英語圏ではマラソンのペースメーカーのことをラビットと呼ぶことがあります。ラビットというのはウサギのことです。
ウサギを追いかけるキツネのように、肉食動物が獲物を仕留めるという感覚で、先行するウサギを追いかけて、追いついて、仕留める。そんな情景をイメージしているのでしょう。
チーターが陸上最速で走るときは獲物を追いかける時です。移動する時ではありません。スピードは外的要因に触発されて湧いて出るものです。身体内部ばかり見つめていても、そこからスピードは湧いてきません。
速く走る方法が知りたければ、速く走ってみればいい。そのときあなたの身体がおのずとそれを教えてくれます。必死で走れば上体は起きて膝は上がり勝手にストライドは伸びていることでしょう。
さてわたしたちシリアス市民ランナーにとっての獲物とは何でしょうか? 実力のあるランナーなら、普段のトレーニングではいっそママチャリを獲物にしてみてはいかがでしょうか?
先行するママチャリを追いかけて、追いついて、仕留める。この行為はいわば遊びです。スピードプレイ。競争することを楽しむのです。
ママチャリを追いかけて必死に走っている時、あなたの心は少年に戻り、子供がただひたすらにこの世界に生まれたことを楽しむかのように遊んでいるのです。野原を駆けるように。
※※※YouTube動画はじめました※※※
書籍『市民ランナーという走り方(マラソンサブスリー・グランドスラム養成講座)』の内容をYouTubeにて公開しています。言葉のイメージ喚起力でランニングフォームを最適化して、同じ練習量でも速く走れるようになるランニング新メソッドについて解説しています。
『マラソンの走り方・サブスリー養成講座』
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※雑誌『ランナーズ』の元ライターである本ブログの筆者の書籍『市民ランナーという走り方』(サブスリー・グランドスラム養成講座)。Amazon電子書籍版、ペーパーバック版(紙書籍)発売中。
「コーチのひとことで私のランニングは劇的に進化しました」エリートランナーがこう言っているのを聞くことがあります。市民ランナーはこのような奇跡を体験することはできないのでしょうか?
いいえ。できます。そのために書かれた本が本書『市民ランナーという走り方』。ランニングフォームをつくるための脳内イメージワードによって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。「言葉の力によって速くなる」という本書の新理論によって、あなたのランニングを進化させ、現状を打破し、自己ベスト更新、そして市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●言葉の力で速くなる「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」「かかと落としを効果的に決める走法」
●絶対にやってはいけない「スクワット走法」とはどんなフォーム?
●ピッチ走法よりもストライド走法! ハサミは両方に開かれる走法。
●スピードで遊ぶ。スピードを楽しむ。オオカミランニングのすすめ。
●腹圧をかける走法。呼吸の限界がスピードの限界。背の低い、太った人のように走る。
●マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」とは?
●究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」
本書を読めば、言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化されて、同じトレーニング量でも速く走ることができるようになります。
あなたはどうして走るのですか? あなたよりも速く走る人はいくらでもいるというのに。市民ランナーがなぜ走るのか、本書では一つの答えを提示しています。
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どんなレースに出ても自分よりも速くて強いランナーがいます。それが市民ランナーの現実です。勝てないのになお走るのはなぜでしょうか? どうせいつか死んでしまうからといって、今すぐに生きることを諦めるわけにはいきません。未完成で勝負して、未完成で引退して、未完成のまま死んでいくのが人生ではありませんか? あなたはどうして走るのですか?
