マラソンの呼吸法。全集中の呼吸「腹圧をかける走法」

マラソン・ランニング
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球技などの複雑さとは比較にならないほど、マラソンは単純なスポーツです。

脚を出しては戻す反復運動に過ぎないものを、どうしてここまで研究しようとするのか?

単調、単純だからこそわずかな違いが大きく効いてくるからです。

その具体例としてランニングの呼吸法について語っています。

横隔膜を下げて腹圧をかける「トランポリン呼吸法」についてここでは解説します。

私たちが意図的にできることは、酸素(空気)と赤血球(血)ができるだけ触れるようにしてあげることだけです。

横隔膜の上にはたくさんの血が行きやすいので、そこまで深く酸素を吸い込めば、肩式呼吸や胸式呼吸で肺の上部にたよった呼吸法よりも、たくさんの酸素が赤血球に触れるのです。

このときの肺の動きがトランポリンに似ているので「トランポリン呼吸法」と呼んでいます。

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肺の限界が走力の限界という人は全集中の呼吸をしてみるべき

ランニングは単純な運動です。単純だからこそ研究し甲斐があります。単純だからこそわずかな違いが効いてくるのです。

たとえばテニスだったらサーブの時の筋肉の動きはこう、走りながらレシーブする時はこう、後ろに下がりながらロビングする時はここの筋肉をこのように使う、とかいちいち考えていられません。使う筋肉はその都度違いますし、いちいち頭を切り替えなければなりません。

でもランニングは単調だから、走るときはこの筋肉がこう動くとか、システムが非常に分かりやすく、型にはめることが可能です。単調ゆえに研究しようという気になるわけですね。そして単純だからこそ、わずかな違いが大きく効いてくるのです。単純な動作だからこそ、わずかな差が大きな差になるのがマラソンです。

ここではその例として、マラソンの呼吸法「トランポリン呼吸法」についてご紹介します。

皆さんが走るスピードが限界になった時、体のどこが限界となりますか? すべてが同時に限界を迎えることはまずないと思います。どこか最も弱い箇所が、あなたの限界を決めているはずです。

私の場合は「肺」です。脚が動かなくなるよりも先に、呼吸が続かなくなりました。

徐々にスピードを上げていけばわかりますが、速く走るとやがて酸素負債に陥って走れなくなります。肺の限界がスピードの限界でした。

マレーシアのキナバル山では酸欠で苦しくなり自殺を考えましたし、メキシコシティではただ生きているだけで息苦しい思いをしました。もともとあまり肺が強くないのかもしれません。

私は一秒でも速く走るために、呼吸術について真剣に考えました。わずかな違いが大きな違いとなる以上、一回の呼吸でわずかでもいいから効率的に酸素呼吸をしたいと私は考えました。

それではトランポリン呼吸法について、理論と実際の両方を解説します。

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効率的に酸素を取り込むためには、肺は潰さない

肺は「ふいご」のようなものです。

肺は「袋」です。肺はそれ自体が収縮できるわけではありません。

「袋」を取り囲む胸や腹の筋肉を動かすことで、肺の中の空気を押し出したり吸い込んだりしてアコーディオンのように換気しています。

 

「袋」を取り囲む胸を動かせば胸式呼吸、腹の筋肉を動かせば腹式呼吸と呼ばれるわけです。

「ふくろ」を折り曲げて使っては、たくさん酸素を取り入れることはできません。効率的に酸素を取り込むためには、肺は潰して使わないことが大切です。「肺」を折り曲げて使わないように注意しましょう。

たとえば腰高フォームにするあまり、腰椎と同じS字カーブを肺が描くと「ふくろ」を歪めて小さく使っていることになります。歪めて使っては、せっかくの「ふくろ」の最大酸素摂取力が発揮できません。

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横隔膜はトランポリンのような構造

ではどのようにして「寸胴」の「ふくろ」である肺をつかったらいいのでしょうか?

使うのは横隔膜です。横隔膜の解説は以下の専門ページをご覧ください。

横隔膜 | 看護師の用語辞典 | 看護roo![カンゴルー]
横隔膜(おうかくまく、thoracic diaphragm)は、胸腔と腹腔との境界にある膜状筋のことで、呼吸において重要な役割を担う。起始部は腰椎部、肋骨部、胸骨部の3部からなる。それぞれの部から出る筋束は、全体として…

肺を下から支える膜のような横隔膜は、トランポリンのような構造になっています。

横隔膜が上がると肺の空気は押し出され、下がると肺に空気が入ってきます。

瞑想では腹式呼吸を使いますが、トランポリン呼吸法でも腹式呼吸を使います。

このようにイメージしてみてください。

呼吸というのは酸素を取り込んだ赤血球が全身に巡ることを意味します。私たちが意図的にできることは、酸素(空気)と赤血球(血)ができるだけ触れるようにしてあげることだけです。

血は液体です。水と同じように重力の影響を受けますので、基本的に血は下に溜まる性質を持っています。肺の血も同じです。肺の上部よりも、肺の下部に血はたくさん溜まりやすくなっています。

