このページでは、富士登山競争の登頂成功のテクニックについて書いています。
富士登山競争は「日本一くだらないレース」と呼ばれています。登りばっかりだからですね。
富士登山競争では、前半飛ばしすぎたランナーがバテて落ちてくることにより、必ず渋滞が発生します。
「あなた自身」が渋滞の原因にならないように注意してください。
さて、渋滞に巻き込まれて前に進めなくなったら、どうしましょう。
登山道が渋滞している場合、登山道脇を進むしかありません。
登山道よりも登山道脇はルートファインディングに時間がかかります。脳力もよけいに使います。
「登山系」の出走者にルートの選択をまかせて、師匠の足跡をそっくりそのままつけていく。
山の上で追い詰められたら、この手しかありません。
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日本一くだらないレース。富士山に一度も登らないバカ、二度登るバカ
富士登山競争は「日本一くだらないレース」と呼ばれています。登る一方のレースだからです。下らないレースなんですね。
富士山に一度も登らないバカ、二度登るバカ
という言葉があります。日本一の山に一度も登らないのはバカだけど、二度も登るのはバカだという意味です。
他の山を知ればわかりますが、富士山はけっして登って面白い山じゃありません。登り一辺倒で単調ですし、火山岩が剥き出しの地形で、太陽から身を隠す場所もありませんし。
登山する山というのは森林や川があると一気に面白くなります。他の生き物がいるともっといいですね。上級者になると壁が欲しくなります。足だけで登れる山だとものたりなくなるのです。腕で体を持ち上げるような山の方が面白いと感じるようになります。
富士山に登っている時は、富士山は見られない
日本アルプスの登山者は登頂すると、たいてい富士山を探します。
富士山は誰にでも見分けられるカタチをしています。あの山だけが白く、神が住んでいるのかと見まがうばかりの優美な稜線……
しかし富士山に登っている時は、富士山は見られません。
逆にずっと富士山を見ているというのも確かですが(笑)。
足元の巨大な砂山、溶岩は見られますが、いわゆる富士山は見られません。
優美な稜線あってこその富士山だと思いますが、そんなものは見ることができません。ごつごつした火山岩ばかりを眺めることになります。それが富士山の本体ですけれど。
つまらない富士山を面白く登る方法
そんなつまらない山を何度も面白く登る方法があります。それが「富士登山競争」です。
たいていの富士登山競争の完走者は、何度も登っているバカです。おもしろくない山を嬉々として登っています。これが競争の魔力です。集団の魔法です。
つまらない「富士登山」も「富士登山競争」なら面白く登れます。一度、歩いて登った人は、次は「富士登山競争」で登ったらいいのではないかと思います。
トレイルランニングに平地の走りは通用しない
ラグビー部の走りと陸上部の走りは違います。
その違いを皆さんは説明できますか?