星月夜を舞台に、宇宙を翔けるように、街灯に輝く夜の街を駆け抜けましょう。あなたが走れば、夜の街はイルミネーションを灯したように輝くのです。そして生きるよろこびに満ち溢れたあなたの走りを見て、自分もそんな風に生きたいと、あなたから勇気をもらって、どこかの誰かがあなたの足跡を追いかけて走り出すのです。歓喜を魔法のようにまき散らしながら、この世界を走りましょう。それが市民ランナーという走り方です。
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スピード練習。スピードプレイ。
私がランニング雑誌のライターとしてマラソン2時間30分を切るような超人市民ランナーたちを取材していた時、彼らの中でスピード練習をしていないという人は一人もいませんでした。
いや正確には「スピード練習なんてしていません」と口で言う人はいました。しかしそれは東大生が「受験勉強なんてしませんでした」と言うようなものです。練習内容を聞いてみると立派なスピード練習をしていました。謙遜しているというよりは、「本人がスピード練習だと意識していないだけ」ということが多かったです。
速く走る練習をしなければ、女子だったら国際レースで上位入賞してしまうぐらいのタイムで走れるわけがありません。なぜならゆっくり走っている時と、速く走っている時では、主として使う筋肉が全然違うからです。フォームも全然違います。
LSDでは速く走れるようにはなりません。LSDに期待できるのは脂肪を燃焼して痩せることです。
痩せればある程度までは速く走れるようになります。軽くなった分だけ宙に浮きやすくなるからです。
一瞬ならば、火事場のバカ力のようなものが通用しますが、長時間続けるのは無理です。奇跡とは瞬間のものです。奇跡は持続しません。持続できるものは実力です。
いざという時に速く走るためには、普段から速く走っていなければならないのです。スピード持久力を鍛えるにはふたつの方法があります。
レースペースで長時間走るという「本番の動きを体に教え込む方法」がひとつ。
普段からレースペースより速い走りをすることで、レースがゆっくりで余裕があると感じるぐらいまで「スピードに慣れる」というのがもうひとつです。
どっちのトレーニングが楽しいか、といえば圧倒的に後者のほうではないかと思います。
最高速度を上げて、余裕をもってレースに挑むトレーニングのことを、ウインドスプリントとか、スピードプレイ(スピードで遊ぶ)といったりします。
このコラムでは私のスピードプレイのやり方をご紹介いたします。
走ることの本質的な意味は、食うか食われるか
人はなぜ走るのか? 走ることの本質的な意味はもともと二つしかありません。
獲物を追いかけるために走るか。獲物とされないために走るか。
ウサギを追いかけて食うために走るか。トラに食われないために走って逃げるか。
それだけです。
だったらそのいのちの根源的な動きをスピード練習に取り入れてみたらどうでしょうか。
英語圏ではマラソンのペースメーカーのことをラビットと呼ぶことがあります。ラビットというのはウサギのことです。
ウサギを追いかけるキツネのように、肉食動物が獲物を仕留めるという感覚で、先行するウサギを追いかけて、追いついて、仕留める。そんな情景をイメージしているのでしょう。
ここでの先行するウサギというのは、先を走るランナーのことです。先行するランナーを獲物と定めて、仕留めるわけですね。
これを私はオオカミランニングと呼んでいます。
皇居外周や大阪城公園や大濠公園なんか走ったら、いくらでもライバルがいるはずです。そのライバルたちとひそかに競争しながら、ついでにスピード練習をしてしまおうとするものです。
スピード練習というと「キツイ」「辛い練習」と敬遠されがちですが、ライバルたちとの密かな競争は「追いかけっこ」「鬼ごっこ」に近いものがあります。
自分を追い込むトレーニングというよりは、子どもの遊びのように楽しめます。競争することを鬼ごっこのように楽しむのです。
もともとランナーは競争好きな種族のはずです。近所を走っていれば無料なのに、わざわざお金を払って市民マラソン大会に参加するのは、他者との競争が楽しいからでしょう。その競争を、家の近所の路上で、無料でやれてしまうのですから、ラビット・ランナーはありがたい存在です。
日常のジョギングに起伏をつけてくれます。
ママチャリを追い抜け(ラビット走)
さて、皇居外周のような獲物(ご近所ランナー)に事欠かない場所で走っている人はいいが、そうではないところを走っている地方ランナーはどうしたらいいでしょうか。
私の場合は、ゆっくり疲労抜きLSDをしているときでも、他のランナーに抜かれたら、その瞬間に走りをガラッと切り替えます。
「しめた」と思い、心の中で草レースが始まります。
地方でも、最近は街にランナーが増えましたから、週末などはゆっくり走っていれば誰かが追い抜いてくれます。
それに対しては、きっちりとお返し(抜き返す)をするのが礼儀というものです。
