球技などの複雑さとは比較にならないほど、マラソンは単純なスポーツです。脚を出しては戻す反復運動に過ぎないものを、どうしてここまで研究しようとするのか?
単調、単純だからこそわずかな違いが大きく効いてくるからです。
その具体例としてランニングの呼吸法について語っています。
横隔膜を下げて腹圧をかける「トランポリン呼吸法」についてここでは解説します。
私たちが意図的にできることは、酸素(空気)と赤血球(血)ができるだけ触れるようにしてあげることだけです。
横隔膜の上にはたくさんの血が行きやすいので、そこまで深く酸素を吸い込めば、肩式呼吸や胸式呼吸で肺の上部にたよった呼吸法よりも、たくさんの酸素が赤血球に触れるのです。
このときの肺の動きがトランポリンに似ているので「トランポリン呼吸法」と呼んでいます。
ここでは息を吐くことよりも、吸うことに集中する「腹圧をかける走法」について解説します。そもそも息をするのは、酸素を吸い込むためです。吐くためでなく、吸うために呼吸はあるのです。
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※雑誌『ランナーズ』の元ライターである本ブログの筆者の書籍『市民ランナーという走り方』(サブスリー・グランドスラム養成講座)。Amazon電子書籍版、ペーパーバック版(紙書籍)発売中。
「コーチのひとことで私のランニングは劇的に進化しました」エリートランナーがこう言っているのを聞くことがあります。市民ランナーはこのような奇跡を体験することはできないのでしょうか?
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●スピードで遊ぶ。スピードを楽しむ。オオカミランニングのすすめ。
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書籍『市民ランナーという走り方(マラソンサブスリー・グランドスラム養成講座)』の内容をYouTubeにて公開しています。言葉のイメージ喚起力でランニングフォームを最適化して、同じ練習量でも速く走れるようになるランニング新メソッドについて解説しています。
『マラソンの走り方・サブスリー養成講座』
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肺の限界が走力の限界という人は腹圧をかける走法をおすすめします
ランニングは単純な運動です。単純だからこそ研究し甲斐があります。単純だからこそわずかな違いが効いてくるのです。
でもランニングは単調だから、走るときはこの筋肉がこう動くとか、システムが非常に分かりやすく、型にはめることが可能です。単調ゆえに研究しようという気になるわけですね。そして単純だからこそ、わずかな違いが大きく効いてくるのです。単純な動作だからこそ、わずかな差が大きな差になるのがマラソンです。
ここではその例として、マラソンの呼吸法「トランポリン呼吸法」についてご紹介します。
皆さんが走るスピードが限界になった時、体のどこが限界となりますか? すべてが同時に限界を迎えることはまずないと思います。どこか最も弱い箇所が、あなたの限界を決めているはずです。
私の場合は「肺」です。脚が動かなくなるよりも先に、呼吸が続かなくなりました。
徐々にスピードを上げていけばわかりますが、速く走るとやがて酸素負債に陥って走れなくなります。肺の限界がスピードの限界でした。
マレーシアのキナバル山では酸欠で苦しくなり自殺を考えましたし、メキシコシティではただ生きているだけで息苦しい思いをしました。もともとあまり肺が強くないのかもしれません。
私は一秒でも速く走るために、呼吸術について真剣に考えました。わずかな違いが大きな違いとなる以上、一回の呼吸でわずかでもいいから効率的に酸素呼吸をしたいと私は考えました。
それではトランポリン呼吸法について、理論と実際の両方を解説します。
効率的に酸素を取り込むためには、肺は潰さない
肺は「ふいご」のようなものです。
肺は「袋」です。肺はそれ自体が収縮できるわけではありません。
「袋」を取り囲む胸や腹の筋肉を動かすことで、肺の中の空気を押し出したり吸い込んだりしてアコーディオンのように換気しています。
「袋」を取り囲む胸を動かせば胸式呼吸、腹の筋肉を動かせば腹式呼吸と呼ばれるわけです。
「ふくろ」を折り曲げて使っては、たくさん酸素を取り入れることはできません。効率的に酸素を取り込むためには、肺は潰して使わないことが大切です。「肺」を折り曲げて使わないように注意しましょう。
たとえば腰高フォームにするあまり、腰椎と同じS字カーブを肺が描くと「ふくろ」を歪めて小さく使っていることになります。歪めて使っては、せっかくの「ふくろ」の最大酸素摂取力が発揮できません。
横隔膜はトランポリンのような構造
ではどのようにして「寸胴」の「ふくろ」である肺をつかったらいいのでしょうか?