ところで肺の下には横隔膜というトランポリンのようなものがあって、そこで仕切られています。要するに、血はその一帯(肺の最深部)にいちばん行きやすいのです。

横隔膜の上にはたくさんの血が行きやすいので、そこまで深く酸素を吸い込めば、肩式呼吸や胸式呼吸で肺の上部にたよった呼吸法よりも、たくさんの酸素が赤血球に触れるのです。

このときの肺の動きがトランポリンに似ているので「トランポリン呼吸法」と呼んでいます。

ふいご呼吸法」「アコーディオン呼吸法」と命名してもよかったのですが、横隔膜をより強く意識するためにトランポリン呼吸法と命名しました。

肺での換気は、あくまでも横隔膜付近の腹の底の方が換気効率が高いということを示すためです。そのためには腹圧をかけて横隔膜を下に下げます。そこで呼吸するのです。

「ふいご」を意識した方がいいのは「吸う」よりも「吐く」ほうを意識するところです。大きな運動をしているとき人間は「吸う」よりも「吐く」ようにできています。運動中は吸うよりも吐く方が簡単です。吐いてしまえば勝ってに吸います。このやり方の方が効率的です。

トランポリン呼吸法では、トランポリンの骨組みである「輪っか」が腹の底にあるイメージを持ってください。この輪っかが歪まないように大きくお腹をつかってください。

そのトランポリンの外枠を腹の底に意識しながら、大きく横隔膜を上下に動かします。

トランポリンで遊ぶ子供が膜の中央で深く沈みこまないと高くジャンプできないように、トランポリン呼吸法でもたくさんの空気を膜の中央が深く沈み込むまで吸い込まないと全身に酸素が行きわたらず大きくジャンプすることはできません。

横隔膜を下げてトランポリンを深く沈み込ませた状態のことを「腹圧をかける」といいます。

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「腹圧をかける走法」吐く息よりも吸う息に意識を集中する

マラソンの呼吸に関して、市販の本には「吸う息よりも吐く息を意識する」と書いてあります。ヨガも同様で、吸う息よりも、吐く息を重視しています。

しかし本書『市民ランナーという走り方』では、吐く息よりも吸う息に意識を集中します。

吐く息を頑張るという人の理屈はこうです。「肺の中の空気を吐き切ってしまえば、しぼんだ肺が戻るときに勝手に空気を吸い込むから、呼気を意識した方がいい」

いっけんもっともに聞こえますが、逆だって同じではありませんか。

「肺の中の空気をパンパンにして腹圧をかければ、膨らみきった肺が戻るときに勝手に空気を吐きだすから、吸気を意識した方がいい」

そもそも息をするのは、酸素を吸い込むためです。吐くためでなく、吸うために呼吸はあるのです。

腹圧をかけるということは、横隔膜を下に押し下げることです。つまり吸う息を意識することです。そうすることで腹の底から力が湧いてくるのです。

そもそも重力は下向きなのだから、横隔膜を押し下げることは理にかなったことです。それに対して、吐く息を意識するとなると、腹筋をつかって絞り上げないと肺の中の空気を吐ききることはできません。

ヨガのように体をねじる運動の場合は、肺を空にした方が、体をねじりやすくなる道理があります。しかしマラソンの場合はどうでしょうか。本当に呼気を意識した方がいいのでしょうか。

私は吸気を意識した方がいいと思っています。

もしもあなたがランニングで吐く息を意識して苦しかったら、吸う息を意識して横隔膜を下に押し下げて「腹圧をかける走法」を意識してみてください。

楽に走れるようになるかもしれません。

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呼吸は自由に。リズム呼吸法は不正解

呼吸は自由に、鷹揚に行ってください。足のピッチのリズムと呼吸を合わせる必要はありません。

一呼吸の間に二歩、というリズム呼吸は間違った教えです。そういうことにこだわっていると、却って呼吸を荒くします。ランニングの『呼吸はしたいときにする』のがいいのです。

名著『BORN TO RUN』には、このような記述があります。

(チーターやウサギなどは)前足が接地するたび、胃腸が前方の肺に食い込み、空気を吐き出させる。つぎのストライドのために身体を伸ばすと、内臓は後方にスライドし、空気を吸いだすのだ。ただし肺活量を増大させるこの動きには代償がともなう。チーターは一度のストライドで一呼吸しかできない。すべての走る哺乳類が一歩進み一歩呼吸するという同じサイクルにしばられていたのだ。例外は全世界にひとつだけだった。あなただ。

この記述は「長距離ランナーとしての人間の優位さは、一ストライド一呼吸に縛られないことにある」といっているのと同じことです。大きな呼吸ができることが長距離ランナーとしての人間の最大のメリットなのです。二歩一呼吸はおろか、三歩一呼吸だっていいのです。

自由に、吸いたい時に吸い、吐きたい時に吐けばいいのです。ただし大きくゆったりとした呼吸を心がけて。

決まったリズムに呼吸を無理に合わせようとすると、却って深い呼吸ができなくなります。

自分のリズムで呼吸するのが正解なのです。

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このブログ著者の小説『結婚』
小説『結婚』
愛とは何か? 結婚とは何か? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。恋人のアスカはツバサのもとを去っていきます。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。  離れたくない。その叫びだけが残った。  全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。 引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。 そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。 それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自信が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。 アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。 死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。 生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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このブログの著者の小説『片翼の翼』
小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
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小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
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【この記事を書いている人】