きっぱりと抜き返してお礼をしましょう。負け癖をつけないためにも、走り勝って練習を終えましょう。
そのことがいつのまにかスピード練習になっています。
疲労抜きの日だったはずが、めちゃめちゃしんどい練習になる日もあります(笑)。
しかし、楽しいですよ。相手にとっても刺激を与えられるようなランナーになりましょう。
もっと本格的に走る日は、いっそランナーなんか捨ててママチャリを追いかけてみましょう。
先行するママチャリを追いかけて、追いつき、追い抜くのです。
ママチャリというのは、車よりも速いという伝説のあのママチャリのことではありません。
あなたの目の前を走る普通のママチャリです。
ママチャリに追いつき、追い越そうとして走ってみてください。
ママチャリをラビットにして追いかけるのです。
おばさんが乗っているようなママチャリはライバルにふさわしいものがあります。
遅すぎず、速すぎず、ちょうどいい速さで私を牽引してくれます。
クロスバイクやロードバイクはダメです。相手が速すぎて勝負になりません。
ラビットにふさわしいのはあくまでもシティサイクル。ママチャリです。
若者が乗っている場合でもママチャリならばたいていの場合、必死に走れば追いつくことができます。
自転車を追いかけて必死の走りをすれば、スイッチが入ったかのように走りが切り替わるのがわかるでしょう。
ジョギングだけしていたときにはわからなかった、走るということがどういうことなのか、あなたにもわかるでしょう。
空か食われるかの走りが。
腰が起きて上半身を立て、腰椎から下はすべて脚であるかのような大きなストライドで走っているはずです。腰から宙に浮いたかのように、足のどこにも負荷などかかっていないような走りになっているはずです。
速く走ることが、何よりも「走る」ということを、あなたに教えてくれます。
自分の走りに自分自身が教わるのです。自分の肉体に、教えてもらうのです。
「アトムのジェット走法」も「踵落としを効果的に決める走法」も、この際、何もかも忘れてしまいましょう。
ラビットを追って必死に走っている時、身体が宙に浮いていることに気づくことでしょう。
走るとは飛ぶことです。宙に浮くことです。アキレス腱のバネなんて使っているのかいないのか? 体のどこの筋肉が使われているか、なんて意識することもありません。
なにも筋トレしながら走ることはないのです。どこに負荷がかかっているかなんて考えもしない。
楽に、軽く。それが究極の正解です。
ただラビットに追いつくことだけを考えています。スピードを出すことに必死です。ただそれだけ。無我夢中。
ひとりでゆっくり走っているときだけ、意識は内面に向き、走ることは思索になり、禅に似てきます。
しかしママチャリを追いかけて必死に走っている時、あなたの心は少年に戻り、子供がただひたすらにこの世界に生まれたことを楽しむかのように遊んでいるのです。
野原を駆けるように。
ママチャリが実力以上の力を生み出してくれるのです。
遅れないように、置いてけぼりを食わないように、ママチャリを全力で追いかけてください。
駅伝選手が速く走れるのは、目の前に他校の選手が走っているから
駅伝選手がどうして速く走れるのか、知っていますか? 目の前に他校の選手が走っているからです。目の前にライバルがいるから速く走れるのです。
スピードというものは、おのれの内部にはないと思っています。スピードは外的要因に触発されて湧いて出るものです。身体内部ばかり見つめていても、そこからスピードは湧いてきません。
ハヤブサだってエモノがなかったら、速くは飛べません。トンビが速く飛べないのは獲物を襲わないからです。
彼らは死肉を食らう生態で空中戦をしないから速く飛べないのです。外的要因に触発されないからです。ハヤブサやイーグルなど空中戦を行う猛禽類はみんな速く飛びます。ちなみにファルコン隼やイーグル鷲、ホーク鷹は戦闘機や空母の名前になりますが、鳶Black Kiteは戦闘機ではなく凧の名前になっちゃってます(笑)。
チーターが陸上最速で走るときは獲物を追いかける時です。移動する時ではありません。
外的要因に誘発されて最速となるのです。
ライバルはシティサイクル
長距離ランナーも同じだと思っています。そこにラビット(獲物)がいるから速く走れるのです。だからレースこそ最速の場なのです。レースが最高の練習になるというのも、そこにライバルがいるからです。
しかしサブスリーランナーになるともうそこいらのジョガーはライバルではありません。自分の方が早くてあたりまえ。だからママチャリがライバルなのです。
嫌がられたり、気味悪がられたりしないように、こっそりと追いかけましょう。
とにかく追いかける。意地でも追いつく。必死で走れば上体は起きて膝は上がり勝手にストライドは伸びていることでしょう。
どうすれば速く効率的に走れるのか、おのれの肉体に聞く
わたしハルトがサブスリー養成講座で書きまくってきたことは、実はすべて帰納法です。理屈から速く走れるようになったわけではなく、速く走れた結果を分析して「言葉にした」ものです。