使うのは横隔膜です。横隔膜の解説は以下の専門ページをご覧ください。
肺を下から支える膜のような横隔膜は、トランポリンのような構造になっています。
横隔膜が上がると肺の空気は押し出され、下がると肺に空気が入ってきます。
瞑想では腹式呼吸を使いますが、トランポリン呼吸法でも腹式呼吸を使います。
このようにイメージしてみてください。
呼吸というのは酸素を取り込んだ赤血球が全身に巡ることを意味します。私たちが意図的にできることは、酸素(空気)と赤血球(血)ができるだけ触れるようにしてあげることだけです。
血は液体です。水と同じように重力の影響を受けますので、基本的に血は下に溜まる性質を持っています。肺の血も同じです。肺の上部よりも、肺の下部に血はたくさん溜まりやすくなっています。
ところで肺の下には横隔膜というトランポリンのようなものがあって、そこで仕切られています。要するに、血はその一帯(肺の最深部)にいちばん行きやすいのです。
横隔膜の上にはたくさんの血が行きやすいので、そこまで深く酸素を吸い込めば、肩式呼吸や胸式呼吸で肺の上部にたよった呼吸法よりも、たくさんの酸素が赤血球に触れるのです。
このときの肺の動きがトランポリンに似ているので「トランポリン呼吸法」と呼んでいます。
「ふいご呼吸法」「アコーディオン呼吸法」と命名してもよかったのですが、横隔膜をより強く意識するためにトランポリン呼吸法と命名しました。
肺での換気は、あくまでも横隔膜付近の腹の底の方が換気効率が高いということを示すためです。そのためには腹圧をかけて横隔膜を下に下げます。そこで呼吸するのです。
「ふいご」を意識した方がいいのは「吸う」よりも「吐く」ほうを意識するところです。大きな運動をしているとき人間は「吸う」よりも「吐く」ようにできています。運動中は吸うよりも吐く方が簡単です。吐いてしまえば勝ってに吸います。このやり方の方が効率的です。
トランポリン呼吸法では、トランポリンの骨組みである「輪っか」が腹の底にあるイメージを持ってください。この輪っかが歪まないように大きくお腹をつかってください。
そのトランポリンの外枠を腹の底に意識しながら、大きく横隔膜を上下に動かします。
トランポリンで遊ぶ子供が膜の中央で深く沈みこまないと高くジャンプできないように、トランポリン呼吸法でもたくさんの空気を膜の中央が深く沈み込むまで吸い込まないと全身に酸素が行きわたらず大きくジャンプすることはできません。
横隔膜を下げてトランポリンを深く沈み込ませた状態のことを「腹圧をかける」といいます。
「腹圧をかける走法」吐く息よりも吸う息に意識を集中する
マラソンの呼吸に関して、市販の多くの本には「吸う息よりも吐く息を意識する」と書いてあります。ヨガも同様で、吸う息よりも、吐く息を重視しています。
しかし本書『市民ランナーという走り方』では、吐く息よりも吸う息に意識を集中します。
吐く息を頑張るという人の理屈はこうです。「肺の中の空気を吐き切ってしまえば、しぼんだ肺が戻るときに勝手に空気を吸い込むから、呼気を意識した方がいい」
いっけんもっともらしく聞こえますが、それは逆だって同じです。
「肺の中の空気をパンパンにして腹圧をかければ、膨らみきった肺が戻るときに勝手に空気を吐きだすから、吸気を意識した方がいい」
ここで吸う息に集中するのはそういう理屈のことではありません。
ヨガのように体をねじる運動の場合は、肺を空にした方が、体をねじりやすくなる道理があります。しかしマラソンの場合はどうでしょうか。本当に呼気を意識した方がいいのでしょうか。
私は吸気を意識した方がいいと思っています。
呼吸を止めれば生物は動きを止めます。呼吸が苦しくなったらプロだって足が止まります。ランニングにおいて呼吸は最重要課題です。走り続けるためには呼吸こそが根本の力だといえるでしょう。
そのためには大きく息を吸い込んで、横隔膜を下げられるだけ下に下げます。肺が最大化したその状態のことを「腹圧をかける」といいます。
腹圧をかけるということは、横隔膜を下に押し下げることです。つまり吸う息を意識することです。酸素は腹の底の底、横隔膜のところで換気します。そこから力が湧いてくるのです。