ラグビー部はタックルされるのが前提であるため、ぐっと腰を落として足を踏みしめて走ります(バックスが追撃を振りきるときは別です)。
サッカー部の走りも、ふいに横から肩チャージされますし、そもそも瞬時にボールを蹴る動作に入るのが前提であることから、腰を落として足を踏みしめて走ります。
しかし陸上部は骨盤・腰椎を立てて、前に進んでいないと倒れてしまうような動的バランスでフワッと宙に浮くように軽く推進していくのです。
ところが富士登山競争では陸上部の走りは通用しません。
これまで私がアリクラハルトのサブスリー養成講座で伝授してきた必殺走法の数々がほとんど通用しないのが富士登山競争です。
私が伝えてきた「マラソンを2時間台で走るための走り方」のほとんどは、壁のような富士山の傾斜に跳ね返されてしまうでしょう。
いったい日本一の山を、どのように攻略していけばいいのでしょうか。
富士登山競争に、平地の脚力は関係ない
「複数のフォームを持って、なりふり構わずゴールを目指そう」という講座の核心部分は富士登山競争にも通用します。そこだけは変わりません。
しかし富士登山競争の場合、前に走り続けないとつんのめって転んでしまうような「動的バランス走法」で走ろうとしても、難しいでしょう。つんのめりたくても山の傾斜が許してくれません。動的バランスを維持したくても、壁にぶつかったかのように傾斜に阻まれます。高く浮いた骨盤・腰椎は維持できなくなります。
最速のレースペースをつくる「ハサミは両方に開かれる・天秤走法」をやろうとしても、難しいものがあります。「ハサミは両方に開かれる・天秤走法」は、支持脚ではなく抵抗のない遊脚を前に突き出すことで速く走ろうという走法ですが、傾斜が大きいと遊脚を前に突き出せません。そもそも下が真っ平らだから天秤が吊りあうのです。富士山の極端な傾斜を前にしては、ハサミは開けませんし、天秤は吊りあいません。
このようにトレイルランニングでは平地の走りが通用しません。
足元に障害物があるため、歩幅は一定ではなく、当然、ピッチも不規則になります。
私は脚力だけではサブスリーという関門を突破できなかったので、知恵と工夫で突破した頭脳派のランナーです。しかし平地の知恵と工夫はトレイルでは通用しません。
富士登山競争を脚力で突破できない人が、脳ミソで完走しようとするならば、なにかもう一工夫必要だということになります。
トレイルランニングは難しい
トレイルランニングは難しいのです。路面によって走り方が違うので、一般論で語ることができません。
走るリズムは一定じゃないし、そもそも接地面の角度がいつも違うのですから、一度動的バランスを作ったら終わりではありません。
アキレス腱をはじく走り方「ヘルメスの靴」も通用しない場面があります。
その都度、走り方を路面に合わせて調整していかなきゃならない。
転倒の危険もあり、気が休まる暇がありません。
それが逆に面白いっていう人はトレイルランナーになってしまうでしょう。
平地を走るのが物足りなくなってしまうタイプです。
富士登山競争は渋滞する
富士登山競争の完走レポートを見ればわかりますが、このレースは中盤以降、渋滞します。
そもそもコースが狭い上につづら折りになっていて、一般登山者もいますし、山小屋が営業しているので、一般ランナーはまず確実に渋滞に巻き込まれることになるでしょう。
本当はもうすこし速く登れるのに、渋滞しているから行けない、という状態になるのです。抜きたくても抜けるルートがなくて抜けない、という場面が必ずやってきます。
登山道の狭さから、自分より走力の劣った集団が前を塞いだ場合、それ以降はずっと「前に進めない」気持ちを抱えたままイライラしながらレースをすることになります。
このピンチを根本的に解消する方法がひとつあります。それはスタートダッシュをかけて、可能な限り前に出た状態で「狭い登山道」を迎えることです。
すべてを出し切って先頭に食らいつきました。この段階で自分よりも前にいる人たちは、格上の人たちばかりです。自分よりも実力が上の人たちが道を塞ぐ筈がありませんから、もう渋滞に巻き込まれることはありません。
……いいレース展開でしょうか? いやいや、今度はあなたが道を塞いでいますよ。
渋滞をつくっているのは「あなた」です
富士吉田市役所前から浅間神社までのアスファルト道は、レース中はランナーに視界が塞がれて気づきにくいですが、けっこうな坂道です。あそこは日本三大奇祭、日本三大火祭りの「吉田の火祭り」が行われるところで、富士山頂へとまっすぐに続く坂道です。