答えは「理屈なんてどうでもいいから速く走れ」なのです。獲物を獲るか獲られるか、生きるか死ぬかの状況だったら「どうすれば速く走れるのか」なんて考えているヒマはありません。そんな暇があったら脳ミソが赤く燃えるまで命がけで速く走ってください。
むしろその自分の限界まで速く走った経験から、どうすれば速く効率的に走れるのか、おのれの肉体に聞くべきでしょう。
ライバルはママチャリです。ママチャリを見たら、いいライバルだと思って、追いかけましょう。そして追い抜きましょう。
クロスバイクやロードバイクでは相手になりません。速すぎます。私は自転車(ロードバイク)に乗ったらクルマと競争しています。ランナーのライバルにはなりえません。
市街地のクルマはそう簡単に時速50kmは出せませんから、ロードバイクなら抜くことも可能です。
目の前に獲物があるから速く走ることができる
目の前に獲物があるからこそ速く走ることができるのです。スピード練習というとつらい修行のようなイメージがしますが、スピードプレイとも言いますね。
これならスピードで遊ぼうというニュアンスが漂ってきます。スピードは快楽です。スピードは楽しむことができます。
ライバルはママチャリです。抜き去るとき「まさか」という顔をするサイクリストの顔を想像するのが楽しみだったりします。
速く走る方法が知りたければ、速く走ってみればいい。そのときあなたの身体がおのずとそれを教えてくれます。
そのスピードプレイがあなたの限界を打ち破ってくれるでしょう。
あのママチャリに追いつき、追い越せ!
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※雑誌『ランナーズ』の元ライターである本ブログの筆者の書籍『市民ランナーという走り方』(サブスリー・グランドスラム養成講座)。Amazon電子書籍版、ペーパーバック版(紙書籍)発売中。
「コーチのひとことで私のランニングは劇的に進化しました」エリートランナーがこう言っているのを聞くことがあります。市民ランナーはこのような奇跡を体験することはできないのでしょうか?
いいえ。できます。そのために書かれた本が本書『市民ランナーという走り方』。ランニングフォームをつくるための脳内イメージワードによって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。「言葉の力によって速くなる」という本書の新理論によって、あなたのランニングを進化させ、現状を打破し、自己ベスト更新、そして市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●言葉の力で速くなる「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」「かかと落としを効果的に決める走法」
●絶対にやってはいけない「スクワット走法」とはどんなフォーム?
●ピッチ走法よりもストライド走法! ハサミは両方に開かれる走法。
●スピードで遊ぶ。スピードを楽しむ。オオカミランニングのすすめ。
●腹圧をかける走法。呼吸の限界がスピードの限界。背の低い、太った人のように走る。
●マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」とは?
●究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」
本書を読めば、言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化されて、同じトレーニング量でも速く走ることができるようになります。
あなたはどうして走るのですか? あなたよりも速く走る人はいくらでもいるというのに。市民ランナーがなぜ走るのか、本書では一つの答えを提示しています。
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どんなレースに出ても自分よりも速くて強いランナーがいます。それが市民ランナーの現実です。勝てないのになお走るのはなぜでしょうか? どうせいつか死んでしまうからといって、今すぐに生きることを諦めるわけにはいきません。未完成で勝負して、未完成で引退して、未完成のまま死んでいくのが人生ではありませんか? あなたはどうして走るのですか?
星月夜を舞台に、宇宙を翔けるように、街灯に輝く夜の街を駆け抜けましょう。あなたが走れば、夜の街はイルミネーションを灯したように輝くのです。そして生きるよろこびに満ち溢れたあなたの走りを見て、自分もそんな風に生きたいと、あなたから勇気をもらって、どこかの誰かがあなたの足跡を追いかけて走り出すのです。歓喜を魔法のようにまき散らしながら、この世界を走りましょう。それが市民ランナーという走り方です。
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