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『進撃の巨人』というアニメ・マンガがあります。
わたしは冒頭からこのマンガを見ていますが「こんなむちゃくちゃな設定、後々うまく回収できるのかよ」と思っていました。
連載漫画っていうのは、人気が落ちてくるとすぐに「打ち切り」になってしまいます。
壮大な物語の設定があっても、人気が出なければ、打ち切られてしまいます。後半盛り上がっても遅いのです。
連載打ち切りでよくあるのは「物語はつづく……」というカタチにしておいて、実際には二度と続かないというパターンです。
雑誌の連載の中で人気の下位1~3番ぐらいの常連だと「打ち切り」の危険があるそうです。
人気に余裕度がない場合、作者は焦りますよね。大ネタを出し惜しみしている場合じゃありません。打ち切られたらすべてオシマイなんですから。読者が驚いて喜んでくれれば、つじつまあわせなんて、当座必要ありません。
わたしが作者だったら、後先考えずに、とにかく人気が出そうな大技を次から次へと繰り出すだろうと思います。ネタあわせ(伏線回収)なんか、連載が続いてからでじゅうぶんです。
失礼ながら『進撃の巨人』もそのパターンかと思いました。
次から次へと人気が出そうなあっと驚く設定を放り込んで、人気だけは出ましたが、物語のつじつま合わせを後々できるわけがないと思っていたのです。
ところが物語も後半にすすんで、風呂敷ひろげすぎてオチを回収できないと思われていた『進撃の巨人』が、どうやらオチを回収できそうではないか。
そのことに驚いたのです。
このページではマンガ作者の伏線の回収におけるオールマイティーぶりについて書いています。
マンガ作者はヒーローだけでなく、世界そのものをつくることができるのです。そのことをつくづく『進撃の巨人』の伏線回収の仕方から学びました。
作品の「そもそもの設定」に縛られているから伏線の回収ができないのです。
「そもそもの設定」さえ変えることが可能ならば、どんなオチだって回収できます。
それを見ていきましょう。
【この記事を書いている人】
瞑想ランニング(地球二周目)をしながら心に浮かんできたコラムをブログに書き綴っているランナー・ブロガーのサンダルマン・ハルトと申します。ランニング系・登山系の雑誌に記事を書いてきたプロのライターでもあります。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。その筆力は…本コラムを最後までお読みいただければわかります。あなたの心をどれだけ揺さぶることができたか。それがわたしの実力です。
ランニング雑誌『ランナーズ』の元執筆者。初マラソンのホノルル4時間12分から防府読売2時間58分(グロス)まで、知恵と工夫で1時間15分もタイム短縮した頭脳派のランナー。市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。ちばアクアラインマラソン招待選手。ボストンマラソン正式選手。地方大会での入賞多数。海外マラソンも完走多数(ボストン、ニューヨークシティ、バンクーバー、ユングフラウ、ロトルアニュージーランド、ニューカレドニアヌメア、ホノルル)。地元走友会のリーダー。月間走行距離MAX600km。『市民ランナーという生き方(グランドスラム養成講座)』を展開しています。言葉の力で、あなたの走り方を劇的に変えてみせます。
また、現在、バーチャルランニング『地球一周走り旅』を展開中。ご近所を走りながら、走行距離だけは地球を一周しようという仮想ランニング企画です。
そしてロードバイク乗り。朝飯前でウサイン・ボルトよりも速く走れます。江戸川左岸の撃墜王(自称)。スピードが目的、スピードがすべてのスピード狂。ロードバイクって凄いぜ!!
山ヤとしての実績は以下のとおり。スイス・ブライトホルン登頂。マレーシア・キナバル山登頂。台湾・玉山(ニイタカヤマ)登頂。南アルプス全山縦走。後立山連峰全山縦走。槍・穂・西穂縦走。富士登山競争完走。日本山岳耐久レース(ハセツネ)完走。などなど。『山と渓谷』ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。
その後、山ヤのスタイルのまま海外バックパック放浪に旅立ちました。訪問国はモロッコ。エジプト。ヨルダン。トルコ。イギリス。フランス。スペイン。ポルトガル。イタリア。バチカン。ギリシア。スイス。アメリカ。メキシコ。カナダ。タイ。ベトナム。カンボジア。マレーシア。シンガポール。インドネシア。ニュージーランド。ネパール。インド。中国。台湾。韓国。そして日本の28ケ国。パリとニューカレドニア、ホノルルとラスベガスを別に数えていいなら訪問都市は100都市をこえています。(大西洋上をのぞいて)世界一周しています。ソウル日本人学校出身の元帰国子女。国内では青春18きっぷ・車中泊で日本一周しています。
登山も、海外バックパック旅行も、車中泊も、すべてに共通するのは必要最低限の装備で生き抜こうという心構えだと思っています。バックパックひとつ。その放浪の魂を伝えていきます。
千葉県在住。夢の移住先はもう決まっています!!