レース後半の渋滞を避けようとして、前半に全力を出して人混みを抜ける戦略はよほど注意が必要です。あの坂を調子に乗って飛ばすとオーバーペースでバテバテになりますよ。
全力を出し尽くして渋滞を抜けた時、もはやあなたには周囲についていく力は残っていません。渋滞には巻き込まれませんが、ズルズルと後退していくことになります。
つまりあなたが、渋滞の原因になってしまうのです。
富士登山競争ではあまり先頭に並ばない方がいいです。先頭にはとてつもない実力者が並んでいますから。彼等についていってオーバーペースになるぐらいなら、ゆったりとした気持ちでマイペースでいきましょう。
渋滞に巻き込まれたくない気持ちはわかります。とくに後半追い込み型の人は「レース後半に抜けなくなる」のを気にしているんですよね。だから前半に順位を上げておこうと。
でも実力以上の場所にたどり着こうとしても、持ちませんよ。
実力相応のポジションで我慢したほうがいいでしょう。
実力相応の場所でレースをすると、渋滞には巻き込まれますが、自分が渋滞の原因になって周囲から白い目線で見られながらズルズル後退していくよりはずっとマシです。
登山系のランナーにルート選択をまかせて、先行ランナーと同じ場所に足を置くことに全集中する
富士登山競争で渋滞から抜け出す方法を教えます。ここからがこの講座独特のトピックスになります。
富士山の登山道は比較的歩きやすい「登山道」と、ごつごつして歩きにくい「登山道脇」で構成されています。
「登山道」が渋滞していて抜けないのならば「登山道脇」から抜くしかありません。
この際、「陸上系ランナー」ではなく「山ヤのランナー」に引っ張ってもらいましょう。
この人を「師匠」と心の中で呼んでひたすらついていきます。「師匠」はすぐに見つかります。
富士登山競争に出走している人は「マラソン」の延長で出ている人がほとんどですが、なかには「登山」の延長で出ている人がいます。この登山系の出走者こそ山に慣れて、山の道を知り尽くした、あなたの「師匠」です。
着ている服装やシューズ、ザックなどから「マラソン系」か「登山系」かは、すぐにわかります。全身から立ち上る雰囲気がまるで違うからです。
この師匠が渋滞を抜けるために「登山道脇」を登り始めたら、彼の足跡をそのまま踏んで後ろについていきます。
登山道の脇側は登りにくいからこそ多くの人が敬遠するところです。簡単に踏破できる場所ではありません。それゆえ登山道脇を上手に行くには、どこに足を置いたらいいか、いちいち考えなければなりません。そのいちいち考えることがとても疲れるのです。目を上げてルートを確認し、転ばないように足元を確認する。その繰り返しが脳を疲労させます。
いいルートはどこか瞬時に判断しなければなりません。その瞬時の判断は「マラソン系」の人よりも「登山系」の人の方が優れています。長年の経験から合理的なルートを選択することが多いでしょう。
そうはいっても同じ「登山系」の出走者といっても人それぞれなので、要は「その人」ということになりますけれど。
この「師匠」は登山系であるがゆえにマラソン系の人ほど走るのは速くありません。だから前半のアスファルト勝負では負けてしまい、後ろの方にいます。むしろ登山道に入ってからが本当の勝負という人が「登山系の師匠」です。こういう人をはやく見つけてください。
「その人」が信頼に足るリーダー(引っ張る人)だと思ったら、その人があなたの「師匠」です。目と脳が行う仕事はすべてその人のまかせてしまいましょう。
あなたは足を動かして、体を上に上げることだけに集中します。「師匠」の踏み跡を「師匠」とそっくり同じに動かすことだけに集中します。
あなたの選んだ「師匠」さえ確かならば、あなたはいつの間にか制限時間内に山頂にたどり着いているでしょう。
師匠の踏み跡ばかり見ているため、周囲は見えていませんが、登山道脇から渋滞する一団のランナーたちを次から次へと抜いているはずです。
「トレランは目がスピードを決める」のです。その目を「師匠」にお願いしてしまうのです。山の上は緊急事態です。余裕がない場合には、これしかありません。
富士登山競争の最中に、渋滞に巻き込まれて追い詰められたら、マラソン系の選手ではなく、登山系の選手から「師匠」を見つけてください。
師匠を信じて、師匠の踏み跡をそのまま踏むことだけに集中してみてください。
登山道脇から渋滞を抜けて、いつのまにか制限時間内にゴールできているはずです。
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