そもそも重力は下向きなのだから、横隔膜を押し下げることは理にかなったことです。それに対して、吐く息を意識するとなると、腹筋をつかって絞り上げないと肺の中の空気を吐ききることはできません。
もしもあなたがランニングで吐く息を意識して苦しかったら、吸う息を意識して横隔膜を下に押し下げて「腹圧をかける走法」を意識してみてください。
腹圧をかけると、力が腹の底から力が湧いてくるのを感じるでしょう。腹の底とは横隔膜のことです。そこで酸素を取り込んで、そこからパワーを振り絞るのです。
腹圧をかける走法とは、吐くことよりも吸うことを重視した呼吸法です。横隔膜を下げて肺を最大化させます。酸素は最下層の横隔膜のところで取り込んで、腹の底から走るパワーを生み出す走法のことです。
速く走れば走るほど「腹圧をかける走法」の利点に気づけるでしょう。ぜひお試しください。
全集中の呼吸術。呼吸は自由に。リズム呼吸法は不正解
呼吸は自由に、鷹揚に行ってください。足のピッチのリズムと呼吸を合わせる必要はありません。
スッスッ、ハッハッと繰り返す二歩一呼吸のリズム呼吸は間違った教えです。そういうことにこだわっていると、却って呼吸を荒くします。ランニングの『呼吸はしたいときにする』のが正解です。
名著『BORN TO RUN』には、このような記述があります。
(チーターやウサギなどは)前足が接地するたび、胃腸が前方の肺に食い込み、空気を吐き出させる。つぎのストライドのために身体を伸ばすと、内臓は後方にスライドし、空気を吸いだすのだ。ただし肺活量を増大させるこの動きには代償がともなう。チーターは一度のストライドで一呼吸しかできない。すべての走る哺乳類が一歩進み一歩呼吸するという同じサイクルにしばられていたのだ。例外は全世界にひとつだけだった。あなただ。
この記述は「長距離ランナーとしての人間の優位さは、一ストライド一呼吸に縛られないことにある」といっているのと同じことです。大きな呼吸ができることが長距離ランナーとしての人間の最大のメリットなのです。二ピッチ一呼吸はおろか、三歩一呼吸だっていいのです。二ピッチ一呼吸以上の速さで呼吸する走りは、長くもちません。
力を込めて走ると肺が緊張して酸素換気がうまくいかなくなります。肺はゆったりとさせましょう。肺に力が入ってはダメです。最大換気が最大走力です。リラックス走法が重要になります。
リラックスランニング。脱力とピーキングが謎のベストタイムの理由
足のリズムと呼吸のリズムは別ものと考えて、横隔膜はゆっくりと大きく呼吸するのが正解です。横隔膜を速く動かすのは獲物をしとめるときにスパートをかける時だけです。マラソンの場合はふつうはゴール前以外は使いません。
自由に、吸いたい時に吸い、吐きたい時に吐けばいいのです。ただし大きくゆったりとした呼吸を心がけて呼吸に集中します(全集中の呼吸術)。
決まったリズムに呼吸を無理に合わせようとすると、却って深い呼吸ができなくなります。
自分のリズムで呼吸するのが正解なのです。
本番レース中に「にわか痩せた人」のように走るのは間違い。むしろ「腹の出ている人」のように走るのが正解
マラソンは痩せた人の方が速い。これは真実です。なぜならランニングは宙に浮いて距離を稼ぐ競技なので、重力に逆らって体重が軽い方が宙に浮くときに有利だからです。
だからできるだけ痩せている人になろうとして腹をひっこめて走ろうとする人がいますが、これは間違っています。横隔膜を大きく動かしてお腹が出ている人のように走るのが正解です。
肩をあげて走る人も間違っています。肩をあげてはしると腹の皮膚が吊り上げられてしまいます。横隔膜を大きく動かして腹式呼吸するためには、腹の皮膚はゆったりとしていたほうがいいのです。そのためには肩をさげて走ります。
たしかにマラソンは痩せた人の方が速いのですが、本番レース中に「にわか痩せた人」のように走るのは間違いです。痩せるのはレース前までにすませて本番レースではむしろ「腹の出ている人」のように走るのが正解なのです。
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