、唇も同様にし、さらに舌まで切り落として変わり果てた姿になった彼女を夫の元に送り付けたのでした……おおお、残酷!!

『歴史』を読むと、現代の人権思想がどれほど人々を守っているか、よくわかります。

昔はこういう拷問や、残酷な行為がたくさんあったんでしょうな。

『歴史』を読むと、私たちの時代が昔に比べて進歩したいい時代なのだということがよくわかります。

そういう意味でも読む価値があると思います。事実だ……という事実は圧倒的に大きなことですから。

 

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キリスト教以前の世界観。世界はワンダーランドだ!

また有名なバビルの塔(ジグラット)の描写も登場します。

エジプトはナイル川の洲がつくったとか、ひじょうにヘロドトスは近代的な知恵をもっており、賢い書き手だと感じました。

そのクレバーな書き手でもナイル川の延長はドナウ川ぐらいと見積もられていたりして、間違いも含めて読んでいて面白いのです。

謎の「翼をもつ蛇」がいたりして、ドラクエみたいな世界観だったのですね。

ヘロドトスは現地に飛んで、現場の人に取材しています。まるで旅行作家の書きっぷりです。

人のエピソードだけでなく、大きな戦争もたくさんありますし、第一級のエンターテイメント小説として読むことができます。

ヘロドトスは当時の風俗を書き残しただけなんでしょうが、キリスト教以前の世界観は、空想作家でも思いつかないような今とは隔絶した風俗があって、イマジネーションを刺激されます。

とくに女性を巡る当時の社会のコモンセンスには、SF作家ですらびっくりしてしまうことでしょう。

現在の人権意識というものから考えると、とんでもない差別的なことに見えます。

しかし「歴史的な事実として」淡々と語られています。

フィクションの空想小説よりも、さらにフィクションぽくておもしろい、それがヘロドトス『歴史』でした。

死ぬまでに一度は読んでみたい本のひとつだと思います。

サハラ砂漠で大ジャンプする著者
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このブログ著者の小説『結婚』
小説『結婚』
愛とは何か? 結婚とは何か? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。恋人のアスカはツバサのもとを去っていきます。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。  離れたくない。その叫びだけが残った。  全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。 引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。 そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。 それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自信が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。 アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。 死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。 生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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愛とは何か? 結婚とは何か? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。恋人のアスカはツバサのもとを去っていきます。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。  離れたくない。その叫びだけが残った。  全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。 引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。 そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。 それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自信が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。 アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。 死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。 生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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このブログの著者の小説『片翼の翼』
小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
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小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
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【この記事を書いている人】

アリクラハルトと申します。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。ランニング系・登山系の雑誌に記事を書いてきたプロのライターでもあります。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。その筆力は…本コラムを最後までお読みいただければわかります。あなたの心をどれだけ揺さぶることができたか。それがわたしの実力です。
市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。ちばアクアラインマラソン招待選手。ボストンマラソン正式選手。地方大会での入賞多数。海外マラソンも完走多数(ボストン、ニューヨークシティ、バンクーバー、ユングフラウ、ロトルアニュージーランド、ニューカレドニアヌメア、ホノルル)。地元走友会のリーダー。月間走行距離MAX600km。『市民ランナーという生き方(グランドスラム養成講座)』を展開しています。言葉の力で、あなたの走り方を劇的に変えてみせます。
また、現在、バーチャルランニング『地球一周走り旅』を展開中。ご近所を走りながら、走行距離だけは地球を一周しようという仮想ランニング企画です。
そしてロードバイク乗り。朝飯前でウサイン・ボルトよりも速く走れます。山ヤとしての実績は以下のとおり。スイス・ブライトホルン登頂。マレーシア・キナバル山登頂。台湾・玉山(ニイタカヤマ)登頂。南アルプス全山縦走。後立山連峰全山縦走。槍・穂・西穂縦走。富士登山競争完走。日本山岳耐久レース(ハセツネ)完走。などなど。『山と渓谷』ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。
その後、山ヤのスタイルのまま海外バックパック放浪に旅立ちました。訪問国はモロッコ。エジプト。ヨルダン。トルコ。イギリス。フランス。スペイン。ポルトガル。イタリア。バチカン。ギリシア。スイス。アメリカ。メキシコ。カナダ。タイ。ベトナム。カンボジア。マレーシア。シンガポール。インドネシア。ニュージーランド。ネパール。インド。中国。台湾。韓国。そして日本の28ケ国。パリとニューカレドニア、ホノルルとラスベガスを別に数えていいなら訪問都市は100都市をこえています。(大西洋上をのぞいて)世界一周しています。国内では青春18きっぷ・車中泊で日本一周しています。
登山も、海外バックパック旅行も、車中泊も、すべてに共通するのは必要最低限の装備で生き抜こうという心構えだと思っています。バックパックひとつ。その放浪の魂を伝えていきます。千葉県在住。

【この記事を書いている人】
瞑想ランニング(地球二周目)をしながら心に浮かんできたコラムをブログに書き綴っているランナー・ブロガーのアリクラハルトと申します。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。ランニング系・登山系の雑誌に記事を書いてきたプロのライターでもあります。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。その筆力は…本コラムを最後までお読みいただければわかります。あなたの心をどれだけ揺さぶることができたか。それがわたしの実力です。 市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。ちばアクアラインマラソン招待選手。ボストンマラソン正式選手。地方大会での入賞多数。海外マラソンも完走多数(ボストン、ニューヨークシティ、バンクーバー、ユングフラウ、ロトルアニュージーランド、ニューカレドニアヌメア、ホノルル)。地元走友会のリーダー。月間走行距離MAX600km。『市民ランナーという生き方(グランドスラム養成講座)』を展開しています。言葉の力で、あなたの走り方を劇的に変えてみせます。 また、現在、バーチャルランニング『地球一周走り旅』を展開中。ご近所を走りながら、走行距離だけは地球を一周しようという仮想ランニング企画です。 そしてロードバイク乗り。朝飯前でウサイン・ボルトよりも速く走れます。山ヤとしての実績は以下のとおり。スイス・ブライトホルン登頂。マレーシア・キナバル山登頂。台湾・玉山(ニイタカヤマ)登頂。南アルプス全山縦走。後立山連峰全山縦走。槍・穂・西穂縦走。富士登山競争完走。日本山岳耐久レース(ハセツネ)完走。などなど。『山と渓谷』ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。 その後、山ヤのスタイルのまま海外バックパック放浪に旅立ちました。訪問国はモロッコ。エジプト。ヨルダン。トルコ。イギリス。フランス。スペイン。ポルトガル。イタリア。バチカン。ギリシア。スイス。アメリカ。メキシコ。カナダ。タイ。ベトナム。カンボジア。マレーシア。シンガポール。インドネシア。ニュージーランド。ネパール。インド。中国。台湾。韓国。そして日本の28ケ国。パリとニューカレドニア、ホノルルとラスベガスを別に数えていいなら訪問都市は100都市をこえています。(大西洋上をのぞいて)世界一周しています。国内では青春18きっぷ・車中泊で日本一周しています。 登山も、海外バックパック旅行も、車中泊も、すべてに共通するのは必要最低限の装備で生き抜こうという心構えだと思っています。バックパックひとつ。その放浪の魂を伝えていきます。千葉県在住。
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