アリクラハルトと申します。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。ランニング系・登山系の雑誌に記事を書いてきたプロのライターでもあります。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。その筆力は…本コラムを最後までお読みいただければわかります。あなたの心をどれだけ揺さぶることができたか。それがわたしの実力です。
市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。ちばアクアラインマラソン招待選手。ボストンマラソン正式選手。地方大会での入賞多数。海外マラソンも完走多数(ボストン、ニューヨークシティ、バンクーバー、ユングフラウ、ロトルアニュージーランド、ニューカレドニアヌメア、ホノルル)。地元走友会のリーダー。月間走行距離MAX600km。『市民ランナーという生き方(グランドスラム養成講座)』を展開しています。言葉の力で、あなたの走り方を劇的に変えてみせます。
また、現在、バーチャルランニング『地球一周走り旅』を展開中。ご近所を走りながら、走行距離だけは地球を一周しようという仮想ランニング企画です。
そしてロードバイク乗り。朝飯前でウサイン・ボルトよりも速く走れます。山ヤとしての実績は以下のとおり。スイス・ブライトホルン登頂。マレーシア・キナバル山登頂。台湾・玉山(ニイタカヤマ)登頂。南アルプス全山縦走。後立山連峰全山縦走。槍・穂・西穂縦走。富士登山競争完走。日本山岳耐久レース(ハセツネ)完走。などなど。『山と渓谷』ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。
その後、山ヤのスタイルのまま海外バックパック放浪に旅立ちました。訪問国はモロッコ。エジプト。ヨルダン。トルコ。イギリス。フランス。スペイン。ポルトガル。イタリア。バチカン。ギリシア。スイス。アメリカ。メキシコ。カナダ。タイ。ベトナム。カンボジア。マレーシア。シンガポール。インドネシア。ニュージーランド。ネパール。インド。中国。台湾。韓国。そして日本の28ケ国。パリとニューカレドニア、ホノルルとラスベガスを別に数えていいなら訪問都市は100都市をこえています。(大西洋上をのぞいて)世界一周しています。国内では青春18きっぷ・車中泊で日本一周しています。
登山も、海外バックパック旅行も、車中泊も、すべてに共通するのは必要最低限の装備で生き抜こうという心構えだと思っています。バックパックひとつ。その放浪の魂を伝えていきます。千葉県在住。

【この記事を書いている人】
瞑想ランニング(地球二周目)をしながら心に浮かんできたコラムをブログに書き綴っているランナー・ブロガーのアリクラハルトと申します。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。ランニング系・登山系の雑誌に記事を書いてきたプロのライターでもあります。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。その筆力は…本コラムを最後までお読みいただければわかります。あなたの心をどれだけ揺さぶることができたか。それがわたしの実力です。 市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。ちばアクアラインマラソン招待選手。ボストンマラソン正式選手。地方大会での入賞多数。海外マラソンも完走多数(ボストン、ニューヨークシティ、バンクーバー、ユングフラウ、ロトルアニュージーランド、ニューカレドニアヌメア、ホノルル)。地元走友会のリーダー。月間走行距離MAX600km。『市民ランナーという生き方(グランドスラム養成講座)』を展開しています。言葉の力で、あなたの走り方を劇的に変えてみせます。 また、現在、バーチャルランニング『地球一周走り旅』を展開中。ご近所を走りながら、走行距離だけは地球を一周しようという仮想ランニング企画です。 そしてロードバイク乗り。朝飯前でウサイン・ボルトよりも速く走れます。山ヤとしての実績は以下のとおり。スイス・ブライトホルン登頂。マレーシア・キナバル山登頂。台湾・玉山(ニイタカヤマ)登頂。南アルプス全山縦走。後立山連峰全山縦走。槍・穂・西穂縦走。富士登山競争完走。日本山岳耐久レース(ハセツネ)完走。などなど。『山と渓谷』ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。 その後、山ヤのスタイルのまま海外バックパック放浪に旅立ちました。訪問国はモロッコ。エジプト。ヨルダン。トルコ。イギリス。フランス。スペイン。ポルトガル。イタリア。バチカン。ギリシア。スイス。アメリカ。メキシコ。カナダ。タイ。ベトナム。カンボジア。マレーシア。シンガポール。インドネシア。ニュージーランド。ネパール。インド。中国。台湾。韓国。そして日本の28ケ国。パリとニューカレドニア、ホノルルとラスベガスを別に数えていいなら訪問都市は100都市をこえています。(大西洋上をのぞいて)世界一周しています。国内では青春18きっぷ・車中泊で日本一周しています。 登山も、海外バックパック旅行も、車中泊も、すべてに共通するのは必要最低限の装備で生き抜こうという心構えだと思っています。バックパックひとつ。その放浪の魂を伝えていきます。千葉県在住。
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