大丈夫? 煽りすぎて、むちゃくちゃな設定
『ガラスの仮面』の「紅天女」を思い出してください。「幻の名作」とか「なりきることでしか演じられない天才役者が演じるのは人間じゃなくて「梅の精」」だとか、設定を煽りすぎて、作者の筆は止まってしまいました。
『進撃の巨人』も同じパターンに陥るんじゃないかとひそかに心配していました。
人を食う巨人が襲ってくる城塞都市。人類はもう三重の城塞都市の中にしか存在しません。その壁のひとつが破られてしまいました。しかし主人公が巨人に変身して撃退します。巨人は巨人を食うのです。うなじのところには人間が潜んでいます。
だって「かなりぶっ飛んだ設定」です。「紅天女」の比じゃありません。
やがて、敵の力を味方の力として利用して戦うというデビルマン的な展開になります。
そして、最初はそうではなかったのに、後で自分のタイミングで巨人になることができ、巨体を意のままに操ることができる設定になりました。人の心をパイルダーオンしたときにはじめて正義の味方になるマジンガーZぽい設定が追加になるのです。
とにかく人気取らないと、連載打ち切りになっちゃうから、勢いと設定だけで、運を天に任せて、後の辻褄のことなんて考えずに、とにかく盛り上げるだけ盛り上げて、とうとうここまで来ちゃったんだな……
わたしはそう思いました。
「強いものが弱いものを食らう。親切なほどわかりやすい世界。最初からこの世界は地獄だ……」
巨人とたたかうことで、人間の運命が際立ちます。
「人類の力、思い知れ」立体起動装置で小さな人間が巨人に切りかかります。
ところが人類を守ってきた城塞の中にはなんと巨人が埋もれていました……いや、これどうやっても物語にオチをつけられないでしょう。
人気が出たのでサイアクの連載打ち切りだけは免れました。ムチャなことをやってでも、打ち切りよりマシです。
さあ後半戦です。どうすりゃあ収集できるか、必死に考えるしかありません。でもこれどうやって収拾つけるんだろう。私の興味はそこにありました。
巨人は実は「乗り捨て可能」で「乗り捨てた後は消滅する」ことがわかりました(設定追加)。
巨人に変身する奴の正体は、じつは訓練兵として主人公エレンの同期でした。彼のセリフのツジツマも考えなければなりません。これは心を病んで兵士と戦士の二重人格をもっていたことにしてクリアします。
巨人は人間を食うのですが、巨人のうなじには人間が入っています。人間が何のために人間を襲うのでしょうか。
「おめでとう!!」エヴァンゲリオン的オチにならないように、「夢オチ」にしないために、作者&編集者は必死に考えただろうと思います。
作者は神。そもそもの設定を変更することで、必ずオチをつけることができる
私は過去ブログで、どうして小説家はスターになりえるのに、マンガ作者はスターになれないのか、と説明しました。
小説は神の視点で描けないため、というのがその結論でした。それゆえに小説の人気がそのまま小説家の人気に転化される現象が起こります。「視点」にしばられるがゆえに、です。

逆にマンガは神の視点で描けるために、作者がスターになることはなく、代わりにキャラクターがスターになります。マンガ作者はスターメーカーなのです。

そしてマンガ作者はヒーローだけでなく、世界そのものをつくることができるのです。そのことをつくづく『進撃の巨人』の伏線回収の仕方から学びました。
作品の「そもそもの設定」に縛られているから伏線の回収ができないのです。「そもそもの設定」さえ変えることが可能ならば、どんなオチだって回収できます。
「そもそも設定」の変更。進撃の巨人、の場合
マンガ作者のオールマイティ具合「そもそも設定」の変更について『進撃の巨人』を例に見てみましょう。
◎当初の設定
人類は壁の中にしかいない。壁の外は人食いの巨人がいる。
◎オチの回収
壁の外には他国があることが後でわかりました(そもそも設定の変更)。壁の外にも人間がいました。王様がもつ超能力で記憶を消して、そう思い込まされていただけということになりました。「そもそも設定」の変更です。そのために記憶をあやつることができる巨人が後に登場します。
作者は世界観を説明したのではない。キャラクターの認識を説明したのであって、作品世界を誤解していたのはキャラクターであって、作者に隠す意図はなかった、というわけです。
「人類の力、思い知れ」そう叫んで立体起動装置で小さな人間が巨人に切りかかるマンガだったのですが、実際には主人公エレン達は巨人族で、本当の人類は壁の外側にいました。
巨人は人間だということは前半からわかっていましたが、なんとエレン達種族こそ「巨人族(巨人になりうる素質をもった種族)」だったのです。このコペルニクス的転換……これほど大きな「そもそも設定」の変更が許されるなら、もはや何にだってオチをつけられます。
実は宇宙人だった……とか、ね。強さがインフレーションを起すと、こうなります。『ドラゴンボール』のパターンですね。
たとえば「人間だと思っていた人たちは実はみんな神様で、事件はすべて神の国での出来事だった」設定にすれば、どんな無理でも通ります。神なら巨大化でも消滅でも何でもできるでしょう。問題は、読者にドン引きされないようなそもそも設定の変更ができるかどうかだけです。この神様設定だと「なんだ。ほとんど夢オチだな」とドン引きされてしまうでしょうが『進撃の巨人』はうまくやりました。
敵の巨人(怪獣)が登場すると、こっちもシュワッチ(巨人化)。まるでウルトラマンではありませんか。
巨人は実は「生物兵器」でした。そうすることでそもそも「巨人対人間」という構図だったはずのものが「人間対人間」のたたかいに置き換えられてしまいます。もはや巨人の謎はメインテーマではありません。
作者はそもそも設定を変えることでオチを回収してしまいました。
『約束のネバーランド』も「そもそも設定」を変えて、ムチャな環境をなんとか説明しようとしています。『進撃の巨人』と似たような「そもそも設定変更」です。
世界を変えれば、無理が通ります。これがマンガ作者の神のごとき力なのです。
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